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【キリンの斑論争】 19世紀の後半、日本のある科学雑誌への投稿が学者の間で話題となります。 「キリンは成長過程で皮膚がひび割れることで模様が出来上がる。そのためキリンの模様と田んぼのひび割れは似ている」 この投稿をきっかけに「キリンの斑(まだら)論争」へと発展します。(1/n) pic.twitter.com/JaHon3QRMd
2023-11-15 17:26:45この投稿をしたのは平田森三という東大の物理学者であり、それに対して同じく東大の生物学者である丘英通は 「模様は色素の有無であり物理的な構造ではないため、ひび割れとするのはおかしい」 と主張する論文を同雑誌へ投稿し、論文の最後に門外漢がいい加減なことを言うな(意訳)と批判しました。
2023-11-15 17:34:37それに対し平田は、 「色素の位置を決める原理のことを考えているのだから、丘の反論はナンセンス。ちなみに論文の最後の文章は印刷ミスだよなあ?(意訳)」 と反撃し、現代におけるTwitterのようなクソリプ合戦が行われたのです。
2023-11-15 17:38:50結局、この議論は平田の師匠である寺田寅彦(X線結晶解析の先駆者)によって鎮められました。 さて、ここからが問題です。 現代においてキリンの模様はどのように発生すると考えられているのでしょうか?
2023-11-15 17:42:18これに対して画期的な説を提唱した論文があります。1952年, 人工知能の父として知られるアランチューリングが生涯で唯一, 生物について述べた論文です。 彼は「細胞間の化学反応などによって周期的な振動が発生すると周囲に波が生じ、それが模様を作る」と述べています。 pic.twitter.com/aNy8HffNxB
2023-11-15 17:53:01Turing Patternは2つの偏微分方程式でシンプルに定義されますが、それが次のような多様な模様を作り出し、実際に動物の模様とも酷似しています。 数式の詳細はwiki参照: ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81… pic.twitter.com/X65iqB5iRU
2023-11-15 17:56:49Turingの発見は長らく生物学者からは評価されていませんでしたが、1995年に近藤滋によってタテジマキンチャクダイの体表面の模様がチューリングパターンであることが実験的に確認されています。 pic.twitter.com/yUaBbIVYjf
2023-11-15 18:00:37結局、Turingの論文によって「波」こそが模様の発生原因であるということが信じられるようになりましたが、平田の指摘した「ひび割れ説」は的外れだったのかというと、実はそうでもないのです。
2023-11-15 18:03:30ひび割れの形成方法とTuring Patternの発生方法を比較すると、 「ひび割れによって張力が変化し,ひび割れの近くでひび割れは起きにくい」 「Turing Patternの反応が活性化した領域の近傍では,活性化が起きにくい」 という共通点があり、実は根本の部分では似ているのです。
2023-11-15 18:20:30さて私の知る限り、まだキリンの模様の謎は完全に解明されたわけではありません。 今後どのような発見があるか楽しみですね。 (n/n)
2023-11-15 18:22:24Mac、数学、小説、等々。娘の発達障害のために勉強もしてます。