1. 最近、村上隆さんがマイブームなのですが、Twitterで勝手に呟いていたらご本人が降臨されて緊急対談? の様相を呈してます。今は村上さんのFacebookに場を移してディープな対話が続いてます。村上さん、お付き合い下さいまして有難うございます。
2014-11-24 18:14:002. 対話は「村上隆は、なぜオタクに嫌われるのか?」という私の呟きに端を発して、これがテーマのようになっていますが、村上さんからは「自分はオタク界からだけでなく、日本の美術業界からも、映像制作業界からも、イベント業界からも嫌われている」という自己申告を得ました。
2014-11-24 18:14:423. なんとも嫌われたものですが、なぜこういうことになっているのか。身も蓋もない言い方をするなら、各業界の下積みを経ないで、各業界の仕事のエッセンスを用いて短期間に成功したと思われ「嫉妬を買っている」からではないかと思うのです。村上さんは「それは誤解だ」と言うかも知れません。
2014-11-24 18:15:404. 誤解とは、村上さんは世間が思うほど「個人で儲けているわけではない」からです。村上さんは会社を経営しています。カイカイキキの事業内容によれば、元麻布本社・三芳スタジオ・NYオフィス・PONCOTON(札幌アニメスタジオ)があり、世界各地に直営ギャラリーを経営しています。
2014-11-24 18:16:475. それぞれ社員を数十人抱え、全体で何百人なのかは分かりませんが、社員に毎月給料を払っているわけです。給料の原資は村上さんの創作活動。日々創作する芸術作品によって、数百人の社員を食べさせているのです。世界を見渡せば、社員を雇用して「芸術生産」を行う芸術家は珍しくはないですが、
2014-11-24 18:18:556. 村上隆さんは間違いなく「芸術資本家」の世界最先端を走っていることに間違いはありません。社員の生活が村上さんの「芸術活動」にかかっているのですから、まさに「止まったら死ぬ」、冥府魔道に身を置いていると言えます。虫プロ社長時代の手塚治虫と、全く同じ立場に立っているのです。
2014-11-24 18:20:277. 村上隆さんは「芸術資本主義」という全く新しいアートを「創作」しているのです。ご存知のように資本主義は商品を生産し、それを販売して金銭に替え、儲けた金銭をさらに事業に投資していく。これの繰り返しで成立します。一度始めたら止めることが出来ません。止まったら死ぬしかないのです。
2014-11-24 18:22:058. 私は20年前から村上隆さんを存じていますが、最初から全速力で走り続けていることに畏怖の念を覚えています。その上周囲の嫉妬を買って飛礫が飛んでくるのですから、理不尽な境遇です。何度も言いますが、彼は稼いだお金で豪遊しているのではなく、自分の芸術活動に投資し続けているのです。
2014-11-24 18:23:129. しかし、そうは言っても、村上さんに批判が集まることは事実で、そこに全く瑕疵はなかったのでしょうか? 私は彼への非難の多くは「私腹を肥やしているという誤解に基づく嫉妬」だと思うのですが、そうした誤解を生み出したこと自体、村上さんに「戦略ミス」は無かったのでしょうか?
