The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

熊熊危機一髪 パディントン2

 2月ももう終わりで、相変わらずブログ更新をサボっていたわけですが、あれなんですね。はてなブログは更新が途絶えていると「そろそろ更新せえや」ってメール来るんですね。びっくり。というわけで新年は1日に前回の「仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL」を観たきり全く劇場映画鑑賞をしていなくて、2月も半ばまではこれといった活動をしていませんでした。あまつさえ一時期文明と隔絶した生活を送っていたのでオリンピック他世間の話題から全く乗り遅れていたのでした。

 とはいえ2月後半からは遅れを取り戻すように観賞復活。人より大分遅れて観たのが今回の「パディントン2」で、これが最高に良かった!正真正銘年明け一発目ポール・キング監督作品「パディントン2」を観賞。ちなみに熊といえば赤カブト(銀牙)と片目のゴン(牙王)が真っ先に思いつきます。

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  • 物語

 ロンドンのウィンザー・ガーデンでブラウン一家の一員として幸せに暮らす熊のパディントン。その誠実な人柄でブラウン家だけでなく近所の人たちとも仲良くやっていた。ペルーにいるルーシーおばさんへの誕生日プレゼントを探していた時グルーバーさんのお店で飛びだす絵本を見つける。世界に一冊しかないロンドンの名所を紹介した特別な絵本。パディントンはこの絵本をおばさんのプレゼントに決めたが高価なためアルバイトに励むのだった。

 そんなある日、グルーバーさんの店に泥棒が入り絵本を盗む。その場に居合わせたパディントンは泥棒を追いかけるが逃げられてしまう。そして到着した警察はパディントンを犯人として捕まえてしまう。実は絵本には隠された秘密があって、それを狙った落ち目の俳優ブキャナンのしわざだったのだ。ブキャナンの嘘の証言もあってパディントンは刑務所へ。

 ブラウン一家はパディントンの無実を信じ、真相を見つけようとする。一方パディントンは無頼者揃いの刑務所でもいつもの誠実さで囚人たちに慕われていくのだった・・・

  前作はその年のベストテンに選んでいるけど、ちょうどブログの更新が途絶えがちになった時期でもあって独立した感想記事は書いていない。のでちょっとこちらで前作の補完も。

 この作品はイギリスの作家マイケル・ボンドの絵本。僕は映画が作られて初めて知ったのだが1958年に出版され、日本でも複数の出版社からシリーズが発売されている。作者のボンド(ジェームズ・ボンドとは無関係)は前作に特別出演していたが2017年の6月に91歳で亡くなった。本作はボンドに捧げられている。

 前作で面白かったのは、「喋る熊」というパディントンの特色をブラウン一家はじめ良い人達はそれを特別視しないこと。もちろんパディントンは熊なので、その点で怖がったりする部分もあるのだが、基本的にはあくまでパディントンの人柄で評価して受け入れているのだ。パディントンの「喋る」部分に興味を持つのはニコール・キッドマン演じるミリセント・クライド。父親の冒険家がルーシーとパストゥーゾ(パディントンの育ての親グマ)を友人として扱い、熊の居場所を明らかにしなかったため学会を追われた。ミリセントはその復讐を「喋る熊」パディントンを捕まえ剥製にして展示することではらそうとしている。登場人物で唯一パディントンの「喋る」部分に拘りながら、その喋る部分を一切生かせない剥製にしようと頑張るのが実に倒錯していてまた悪役としてよく出来ていた。厄介者のご近所カリーさんも「熊怖い」であっても喋る部分にはとくに恐怖を覚えていないというか。

 実はちょっと特殊な能力を持つ主人公が上京(便宜上の言い方)してそこに馴染み新しい家族を見つける、という物語は大デュマの「ダルタニャン物語」など定番で、僕は宮﨑駿の「魔女の宅急便」を連想した。あれも主人公が魔女であり箒に乗って空を飛べる、というのを主人公の特性として尊重はしているものの周りの人達は特に重要視すること無くあくまでキキの人柄をもって受けいれている。空飛ぶ能力を重要視するのはトンボだけで、トンボは悪役ではないが、そのゆえにキキを危機に巻き込む(駄洒落になってしまった)。 

