車椅子テニスで使われている車椅子について解説「1500万円のものを使っている選手に35万円で勝った選手がいる」

ねξび @nevi34x

あーこれ、車椅子テニスの話っぽいな。1500万円の車椅子っていうから、たぶん対比されてたのはフランスのウデさんでしょう？ これ車椅子スポーツの面白裏話が詰まってるので解説を試みます。わたし競技用車椅子チョットワカル。 番組本編は見たかったけどテレビないので的外れてたらすみませんね。 twitter.com/howaseiki/stat…

あの豊和精機製作所 @HowaSeiki

さっきNHK観てて、パラ競技での車椅子、1500万円の車椅子を使っている外国人選手に35万円の車椅子で勝った！日本は安く車椅子が手に入れられて素晴らしい！　って言ってたんだけど、車椅子職人の手間を同番組内で観て、同じ職人として意見だけど、職人さんの給料が安すぎるんじゃないのか？　＃NHK　＃有吉のお金発見

2023-08-19 21:01:45

あの豊和精機製作所 @HowaSeiki

さっきNHK観てて、パラ競技での車椅子、1500万円の車椅子を使っている外国人選手に35万円の車椅子で勝った！日本は安く車椅子が手に入れられて素晴らしい！　って言ってたんだけど、車椅子職人の手間を同番組内で観て、同じ職人として意見だけど、職人さんの給料が安すぎるんじゃないのか？　＃NHK　＃有吉のお金発見

ねξび @nevi34x

どことは言いませんがある車椅子メーカの給与が安いのはマジで、それを理由に退職した職人を知ってます。新卒採用から40手前までほとんど給料上がらなかったとか。

ねξび @nevi34x

もとい、もともとパラスポーツはリハビリや健康増進を目的に戦後始まりました。WW2の負傷兵向けにイギリスのストークマンデビル病院で始まった入院患者のスポーツ大会を嚆矢にしたリハビリ・市民スポーツの文脈と、専業アスリートが食っていけるプロスポーツとして文脈と2つが混じっているのが近年

ねξび @nevi34x

の姿です。最初は日常生活を過ごす車いすでそのまま競技をしていましたが、日常用車いすって室内を通れる幅で作るので、激しい運動すると簡単に転びます。競技種目が増えて、運動強度もあがるにつれて徐々に種目専用車いすが作られて、ここ30年くらいで現在の各種目専用車いすが形作られました。

ねξび @nevi34x

で、当然パラスポーツなので選手は何らかの身体傷害を抱えています。見た目に分かりやすい手足の欠損もあれば、力が入らないとか、感覚がないとか、視覚障害、精神、いろんな人が参加できます。極端なことを言うと全く同じ障害の人は居ないので、大会で成績を競うにあたってハンデをつけます。

ねξび @nevi34x

競技によって統括団体が違うので、パラリンピック種目でもクラス分けやハンデのつけ方はマチマチなんですけど、車いすテニスって中でもザックリしてて「ラケットを自力で握れるか、握れないか」の2クラスしかないんです。1クラスにいろんな障害の選手がいるので、当然有利不利がでます。

ねξび @nevi34x

健常者のスポーツだと「恵まれた体格」と同様に「恵まれた障害」みたいなものが存在して、正直なところ選手の努力で不利をひっくり返せない事も多いです。 で、近年パラスポーツ自体にも注目が集まって、成績が良い選手はスポンサーがついてプロアスリートとして食えるようになりました。

ねξび @nevi34x

企業がスポンサーにつく場合は広報・CSR活動の一環なことが多く、スポンサーマネーで開発された高額な専用車いすがどんどん登場したのがここ15年くらいでしょうか。 この高額機材を使う実績あるプロ選手と、市民スポーツの中で芽が出た自腹の選手が混在してるせいで価格差が目立ってるんですよね。

ねξび @nevi34x

んで、ここがパラスポーツ、特に車いす種目の面白いところなんですけど、機材が高けりゃ好成績が出るわけじゃないんですよ。選手が障害と機材をうまく使えば、自腹の安いエントリーモデルに座って、開発費1000万円オーバーの選手専用最新車いすのプロ選手をやっつける事も珍しくありません。

