「アマチュア小説には自販機から少し離れた場所での会話が高確率で出現する」作家・津原泰水先生からの指摘とアドバイス

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津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

拝読した原稿で、如何にもアマチュア、でも云われないと気付かないよな、と思った一点。不要な「彼女にはある秘密があった」や思わせぶり会話文の後、種明かしを中盤、下手をするとラストまで引っ張り、それを引き(魅き)だと思っている。読者の期待は引っ張った距離の二乗なので、99%落胆を生む。

2017-04-02 11:13:49
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

アマチュアの小説作品には、自販機からすこし離れた場所で「何か買ってきてあげるよ。珈琲でいい? それとも紅茶?」「じゃあ紅茶」「分かった」と云い交わし、本当に紅茶を買ってくる場面が、異様な迄の高確率で出現する。そして100%、筋立てには無関係である。宗教なのか?

2017-04-02 14:27:22
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

どんな汚い手を使ってでも作家デビューしたい君に朗報。作品を成立させるうえで不可欠だが、どうしても書き方が分からない場面は、書くな。書いたつもりで平然と残りを仕上げてください。必ず審査員か編集者が「ここ、こんな場面が入ってた筈だが」と最短ルートを教えてくれる。その方がお互いの為だ。

2017-04-02 14:51:53
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

「何か買ってきてあげるよ」の話や、書き方が分からん場面は書くな、をツイートをしたのは、マニュアル文化の歪みとでも申しましょうか、「こう書けばデビューできる」の方程式を信じて、本当に実行しているアマチュアが余りにも多過ぎるような気がして。でも免許じゃないですから。

2017-04-03 02:05:11
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

左折は出来ても右折の出来ない人が自動車の免許を取れるってあり得ないけど、小説に正しい曲り方は存在しない、寧ろありがちな曲り方こそ欠点と見做されるので、三回左折して右へ行くのが得意なんだったら、矯正したら大損どころか致命傷。模範的で、既視感のある原稿が、最もデビューに縁遠い。

2017-04-03 02:27:58
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

「よくプロも書いてるこういう場面、必要なんだろうな」という動機から書かれた場面が読み手に伝えるのは、そのまんまの気分なんですよ。「押さえてるんだから、ここでの減点は無いですよね」って云われてるようで、僕でも被害者意識にかられる。それが連日の編集さんは顔の半面がひくついてると思う。

2017-04-03 02:51:31
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

少女小説が仕事となった二十代、そんなん読んだ事もなかったから、近場で女学生が多いマクドナルドに出掛けては、隣席の集団からの声に耳を傾けていた。気付いたのは、問→答のやり取りは既に喧嘩の状態であるという事。だから人は無意識に問答を婉曲する。「これ誰の」への答さえ「こっち」等が多い。

2017-04-03 10:50:59
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

「何か買ってきてあげるよ。珈琲でいい?」と小説に書いてしまいがちな人は、自分が過去、その手の科白を発したのは何時か、思い出してみると宜しい。僕は動けない病人にしか云った事がない。「なんか買ってくる。要る?」なら日常的にある。相手が同行の意を示さない場合、次はお金のやり取りとなる。

2017-04-03 11:22:30
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

他人同士のやり取りを本気で聴くと「なんか買ってくる。要る?」「財布置いてきた」「あ、次で。粒入り?」「殺す気か」といった調子で、全く問→答になっていない。だから「問われて初めて渇きを思い出した顔で」「待ち構えていたように」等、地の文で繋ぐ。短篇複数になる程の設定がその背後にある。

2017-04-03 11:54:51
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

最近ラヴラヴな状態となった、共に品が良く察しも良い男女の、高度な会話例を考えてみた。男性、女性の耳許でそっと「もし貴方の鼻毛が覗いていたら、いち早く指摘すべき存在は僕だと思っていて宜しいんですね」「ええ、勿論。なるべく周囲には悟られないよう⋯⋯今なんですね」

2017-04-03 12:29:27
ヤマギシルイ/不知火黄泉彦 @rouis_ymgs

「ちょっと待った」「どうしたの?」「トイレ」。帰ってくると両手に珈琲と紅茶の缶。「どっち?」「いいよ、喉、乾いてないし」「遠慮すんなって」。その後の雑談中に「飲まないの?」「いいから続き話せよ」。帰り際に「やるわ」「え?」「俺、珈琲飲めねえんだよ」……とかなら小説っぽいのかしら。 twitter.com/tsuharayasumi/…

2017-04-03 13:14:06
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

@rouis_ymgs 一つの例え話として。インタビュー録音をそのまま起こして話し手に読ませると、概ね「こんな風には喋っていない」となります。人は次々に記憶を整理してしまうからです。つまりインタビュー原稿にせよ小説にせよ、適切な「時間のトリミング」が必要であり、そのセンス=文才と云って良いでしょう。

2017-04-03 13:38:59
新保博久 @oldmanincorner

@tsuharayasumi 昔こんな文章を書いたことを思い出しました(特に第5条)。『別冊宝島63「ミステリーの友」』(1987年)。30年前は、まだ純喫茶文化が滅びていなかったのですね。その他「原稿用紙」「ワープロ」など瀕死語が散見するのにも感慨ひとしお。 pic.twitter.com/Vk368rsLEu

2017-04-03 21:32:28
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

三十年前に新保教授がほぼ同じ指摘をなさっていたのは、氏が常に「進歩」的だからか、指導者としての僕が凡庸だからか。念のため歴史的背景を註釈しておく。三十年前のミステリ作家志望者はその大半が大学サークル文化に帰属していた。だから喫茶店。今は二次元空間に帰属している。

2017-04-04 03:28:51
きあ @kia_ruruten

昔のアマチュア小説はなぜか喫茶店に入った時の会話の描写が細かく、今のアマチュア小説は自販機で飲み物を買ってきてあげる会話の場面が高確率で出現するという、その理由はわからないけど、喫茶店が自販機に代わってるあたり日本貧しくなった感ある。

2017-04-04 12:33:26
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

紅茶しかなかったと弁解しつつ伏線に仕立てる名(迷)作がありますねぇ! twitter.com/tsuharayasumi/…

2017-04-03 22:26:06
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

@akkiy_ya その作品は未読ですが、筋立てに関わってくる会話ならば、寧ろ「おお、やられた!」となるところです。ミステリ仕立てではなくとも、例えば「買ってきてあげる」と発した男性に対して云われた女性が、この人⋯⋯現実の女性と付き合ったことないんだ、という所感をいだく、であるとか。

2017-04-04 03:33:21
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

ジョーク? という反応が散見されるが、割と冗談でもない。1)作者の思い込みに反し、意外と当該場面は不在のままでも作品が成立してしまう可能性は高い。2)何故か肝心の場面が抜けている、といった変てこりんな投稿作はちっとも珍しくない。その方が退屈の詰合せのような原稿よりも指導し易い。 twitter.com/tsuharayasumi/…

2017-04-04 03:51:28
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

「何か買ってきてあげるよ」RTがなぜこう多いと思っていたら、また「まとめ」になっている事、さっき仕事の電話で教えられた。で「自販機からすこし離れた場所」ですから。せめて一緒に行け、女性同士なら尚更。だってトイレにだって一緒に行くんだぜ? 本当。家に帰って綺麗なお姉さんに訊いてみ。

2017-04-04 21:34:18
まとめたひと
Mogadish @somali_bleu

もふもふと暮らしたいだけの人生です。かわいくてもふもふした生き物やテレビやエンタメなど楽しいことについてまとめたりします。たまに楽しくないこともあるかもしれません。