宮台真司さんのトリチウム生物濃縮デマにガチ化学研究者さんが反論・解説

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宮台真司さんのツイートをきっかけに

神崎星辰 @chiee007

たぶんメチル水銀とかとのアナロジーで考えておられて悪意はないのだろうが、生物濃縮という現象に対する浅い理解含めて、ちょっと世間的にデマとなっては危ないので専門的見地から下記スレッドにコメントしますtwitter.com/miyadai/status…

2023-09-03 16:12:01
宮台真司 @miyadai

貴殿は有機結合トリチウムを見逃している。生体内でトリチウム水のままなら短時間(4日以内)で代謝されて生体濃縮の機会がないが、それを構成するトリチウム原子が有機物(蛋白や脂肪や核酸)と結合すると生体内に長く留まる間に(大部分は生物半減期40日で一部は1年)捕食されて生体濃縮されうる。 有機結合化のメカニズムは水素置換。植物の光合成過程や動物の消化過程で、有機物内の水素原子が他の水素原子に置換されるので、トリチウム原子にも置換される。このメカニズムを前提とした生体濃縮についての論文は以下。植物(植物性プランクトン)から動物へという過程の蓋然性が最も高いとされる。 Andrew Turner, Geoffrey E Millward, Martin Stemp 2009 "Distribution of tritium in estuarine waters:the role of organic matter" Benedict C Jaeschke, Clare Bradshaw 2012 "Bioaccumulation of tritiated water in phytoplankton and trophic transfer of organically bound tritium to the blue mussel, Mytilus edulis" これらを参照したと思われる良記事が以下である。 https://t.co/x9FQcYUhz1 その前編も良記事だが記事内のリンクから飛べる。トリチウムβ崩壊のβ線は弱いものの、「薄めようが薄めまいが」結果的に膨大量のトリチウムを海洋投棄することによる帰結の未規定性を問題視する。

2023-09-02 02:04:03

水俣病・DDTにおける生物濃縮との違い

神崎星辰 @chiee007

生物濃縮で悪名高いのは水俣病のメチル水銀と沈黙の春のDDTでしょう。 これらの例を見ながら、生物濃縮とはいかなる条件で起こるのか見ていきましょう。 まず、メチル水銀。これは主にMeHg+という陽イオンとして存在します。この物質自体は水溶性ですが、生体内で起こる化学反応に問題があります。

2023-09-03 16:15:37
神崎星辰 @chiee007

メチル水銀はアミノ酸の一種のシステインに含まれる硫黄と高効率で強く結合します。そうするとタンパク質に結合してしまい蓄積性になるわけです。 DDTの場合は強い脂溶性と難分解性を持つため脂肪組織に蓄積します。

2023-09-03 16:17:56
神崎星辰 @chiee007

ではトリチウムはどうでしょう? HTOのTが代謝経路で有機物に取り込まれることを考えます。 普通の水素も含めて取り込まれる確率の方が圧倒的に低いですが、運が良かった?とします。Tの反応速度はHより低いため、ここで大部分がHに先を越されます。

2023-09-03 16:23:37
神崎星辰 @chiee007

ここを乗り越えたとして、Hを取り込む反応は大抵酸性度の高いOHやNHなど活性プロトン基で起こります。これは外部のHと常に交換(平衡)してるので、周りが99%Hなのであっという間に交換されます。

2023-09-03 16:26:21
神崎星辰 @chiee007

ここも乗り越えて晴れて有機物の一部になれたとして、どんな有機物になるかはランダムです。糖かもタンパク質か、水溶性か、脂溶性かも。 つまり水銀やDDTのようにどこかの細胞や臓器に狙って蓄積するということができません。

2023-09-03 16:29:12
神崎星辰 @chiee007

我々は毎日雑多な有機物と無機物を食べてますが、そのうち生物濃縮性があるものはわずかです。塩のNaもブドウ糖も蓄積されません。 生物濃縮とは脂溶性や難分解性など細かな条件を満たした時に発現する性質であり、ただでさえ有機物に入りにくいTがそういう物質になれる確率は極めて低い。

2023-09-03 16:33:45
神崎星辰 @chiee007

ちなみに放射性セシウムも、汚染された魚をきれいな水で育てたら観測限界以下まで抜けていきます。CsにはHgのようにタンパク質への結合能がないためです。 逆に、放射性ストロンチウムはCaと同様に骨を構成するため蓄積されます。

