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Case study 事例紹介

ネットに出ていない、漂着し続ける海ゴミの惨状を見せる
雑談のヒントを迅速に形にした番組制作協力

「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」(テレビ東京)

#コンテンツ開発

この事例の担当者

※所属・役職は取材時点の情報

  • 伊藤隆行の写真

    伊藤隆行

    テレビ東京 制作局

    編成局を経て制作局にて「モヤモヤさまぁ~ず2」「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」「やりすぎ都市伝説」など、数多くのバラエティー番組を手掛ける。2023年より制作局長を務める。

  • 進藤隆富の写真

    進藤隆富

    テレビ東京 中国事業室

    テレビ東京本社報道局配属後、経済ドキュメンタリー「ガイアの夜明け」ディレクター、経済ニュース番組「ワールドビジネスサテライト」フィールドキャスターなどを経て、株式会社テレビ東京ダイレクトへ出向、海外事業・新規プロジェクトチームのリーダーを務める。2023年よりテレビ東京の中国事業室で副部長を務める。

パートナー企業・自治体ご担当者さま

  • 海野光行の写真

    海野光行

    日本財団 常務理事

    日本財団海洋事業部を統括。国内の福祉事業や財団の広報を経験した後、海洋部門に配属。以降17年にわたり国内外の海洋に係るプロジェクトを経験。2011年からは常務理事として海洋部門を統括し、「次世代に豊かな海を引き継ぐ」をテーマに「海と日本プロジェクト」などの様々な事業を展開。

目次

  • 日本財団などが推進する「海と日本PROJECT in 東京」の事務局運営を、2020年にテレビ東京ダイレクトが受託。
  • イベント制作や番組制作の取り組みを重ねた上で、「池の水ぜんぶ抜く」との番組制作協力に発展。
  • 日本財団の役員とテレビ東京の番組プロデューサーの打ち合わせが実現し、スピーディーに制作スタート。

  • 第1弾は「東京湾のゴミぜんぶ拾う大作戦」と題し、東京湾をダイバーに探索してもらいスマホや銃弾などを発見。
  • 対馬・瀬戸内海を舞台にした第2弾では、取っても次々と流れ着く海ゴミの惨状を放送。
  • 「海洋インフォグラフィックコンテスト」をテレビ東京ダイレクトが運営し、BSで特番も放送。

  • 番組は、第1弾・第2弾ともに最も反響があったのは10代から。
  • クレジット表記により、「ゴミについて教えてください」との問い合わせが日本財団に。
  • 「海洋インフォグラフィックコンテスト」に多くの応募が集まり、BSの特番も好評。

経緯

「海と日本PROJECT in 東京」の事務局運営がきっかけで、番組制作協力に発展

進藤:
日本財団さんが旗振り役となって進める「海と日本PROJECT in 東京」の事務局運営を、2020年にテレビ東京ダイレクトが受託したのが最初です。海のゴミなど海洋問題についてのイベントや番組を今まで作ってきました。3年ぐらい前でしょうか。ご一緒する中で、「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」(以下、池の水ぜんぶ抜く)に制作協力するのがいいのではないかと海野さんからいわれたのが今回の取り組みのスタートです。早速、番組プロデューサーの伊藤と話してもらう機会を設けました。

海野:
テレビ東京さんの旅番組をよく見ているんですよね。津々浦々といいましょうか。「海と日本PROJECT」が携わる全国の海の景色はすべて違うんです。もちろん海で暮らす人も違います。ですから最初は、全国の海を回る旅番組がテレビ東京さんと一緒に作れたらいいなと思っていました。「海と日本PROJECT」全体として、各地方局とも一緒に取り組みをやっています。東京事務局をテレビ東京ダイレクトさんにお願いしているところから、テレビ東京さんとも新しい取り組みを始められたらいいなと思ったんです。

