洗剤の泡立ちの話 その2 合成洗剤と石鹸
@kobonona 少し真面目に回答しますと、経口・経皮摂取による毒性というのは、天然物か人工物かで決まるわけではありません。フグや毒キノコ、トリカブトあたりを思い浮かべていただければ分かると思います。むしろ、自然物こそ、毒物の宝庫です。
2013-02-09 16:52:55そういえばこの間蛇毒が血液を一瞬で凝固させる動画を見てブルったばかりだった
@kobonona えっと、界面活性剤からまた少し脱線しますと、生き物なら何でもそうですが、別に他の生き物に食べられたくて生きてるわけじゃないので、食べられないように毒を蓄える生き物はいっぱいいます。植物でさえ、害虫がつくような環境では、自分で天然農薬を作って防御します。
2013-02-09 16:55:49 そりゃそうだ。そもそも薬の始まりって薬草だし、
天然の薬草から成分を抽出して人間が使う薬品を作ってきたんだしなあ。
@kobonona で、例えば農業で使われている農薬(天然物信仰の人は大嫌いだと思いますが)と、植物が自分で作る天然農薬とを比べると、後者の方がずっと毒性が強かったりします。普通の農薬は、ものすごく厳しい安全性試験をパスしないと登録できないので、当然と言えば当然です。
2013-02-09 16:58:16@kobonona 話を界面活性剤に戻しますと、その安全性=毒性というのは天然物か合成物かで決まるのではなくて、その構造によって決まります。泡立ちも、どうして泡立ちが良くなるかを理解すれば、天然か人工かでは決まらない事が一目瞭然である事と同じです。
2013-02-09 17:13:44@kobonona 食器用洗剤では、一般的に安い洗剤の方が、油汚れをよく落とします。その代わり、手の油分も持って行ってしまうので、手荒れを起こしやすいです。少し高めの洗剤ですと、あまり激しく脱脂しない界面活性剤を使用している代わりに、汚れ落ちはやや悪くなる傾向にあります。
2013-02-09 17:19:12@kobonona で、彼らの大好きな石鹸が脱脂しないか?というとそうでもありません。石鹸は優秀な界面活性剤ですので、油汚れも、手の皮脂もちゃんと持って行きます。
2013-02-09 17:20:38@kobonona 石鹸の性質として、ナトリウムやカリウムのような一価の金属イオンで中和されたものは水に溶ける事ができますが、カルシウムやマグネシウムのような二価の金属イオンで中和されたものは、水に溶けなくなる特徴があります。
2013-02-09 17:24:24@kobonona 二価の金属イオンは川の水にも井戸水にも水道水にも、僅かに含まれていますので、石鹸を使うと、イオン交換されて二価の金属イオンが沈降します。これが石鹸カスとか水垢とか呼ばれるものの正体です。
2013-02-09 17:29:21@DEEPBLUE1219 私の住んでいる場所は他の所より水道水にカルシウムが多いそうで、気をつけていないと蛇口まわりがあっという間に白くなってしまうんですよね。クエン酸水やお酢をスプレーしておいてからこすって落としています。
2013-02-09 18:24:35@kobonona それです。天然大好きな人たちは、コレを利用した実験をよくやらかします。メダカの入っている水槽に、一方は合成界面活性剤を、他方は石鹸を同量入れるんですね。そうすると、石鹸の方は何ともないのに、合成の方はメダカが死んでしまうというものです。
2013-02-09 23:30:35@kobonona 「まぁ怖い!」とだまされやすい実験ですが、これは、石鹸の方は二価の金属イオンと結合して沈殿しちゃうので、水中に溶けてる量だけで言うと全然同じではなかったりします。今回のリンク先ではその実験は紹介されていませんが、見かけ上、インパクトがあるけれど、
2013-02-09 23:32:54@kobonona ちゃんとした実験になっていない実験で、恐怖を誘うのが常套手段です。統計的におかしい特殊例を紹介したり、別の原因で起こっている現象の責任を合成物に押し付けてみたりする事が大飯です。一般論ですが。
2013-02-09 23:34:32@kobonona 僕は毒性学の専門家ではないので、この辺の理解は怪しいですので、話半分で聞いてください^^;界面活性剤は、その名前の通り界面活性があるのですが、その性質による毒性は主に2種類。生物の細胞は、大雑把に言うと、水の玉がリン脂質という油の膜で覆われた構造をしています。
2013-02-09 23:37:34@kobonona なので、油も水も溶かす事のできる界面活性剤は、膜を壊してしまうんですね。コレが一つ目。二つ目に、生物の生体機能の多くはタンパク質が担っています。酵素は細胞内で起こる様々な化学反応の触媒になりますし、DNAに結合して遺伝子発現を促進したり、抑制したりする
2013-02-09 23:40:09@kobonona スイッチの役目を果たすタンパク質もいます。他にも、細胞膜に貼り付いて、細胞外からの物質透過や情報伝達に関わっているものもあったりして、一口でタンパク質といってもいろんな種類のものがあって、無数の機能を持っています。タンパク質というと栄養素のイメージが強いですが
2013-02-09 23:42:37@kobonona むしろ精密機械と言った方が適切かもしれません。さて、このタンパク質というのは、アミノ酸が鎖の様に繋がってできているのですが、アミノ酸にも水に溶けやすいアミノ酸と、油に溶けやすいアミノ酸があります。細胞の中というのは水で満ちていますから、
2013-02-09 23:45:01@kobonona タンパク質が水に溶けているためには、油に溶ける(=水に溶けない)アミノ酸を内側に包み込んで、水に溶けるアミノ酸の部分を外側に殻の様に配置した形をとります。この、水に溶けるアミノ酸と油に溶けるアミノ酸の種類と数と配置によって、タンパク質の形が決まる訳です。
2013-02-09 23:47:29@kobonona 先ほど、タンパク質はいろいろな機能を持っているとご説明しましたが、タンパク質がその機能を発揮するためには、この微妙な構造がきちんと作られている事がとても重要なのです。例えば熱が加わると、卵のタンパク質の構造が壊れて固い構造を作ってしまうので、ゆで卵ができます。
2013-02-09 23:50:05@kobonona タンパク質は熱やpHの変化にとても弱いのですが、界面活性剤にも弱いのです。界面活性剤は油も水も溶かしますので、精密に作られていたタンパク質の構造を壊してしまいます。これが二点目。
2013-02-09 23:52:07@kobonona 界面活性による毒性の原因は、主にこの二点だと思いますが、これらはどちらも石鹸だろうが合成だろうが、どちらにも当てはまる特性です。
2013-02-09 23:52:59@kobonona もう一つ考えられるのは、界面活性剤の代謝産物が毒性を持っている場合です。例えば、ヒマというインドで栽培されている植物から採れるヒマシ油という油は、普通の油と違ってリシノレイン酸という、脂肪酸の中に酸素原子を持った特殊な脂肪酸を抱えています。
2013-02-09 23:58:22@kobonona どうやら、私たち人間は(他の動物は知りません)、このリシノレイン酸のように酸素を含んだ脂肪酸を上手く代謝する事ができないので、ヒマシ油を食べると下痢を起こします。このような特殊な脂肪酸を使って界面活性剤を作れば、やはり食べれば下痢を起こします。
2013-02-09 23:59:56@kobonona ですがこのヒマシ油を使って石鹸を作る事も当然できる訳で、やはり天然かどうかということで、毒性があるかないかを議論する事はできません。
2013-02-10 00:01:33