Emacs実践入門「はじめに」の没案。

Emacs実践入門 ?思考を直感的にコード化し、開発を加速する (WEB+DB PRESS plus)

Emacs実践入門 ?思考を直感的にコード化し、開発を加速する (WEB+DB PRESS plus)

みなさん、もう3月ですね。どうやら、3月7日にはAppleのイベントがあるらしく、おそらく世間一般では iPad3 の話題で持ち切りとなるでしょう。ですが、時同じくして、3月7日に技術評論社さんのWEB+DB PRESS plusシリーズの新刊である『Emacs実践入門』が発売される予定です。いつもこのブログ読んでいらっしゃる方は、既にご存知かと思いますが、まぁ僕が書いた本になります。
恐らく、当日は Apple に話題を掻っ攫われること必死なので、それまでにざっと紹介していきたいと思います。
という訳で、まずは「はじめに」を書いていたときに、自分で没にした内容を使って紹介してみたいと思います。この「はじめに」は本書の「はじめに」とは異なりますが、仕様ですのでご了承下さいませ。

はじめに(没案)


まずは、本書を手にとっていただき誠にありがとうございます。本書は、技術評論社 WEB+DB PRESS plus シリーズの1冊となるのですが、みなさんは同シリーズを何冊お持ちでしょうか?
筆者がこのシリーズを知ったのは、2008年*1に刊行された『Googleを支える技術』の購入がきっかけでした。次に購入した『サーバ/インフラを支える技術』ともども、そのレベルの高さに何度も首を捻りました*2。そんなわけで、すっかりこのシリーズのファンとなったのですが、その数年後、まさか自分が著作を残すことになるとは一顧だにしませんでした。
本書『Emacs実践入門』は筆者にとって勿論初めての書籍となるのですが、いきなり自分の憧れたシリーズの仲間入りすることに、心の底から嬉しい反面、そうそうたる著者一覧の中に自分が入ることに対して、びびりまくっており、若干逃げ出したい気持ちでもあります。
その上、本書は歴史あるエディタEmacsを題材としておりますが、このEmacsの世界では、利用歴10年以上の猛者が山のようにいらっしゃいます。筆者などは、Emacs歴4年程度なので、小学校でいうところの高学年にやっと上がったばかりです。であるのに、諸先輩方々を差し置いて、自分ごときが解説書を書くということは、さながら、若輩でありながらスタメンに選ばれ、挑戦の機会に恵まれた喜びを感じながらも、仲間である先輩達の厳しい視線も意識して戦わなければならない、そんな重圧を感じるスポーツ選手のような気持ちでした。
そんな感じで、様々な感情が入り交じった執筆機会でありましたが、本書を書くことによって味わうことができた黄金体験はまだまだいくつもあります。ぜんぶは紹介しきれないので、あとひとつだけ紹介したいと思います。
それは、まつもとゆきひろ氏に「本書に寄せて」を執筆していただけたことです。
「本書に寄せて」は、書籍を執筆するという苦難を乗り切るための希望の光かもしれません。脱稿とひきかえに、筆者自身が最も読みたいと思う人物に執筆をお願いする権利を得ることができるのです。で、筆者が最も読みたいと思った方は、有名なコラム「Emacs対vi」を書かれたまつもとさんだった訳ですが、本当に素晴しい文章をいただくことができて、涙が出そうなくらい嬉しいかったです*3。本当にありがとうございました。
(中略)
本書が初めてEmacsに触れる方にとっての良き入口となり、すでにEmacsを利用している方にとっての良き成長の糧となり、一時的にEmacsから離れてしまった方にとって良き復帰材料となれば最高にハピハピハッピーです。

没にした理由。

WEB+DB PRESS plus シリーズの「はじめに」を参考に見てみたら、やっぱりというか当然というか、全部本気と書いてマジだったので、こんなノリでは恥を晒すだけなので、格を落とさないためにも、精一杯まじめに書こうと思い直したわけです。
駄目だと思い直したところを列挙すると、

  • 主観的すぐる
  • そもそも、Emacsについてほとんど触れてない
  • 変な日本語で遊び過ぎ
  • 黄金体験とか意味不明
  • 「幸いです」で締めたくなかったけど「ハピハピハッピー」はやり過ぎ。

そんなこんなを Fix したのが、正式版となっております。ご安心してお買い求め下さい。
風格っていうのは、後から続くものにとっても多大な影響を与えるものなんですね。横綱は大変です。

*1:当時24歳でした

*2:最近発売された、『日本語入力を支える技術』も大変素晴しいそうです。

*3:なお、奇しくも自分が初めて購入した『Googleを支える技術』の本書に寄せてもまつもとさんでした。偶然ですが運命めいたものを感じました。