「池の水ぜんぶ抜く」は、本当におもしろいですよね。逆に、観ていて悔しくなってきて、途中から観られなくなるぐらい。番組でやっているような事業や仕事は、日本財団が本来やるべきなのです。しかし先を越されてしまいました。悔しかったですね。会わずに自分たちだけでやる選択肢もありましたが、「仲よくなってテレビ東京さんと一緒にやった方がいい」と吹っ切れた部分がありまして。いざ話が進んだときに、「池の水ぜんぶ抜く」で一緒にやりたいと私からいったんです。

伊藤:
「池の水ぜんぶ抜く」が始まった当初は、社会課題解決を番組の企画としては想定していませんでした。「池の水が抜かれて何が出てくるんだ?」との素朴な疑問を視聴者と一緒に探究していくことがシンプルにおもしろそうだと思って始めただけです。番組が放送された直後から、自治体や地域住民から反響があって、逆に社会性に気づかせてもらったんです。外来種駆除やゴミの問題解決のための予算を自治体が取っていない、また水辺をきれいにする動きが地域にもない事実があとから露呈してきました。

取り組み

出てはいけないゴミ、ネットには出ていないゴミに2回のロケで遭遇

進藤:
制作協力の第1弾で作ったのが「東京湾のゴミぜんぶ拾う大作戦」です。ダイバーに東京湾を探索してもらうと、スマホや銃弾などさまざまなものが出てきました。“わからないものを明らかにする”という「池の水ぜんぶ抜く」のおもしろさが踏襲できたと思っています。第2弾「緊急SOS 海のごみぜんぶ拾う大作戦」は、対馬(長崎県)と瀬戸内海にフォーカスしました。

海野:
瀬戸内海は、「多島美(たとうび)の素晴らしい景色」「海があって、魚もおいしい」などと謳って観光地化を図っています。しかし「裏側をきちんと見てよ」といいたかったんです。ゴミの惨状を見てもらえれば、知らないふりはもうできませんよね。「海と日本PROJECT」の活動を進める中で、冷蔵庫・テレビ・自転車など家庭ゴミがどこの水辺からでも出てくるのを目にしてきました。私はショックでしたね。「これは一緒に解決できる」と思い、ゴミ問題にも取り組むようになったんです。

伊藤:
第1弾は、出てはいけないものが本当に出てきてびっくりでした。「放送できないものが出てくる」と海野さんがいっていたとおりになったので。第2弾の対馬も瀬戸内海もすごい惨状で、地元島民も困っていましたね。ネットの写真を見るかぎりでは、「行ってもゴミないんじゃないか?」と私たちも思っていたんです。しかしいざ行ってみたら、とんでもない惨状で、見ていないだけだったなと痛感しました。海流の影響もあって、取ってもまた流れ着いてくるんです。ゴミの中には、漁具もあれば、海外の製品もありました。

反響・効果

最も反響があったのは10代の若者。クレジット表記から問い合わせにもつながる

海野:
第1弾・第2弾ともに、放送後の反響を分析すると10代の若者に響いているとわかりました。SDGsなど、環境問題についてのマインドが養われているのを感じます。子どもたちには“ゴミ拾いは当たり前”みたいな話もあるほどです。今の子どもたちは、ゴミについて考えながら成長してきたんですよね。家にいれば「分別しなさい」といわれ、通学路にもゴミ捨て場があって、家にも学校にもゴミ箱があり清掃をしたりする。どこに行ってもゴミが身近な存在であるため、感度が高く自分ごとにできるんだと思います。ゴミについての番組を制作協力させてもらい、日本財団の名前がクレジット表記されると、「ゴミについて教えてください」との反響や問い合わせがあるんです。

