City Hunter 沼探検記

人生で何回目かのCH熱再発を自己収拾するためのブログです

アニメ第五話「グッバイ槇村 雨の夜に涙のバースデー」を掘る

<データ>

  • 原作準拠(第6、7話)
  • 脚本・構成 井上敏樹
  • 絵コンテ・演出 冨永恒雄
  • 作画監督 小林ゆかり

ついにこの回がやってきてしまいました。

通過不可避なエピソードだけど、辛い回です。明るいシーンは最初のほんの少しだけ、あとは全般、本格ハードボイルドの重苦しい雰囲気。

作画監督の小林氏が描く顔はとても綺麗。どのシーンでもみんな顔が良い。基本、ちょっとサエない系の槇村の顔さえ、この回は心持ちハンサム笑 でも彼の最期の姿だけに、カッコ良すぎても正解!

獠も

香も

槇村でさえも笑


<今回のヒロイン>

無し

<あらすじ>

新興麻薬組織「赤いペガサス」が関東制覇を企む中で、邪魔な存在と認識された冴羽と槇村が狙われる。香の二十歳の誕生日当日、彼女の生い立ちの真実を打ち明け、その証の指輪を渡すはずだった槇村は、その前に赤いペガサスの経営するクラブ「シルキィクラブ」に誘き出され、襲撃される。獠に香を守る役目を託し、命を落とす槇村。単身シルキィクラブに乗り込み、復讐を果たす獠。香の元へ向かい槇村の死を伝え、この街から離れるよう促すが、香は、兄の代わりに獠の相棒となる事を決意するのだった。


<原作との主な相違点>

  • 話の導入部、冴羽獠と槇村、香の日常シーン追加
  • 敵は麻薬密売組織「ユニオン・テオーペ」から「赤いペガサス」に変更
  • 槇村を襲ったのは、エンジェル・ダストを投与された構成員→幹部「ジェネラル」

この回の原作とアニメの一番の違いは、言うまでもなく「ユニオン・テオーペ」から「赤いペガサス」に組織が変更されたことですね。アニメでユニオンが使われなかった理由は、テレビで麻薬を描写することを自主規制したからということですが、「赤いペガサス」も麻薬組織だし、シルキィクラブにいる女性たちに麻薬の注射痕があったりという描写があるので、「麻薬」というワード自体がアウトだったわけではなく、エンジェル・ダストを投与されたヤク中の人間が襲いかかってくる様子が描けなかったのではと推測します。私は後々知った事ですが、PCP、通称エンジェルダストは実在する麻薬で、漫画のように怪力ゾンビ化するっていうのは恐らく誇張であって、テレビでは中毒患者に対しての誤解を招いたりということが懸念されたのではないでしょうか。更に、「ユニオン・テオーペ」のボスが獠にとってのラスボス、という設定は、多分、北条氏の中ではこの時点で既に決まっていて、アニメで色々と設定を変えてしまうと、今後、矛盾が生じるかもしれないということで、組織名が変わったのかな、と私は想像しています。

 

前半、獠と槇村が飲んだくれて槇村のベッドで一緒に寝てるシーン。酔っ払って帰ってきたくせにちゃんとナイトガウンとナイトキャップまで被って寝ている槇村。可愛すぎか。二人を叩き起こしてコーヒーを淹れる香。3人で同じ画面にいるのは、後にも先にもここだけ。貴重なシーンです。

で、公園のベンチで香の素性についての真実を獠に語る槇村。もー、これは教科書のような、典型的フラグ。「死亡フラグとは」の項で例として挙げられそう😂

そんなこんなで、槇村は「シルキィクラブ」からの帰路で襲われてしまうのですが、

原作での襲撃シーンはまさに凄惨。エンジェル・ダストで怪力化した男が壊した車のフレームを、背中にぶっ刺されるという、おぞましいやられ方。誰がどう見たって助からない、って姿です。対して、テレビでのジェネラルの襲撃は直接描写がなく、やられた後の姿もだいぶキレイ。血の描写も無く、獠の表情が無ければ、槇村はもうダメなんだ、とは気付かないほど。そのせいか?絶命するまでの二人の会話も長め。

