斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

【追記あり】学校の成績が悪いと死ぬことを促す母親を持つ、高校生からのメールへの返信

以前、お母さんからかなり強烈な扱いをされて苦しんでいる高校生からメールをもらいました。いただいたメールは公開するのに支障があり、自分からの返信文(一部改変)だけブログに掲載します。

それでもよろしければどうぞ。

 

メール本文 

メールありがとうございます。

一回り以上年齢の離れた、匿名の、自分のような人間に、メールをするのはかなり勇気が必要だったのではないかと思います。メールのご趣旨としては相談ということでいいんですよね?

以下、そのような前提でコメントいたします。


1. お母さんは間違いなく酷い

まず、お母さんについては間違いなく酷いですね。

直接関係のない第三者に肉親を悪く言われるのは気分がいいことではないと思いますが、一親として色々な親子に出会ってきた身としては、酷い親の部類に入るように思います。専門家ではありませんが、いわゆる「毒親」ではないでしょうか。

これまでお母さんの発言・行動から、自分にも非があるのではないか、親にも理由があるのではないかと思ったことがあるかもしれませんが、○○さんには何も非がありません。死ぬべき存在でもありません。


2. お母さんを変えることは期待できない

ただ、お母さんが間違っているにしても、○○さんから働きかけて、お母さんに変わってもらうことはあまり期待できません。

○○さんが高校生とするとお母さんは40代半ばぐらいでしょうか? 人間、年を取るほど、そして今の生活スタイルが完成していればいるほど、物の考え方を変えることは困難なものです。

お母さんとの関係については、○○さんが家を出るという選択肢を取らなければ、このまま変わらないと考えざるを得ないのが現実だと思います。


3. あなたは一人ではない

そうだからといって、現実を受け入れろと申し上げるつもりはありません。○○さんと同じように親に苦しんだ方は多数いらっしゃいます。そういった方のお話を読まれてみると、楽になる部分はあると思います。

有名な方だと田房永子さん。本来は買って読むものでしょうが、恐らく、図書館にも置いてあるはず。 

母がしんどい

母がしんどい

 

Twitterアカウントはこちら。

田房永子 (@tabusa) | Twitter

後は、この方もご自身の経験談を公開しています。

Twitterアカウントはこちら。

原わた 「ゆがみちゃん」発売中 (@yugamico) | Twitter

お二人とも○○さんとの境遇に近いところがあります。どこまで○○さんが自分と同じ境遇の人がいるかを調べたことがあるかは存じ上げませんが、「毒親」というキーワードで検索すれば、たくさんの体験談を読むことができるはずです。

誰かに相談するというのにはまだ抵抗があるでしょうから(だから自分のような人間にメールをされたのでしょうから)、まずは、自分は一人ではないこと、同じ苦しみに遭遇し、そこから脱出した人がいることを確認してみてください。

いざ、相談する際は、公共機関でも匿名で話を聞いてくれるところがあります。

法務省:子どもの人権110番

○受付時間 平日午前8時30分から午後5時15分まで

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4. 最後に

一度に沢山のお話をしたので全ては消化できないかもしれません。

自分はこういうお話を伺うのがとても楽しいので、文字数が何文字になっても結構ですからいくらでもメールしてきていただいて結構です。また、お母様の発言等で耐えられないものがあれば、それを共有して頂いても全く問題ありません。誰かとシェアするだけで楽になる部分はあると思います。

ではでは!

 

補足コメント

上のほうでメールで紹介した、ゆがみちゃんは本になっていました。 

ゆがみちゃん 毒家族からの脱出コミックエッセイ<ゆがみちゃん>

ゆがみちゃん 毒家族からの脱出コミックエッセイ<ゆがみちゃん>

  • 作者: 原わた
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / メディアファクトリー
  • 発売日: 2015/07/17
  • メディア: Kindle版
 

ゆがみちゃんはマンガとして面白いけれど(noteで読めます)、文字通りかなりゆがんでいて、読むのが辛いところがあるので注意。しかし、なぜ、このペンネームにしたのだろうか。

この分野としては、以下の本がバイブルとなっていますので、興味がある方はこちらをご覧になるのもよろしいかなと思います。 

毒になる親 一生苦しむ子供 (講談社+α文庫)

毒になる親 一生苦しむ子供 (講談社+α文庫)

 

ではでは。 

 

追記

こんな指摘をTwitterでいただきました。

ご指摘ありがとうございます。以下厚労省のページからの引用ですが、この通り、虐待と思われた場合は児童虐待防止法の対象で、関係機関に通告することは義務ですね。自分は本件は虐待という認識はしませんでしたが、確かに虐待の可能性もある。

