ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10100245:メニイ・オア・ワン #3
(これまでのあらすじ:ニンジャスレイヤーはネオサイタマを支配するアマクダリ・セクトの首脳「12人」のうち、マジェスティ、ブラックロータス、メフィストフェレスを殺害した。これを受け、「12人」の一人、警察権力の一部を私するジャスティスは、ネオサイタマ全域に非常検問体制を展開)
2014-09-15 18:56:22(実名指名手配を受け、メディアまでが牙を剥く。そしてニンジャスレイヤーを直接追うアマクダリのニンジャは「12人」の一人、最強の古代ローマカラテ戦士スパルタカス。分刻みの計画に翳りが見えたか。しかもニンジャスレイヤーを支援していたナンシー・リーは49課のデッカーに逮捕されてしまう)
2014-09-15 18:59:43(49課は対ニンジャ犯罪に特化して秘密裏に組織された部隊でもあり、ジャスティス率いるハイデッカー部隊の専横を日頃から苦々しく考えていた。警察機構も一枚岩ではない。ナンシーは死中に活を見出す事ができるか?折しもニンジャスレイヤーをスパルタカスの配下「古代ローマ三闘士」が捕捉した!)
2014-09-15 19:03:33(#1 まとめ:togetter.com/li/713623 #2 まとめ:togetter.com/li/717046 )
2014-09-15 19:04:59雨足が強まっている。オゾンの匂いだ。崩れかけた廃屋の集まりに到達したスパルタカスは、断続的に空の闇を染める雷光の下、微かなニンジャソウルの残滓を辿った。ドラゴンベインとスワッシュバックラーは他の「12人」のもとへ向かった。ニンジャスレイヤーにとって攻略可能性が高い者達のもとへ。1
2014-09-15 19:13:16スパルタカスは屈み込んだ。泥土をニンジャ足袋の跡が乱している。複数。彼は眉根を寄せる。「……」彼はキラキラ光る繊維を拾った。投げ網の一部。すぐにわかる。ラクエリィの得物だ。交戦があった。彼は小走りに進み、新たな痕跡を発見する。廃屋の壁に撥ねた血と、ブレーサーの一部だ。2
2014-09-15 19:20:57ひしゃげたブレーサーはラクエリィのものではない。行動を共にするスキピオ、バルバロスのものでもない。スパルタカスは目を細めた。泥土の足跡と壁材の歪み、空気中のニンジャソウル痕跡成分が、この場で行われた戦闘のさまを、影絵じみて朧に浮かび上がらせる。3
2014-09-15 19:25:18赤黒のブレーサーは獲物ニンジャスレイヤーのものだ。三闘士は投網や鎖を投げつけ、スキピオによるトドメを狙う。古代ローマカラテにおいて、投網は特に習得難度が高い。遺跡や古文書にもその戦術の一端は記載されている。所詮はニンジャのカラテを畏れるしか術のないモータルによる記録であるが。4
2014-09-15 19:36:39三闘士はニンジャスレイヤーと応酬しながら(スパルタカスはここで壁に突き刺さったスリケンを見た)、この廃屋地帯を抜ける。スパルタカスの目には、戦闘する彼らの影が見える。セオリー通りのイクサだ。だが……スパルタカスは軽く笑う……つまらぬイクサである。三闘士。至らぬ連中だ。 5
2014-09-15 19:40:12ニンジャスレイヤーの腕からブレーサーを剥がしたのはバルバロスの鎖だ。筋はいい。スパルタカスに言わせれば武器を用いた古代ローマカラテは邪道。彼の個人的な考えである為、古代ローマカラテ会のカリキュラムには習得項目として残してはいる。だが、本来は組み技を主体とする素手のカラテこそ要。6
2014-09-15 19:45:45ゆえに「ナムアミダブツ」スパルタカスは無感情に呟いた。そこにはバルバロスの首が転がっていた。血走った目は彼を殺害した敵を憎悪とともに凝視しようと見開かれたままだ。ブレーサーひとつと引き換えの命か。スパルタカスはバルバロスの頭を踏み砕いた。彼は弟子を取らぬ。カラテ会はビジネスだ。7
2014-09-15 19:49:30スパルタカスが真に愛するのは、常に、目の前の敵だ。敵は彼に成長の機会を与えてくれる。彼はニンジャスレイヤーに強い興味を抱いている。ザイバツのサラマンダーを殺し、ハーヴェスターのインターセプターを殺した者のカラテ。自ら仕留め、血肉とすべし。……必ず勝てる状況に追い込んだ上でだ。8
