Case study 事例紹介
事業承継やM&Aの現場を“リアルに伝える”
地上波初のヒューマンドキュメント。
続編やイベントも進行中!
「その灯を消すな!」(テレビ東京)
この事例の担当者
※所属・役職は取材時点の情報
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吉原正浩
テレビ東京 制作局 クリエイティブ制作チーム
テレビ東京報道局にて、記者を経て「
ワールドビジネスサテライト」ディレクター。その後、 編成として「カンブリア宮殿」を担当。 直近まで出向していた日本経済新聞社では、 プロダクトマネージャーとして日経電子版を手掛ける。「 有吉ぃぃeeeee!」「巨大企業の日本改革3.0」「 その灯を消すな!」「アトツギさん!」「 お宅で1番のDXはなんですか?」「広告研究CM募集中講義」 プロデューサー。 -
長友香織
テレビ東京メディアネット 常務取締役 IP事業本部担当 メディア本部担当補佐
テレビ東京営業局に入社の後、イベントやコンテンツ事業など、
昨今注目されるようになった放送外事業部門にて、 ドラマ等の事業投資や配信・ 海外展開などに20年以上にわたり携わる。 BSテレ東編成局を経て2021年より現職。
パートナー企業・自治体ご担当者さま
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齊藤宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 営業企画部 広報課 課長
一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート創業110年を超える実家の米穀・酒販会社で、事業承継M&
Aを経験。2021年M& Aキャピタルパートナーズ株式会社入社後、広報責任者として、 TV番組・CMなどのメディア戦略をはじめ広報業務全体を管掌、 グループ広報の責任者も担う。全国新聞社との「 地域共創プロジェクト」責任者。
目次
- 日本が抱える後継者不足や経済成長といった社会課題に対し、“事業承継”や“M&A”にまつわる番組を放送することは意義があると考え、テレビ東京制作局とテレビ東京メディアネットが共同で企画を開発した。
- M&Aキャピタルパートナーズにとっては、「事業承継」の選択肢のひとつとして第三者承継である“M&A”の認知を世の中に広げることが課題であった。
- 事業承継や事業成長などにより、大切に育てた事業を次のステージに進めた経営者たちの姿を紹介したいという思惑が一致するM&Aキャピタルパートナーズとともに、テレビ東京メディアネットが仲介者となり、テレビ東京が番組をつくる運びとなった。
- M&A動向や事例を共有する勉強会の開催を含め、M&Aキャピタルパートナーズの協力により、「日本を元気にする番組」を企画開発できた。
- “事業承継やM&Aの現場に迫るヒューマンドキュメント”である当番組は、2024年2月4日(日)に第6弾の放送が決まった。
- 同年2月27日(火)には、番組MCの児嶋一哉(アンジャッシュ)やこれまで取材した経営者たちが登壇する、体験型のイベントを開催する。
- 伝説のジャズバー「SHIRAI HOUSE」(福井県)の事業承継に密着した放送回では、ビジネス視点の内容はもとよりその人間ドラマが大きな反響を呼び、高い視聴率を獲得できた。
- 経営者への認知が広まっており、M&AキャピタルパートナーズのM&Aアドバイザーがクライアントと接する際など、番組の存在が活きる場面が増えてきた。
- 番組販売を手掛けるテレビ東京メディアネットとの共同企画だからこそ、全国での放送につながり、事業承継やM&Aの意義を日本中へ伝えられた。
経緯
“後継者不在問題”という社会課題に対し、「メディアができること」を模索する中で縁が生まれた
長友:
テレビ東京制作局と企画を進めたのは、2021年秋頃からでしたね。日本の全事業者の実に99.7%が中小企業であり、中小企業・小規模事業者を合わせると当時約360万者もいた中、年々進む経営者の高齢化に対し6割もの事業者が後継者未定といわれていました。一方、休廃業や解散をする企業は毎年数多いものの、実はその過半数が「黒字廃業」であるとも指摘されていました。2025年までに経営者245万人が70歳を超え、その約半数が後継者不足になると中小企業庁が発表(2019年時点)しています。このままでは、日本にとって計り知れない損失になると危機感を持ちました。
テレ東グループは、放送局として中小企業やそこで働く人々を応援するミッションがあるといいましょうか。中小企業を“日本経済を活性化するための屋台骨”と位置づけており、彼らに対して事態の深刻さを共有した上で、有益な情報を届ける番組が必要だと考えたのが、そもそもの始まりです。
