Case study 事例紹介
テレ東Gとの包括連携協定で“シティプロモーション”を強力推進。移住者人気ランキング全国1位に貢献!
テレビ東京ダイレクト
この事例の担当者
※所属・役職は取材時点の情報
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山田直樹
テレビ東京ダイレクト
コンテンツ戦略本部 事業開発部
地域連携事業チーム リーダー
「地域にエール!まちカケル」プロデューサーテレビ東京に入社後、
営業局などを経て2022年にテレビ東京ダイレクトへ出向。
地域連携事業のチームリーダー、地域創生番組「地域にエール!まちカケル」プロデューサーとして
伊那市をはじめとした自治体のシティプロモーションや地域活性化事業を手掛ける。
2024年より地域連携事業部長、新番組「いいね!じゃぱん」プロデューサーを務める。 -
新井光
株式会社イージーメディア 代表取締役
テレビ東京ダイレクト
地域連携事業チーム 地域創生プロジェクト
兼 海と日本プロジェクト 担当テレビ番組制作会社のAPを経て独立。
テレビ東京グループではWEB黎明期から番組公式WEBサイトや ケータイコンテンツ制作受託にてキャリアをスタートし、「 厳選いい宿」での旅事業への参画をきっかけに、 2017年から地域創生事業を手掛け、長野県伊那市、 岩手県八幡平市、 山口県岩国市との包括連携協定に基づくシティプロモーションや地 域活性事業のプロジェクトマネージメントを担務。
パートナー企業・自治体ご担当者さま
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池上政史
伊那市 総務部
秘書広報課長補佐 兼 広報広聴係長市の広報業務を担当。
市内外に向けたシティプロモーション業務を担い、 伊那市の魅力発信に努めている。
令和2年からはテレビ東京ダイレクトと地方創生の推進に向けた包括連携協定を締結する。
目次
- 伊那市はドローンによる配送サービスやAIを活用したタクシー配車のシステムなど、地方自治体として先進的な施策を多数行っており、テレビ東京はこれまでも伊那市側から度々情報提供を受けながら多くの番組を制作してきた。
- 「ハーフタイムツアーズ」などの旅番組でテレ東が実施していた、紹介したツアーの通信販売までを行い、誘客までつなげていく独自のスキームを知った伊那市側が関心を持ち、テレ東グループへ飛び込みで相談を持ちかけた。
- テレ東グループとしては初となる自治体との包括連携協定を伊那市と締結し、地域創生の推進に向けた取り組みが本格化した。
- テレ東が番組で行っていた「移住体験ツアー」の企画を、移住の促進に課題を抱えていた伊那市へ提案し、より有効な設計をもとに実施した。
- 伊那市の日本酒を使ったオリジナル商品を開発して全国で販売した。その後、ふるさと納税の返礼品としても採用され、地域から商品を広く展開していった。
- テレ東ダイレクトのコールセンターを伊那市内の保育園跡地に建設することで、遊休地の利活用や雇用創出といった形で、地域の課題解決にも貢献した。
- 伊那市自体の認知が高まり、まさにBSテレ東が番組で放送した伊那市の特集を視聴したことが、実際に移住を具体的に検討し出したきっかけであるという移住希望者まで現れた。
- テレ東とのタッグでシティプロモーションを進めた影響もあり、大手移住メディアの発表する市区町村・都道府県の移住者人気ランキングで、伊那市が2023年度上半期と2022年度年間の「全国1位」を獲得した。
- 伊那市が様々なメディアで取り上げられる機会が以前より増え、地域で生活する市民からも、好意的な声が多く寄せられるようになった。
経緯
「着地型・体験型旅行」を切り口にした
番組制作&販売マーケティングが、伊那市の目に留まる
山田:
テレビ東京としては、これまでも伊那市について番組で取り上げる機会が多くありましたが、テレビ東京ダイレクトとしての縁が深まったのは、2018年に池上さんが連絡をくださったのが最初のご縁です。テレビ東京は、現在放送中の「ハーフタイムツアーズ」のような、ツアーや宿を番組で紹介するだけでなく、テーマに合わせたツアーの販売や宿への問い合わせなどを一貫してできるようなスキームを当時から実施していて。池上さんが関心を持ってくださったのも、そのような点だったと聞いています。
池上:
秘書広報課に異動して1年目で、県内外への伊那市の魅力の発信に悩んでいた時期です。市長からも「今までと違う挑戦をしてみたら」と言われていまして。様々な方法を探す中でテレ東さんの取り組みを知り、観光地の紹介に加え、販促や誘客まで連動できる立て付けに可能性を感じ、掲載されていた電話番号にその場で連絡しました。そして新井さんと知り合い、実際に会いたいと思い、出張の際にテレ東へ伺いましたね。
新井:
本当に飛び込みでしたね!「テレ東と」のようなマッチングの窓口がまだない時代に、“リアルガチ”でされたのが池上さんです。
取り組み
「包括連携協定」の締結によって、
遊休地の利活用・雇用創出まで“テレ東と”
新井:
池上さんにお問い合わせいただいた当時、番組としては、参加者に実際に地域での体験を楽しんでもらうための企画を試している時期でした。お話の流れで「同じような企画が伊那市でもできるのではないか」ということになり、その特別編として“移住体験ツアー”の実現に至りました。
実施にあたっては、説明会への参加を購入条件とするなど、意識の高い参加者をしっかり集客するために工夫を施したおかげで、ツアー自体の満足度や、移住まで結び付く確度を高める設計をできたと思っています。ほかにも、「全国学校給食甲子園®」で優勝した伊那市の長谷学校給食共同調理場の給食を食べる企画は、“テレビマンならではの考え”と池上さんも褒めてくださいましたね。