2014-09-15 19:58:14バルバロスを失ったラクエリィとスキピオは、ニンジャスレイヤーと互いに攻撃を繰り返しながら廃屋の屋根へ……徐々に高所へ(「イヤーッ!」スパルタカスは屋根へ飛び乗り、走り出した)。そして廃屋地帯から雑居ビル街へ。屋上から屋上へ(スパルタカスは垂直にビル壁を駆け上った)。 9
2014-09-15 20:06:27スパルタカスは風を嗅いだ。どの方向だ?ニンジャスレイヤーの次の狙いは「12人」の誰だ?彼の頭上をマグロツェッペリンが通り過ぎる。その横腹には「10100400」の電光日時表示。夜明けまで二時間弱。「……」彼は眉根を寄せた。向かいのビル屋上、給水タンクに鎖が巻きついている。10
2014-09-15 20:18:21すぐに、給水タンクに巻きつけられたものを見て取る。変わり果てたラクエリィだ(「イヤーッ!」スパルタカスは飛び移った)。スキピオは少なくともこの場で死んではいない。ゆえにこれはイクサの後の仕打ちではない。イクサの最中にバルバロスの鎖を利用され、いかにしてか、この場に磔となった。11
2014-09-15 20:25:12「アバッ……スパルタカス=サン」ラクエリィが血を吐いた。まだ息があった。「力及ばず」「スキピオは?」「戦闘を継続……」ラクエリィは眼球を動かす。スパルタカスはその角度から精緻な方角情報を得る。「そうか」「奴は、アバッ!」ラクエリィは痙攣!もはや限界だ。「サヨナラ!」爆発四散!12
2014-09-15 20:29:17「……」スパルタカスは足元の血痕を指ですくい、メンポを開いて口に含んだ。複数の血。そこにはニンジャスレイヤーの血も混じっているとわかる。だが、三闘士ではかのネオサイタマの死神をどこまで削ることができるか……。それは十分か……? 13
2014-09-15 20:36:50フラッシュライトがかざされた。ナンシーはビクリと震え、覚醒した。目の前に机がある。机越しにスポイラーが呆れる。「たいした度胸だ。寝やがるなんて」「他にやる事も無いじゃない。黙秘権よ」ナンシーは言った。「……ちょっとでも仮眠をね」そう、仮眠。このミッションはまだまだ長い。15
2014-09-15 20:47:40「今何時?」「うるせェ」扉の横に立つタフガイが舌打ちした。「貴方が悪い警官で、スポイラー=サンが善い警官?」「そういうセオリーを期待してんのか?」タフガイは弾丸をこれ見よがしに込め直す。「ロシア式を教えてやろうか、ア?」「事情聴取は俺達じゃない」スポイラーがナンシーに言った。16
2014-09-15 20:53:07「勿体つけるのね」「合流できたから起こしたんだ」スポイラーが言った。ナンシーは室内を見回す。「ここ、本当に警察署?お茶は出る?」「スッゾオラー!」SMASH!「グワーッ!」ドアを蹴り開け、短髪の女デッカーが入ってきた。スポイラーが立ち上がった。「ドーモ、デッドエンド=サン!」17
2014-09-15 21:03:28「イヤーッ!」「グワーッ!」デッドエンドはスポイラーをいきなり殴り倒し、唾を吐きかけた。「何を、」スポイラーは鼻血を拭った。デッドエンドは顔をしかめた。「面倒押し付けやがったからだ!」「スミマセン!」「テメェがナンシー・リーか」ナンシーの金髪を掴む!「何をやらかした、ア?」18
2014-09-15 21:14:06「知らないのに何で逮捕されるのかしら……」「ナメたクチを」「そこまでだ!」老いた、だが力のある怒声が部屋の外から発せられた。ナンシーの顔面を机に叩きつけようとしていたデッドエンドの手が止まった。彼女は舌打ちしてナンシーから手を離した。スポイラーは目をそらした。 19
2014-09-15 21:16:17スポイラーは慌てて立ち上がり、オジギした。割れたサングラスを拾っていたタフガイも素早く戸口に向き直ってオジギをした。「「ドーモ、ノボセ=サン!」」「ドーモ」現れたのは、黒いPVCコートを着、左目を眼帯で覆った、厳めしい老人であった。同行してきたデッドエンドも彼にオジギをした。20
2014-09-15 21:27:21難病(全身性エリテマトーデスと抗リン脂質抗体症候群)を発症してしまい、現在活動休止中です。(2016 年春~) ニンジャヘッズ(ニンジャスレイヤー中毒者)です。 人々の日々の生活クオリティを向上させるために、サイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」の普及活動を行っています。