こときれた槇村を抱いて、語りかける獠。

「…しばらくの間 地獄はさびしいかもしれんが すぐににぎやかにしてやるよ…」

このシーンの、原作とアニメの獠の表情の違いが印象的なのですよ。原作では、少し微笑んでるんです。怒りと悲しみが、転じて笑みになったような。アニメは、静かな、落ち着いた表情。でも神谷さんの声には力がこもってて、そのギャップがまた良いのです。

獠はすぐに、シルキィクラブに復讐に行くわけですが、私、子供の時にリアルタイムで見ていて、疑問に思ったシーンがあるのです。シルキィクラブの舞台で踊ってる踊り娘に、獠がジャケット掛けてあげてキスをするんですが、店のオーナーが獠に向かって一斉射撃をした瞬間、その娘は獠を庇って死ぬっていう場面です。獠は驚いて、「なぜおれを庇った?」って聞くんですが、子供だった私も同じ事を思っていました笑 なんでキスしただけで初対面の獠を庇って死ぬの?と。これ、大人になって、原作読んでようやく理解しました。

原作だと、裸にコート姿の大勢の娘がズラッと並んでいて、店のオーナーが部下から「今宵はどの踊り娘と楽しまれますか?」とか言われてるわけです。その時に獠が来て、オーナーは、自分が選んだ娘を獠にあてがおうとします。オーナーが指パッチンするとコートを脱いで真っ裸の踊り娘。「さあ!!抱きたまえ このすばらしい女を!!」ってオーナーが獠に言って、それで前述のシーンに続くんです。

つまりこの娘は、麻薬で縛られて、物のように粗雑に、まるで性処理人形扱いなんですよね。その彼女に、ちゃんと人間として、一人の女性として応対してくれた獠に、感謝と、一瞬の愛を捧げたって事なんですね。テレビでは、この描写は出来なくて、ちゃんと(シースルーっぽいけど)服着て綺麗な踊りを踊ってるだけだったので、そこが伝わりにくかった。でもこれは、さすがにプライムタイムのテレビアニメでは表現出来なかったんでしょう。てか、「さあ抱きたまえ」って、当時のジャンプでもかなりギリギリセーフだったんではないでしょうか…。

 

店のオーナーは獠にあっけなく倒され、その場にいるのが、槇村を殺した張本人、ジェネラル。義手で、なぜか上手にピアノを弾いているという。もうそこ突っ込んじゃダメなの分かってるけど笑

 原作だと、ジェネラルはユニオンの幹部で、彼との対決はこの先第13話まで結構長いこと続いていくんですが、アニメではもう直接対決。赤いペガサスとの戦いも、これで終わり。

 

最後、香のいるアパートに、敵から奪った大金を持って、この街から出ろって言う獠。でも香は獠のパートナーになるって言うシーン。

 

この場面、Youtubeで「玄関あけたら2秒でごはん」て突っ込まれてる動画を見たんですが…


ま、ま、まぁ、分かるんですけど〜。でも、都内の小さいアパートなんてこんなもんですよ。この不自然さは、玄関の真ん前が食卓だってことじゃなくて、この類の間取りにしては玄関が立派すぎるところにあるんですよね。こういうアパートだったら、玄関はせいぜい靴2、3足置くのが精一杯の狭さでしょう。ちょうど獠の横の靴棚くらいのスペースじゃないかな。この絵の玄関の広さだと、いかんせんテーブルが廊下にあるように見えてしまうんよ…。

 

兎にも角にも、ここからが獠と香のシティーハンターの始まり。槇村の死なくしては語れない物語の始まりなのです。

 

では!

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