斎藤知事めぐり相次ぐ告発!N国・立花党首は弁護士らを「虚偽告訴」…全てのはじまりPR会社代表「実績アピールnote」の重すぎる代償(2024年12月11日『みんかぶマガジン』)

斎藤知事めぐり相次ぐ告発!N国・立花党首は弁護士らを「虚偽告訴」…全てのはじまりPR会社代表「実績アピールnote」の重すぎる代償(2024年12月11日『みんかぶマガジン』)
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(c) Adobe Stock
 11月の兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦知事の周囲が“カオス”になっている。斎藤氏と選挙を支援したPR会社の社長は公職選挙法違反の容疑で告発される事態となったが、今度は告発そのものが「虚偽告訴」と主張する人物が現われたのだ。斎藤氏の選挙運動収支報告書はPR会社への支払い額が一部未記載と報じられたが、知事サイドは「問題ない」と説明する。経済アナリストの佐藤健太氏は「もはや何が本当なのかわからない異常事態。選挙戦略の“暴露の代償”は決して安くない」と見る。
全ての始まりとなった、実績アピールnote
 発端は、11月17日投開票の知事選で斎藤氏を支援したPR会社の女性社長が投稿サイト「note」において自らの“実績”をアピールしたことだった。この社長が「広報全般を任された」としたため、主体的に運用戦略立案などを担っていれば公選法違反ではないかとの声が挙がったのだ。
斎藤氏の代理人弁護士は11月27日の記者会見で「『note』に記載されているようなSNS戦略を依頼したという事実はない」と説明。斎藤氏も「公選法に違反していない」と繰り返している。要するに、斎藤氏サイドは女性社長が「勝手に『盛った』ことを言っているだけ」という姿勢だ。
 斎藤知事は9月末にPR会社の事務所を訪問し、ポスター制作費などに計71万5000円を支払ったという。ただ、12月3日公表された「選挙運動費用収支報告書」には、このうち「公約スライド制作」約30万円に関する記載はなく、40万円弱の支払先も「さいとう元彦後援会」となっていた。斎藤氏側はPR会社が後援会宛に請求してきたことなどを理由にあげ、「問題なし」と説明している。
 こうした状況を受けて神戸学院大の上脇博之教授と元検事の郷原信郎弁護士は、公選法違反(買収と被買収)の疑いがあるとして12月1日付で斎藤知事と女性社長に対する告発状を神戸地検などに送付した。
 これに対し、「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首は同月3日の「X」(旧ツイッター)に「これは郷原弁護士による完全な虚偽告訴罪だと思料します!よって本日、郷原弁護士を被告発人、立花孝志と石丸幸人弁護士を告発人とする、刑事告発状を東京地検と麻布警察署に郵送します!」と投稿。立花氏は「(郷原氏は)やりすぎ。メディアと郷原氏が結託して斎藤さんをいじめている」などと主張している。
何が真実で、これからどうなるのかわからず
 もはや一般人には何が真実で、これからどうなるのかわからず今の状況はカオスと言えるだろう。ただ、兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)や斎藤知事に関するメディアの報道量は一気に減ってきたようで、斎藤知事をめぐる一連の騒ぎは一体何だったのかと感じる人は少なくない。筆者も「捜査当局や裁判の行方を見守っていれば、もう良くない?」と苛立ちのような感覚を抱く1人だ。
 ただ、今回のケースで腑に落ちないのは、なぜPR会社の女性社長が「広報全般を任された」などとアピールしたのかという点である。このPR会社は広島や高知などでSNSを活用したプロモーションや運用支援などを担っている「PRのプロ」だ。同社のホームページを見ると、事業内容として「広報・PRコンサルティング事業」「ブランディング事業」などの他に、「写真・動画撮影」「デザイン制作」などの記載がある。
 サイトには会社情報やサービスの一覧があるが、具体的な事例や実績などは記載されていない。女性社長はSNSで存在感を発揮してきたものの、なぜ斎藤氏の知事選において「広報全般を任された」などとアピールしたのかわからないのだ。斎藤氏側の説明によれば、ポスター制作などは「口頭契約」だったといい、選挙の支援は社長個人がボランティアで参加していたという。それでも知事選では選挙カーの上に乗り、スマホを手にSNS配信に協力していたというわけだ。
