「キョート・ヘル・オン・アース」序「エンタングルメント」#6
第2部「キョート殺伐都市」より 「キョート・ヘル・オン・アース」序 「エンタングルメント」#6
2012-07-22 20:48:05「イヤーッ!」カワラ屋根を蹴り、カマを持ったサンシタニンジャがニンジャスレイヤーに飛けて大跳躍!「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは正面からのカラテ・スリーパーで別なサンシタの首をへし折りながら、死体の手に握られたドスダガーを奪い、跳躍ニンジャに向けて素早く投擲! 1
2012-07-22 20:57:30ヒュポヒュポヒュポ!回転しながら飛ぶドスダガー!「グワーッ!」カマニンジャの喉元に命中!体勢が崩れたところを見計らって迎撃行動に移る。あれは伝説のカラテ技、サマーソルトキック!「イヤーッ!」「グワーッ!」爆発四散!「サヨナラ!」首をへし折られていたサンシタも時間差で爆発四散! 2
2012-07-22 21:00:58ニンジャスレイヤーは空中で生首を掴んでから回転着地し、シャチホコ突起に威圧的に突き刺す!「イヤーッ!」さらに足元に転がったサンシタの生首をワールドカップサッカー選手めいた爪先の動きで巧みに蹴り上げ、掴み、またも突き刺す!「イヤーッ!」殺害されたザイバツニンジャ、すでに九人! 3
2012-07-22 21:05:46「Wasshoi!」ニンジャスレイヤーは左掌を前方に突き出しながら、右手で燃えるようなヌンチャク捌きを見せ、全方位を威嚇する。先端部には炎の軌跡が見え隠れし、剣呑な夜の空気を焼き焦がしていた。チャドーによって理性を保ってはいるが、今宵のフジキドは怒り狂っている……いつになく。 4
2012-07-22 21:12:21すでに三十名以上のニンジャが現れ、遠巻きに彼を包囲している。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはヌンチャクを両手で構えて前方に突き出し、改めて宣戦布告の姿勢を取る。「未熟なサンシタから殺戮機械の中に放り込み未来を断つのが、ザイバツの流儀か?ソウカイヤのほうが、まだ骨があったぞ」 5
2012-07-22 21:22:12マスター以下のザイバツニンジャたちは、この狂人が放つ圧倒的キリングオーラと、神器ヌンチャクの破壊力を前にして、及び腰になっていた。ニュービーに至っては失禁する者さえいる始末。無理からぬことだ。彼はモータルの怒りを全身に纏い、グランドマスターと同等のニンジャ存在感を放っていた。 6
2012-07-22 21:29:12フジキドはチャドー呼吸で息を整えながら、ヌンチャクの鎖が落とす影の下で眉根を寄せる。彼の精神は、強大な敵ニンジャソウルの接近を感じ取った。ようやく大物が釣れたらしい。サンシタニンジャたちが畏まってオジギし、その強者のために道を空ける。オーカー色の装束に身を包んだ男が歩み出る。 7
2012-07-22 21:39:37その男の得物は奇妙な形状の刀剣だった。そのヘビめいた瞳はイクサの恍惚がもたらす興奮にぎらぎらと輝いていた。周囲のアトモスフィアが変わった。「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、ニーズヘグです」男は威風堂々たるアイサツを決めた。「ドーモ、ニーズヘグ=サン、ニンジャスレイヤーです」 8
2012-07-22 21:48:35ニンジャスレイヤーは先制スリケンを繰り出さなかった。この強敵の前ではそうした小細工すらも命取りになる恐れがあった。フジキドの額に汗粒が浮かび、頭巾の隙間を流れ、険しく吊り上がった眉に吸い込まれた。「アタマフタツヘビ」ニーズヘグが愉しげに口を開いた「わしとバジリスクの渾名じゃ」 9
2012-07-22 21:53:20「バジリスク……」ニンジャスレイヤーはヌンチャクの先を右手と右脇で構えつつ、左手を前に突き出してジュー・ジツの姿勢を取った。ソウカイヤを滅ぼしたあの夜の記憶がフラッシュバックする。「オヌシも戦闘狂のたぐいだな。臭いで解る」「あいつは血気盛んでな、若気の至りで飛び出しおった」 10
2012-07-22 22:08:38「オヌシは何故飛び出さん?」ニンジャスレイヤーは低く油断の無い声で言う。会話から隙を見出すのはニンジャの常套手段だ。もっとも、この男には通用しそうになかったが。「派手なイクサのほうが痛快じゃろが。でかいトノサマの下にいりゃあ、それがある」「生まれる時代を間違えたな、オヌシ」 11