ねξび @nevi34x

車いす陸上で例えると、国内トップクラス選手でも使う車いすは市販品でも40万円くらいのアルミフレームから300万円のカーボンフレーム、開発費不明の専用品まで幅がありますが、スゲーのに乗る前の安い方が正直成績出てたんじゃ…って選手も普通にいます。車いすとのマッチングが悪いと苦しいんですわ

ねξび @nevi34x

金属パイプの溶接品が主だった競技用車いすにもカーボン製品が登場して高額化が一気に進みました。選手にぴったり合わせるために型から一品モノを起こすわけですが、数が出ない上に競技用車いすはだいたい高剛性を求めるのでカーボンだとモノコック構造になって型もデカい。組立も大変です。

ねξび @nevi34x

とまあ、ハイエンド製品は開発も製造も大変なので300万円オーバーの販売価格でも作る側は赤字なことも多く、1500万円の車いすと聞いても開発経緯を聞けば、まあそのくらい欲しいよな、ってなることも多いんじゃないでしょうか。

ねξび @nevi34x

さて、車いすテニスに話を戻しましょう。車いすは健常者と違って真横に移動できないので、車いすテニスは基本的にコート内で延々と車いすを走らせて球を追います。ネット間際から相手に背を向けて加速して、球の来た方に旋回、勢いを殺さず打ち返すと同時にターンして、またネットに戻るの繰り返しです

ねξび @nevi34x

高額なテニス用車いすを使ってて有名なのはフランスのステファン・ウデ選手ですが、片足を切断していますが体幹の筋肉は健常者と変わりません。これ車いすテニスではとても有利で、車いすの上で屈んだり大きく仰け反れます。ラケットの守備範囲が滅茶苦茶広いです。 parasapo.tokyo/super-athletes…

ねξび @nevi34x

通常のテニス用車いす、というかスポーツ用車いす全般に患者の多い脊髄損傷向けに作られる傾向があり、体幹が効かなくても座った姿勢を維持できるように作ります。するとウデ選手みたいな上半身を振り回す能力が活かせません。ある意味、機材難民だったんじゃないでしょうか babolat.com/jp/heroes-play…

ねξび @nevi34x

ウデ選手の車いすは高額で知られますが、ほぼ正座で座る変わった構造に、足の断端も車いすにハメて「絶対に転ばない車輪付きの義足」とも言えそうな作りをしてます。自身の障害特性に合わせ、車いすを含めた激しい全身運動ができるよう軽量高剛性に作ったら高額になってしまったってのが私の見立てです

ねξび @nevi34x

なおウデ選手の車いすが登場して以来「車いすとしてこの構造はどうなんだ」、「座ってないやろ」、「メカニカルドーピングじゃないか」って議論は当然起こり、ウデ選手側もシート（尻当て板って感じですが）から尻が離れないように改良して対応した経緯があります。正直、この手の議論は尽きません。

ねξび @nevi34x

一応、多くの車いす種目では「使用機材はだれもが購入可能で、極端に高額でない事」が求められますが、ある身体特性に高度に対応した車いすは特殊過ぎてそもそも購入希望者が他にいない事があり、この点を突いて特定選手専用っぽい機材がしばしば競技に現れます。でも成績が出るかっていうと別です。

ねξび @nevi34x

カーボン製品が増えるにつれて扱いに長けた自動車メーカーとかが開発に参入してきました。開発自体に社会貢献や社員の育成、CSR的な意味を見出して機材販売で到底回収不能な開発予算がついて…っての向こうに回して35万円の車いすで練習しまくって勝つのは番組になるだけのロマンあるよ、っていう。

ねξび @nevi34x

ただ、現在の車いすも長い年月の間に誰かが良いものを作ろうと変わったものを作り、うまく行くとみんなが真似て、また誰かが違う工夫をし…を繰り返し今の形になりました。カーボンが入ってこのトライのコストが大きく上がってしまいましたが、高すぎ！ずるい！で一緒くたに否定するのも、どうかなあ…