リアルスーパーマリオ
- cagamiincage
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「リアルスーパーマリオ」:オレの名はマリオ。我が国の姫君、ピーチ姫救出のために組織された特殊部隊「配管工部隊」の一員だ。マリオと言っても本名ではなくコードネームのようなものだが。配管工部隊はその名のとおり、配管工として働いている予備役が集められて結成された部隊だ。
2011-01-27 12:36:19なぜ、配管工が集められたのか? それはおいおい説明していこう。「……チッ、まずいな」。オレはブロック塀の影にスッと身を隠した。チラリと前方を覗うと、やはり、いた……。ヨタヨタとした足取りでこちらに向かってくる、醜悪巨大なキノコの化物……。クリボーだ。
2011-01-27 12:42:40全身から毒の胞子を撒き散らす化物キノコ……。大きさは人間とほぼ同じ。ヤツに触れられたらイチコロだ。火炎放射器でもあれば簡単に焼き殺せるが、なければ上から踏み潰すしかない。そのまま即座に跳べば毒の胞子を免れることができる。「踏み潰し」は多くの仲間の犠牲の上に確立された戦術だった。
2011-01-27 12:48:08だが、あえて危険を冒すこともない。オレはブロック塀の上に飛び乗り、ヤツをやり過ごすことにした。ヤツらの視覚はあまり発達していないらしくヨタヨタと前へ進むばかりだ。前方確認もできないらしく、勝手に崖から落ちて死ぬこともある。猛毒こそ危険だが注意さえしていればさして恐れることもない。
2011-01-27 12:53:28それよりも恐ろしいのはノコノコだ。獅子ほどの体を持つ獰猛な肉食性の亀の化物……。多くのマリオがヤツにタマタマを噛みちぎられて死んだ。毒キノコに当たって倒れている間に、生きながらに喰われたヤツだっている。こいつにもやはり「踏みつけ」は有効だ。タマタマを噛まれなきゃあ、だがな……。
2011-01-27 13:01:31しかも時折、羽の生えた亀まで出てくる。信じられるかい? 獰猛な肉食動物が空を飛んで来るんだぜ? オレの横にいた相棒がパッと消えたと思ったら、空中であいつに頭をかじられてたんだ。あの光景は一生忘れられない。お偉いさんは飛行性亀様個体とか呼んでるが、前線の間じゃもっぱらパタパタだな。
2011-01-27 13:08:56「おっと、ここだな」オレは土管を前にして手元の地図を確認する。ここから地下道を通ればクッパ軍要塞の目の前に出られるはずだ。市内に無数に設けられた土管と地下道。これがオレたち配管工が召集された理由だった。オレは土管に手をかけたが、そこに潜んだ影に気付き、バッ――!と身を離した。
2011-01-27 13:15:22「ギャッシィィ――!!!」 獲物を逃したそいつは悔し気に唸った。パックンフラワーだ……。危ないところだった。オレの反応が1秒でも遅れていたら、ヤツに頭から丸かじりにされていただろう。最近はクッパ軍もオレたちの地下道利用に気付いたらしく、各所にこいつらを植えつけて回っているという。
2011-01-27 13:18:53オレは冷や汗を拭いながら立ち上がった。フラワーはオレに噛み付こうと必死に頭を延ばしてくるが、所詮は植物だ。根を張った場所から動くことはできない。オレはフラワーに中指を立て、冷笑混じりにその場を立ち去ろうとした。だが、その時だった――。フラワーがその醜い口を大きく開け広げたのは。
2011-01-27 13:24:22「グギャアアアア!!!」オレの断末魔が寒空に轟いた。一体、何が起こったのか? オレは薄れ行く意識の中、焼け爛れた己の全身を目にした。そうか、……火だ。フラワーが火を吐いたのだ……。確かにそういった報告はあった。だが、「植物が火を吐くなど非常識だ」と上官は一笑に付したのだった。
2011-01-27 13:29:25しかし、これが現実だったのだ。亀が空を飛んだ時点で、どんな可能性も疑うべきではなかった。オレは……キノコ王国陸軍幕僚の無能さに殺されたのだ……。「ルイージ……ルイージ……」。掠れた声で弟の名を呼ぶ。お前は、兄のような惨めな末路を辿るなよ、と祈りながら……オレの意識は……。<完>
2011-01-27 13:33:56文章書いたり、映像作ったり、パンクやったりしてます。「もしリアルパンクロッカーが仏門に入ったら」「よいこの君主論」「戦闘破壊学園ダンゲロス」(メール:works★cagami.net)