2023-09-03 16:45:37
神崎星辰 @chiee007

このように生物濃縮は分子やイオンの生化学的性質に強く依存するので、生物は水素で出来てるから三重水素なら取り込まれるはず、みたいな乱暴な話ではないのです。

2023-09-03 16:47:45
神崎星辰 @chiee007

濃縮されなくても取り込まれる可能性自体はあるんだろ?という人もいらっしゃるでしょう。 毒性は濃度と毒性の掛け算です。 皆さんが食べているマグロにも水銀が入ってます妊婦でもない限り神経質になる必要がないのと同じです。

2023-09-03 20:52:23
神崎星辰 @chiee007

ちなみにトリチウムは有史以前から自然に存在するものです。太陽から降り注ぐ中性子線が大気中の酸素や窒素に当たって生成しており、この量は7京ベクレル/年。 このため100京ベクレルほどが世界(ほとんど海)に溜まってます。 そのため、我々の身体にも10ベクレルほどのトリチウムが存在します。

2023-09-03 21:01:12
神崎星辰 @chiee007

10ベクレルのトリチウムは28fg(フェムトグラム)であり、fgは1兆分の1mgです。 ちなみに最もありふれた放射性物質のカリウム40は体内に4000ベクレル(2.5g)入っており、カリウムの前にトリチウムは亡きも同然です。

2023-09-03 21:11:47

福島の魚よりもバナナの方が放射能がたくさん入っている

神崎星辰 @chiee007

美味しいバナナを一本食べるとカリウム豊富なので20ベクレルで、体内全てのトリチウムの2倍量入ってきます。 つまりトリチウム検出限界以下の福島の魚なんかよりバナナはたくさん放射能が入ってますが、皆さん気にして生きてきたでしょうかね。

2023-09-03 21:17:49
神崎星辰 @chiee007

ちなみに木の年輪に大昔のトリチウム比が保存されるかはこちらを参照 twitter.com/chiee007/statu…

2023-09-03 22:03:04
神崎星辰 @chiee007

@miyadai ちなみに、樹木の内部は基本的に死細胞で出来ていて、生きているのは1番外側だけなんですね。代謝自体してないので、大気圏内核実験時代の同位体比が保存されています。C14年代測定で死んだ年がわかるのと同じ理屈。 全体が生きている魚などで同じことが起こる可能性は低いでしょう。

2023-09-03 10:27:54
神崎星辰 @chiee007

バナナのKも、食べた分だけ尿から排出されて体内濃度は一定なのでずっと溜まっていくことはなく実際は問題ありません。トリチウムも同じこと。 DNAも日々修復されます。 生物の恒常性は思っている以上に堅牢です。生物はある程度の毒物(酸素含む)、放射性物質などとの共存を前提にできています。

2023-09-03 22:28:42

結び

神崎星辰 @chiee007

炭水化物と塩分と脂肪の摂りすぎを戒め、酒は控えめタバコをやめ、睡眠をしっかりとり、定期的に癌マーカー検査と人間ドックを受けてください。 車は後席でもシートベルト。自転車もヘルメット。 悩みを相談できるパートナーを見つけてください。 トリチウムはそれより人生に重要ではありません。 以上

2023-09-03 22:48:01

関連ツイート

Nakajima @shi122geometry

復興庁FAQ頁から トリチウムは大部分が水の状態で存在、体内で蓄積濃縮されないことを確認。 トリチウム水として体内に入った場合は新陳代謝により10日程度、たんぱく質など有機物に結合した有機結合型トリチウムが体内に入った場合でも多くは40日程度で半分が排出され、最終的には全てが排出(下へ) twitter.com/miyadai/status… pic.twitter.com/1UZaNh6r0J

2023-09-02 10:40:59

もっと詳しく知りたい方用

神崎星辰 @chiee007

予想外に反響が大きいので、もっと詳しく知りたい方用に書きます。 基本的に環境に放出された物質はエントロピー増大の法則に従って拡散するのが普通と言えます。濃縮されるのはそれに抗う仕掛けがあるのです。

2023-09-04 10:38:41
神崎星辰 @chiee007

例えば水銀なら硫黄系アミノ酸との結合能、PCBなど多くの疎水性難分解性物質は疎水性相互作用などです。 放射性ストロンチウムやヨウ素なら生体がエネルギーを投入して特定部位にわざわざ集めてます。

2023-09-04 10:41:14
まとめたひと
沖みら @okimira_jp

変えられないのは過去と他人、変えられるのは未来と自分。 沖縄県の課題を検証し、基地問題だけではない未来指向の提言を行っていく事を目指して、県内外の有志数名が運営しています。フォローよろしくお願い致します。