バイオテック・イズ・チュパカブラ #5
(あらすじ:タマチャン・ジャングルで水牛ミューティレーション事件が多発。調査に乗り出したニンジャスレイヤーとナンシーは、ヨロシサン製薬のクローンニンジャ研究所を発見。所長のマキモノを読んでいたナンシーのもとへ、何者かが忍び寄る……。謎のUMAニンジャ、チュパカブラであろうか!?)
2011-04-23 23:19:57「アイ、アイエエエエエエエエエエエ!」ナンシーは絶叫しながら、最大出力のサイバーマグで斜め前方の天井を照らす! 天井を這い進んでくる奇怪な灰色の影! ニンジャ装束か? あるいはぼろ衣か?! いずれにせよ、ナンシーのニューロンは恐怖のあまり、それを正しく認識することは出来なかった!
2011-04-23 23:31:04だが、ナンシーに危害は及ばなかった。同時に、人間のものともニンジャのものともつかぬ奇怪な叫び声が上がったのだ! 最大光量にひるんだのか、灰色の影はどさりとナンシーの前方3メートルの場所に落ち、一瞬のたうち回った後、バイオモンキーのように飛び跳ねてナンシーの視界から消えた!
2011-04-23 23:38:34「ハァーッ! ハァーッ!」ナンシーは目を剥き、今にも心臓を吐き出しそうなほど息を荒げていた。胸の谷間が緊張でじっとりと汗ばむ! 室内は依然として暗い。灯りは手元のサイバーマグだけ。ナンシーはサイバーマグを持つ手にカラテ探知器の端末を持ち、左手で腰に吊ったオートマチック拳銃を抜く。
2011-04-23 23:41:30(((やはり敵は夜行性のニンジャね。恐らく、同じ手は二度通用しないはず。次は銃弾を!)))ナンシーは冷静に次の作戦を練る。だが彼女の手は恐怖に呑まれ、小さく揺れ始めていた。精神と肉体のバランスが崩れている。両手が塞がっていなければザゼンを服用できただろうが、この状況では不可能!
2011-04-23 23:51:15左手から物音! 「ヒッ!」ナンシーが息の詰まるような声を吐きながら部屋の隅を照らすが、敵の影はない。その代わりに、放り投げられたと思しき水牛の頭蓋骨がカランカランとなっていた。「フェイント? そんな!」ナンシーは右手の暗闇へと素早くライトと銃口を向けなおす! だが遅い!
2011-04-24 00:01:42BLAM! BLAM! BLAM! サイバーマグライトが飛び掛ってくる影を照らすと同時に、ナンシーはほとんど無意識のうちにオートマチック銃のトリガーを引く! ナンシーは肩口から腰までを斜めに斬りつけられたうえに体当たりを喰らい、もんどりうって倒れた!
2011-04-24 00:11:28ナムサン! ナンシーは死を覚悟した! だがサンズ・リヴァーにはまだ早い! チュパカブラは銃声に驚いたのか、ナンシーから飛びのいて、再び部屋の闇の中に姿を消したのだ。切り裂かれて床に落ちたのは、PVCコートとスーツのみ。出血は頬と肩口からごく僅か。スポーティなブラの色は銀だった。
2011-04-24 00:19:27「ハァーッ! ハァーッ!」部屋の隅を背にしたナンシーは、再び銃とライトを構え敵の位置を探る。カラテ反応はあるが場所が定まらない。まるで、無数の冷凍マグロが吊るされた暗いコンテナを舞台に、凶悪なチェーンソーを持ったツキジ・ブッチャーと死のハイド&シークを繰り広げているようなものだ。
2011-04-24 00:27:49恐怖でニューロンがチリチリいい始めた。カラテ探知機のパトランプが狂ったように回転する。『重点! 重点!』と電子合成された絶叫マイコ音声が鳴った! 『500メガカラテ突破! 重点!』 対角線上の部屋の隅に、背中の丸まった人影と発光する奇怪な眼! ナンシーは闇雲に銃のトリガを引いた!
2011-04-24 00:35:53「CHULHULHULHULHULHULHU!!」チュパカブラが発する、超自然的な金切り声! BLAM! BLAM! BLAM! ナンシーが放つ銃弾の雨! だが前傾姿勢を取ったチュパカブラは、ナンシーの放った弾丸全てを、反復横飛びめいた非人間的高速ステップで回避した! コワイ!