2012-07-22 22:17:39両者はじりじりと前進を続けていた。その間にも、彼らの脳内ではイマジナリー・カラテの応酬が続く。伝説的なショウギ・チャンピオンたちはしばしば、一切手駒に触れずして対局相手をセプクに追い込むことがあるという。この不気味なまでの沈黙こそが、真のカラテ強者たちの前哨戦なのであった。 12
2012-07-22 22:22:01不意に、張り詰めた緊張感アトモスフィアに耐えられなくなったかのように、中庭の錦鯉が高く跳ねた。ゴウランガ!その水音を合図代わりに、二者は動く!「「イヤーッ!」」 13
2012-07-22 22:27:24一方その頃ディテクティヴは、ナンシーからの断続的なナビ支援と、自らの卓越したニンジャソウル感知能力を駆使して、ホンマル内へと潜行していた。ユカノが捕えられているのは、琥珀ニンジャの間に程近い、儀式控えの間。また琥珀ニンジャの間には、かなりの数のニンジャが集結しているらしい。 15
2012-07-22 22:41:13「いい歳して、何が儀式だよ。まったく……お子様カトゥーンじゃねえんだぞ」ガンドーはぼやきながら、暗い廊下や茶室をぬかりなく移動する。高純度のものを選りすぐったおかげで、ZBRの効きも遥かにいい。花札カードで城を作りつつ、ピアノの上でタップダンスが出来そうなくらいゴキゲンだ。 16
2012-07-22 22:52:26「重点!」合流したばかりのモーターチイサイが周囲を浮遊し、ナンシーからのIRC着信を告げる。この程度の音は問題にならないほど、現在の城内は騒然としているのだ。『敵さんの動きはどうだい』『流動的。半数は琥珀ニンジャの間に残ってるわ。待機命令かしら』『控えの間は』『今は敵不在』 17
2012-07-22 22:58:40『ハッキングは?』『失望させてくれるシステム。ソウカイヤの方が手強……INC重点!前方T字路右から!』ガンドーはZBR覚醒した素早い反応速度で無人茶室に飛び込む!「クセモノダー!」間一髪!ニンジャスレイヤーの侵入を触れ回るアデプトが角を曲がって現れ、前の廊下を走り去った! 18
2012-07-22 23:13:19『冴えてるわね、私が情報を送る前に動いた』『ああ、魚群レーダーみたいにチカチカ光って感じ取れるぜ。ニンジャソウルがな』『ZBR?ほどほどになさいよ』『ハッカーってのは薬物礼讃だと思ったが』『あんなのは子供の補助輪よ。足を引っ張る』『大丈夫さ、この戦いが終わりゃあ、もう、な』 19
2012-07-22 23:18:42『全部片付いたら、リアル・ザゼンでもやってみる?』『ホウリュウ・テンプルでかい?』『悪くないジョークね。また少し通信が途切れるわ』ナンシーは言った。良からぬ電子兆候をコトダマ空間内で感じ取ったからだ。プーレク宿原バンのエルゴノミクス椅子の上で、ナンシーは不敵に鼻血を拭った。 20
2012-07-22 23:51:43IRCコトダマ空間内のナンシーは、キョート城IRCチャネルのサーバ世界を飛翔し、セキュリティ象徴である高さ22キロメートルの巨大な黒いUNIXモノリスに対して、燃え盛る炎の剣を突き立てているところだった。邪悪なヨーカンのように黒く艶々としたその表面に、緑色の01の波が立つ。 21
2012-07-22 23:56:41自分を球状に包む城内監視カメラの半透明映像数十枚を確認しつつ、モノリスにコマンド攻撃を繰り出す。だが守りの要だけあって、外殻を破るのは容易ではない。ナンシーの突き立てる刃は何度も弾き返され、緑色の火花を散らした。あと少しで、キョート城の全システムが彼女の前に屈服するのだが。 22
2012-07-23 00:05:58それより数秒前。キョート城電算機室では、戦略チャブ上のセキュリティ警報ダルマが両目から赤い光を放ちながら回転していた。ヴィジランスが叫ぶ。「ストーカー=サン、まだ無限ドアトラップから脱し切れていないのか?敵のIP予測は?」「まだです。IPはネオサイタマ……アマクダリ事務所」 23
2012-07-23 00:11:28「アマクダリだと?馬鹿な!」ヴィジランスは防弾ガラスで覆われた危険なボタンに握り拳を重ねていた。拳は怒りと興奮で激しく震える。「休戦協定が結ばれているのだ!あり得ん!今私がこのボタンを押せば、アマクダリに電子攻撃が始まり、全面戦争が始まるぞ!今、私の拳の下に!世界がある!」 24
2012-07-23 00:17:21難病(全身性エリテマトーデスと抗リン脂質抗体症候群)を発症してしまい、現在活動休止中です。(2016 年春~) ニンジャヘッズ(ニンジャスレイヤー中毒者)です。 人々の日々の生活クオリティを向上させるために、サイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」の普及活動を行っています。