グループとして、そうした社会課題へどのように取り組んでいくかを考える中で、M&Aキャピタルパートナーズ(以下、MACP)さんとは紹介でご縁ができました。M&Aは課題解決を図る一つの手法で、色々なやり方があります。齊藤さんたちが取り組まれている「第三者に事業を承継する」視点を伺い、目的が私たちと一緒だと思いました。そこから半年間に渡りMACPさん・テレ東制作局・テレ東メディアネットで企画の検討を進め、2022年10月2日(日)の「THE 事業承継 その灯を消すな!」(以下、その灯を消すな!)の初回放送に至りました。
吉原:
我々・制作局クリエイティブ制作チームは、まさにそのような社会課題に対し、“メディアとしてどのようにアプローチしていくか”を企画にする部署です。私もそうした状況は報道などで見聞きしていましたが、「解決の糸口なんてあるのか」と半信半疑な面もありました。ただ今回、齊藤さんから色々な資料を頂戴したり業界の動向を教えてもらったりして、実態を理解していくうちに「おもしろい」と感じ始めて。“解決の術を番組で示せるかもしれない”というビジョンを持ちました。
齊藤:
事業承継の選択肢のひとつとして、“M&A”の認知を拡大させることが一番の課題でした。M&Aには、特に2000年代初頭にドラマの影響などで後ろ向きなイメージが根付いてしまった状況があり、セミナーなどで全国各地を訪れるほど、誤った認知をされていると実感します。ただ本来のM&Aは友好的な形がほとんどで、世間のイメージとまったく違うのです。M&Aや事業承継の本来のイメージを広める点で、テレ東グループさんとの取り組みの意義はかなり大きいと感じていました。
MACPとしてテレビCMを放送している「WBS(ワールドビジネスサテライト)」「Newsモーニングサテライト(モーサテ)」「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」などの報道番組はもちろん、私個人としてもテレ東さんの番組はよく拝見しています。一番好きなのはサッカー番組の「FOOT×BRAIN」です。サッカーについて単純に伝えるのではなく、経営や経済のような“テレ東らしい”観点もあるのが大好きですね。それ以外にも、実はプライベートで「家、ついて行ってイイですか?」に4回ほど取材を受けたこともあるんです。残念ながら自宅の撮影はお断りになってしまいましたが…。
取り組み
第6弾放送&イベント開催決定!事業承継やM&Aの実態を伝える「ショーケース」で“日本を元気に”
吉原:
社会の問題を“いかに自分ごととして引き直せるか、その解決を示せるか”が、「その灯を消すな!」の肝だと思います。「マクロな課題の解決策はミクロなところにもあるかもしれない」という仮説を持っていて。身の回りの後継者不足という課題から、“日本を元気に”という大きな課題へアプローチできると思っているんです。2024年2月4日(日)の第6弾放送を控え…確かな手ごたえがあります。テレ東のパーパスではありませんが、“ちょっといい明日のために”なるヒントが詰まっていて、様々な立場の人の生活を応援する目線があることが、番組が続いた秘訣ではないでしょうか。制作としては、齊藤さんたちと勉強会を開いてM&Aのトレンドをわかりやすく教えてもらうなど、常に情報をアップデートする取り組みをできたことも大きいです。そうした機会に得られた数々の事例が、多くの学びへ繋がりました。
番組を「ショーケース」にしたかったんですよね。事業承継やM&Aには、自分たちから遠いイメージがあるかもしれませんが、実は身近なところにも多くあり、誰でも当事者になり得る点がおもしろいと私は考えています。事業承継で解決できる、身の回りの社会課題へ目を向けてほしいという気持ちを込め、タイトルを「その灯を消すな!」としました。「知り合いに関係する話だ」「あの店を自分が継げるかもしれない」といった、気づきを生むと思うんです。
長友:
テレ東グループならではだと思うのは、“この人はバラエティー/報道”みたいな縦割りや区分けがない点です。「知識や経験をどのように活かすか」を大事にする雰囲気があり、MACPさんのような協力先も巻き込んで一緒に考える文化を持つのが、我々のポイントではないでしょうか。
また、「その灯を消すな!」が第6弾まで続いたのは、事例の豊富さが大きいと思います。日本には300万者以上も中小企業があるので当然ですが、関係者のパーソナリティーや抱える事情は千差万別で、1つとして同じものがない「ドラマ」なんです。遠い世界ではなく“日常”だから、どの話にも感情移入できる。事業の灯を消さない…むしろ、さらに燃え上がっている前向きなケースなど無数のドラマがある。制作としても、取材させていただく上でマンネリ化の心配もなく、「何年も続けられる」が正直なところです。