2011-04-24 00:47:08カラン、カランと最後の一発の薬莢が課長室の床板に落ちて転がった。「CHULHULHULHULHU!!」全身をぼろ衣かニンジャ装束のようなもので包んだチュパカブラは、ナンシーの努力を嘲笑うかのようにその場で高速反復横とびを繰り返す! そしてナンシーめがけて一直線に駆け込んできた!
2011-04-24 00:55:430010101010111101……。極度に分泌されたアドレナリンが、ナンシーの疲弊したニューロンをブーストする。全てがスローモーションに見えた。それから奇妙な現象が起こった。脳内に、視覚とは異なる別の映像が浮かんだ。部屋の中心を軸にして、見えないカメラが回転しているかのような。
2011-04-24 01:07:21(((何? とうとう私のニューロンが焼き切れたの? 酷使したものね、薬物に、直結に)))スローモーションでチュパカブラが駆け込んでくる。カメラが回転。絶叫する自分の顔が見える。回転。チュパカブラが着ているのは、ぼろぼろになった白衣のようだ。胸に薄汚れたバッジらしきものが見える。
2011-04-24 01:13:07さらにカメラは回転。ナンシーは弾切れにもかかわらずトリガを引き続けている。(((私、何をしているの? 攻撃をかわさなくちゃ)))しかしニューロン内の思考だけが超高速で行われ、彼女の肉体はまるで言うことをきかない。マッポー的タイムラグに見舞われたサイバーIRCショウギのように重い。
2011-04-24 01:21:18ナンシーの心……いや、ニューロンに、もはや恐怖は無かった。彼女は悟っていたからだ。まるで能天使から力天使となるように、自分が今ハッカーとして新たな位階へ昇ろうとしていることを。だが、おお、ナムアミダブツ! それとほぼ同時に、自らのニューロンが怪物の手で破壊されんとしていることを!
2011-04-24 01:50:16そう思うと、ナンシーのニューロンは泣いていた。恐怖のためではなく、口惜しさのために。(((嫌よ! 認めないわ! 死にたくない! 死ぬわけにはいかない! まだ私には成すべきことがあるのよ!)))
2011-04-24 02:01:20だが肉体は動かない。脳内映像だけが無慈悲なスローモーションと回転を続ける。ああ、ナムサン! 覚醒しかけた力の使い方も解らぬまま死ぬのか? 絶望が彼女のニューロンを支配しかけた、まさにその時! 鋼鉄メンポの鋭い輝きが闇を切り裂き、課長室に赤黒いニンジャ装束の男が飛び込んできたのだ!
2011-04-24 02:04:39「Wasshoi!!!!」課長室の戸口から現れたニンジャスレイヤーは、パトリオットミサイルめいたトビゲリを繰り出し、ナンシーに飛びかかるチュパカブラを撃墜した! ゴウランガ! 弾き飛ばれ壁に叩きつけられた怪物は、苦痛の呻き声を洩らす!「CHULHULHULHULHUUUU!」
2011-04-24 02:14:19「ドーモ、チュパカブラ=サン、ニンジャスレイヤーです」課長机の上に着地したニンジャスレイヤーが敵にアイサツを繰り出す。すると、素早く立ち上がったチュパカブラも、奇声とオジギで反射的にこれにこたえた! ナンシーは息を呑む。チュパカブラがニンジャソウル憑依者である新たな証拠の一つだ!
2011-04-24 02:23:18「イヤーッ!」気勢とともにニンジャスレイヤーの右腕がムチのようにしなり、目にも止まらぬ速さで2枚のスリケンが射出される! だがチュパカブラは、ニンジャスレイヤーの放ったスリケン全てを、反復横飛びめいた非人間的高速ステップで回避した! コワイ!
2011-04-24 02:25:26「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの殺人的カラテ! だがチュパカブラも素早いバク転とカラテでこれに応戦。両手でトーキックを上下から掴み、コマを回すように激しく左右に引いた! 「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーの体が浮き、水平状態で回転する! バランスを崩しながら片膝立ちでの着地!
2011-04-24 22:58:16「CHULHULHULHULHUUU!!」チュパカブラは獲物を狩るバイオモンキーのようにパウンスし、組み付いてくる! 「グワーッ!」ニンジャスレイヤーの肩に激痛が走った! ニンジャ頭巾に隠された長い嘴のような器官が、ニンジャスレイヤーの左肩に突き刺さり、血を吸い上げていたのだ!
2011-04-24 23:08:36難病(全身性エリテマトーデスと抗リン脂質抗体症候群)を発症してしまい、現在活動休止中です。(2016 年春~) ニンジャヘッズ(ニンジャスレイヤー中毒者)です。 人々の日々の生活クオリティを向上させるために、サイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」の普及活動を行っています。