「名誉」と「面子」の取り違えについて 《山崎雅弘》

表題に関連するツイートをまとめてみました。「名誉」と「面子」を取り違え、面子を「名誉」だと錯覚したまま、全力で国の「面子」を守ろうとすれば、わずか10年ほどで国が滅亡の淵に導かれることを、先人は自らの犠牲によって我々に教えてくれていると思います。 ここで言う「面子」は、以前に作成したまとめ「本当の『愛国』とはなにか」http://togetter.com/li/498553 で書いた「美化された自国のイメージ」と、ほぼ同じ意味です。こちらも合わせてお読みいただければ幸いです。
117
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

歴史や政治を「名誉」という尺度で語る言説が増えてきたが、実際には彼らの言う「名誉」は「面子」でしかない。名誉と面子は似ているので錯覚しやすいが、決定的な違いは「名誉」は自分の失敗や瑕疵を認めても「認める態度」によって保たれるのに対し、「面子」は自分の失敗や瑕疵を認めると失われる。

2014-09-24 12:46:07
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

自分の失敗や瑕疵を指摘された時「他の連中もやっているのになんで自分だけが」と感情的に反発するのも「名誉」ではなく「面子」にこだわる人間の特徴で、価値判断の尺度を内面でなく「他人からどう見えるか」という外面に置いている。失敗や瑕疵を認めて「他人から見下される」ことを心底から恐れる。

2014-09-24 12:47:31
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

名誉に見せかけた「面子」は、犯罪行為を指摘されても「他の連中もやっている」という言い訳で守れるが、本物の名誉はそんな言い訳では決して守れず、逆に言い訳のお粗末さで失墜する。自分の過去には瑕疵がない、とは「名誉」を重んじる人は言わないが「面子」にこだわる人はそこに最大の価値を置く。

2014-09-24 12:48:38
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

「名誉」でなく「面子」にこだわる人間は、交渉では「実質的勝利」でなく「形式的勝利」を求めるので、名を捨てて実を取るという「譲歩」を行えない。「面子」にこだわる人間は「形式」に思考を支配されているので、名と実の違いすら認識できない。失敗するとわかっていても、他の方法を選択できない。

2014-09-24 12:49:43
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

先の戦争における敗戦と膨大な犠牲は、政府と国民が「名誉」と「面子」を取り違えて、ひたすら「面子」に固執した結果だったと思う。国際連盟脱退も、日中戦争解決の失敗も、敗北確実な対米英蘭戦の開始も、面子に固執せず譲歩すれば避けられたが、それができずに日本軍人だけで230万人が死亡した。

2014-09-24 12:50:53
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

「名誉」と「面子」の取り違えは、捕虜の扱いにも見られる。実質の「名誉」を重視していた日清・日露戦争の日本軍は、捕虜を不名誉とは考えず敵の捕虜にも敬意を払ったが、昭和の日本軍は捕虜になれば「面子が潰れる」と考えて厳禁し、敵捕虜も虐待して、大勢の日本軍人が戦後に戦犯として処刑された。

2014-09-24 12:51:59
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

実質としての「国の名誉」が日々失われていることに憂慮する日本人は少なくないが、形式としての「国の面子」にしか関心のない人には、前者の人間に見えている破壊が全く見えない。自国の失敗や瑕疵を認めて「他国、特に自分が見下している国から見下される」不安から「国の名誉」をさらに壊し続ける。

2014-09-24 12:53:09
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

政府と国民が「名誉」と「面子」を取り違え、ひたすら「面子」に固執した結果、この国は1945年8月に破滅の瀬戸際へと追いやられた。本物の「愛国者」は、その状況を「二度と繰り返してはならない」という点から思考を始めるが、「面子」にこだわる「偽の愛国者」は、逆にそれを繰り返そうとする。

2014-09-24 12:54:40
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

この先、政治家や新聞、政府に近い人間が「名誉」という言葉で思考や行動を誘導・制約する動きが増えていくと思うが、美麗な語句に惑わされて「名誉」と「面子」を取り違えたまま暴走すれば国が滅ぶことを、先人は自分たちの命と引き換えに教えてくれている。彼ら彼女らの犠牲を無駄にしてはいけない。

2014-09-24 12:55:55
まとめたひと
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

戦史/紛争史研究家。政治問題の分析記事も新聞・雑誌に寄稿。主な著書『「天皇機関説」事件』『日本会議』『戦前回帰』『【新版】中東戦争全史』。1999年から『歴史群像』誌に毎号寄稿中。著書一覧→ http://amzn.to/2cs7181  過去ツイート→ http://twilog.org/mas__yamazaki