女性社長の「広報全般を任された」という点
 女性社長の「広報全般を任された」という点については、斎藤氏の代理人弁護士が指摘したように「盛った」という可能性があるのかもしれない。だが、そうであれば斎藤氏にとっては、とんだ「自己アピール」をされたことになる。
 斎藤氏サイドは女性社長の「実績」を強調するSNS投稿をチェックしていなかったというが、少なくともポスター制作費など70万円超を支払った「クライアント」だ。そのオフィス訪問やイメージのあり方など、選挙戦略の“暴露”につながり得ることを明かす行為は「PRのプロ」としてどうなのか。
 それが選挙であれ、政治活動であれ、「裏方」である人物が自身や会社の「実績」をアピールすることは従来であれば考えられないものだ。最近はSNS戦略に長けた選挙が注目されているが、「私がやった」「うちの会社で引き受けた」というものは見かけない。あくまでも“守秘義務”を弁えた上で、クライアントの許可を得たものだけをセールスポイントにするのではないか。
マイナスイメージからの脱却
 女性社長は兵庫県の地方創生戦略委員などを務め、少なくとも会議などで斎藤氏と顔見知りのはずだ。そこに公費負担のポスターにかかる仕事を依頼する斎藤氏サイドの考えもナゾなのだが、社長個人にボランティアとして選挙での支援をしてもらった点はもっとナゾである。
 パワハラ、おねだり体質といった疑惑を県議会で追及され、知事不信任決議を議決された斎藤氏は出直し選でマイナスイメージを覆して再選を果たした。女性社長は支援した斎藤氏の“逆転勝利”を誇示したい気持ちだけだったのかもしれないが、この騒動後は表舞台から姿を消しており、少なくとも仕事面でプラスに働いたとは感じられない。今回の“暴露の代償”は決して安くないだろう。
 マイナスイメージからの脱却という意味では、いま1つの例が注目されている。それは不倫問題が発覚した国民民主党の玉木雄一郎代表のケースだ。玉木氏は同党で役職停止3カ月の処分となった。
 ただ、11月11日に「Smart FLASH」で不倫問題が報じられた玉木氏は「おおむね事実」と認め、会見で謝罪している。不倫は法令上の問題ではないという点はさておき、政治家にとっては大きなマイナスとなってきたものだ。過去の自民党議員に対する処分を振り返れば、2016年には宮崎謙介衆院議員が妻の妊娠中の不倫を報じられ、議員辞職。今年4月にも宮沢博行衆院議員が女性問題で議員辞職している。
ひとまず「ソフトランディング」に成功
 だが、玉木氏は11月11日の党両院議員総会で代表続投が決定され、首班指名選挙でも所属議員が「玉木雄一郎」と書いている。言うまでもなく、首班指名で名を記した人物は玉木氏が内閣総理大臣としてふさわしいと考えたということだ。そして、今回の「役職停止3カ月」という処分で“終幕”ということである。
 玉木氏は、不倫報道のあった女性に選挙での立候補を提案していたことを明らかにした上で「政治に関心がある方については、各級選挙に関心があるか、可能性を含めて聞くことはある」「恋愛うんぬんではなく、地域活動もされていて能力のある方だと思ったので、力を生かす可能性もあるのかなということで申し上げた」とも語っている。
 だが、先の衆院選で公示前から議席を4倍増とし、「103万円の壁」見直しなどで世論の高い支持を受ける玉木氏は、ひとまず「ソフトランディング」に成功したと言えるだろう。
知事側は「問題はない」の1点を繰り返し、女性社長も説明しない
 不倫報道を受けた謝罪会見では、手にしていた“想定問答”からPR会社の関与も指摘されたが、実際には存在しなかったようだ。その意味からも玉木氏は一皮も二皮も上だったと言える。もちろん、斎藤知事のケースとは異なるものの、「いつ」「何を」「どのように」すべきなのか明確だったのだ。
 玉木氏の例で「政治家は不倫してもOK」とならないのかは気になるが、玉木氏の対応がスピーディーだったこともマイナスイメージからの脱却にはプラスに働いたのだろう。
 斎藤知事サイドが「問題はない」の1点を繰り返し、女性社長も説明しない中では騒動が必要以上に膨らむ。何が真実なのかはわからないが、少なくとも現時点で斎藤氏、女性社長の双方にとっては“高い代償”になっているのは間違いない。