齊藤:
テレ東さんの特長として、二つ大きなものを私は感じています。一つ目は、視聴者にビジネスパーソンが多い点です。報道番組で特に感じますね。朝一番でグローバルなマーケットを確認する金融パーソンが多く見ている「モーサテ」のすごさを最近は感じています。二つ目は、企画力です。取材で話した事例が「このような感じになるのか!」と、視聴者目線で感動しています。“見せ方”が上手いといいますか、私たちが考えるレベルとまったく違うのです。
2024年2月には、第6弾の放送だけでなく番組の認知度をさらに高めていくためにイベントの準備もしています。番組で紹介したオーナーや経営者のみなさまが登壇してくださる内容で、事業承継やM&Aについて、オフラインで改めて認知してもらえる機会になればと考えています。
反響・効果
視聴率もSNSの反響も好調!“テレ東Gの文化×番組販売体制”で、日本中におもしろさを伝えられた
齊藤:
そこまで企画が広がった背景には、先ほどの“見せ方”はもちろん、番組への反響の高さがあります。SNSを私がチェックする限り、ネガティブな感想が全くなくてすごいなと思いました。また視聴率のよさも挙げられます。福井県のジャズバーの事例を第1話で紹介した経緯で、テレ東の系列局がない福井でも放送いただいたんです。社長の輩出率ランキングで1位になることもあるエリアで、とてつもない数字が出て本当に驚きました。M&Aアドバイザーがお客さまと接する際に話題に出るなど、社内外のさまざまな場面で番組の評判や成果を感じています。番組のコンテンツ力を基にしながら、時世やトレンドまで反映できる事業承継やM&Aの事例を、今後もテレ東グループさんと紹介していきたいです。
長友:
本来、経済やビジネス系の番組には都市型のイメージがあるのではないでしょうか。でも「事業承継」は “首都圏だから” “事業主だから”ではなく、どなたにとっても自分ごとであり、地方を含む日本中が直面している課題なのです。今回、そこへ1つのソリューションを示す番組が、実際に作れたと感じています。「おもしろかった」だけでなく、「励まされた」「知りませんでした」との感想も多いです。地方でも放送することで、日本中におもしろさを伝えられたのは、テレ東メディアネットの強みが活かせた部分だと考えています。
もう一つ。放送局のグループ会社で、しかも特有の文化を持つ「テレ東」の傘下という立ち位置もメディアネットの特長だと思います。作り手と他部門の人の“距離”が近いんですよね。外部エージェンシーさんでは難しいと思います。視聴者のみなさまやサポートしてくださる広告主さま、制作に協力してくださる事業者さまに喜んでもらえるものがつくれるか、日々議論しています。そこはグループとしてのよさではないでしょうか。
さらに、今回メディアネットが果たせた役割として、広報だけでなく、本来なかなか連携が難しいMACPの社員さんとも近い距離でやりとりができた点が挙げられると思います。専門知識や現場の状況などを全体で学ばせていただきながら、「いいもの」をつくっていく関係を築けました。
吉原:
業界研究はかなり進みましたね。「物流の2024年問題」や「医療人材不足」のような専門分野についても勉強会で知識を深める中で、自分ごととして取り上げるおもしろさが膨らんでいったと感じています。齊藤さんたちとテレ東メディアネットと一緒に企画について議論することで、制作の幅が広がった点に感謝しています。
テレ東と だからできること
ヒューマンドキュメントという、独自の切り口の成功例!
テレ東Gはまだまだ成長中!
吉原:
ヒューマンドキュメントの切り口で、事業承継やM&Aの実態を“おもしろく”伝えられたのは、今回「できたこと」として大きいと感じています。番組で取り上げた内容を入口とし、さらに密着した人の経営手腕や成功体験まで打ち出そうと進めている企画が、今回リアル開催するイベントです。そうした展開で、コンテンツやIPが副次的に広がり始めていると感じています。まだまだスケールできる余地があると思っているので、齊藤さんや長友さんと挑戦を続けていきたいです。
長友:
報道/バラエティーのような縦割りや区分けをせず、ジャンルを越えて融合できるのは、テレ東だからできた…テレ東でないとできなかったことではないかなと思います。「その灯を消すな!」も、報道目線だけで制作したらもっと“堅い番組”になっていたと思うんです。
また、できつつあるといいましょうか…今もテレ東グループは成長している最中だと感じます。取材や勉強会を通じ、関わる人たちの知識や制作のレベルが確実に高まってきていて。だからこそ、番組も第6弾放送やイベント開催までバリエーションを広げられたのだと思います。日本にはまだ「その灯を消すな!」で取り上げられる事例が多くあり、企画は現状がゴールではありません!