子ども虐待対応の手引き > 第3章 通告・相談への対応

(1)  通告の対象となる子ども

 子ども虐待の早期発見を図るためには、広く通告が行われることが望ましい。しかし、従来の児童虐待防止法では、通告の対象は「児童虐待を受けた児童」とされており、基本的には、子どもが虐待を受けているところを通告者が目の前で見た、あるいは子どもの体に虐待によるあざや傷があるのを見たといった児童虐待が行われていることが明白な場合が想定されていた。

 このため平成16年児童虐待防止法改正法により、通告の対象が「児童虐待を受けた児童」から「児童虐待を受けたと思われる児童」に拡大された。これにより虐待の事実が必ずしも明らかでなくても、子どもの福祉に関わる専門家の知見によって児童虐待が疑われる場合はもちろんのこと、一般の人の目から見れば主観的に児童虐待があったと思うであろうという場合であれば、通告義務が生じることとなり、児童虐待の防止に資することが期待される。

 なお、こうした通告については、児童虐待防止法の趣旨に基づくものであれば、それが結果として誤りであったとしても、そのことによって刑事上、民事上の責任を問われることは基本的には想定されないものと考えられる。

(太字は筆者)

ただ、Tweetをいただいた方がご指摘されている通り、

通告義務があるのだから、何でもかんでも虐待として主観的に認識して、それを通告するというのでは、それはそれでバランスが悪い。一方で、苦しんでいる子に逃げる手段の提供や場合によって専門機関に繋げることも大切だと思います。お互い匿名同士、年齢不詳、知っているのはメールアドレスだけという状況ですから、やれることに限界はありますが、こういったNPOの存在や通告の義務についても触れても良かったですね。

「日本子どもの虐待防止民間ネットワーク」は子育て虐待の相談に応じます

 

また、話を聞くだけ、何かが足りないというご指摘についても補足します。自分のブログでのメールを受け付けるスタンスはこういうもので、

できるだけ嫌な話を提供してもらって栄養補給して相談事を利用して上下関係を作らない - 斗比主閲子の姑日記

ネットに限らず、実生活でもよく相談を受けることがあるんですが、そういう時に気を付けているのは、相談者とアドバイザーという明確な上下関係を作らないことです。

作らない理由は作るとつまらなくなるからです。先生と生徒みたいな感じで、生徒は先生の話を一方的に聞くみたいな状態になると、どんなアドバイスも喜ばれちゃうようになっちゃう。どうでもいいことも相談されるようになる。

そういう関係性があったほうがお金は取りやすいし、尊敬も集めやすいですが、それらに魅力はあっても、自分はそういうのが欲しくてプライベートで相談事を聞いているんじゃないんですよね。世の中の嫌なエピソード、複雑怪奇な話を愛でたいというのがあるのと、可能なら自分の手で解きほぐしてみたいんです。

では、上下関係を築かないように何をしているかというと、

  • 相手が欲しい相談の方針を確認してからアドバイスををする(傾聴が欲しいのか、背中を押してほしいのか、突っ込まれたいか)
  • 命令をしない
  • 相手が年下であろうと敬語を使う、敬意を示す、誠実に答える
  • 相談内容が美味しかった時には美味しいとちゃんと伝える
  • これからも美味しい相談をして欲しいと伝える

こういうことを気を付けています。

本人に興味があるんじゃなくて、その本人が関わっているトラブルに興味があるという姿勢を見せるということですね。自分が言いたいことを言うわけでもない。アドバイスとしては欲しいものを言われたから提供するというスタンスです。

メールをされる読者とは一応こういう認識があってやりとりされているものとご理解ください。

 

今回コメント頂いた方もブログで書かれている通り、

ブログ記事は薬にもなるけど毒にもなるから気をつけたい - しあわせはいつもうしろから

「読者の人にどうなって欲しいか」「これを実践すればあなたもこうなりますよ」なんて読者の為だと前向きな視点で書かれた記事には、役に立つ内容もあるかもしれない反面、その情報の対価として、関係性の欲求に応えることを求められかねず(読者の方から望んで会いに行くという形で関係性の欲求に乗ってしまっていることもあるので)、その内容と書き手と自分とは適切な距離感を持った方が無難な気がしています。

自分は読者やメールをされた方についてどうなってほしいとも思いませんし、会いたいとも思いませんし、モヤモヤを放り投げたら食べるバクのような存在として、距離感は保ちたいと考えています。

http://www.flickr.com/photos/61021753@N02/7257718830

photo by BioDivLibrary

モヤモヤがあったら美味しくいただきますということでメールも募集しており、

今回のメールについても、いただいたメールの内容はそのまま掲載しませんが、「美味しくいただいてくださるなら嬉しいです。」というのが末尾にあります。

 

なお、メールをされたご本人が「私がおかしいかも」と思うことについては、一番最初におかしくないと最初にコメントしています。繰り返しですけど、このメールの相談者には、まったく非はありません。死ぬべき存在でもありません。