2014-11-24 18:31:1010. もし村上隆さんに戦略ミスがあったとしたなら、それは村上さんの「のし上がり方」に反感を買われる理由があったのかも知れません。村上さんは常にアートの世界を照準を合わせて前進していますが、「のし上がり方」は、私には典型的なサブカルチャーのそれに見えるのです。
2014-11-24 18:34:0011. サブカルチャーは元来、素人のカルチャーです。庶民の庶民による庶民のための、ストリートのカルチャーだと言ってもいいかも知れません。一方の美術・芸術はハイカルチャーと呼ばれます。本来は王侯貴族が宮殿で鑑賞する、金持ち・上流階級のカルチャーだと言えると思います。
2014-11-24 18:35:4612. ウォーホルなどのポップアートは、上流階級の高級な趣味であったアートの世界に、ありふれた庶民のアイコンを持ち込んで衝撃を与えたのです。大量消費財のパッケージや、漫画のキャラクターを絵画や彫刻にして、何十万ドルという高値で金持ちが取引する所に「批評性」の本質があるのです。
2014-11-24 18:36:5013. ウォーホルはあくまでハイカルチャーの文脈でサブカルチャーを利用したので、そのため生前はアメリカ国民の反感を買ったと言います。「俺たち庶民の文化で商売しやがって」と、村上隆さんと全く同じ非難を受けていたのです。これは正統なポップアートが必ず受ける受難、洗礼だと言えます。
2014-11-24 18:43:2414. ここでハイカルチャーでの成功と、サブカルチャーの成功の違いについて述べます。ハイカルチャーでの成功とは、1つしかない自分の作品が高値でお金持ちに売れることです。自分の絵画や彫刻が高く売れれば売れるほど、芸術家のランクが上がります。基本的に、庶民とは関係がない世界です。
2014-11-24 18:49:1115. サブカルチャーの成功とは、作品を大量に生産し、大量に買ってもらうことです。顧客は王侯貴族やお金持ちではなく、普通の庶民です。なので、庶民が理解できない難解な作品は嫌われます。村上隆さんは、日本で誕生し、大衆化したアニメのイコンを使って、ハイアートの世界で成功しました。
2014-11-24 18:55:4016. つまり、村上アートは庶民にとって「分かりやすい」のです。日常に転がっている見慣れたものが描かれているからです。それを欧米や中東の大金持ちが買うわけです。そこに「嫉妬」が生まれていると思われます。しかし重要なことは、村上アートは「萌え」を描いたから凄いのではなく、
2014-11-24 19:00:4517. 「萌えの文脈を共有しない欧米人に高値で買ってもらうスキーム」を単独で構築したから凄いのです。これは生易しいプロセスではないと思います。萌えを欧米で受け入れて貰うために村上さんが用意した理論武装が「スーパーフラット」という美術概念で、村上さんの発明品の1つです。
2014-11-24 19:06:1518. もう1つ村上さんが誤解された要因は、作品がオークションで超高額で落札された報道です。これは彼の名を一躍有名にしましたが、同時に「私腹を肥やしている」と憶測も呼びました。しかしジョン・レノンのスケッチや手描きの楽譜が高額で落札されたら、ファンは喝采でこれを迎えるのです。
2014-11-24 19:14:4519. サブカルチャーの価値を誰の目にも否定出来なくさせる唯一の方法論が、「作品を大衆が買い求め、そのことでお金を儲ける」ということです。成功したサブカルチャーのアーティストは、これで何十億も稼ぎます。ハイカルチャーのアーティストは、王侯貴族・富豪が作品に何億も支払います。
2014-11-24 19:20:1520. 儲けた金額は同じであっても、ハイカルチャーとサブカルチャーでは「顧客が違う」わけです。フィギュア作家の顧客はアキバの萌えオタですが、村上隆の顧客は欧米のお金持ちです。なので日本のオタクは、「俺たちに向けられた作品ではない」として、村上さんを敵視するのではないでしょうか。
2014-11-24 19:23:3921. 長くなったのでこれ位にしますが、私が「村上隆問題」に関心を抱いているのは、ムラ社会の「内と外」の感覚を、ピンポイントに刺激しているところです。それ以外にも「現代美術と資本主義」に強引に橋を渡した手腕にも注目しております。極めて興味深い作家だと思います。
2014-11-24 19:28:33追記(まとめ人連ツイ)
togetter.com/li/749288 竹熊健太郎さん「ポップアートはサブカルチャーではない」 ↑これ、後から思い返したんだけれど、『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』のジャケは非サブカルチャーか?ってのあったな。 pic.twitter.com/pggFCngb6S
2014-11-26 07:06:19ウォーホルの『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』のジャケはあきらかにポップアートだし、しかもサブカルチャーのアイコンとしても認められている。コンテンポラリーアートをコンテンポラリーアートとして評価するには「文脈」を読み込まなければならないが、これはその手間を省かせている。
2014-11-26 07:19:07twitter.com/kentaro666/sta… ハイカルチャーとサブカルチャーでは「顧客が違う」 一方に↑のようなテーゼがあり一方で『ヴェルヴェッツ&ニコ』のような事例がある。これはポップアートの在り様が可変的であるということで、村上隆も似たようなことを言っている。
2014-11-26 07:52:24