進藤:
東京事務局の活動として去年・一昨年で開催した「海洋インフォグラフィックコンテスト」も好評でした。グラフィックを使って海洋問題についてのポスターを作ってもらうコンテストです。美術の専門学生と一緒に小学生の子どもたちにポスターを制作してもらったところ、レベルが高い作品が多く集まりました。魚が食べられなくなっている問題など、ゴミ問題以外の課題も多く題材として取り上げられていたのが印象的です。BSテレ東で特集番組を放送した影響もあって、コンテストには多くの反響がありました。

テレビ東京の“先をいっている感”とキー局としての発信力が魅力

海野:
協業の最も大きなメリットは、テレビ東京の人気番組が持つ発想力や影響力です。他局ではできないような発想で、先を行っている感じがあります。前衛的なスタンスは、私たちと親和性が高くコラボレーションがしやすいんです。そのためテレビ東京さんと組みたいと思ったところがあります。
またキー局である点も魅力的です。「海と日本PROJECT」は、各地方局と組んでさまざまなプロジェクトを起こしている中で、地方の取り組みを吸い上げてテレビ東京さんに中央から発信してもらえる点にも期待しています。

表現の仕方が違うだけで、テレビ東京さんと日本財団は同じことをやっているような気がするんですよ。何かを提供してほしいというよりも、意見交換や雑談できればOKだと思えるぐらいです。そこから新しいアイデアが生まれてきますから。直接会って話す場が本当に大事です。もう一人・二人と、異分野の人が入ってくるとまったく違うアイデアができると思います。

伊藤:
イノベーションを一緒に起こすパートナーの意味合いもありますね。海野さんはおもしろい話がどんどん出てくるんですよ。課題を明確に持っていて、なおかつ協力者が全国にいるとおり、ご自身も汗をかいているのがわかります。だから会って、企画を作ったり表現したりするのは大事だなと感じます。
私たちが「おもしろがる」「企画を作る・伝える」ことと、日本財団さんとの取り組みで出会う「課題に直面している人のリアルな声」が、一緒にやってく上での共通点になっていくのが最高なのです。期待に寄り添いながらも、いい意味で裏切って、さらにおもしろく視聴者に私たちは伝えていく意義がなければいけません。

進藤:
制作のプロデューサーとなると、昔は怖くて営業の企画なんか持ち込めなかったんです。しかし伊藤プロデューサーが通称“伊藤部”と呼ばれるチームを作ってから変わりました。最近は、若手プロデューサーもみんな話を聞きに来てくれ、いくつかコラボレーションもできるようになってきています。テレビ東京としても、メディア全体の構造が変わる中で、変わらなければいけないところがしっかり変われている感じがしています。

テレ東と だからできること

フットワークの軽さとロケがテレビ東京の強み

進藤:
「やろう!」と現場が動き出すとテレビ東京はフットワークがいいんですよ。企画書を依頼し、海野さんに会ってもらって、「このような番組で行こう!」となったときにかなりのスピードで動いてもらいました。「池の水ぜんぶ抜く」の看板を派生して使うとき、営業や編成の理解を得るのも早かったです。「縦割りで大変」だと伊藤プロデューサーは謙遜していいますが、実際はそのようなことはありません。「よしやろう!」という雰囲気に制作現場がなると、ものすごく早く動ける。フットワークのよさがテレビ東京だからだなと思います。

伊藤:
会社は動かすものだと思うんですよね。普通に動いて2〜3週間平気でかかってしまうのはよくありません。課題があって、協力してくれるパートナーがいて、企画が見えたら1日でGOサインが出るぐらいでないと駄目だと思うんです。
テレビ東京だからできたこととして、冒頭に旅番組の話ともつながって、“ロケをしっかりやっていく”スタンスはテレビ東京らしいですよね。「池の水ぜんぶ抜く」にも直結する部分です。スタジオで映像を見ているだけの番組や企画はほぼやらない、大物タレントさんにも何かが起きているとこに行ってもらうのが、番組の作り方としてテレビ東京では確立されているんですよね。そのようなフットワークのよさやストレートさの部分が「テレビ東京だから」かなと思います。

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