ヒッグス粒子探しは役に立つか?:谷村省吾教授の提言
ヒッグス粒子の探索実験に関連して、「ヒッグス粒子が何の役に立つの?」「私たちの生活に関係あるの?」という類の疑問は、人として自然な反応だ、ということを私はツイートしました。 http://t.co/vfHNofDW
2012-07-09 13:27:02ですから私はCERNの研究成果を自慢することはできないし、CERNでの研究に費やされた資金について釈明をすべき立場にもありません。
2012-07-09 13:27:58物理学の研究に公共資金が使われていることについて公的説明は不要である、とは思っておりません。むしろ心ある多くの科学者たちは「世のため、人のために役に立つ研究をしたい」と思っているし、その種の説明を一生懸命している、と思います。
2012-07-09 13:28:10ただ「役に立つ」という言葉の意味は非常に広くとっておかないといけない、また、気長に待たないといけない。投入資金の回収を急ぐと、そもそも科学の息の根を止めてしまうことになる、と思います。
2012-07-09 13:28:25ヘルツは、1887年に電磁波の存在を実験検証した人ですが、「それが何の役に立つのですか?」と尋ねられて「何の役にも立ちませんよ」と答えたそうです。
2012-07-09 13:30:06「それは何の役にも立っていない。マクスウェル先生が正しかったことを証明しただけの実験だ。我々の肉眼では見えない不思議な電磁波は確かに存在する。しかし、たんに存在するだけだ」 http://t.co/KwA0wSXc
2012-07-09 13:30:22いま、テレビや携帯電話や無線LANやレーダーやGPSなどはすべて電磁波を使っていますが、電磁波が役に立っていないと言う人はいないでしょう。
2012-07-09 13:31:46もちろん電磁波の発見だけでこれらの機器がすべて可能になったわけではなく、さまざまな発明・発見・工夫・改良のシステマティックな統合がこれらを可能ならしめたわけですが。
2012-07-09 13:31:52エジソンは、1877年に蓄音機を発明しましたが、その使用目的としては、遺言の録音とか、盲人用の本の朗読などを想定していたそうです。音楽の録音・再生に使うつもりはなかったし、そのような目的は下品だと考えていたそうです。
2012-07-09 13:32:17発明・発見は、何の役に立つかわからないようなちっぽけなものから始まるし、意図的に作られた「発明品」ですら、当初の目的どおりに使われるとは限りません。むしろ発明者が思ってもみなかったところでブレイクすることがあります。
2012-07-09 13:33:06この本の第13章のタイトルは「発明は必要の母である」です。必要だから発明するのではなく、発明されちゃったものは、後から使い道が見つかったり、見つからないままに終わったりするものだ、ということ言っているのです。
2012-07-09 13:34:44ヒッグスボソンの探索をモナリザを描くことにたとえる人もいますが、 私は、むしろ「世界一周旅行の達成」とか「目に見えない微生物の発見」とかにたとえた方がよいのではないかと思います。
2012-07-09 13:35:13これらの発見は、我々の世界観を変える力がある、我々の目を見開かせる力がある、世界はこういう作りだったのだ、ということを教えてくれる力がある。
2012-07-09 13:35:52たとえ話で争うつもりはないのですが、「モナリザ」では美的・芸術的面を強調しすぎて、「高価な美術品を購入できない人たちには関係のない話」を連想させるのではないかと思いました: http://t.co/KkU5bHku
2012-07-09 13:36:31モナリザは一箇所の美術館にしか置けませんが、ヒッグス粒子(ヒッグス場)はあるとすればどこにでも潜在的にあるものですし、ヒッグス粒子に関わる物理法則は、宇宙の普遍な法則ですから、誰にも独占されません。時代を超えて人類の共有知識になるのです。
2012-07-09 13:36:54そういうことは素晴らしいと思うから私はこれらの理論を創り上げた人たちやCERNの実験家たちに最大限の賞賛を贈りたいのです。
2012-07-09 13:37:06ゆるふわ変態クマさん☆ つくばに住んでる野生の研究者で非線形科学、惑星磁場などを研究してるよ。Perfumeではかしゆかが好きだよ♪ 本屋さんにいると時間を忘れちゃうタイプ。よろしくね☆彡