山田:
通販事業をしている我々は、商品を届けた後の“視聴者のリアルな反応”も見ているからこそ、ただの番組での紹介とは違う設計を提案できるという強みがあります。たとえば「田村淳のTaMaRiBa」の企画で開発した商品が、その後、ふるさと納税の返礼品に採用されていったような広がり方はおもしろかったのではないでしょうか。伊那市の日本酒を使った“日本酒缶”の販売など、情報発信だけに留まらない横断的な施策ができたことも成果だと思っています。
池上:
伊那市にある酒蔵の日本酒を、長野県内だけでなく首都圏を含む全国で販売するような展開を実現できたのですが、それもテレ東ダイレクトさんと組んだからこそだと思っています。
テレ東ダイレクトさんと包括連携協定を結ばせていただいたのは、関係人口の創出や移住促進といった課題へ向き合う中で、さらなる連携強化を図りたいと考えるようになったためです。それによって、伊那市という地域をより多角的に活用してもらえるようになったことに加え、「羽田土曜会 ニッポンを元気にする地域の星」や「地域にエール!まちカケル」などの全国放送番組に市長が出演し、トップ自ら情報発信するような展開まで実現していきました。
新井:
包括連携協定で掲げている内容の一つに、「地域経済の活性化」ということがあります。実は、コロナ禍の巣ごもり需要でテレ東ダイレクトは通販の売上が伸びた一方、人員不足の問題を抱えており、コールセンターの新設を検討していたんです。そこで伊那市にあった廃保育園の遊休地を利用できないかと考え、池上さんへご相談しました。結果として、地方創生交付金の活用など伊那市さん側のご尽力もあり、保育園の跡地をリノベーションしてコールセンターを開設できました。伊那市さんとしても遊休地の利活用や雇用の創出ができ、お互いにメリットを生むことができたと思っています。
反響・効果
移住者に人気の地域、伊那市が全国1位選出。
テレ東の番組プロデューサーたちによるセミナーの実施で、市職員も創造的に
新井:
成果として印象的なのは、「都会を出て暮らそうよ BEYOND TOKYO」での話で。取材させてもらった移住希望者の方が「この番組の伊那市特集を見たことがきっかけで、移住先として具体的に検討し出した」と仰ってくださったんです。「よっしゃ!」と思いましたね。ほかにもテレ東のスタッフを派遣して伊那市の職員さんたち向けにセミナーを開催してきたのですが、アンケートを取ると満足度が非常に高く、僕たちにとって“目から鱗”な声も出てきました。理想的な関係を築きながら、地域力の向上につながる取り組みをできている実感があります。
池上:
「広報力・発信力向上セミナー」は計8回やり、伊藤隆行プロデューサー(制作局長)や「WBS(ワールドビジネスサテライト)」の豊島晋作キャスターなどが来てくださいました。公務員の私たちができない体験の話を伺って、「スイッチが入った」と話す若手もいましたね。広報以外の部署も含めて多くの職員が刺激をもらい、業務改善に役立てています。
シティプロモーションの定量的な成果として大きいのは、やはり移住スカウトサービス「SMOUT(スマウト)」の「SMOUT移住アワード」(市区町村・都道府県人気ランキング)で、2023年度の上半期と2022年度の年間とで、伊那が全国1位に選ばれたことです。市民からも、様々な媒体で伊那市が特集されているのを喜ぶお便りがたくさん届くようになりました。一連の施策の効果を実感する機会は本当に多いです。
山田:
結果が出てほっとしています。普段から、少しでも地域活性化につながる手伝いができればと考えていますので。今後も継続的に、移住促進や伊那市の活性化を手伝うのが我々の役目です。そして放送局としては、ほかの自治体にも同じように役立てるよう、しっかりスキルアップしていかなくてはならないとも考えています。
テレ東と だからできること
お金はないけど知恵を出す!逆転の発想と思い切りのよさで、地域のイケてるところを全国に発信
山田:
テレビ東京グループの得意技は、「お金はないけど知恵を出す」です。他局さんに比べた組織の小ささやネットワークの範囲など、苦手な領域は確かにあります。しかしだからこそ、限られた予算で勝負するアイデアの豊かさや、少数部隊での自由なハンドリングへつながっている面もあります。実は地方局には「テレ東を見たい」という声も多く寄せられていて、伊那市のような地方でテレ東の番組が土日に多く流れているのも“あるある”なんです。番組が評価され、親近感を抱いてもらえるのは、我々もありがたい。テレ東グループの強みを使い、地方を盛り上げる施策を続けていきたいです。
新井:
伊那市は森林率82%の中山間地にあり、人口も約67,000人と、全国的に見れば小規模な自治体かもしれませんが、AIタクシーやドローン物流などの先進的な取り組みもやられています。「地域創生」を旗印にしている僕たちとしては、「地方もこれほどイケてるんだ!」と全国へ発信していきたいです。伊那市は伊那市で、これだけ番組で扱っていてもネタが尽きないほどアップデートを続けています。これからも魅力の発信をお手伝いできると嬉しいです。
イチ視聴者の立場でも、テレビ東京は“知恵”を振り絞って本当におもしろいことをやっていると思います。「他局と同じことをやっても勝てないよね」と、思い切りがあるからこそ、“ならでは”の企画が生まれるのではないでしょうか。アイデアで戦う文化こそが、テレ東の最大の強みだと思っています。