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 今回は評価の高かった前作を受けてスタッフ/キャストがほぼ続投。順当に物語の規模がパワーアップした正統派の続編映画となった。

 前作ではパディントンがブラウン一家に受け入れられるまでを描いた物語だったが、今作はその辺はもう心配なし。逆にウィンザー・ガーデンの他の住人との交流が描かれる。ウィンザー・ガーデンには人種民族様々な人が暮らしていて、インド系の学者もいれば退役軍人もいる。ロンドンに例えばアメリカのニューヨークほど多人種が暮らす都市というイメージはないが、そこは古くから繁栄した国際都市で、ありとあらゆる人たちが暮らしている。つまりパディントンもそんな移民たちの一つに過ぎないのだ。人間じゃないキャラクターを移民として描くというのはそれこそスーパーマンから続く表現ですね。昨今はイギリスのEU離脱などもあり、ナショナリズムによって人々の心が狭くなって(これはイギリスばかりではなくアメリカでも日本でもその傾向が強くなっていて由々しき事態だ)来ているが、そんな風潮に警鐘を鳴らす作品でもあろう。というか別にそんな社会派作品として観なくても全然いいのだが、もっとおおらかになろうよ、という感じ。

 ブラウン一家は今回はもう完全にパディントンを一家の一員として受け入れていてそこが乱されることはない。パディントンの無実を晴らすための捜査の方針でヘンリー(かつてはワイルドだったが、結婚と子供の誕生を機に堅実になったリスク管理会社に務めるサラリーマン)とメアリーらが揉めたりするものの全員一丸となってパディントンの無実を晴らそうと動く。ジュディとジョナサンのこどもたちもしっかり成長している。メアリー役のサリー・ホーキンスゴジラパディントンと、この後に「シェイプ・オブ・ウォーター」で半魚人とも共演する今最も羨ましい女優(半魚人大好きです)。いわゆる美人というよりはチャーミングな感じ(前作の時点で超美人であるニコール・キッドマンとの対比もあったと思う)。人間ではパディントンの一番の理解者で今回も頑張ります。あれですね個人的に関谷真由さんに似ているとこも好感が持てます。

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 刑務所でもパディントンはその誠実な人柄とマーマレイドレシピのお陰で囚人や看守から慕われ、刑務所の待遇改善までしちゃうところはさすがハートフル・コメディいったところ。ガタイがでかいいかにも暴れん坊といった風体のキャラほど実は料理や家事が得意、みたいなのも定番ではありますな。

 そして悪役はヒュー・グラント。かつての売れっ子、今は落ち目の俳優で今回はその芝居で養った演技やメイキャップを駆使してパディントンやブラウン一家を翻弄する。セレブを装ってはいるが今はお金に困っているブキャナンは絵本の秘密を知っていて…

 ヒュー・グラントはわりとTHEイギリス俳優!というイメージ。それこそ金髪碧眼の美男子という定型的な白人俳優で他にイギリスの俳優として思いつくユアン・マクレガーなんかと比べてもイギリスらしさが全面に出ていると思う。その意味では多人種多民族だったウィンザー・ガーデンにあって支配層でもあるイギリス人のイメージ(故に逆に異物)なのかもしれない。そういえばウィンザー・ガーデンのブラウン一家などが住む家って多分建売というか同じ構造の戸建てが連続して並んでると思うんだけど、これ「死霊館エンフィールド事件」の舞台となった家と多分同じ構造なんだよね。もちろん色味から何からぜんぜん違うんだけど。

susahadeth52623.hatenablog.com

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 ブキャナンがメアリーを自宅に招いた時にブキャナンの若いころの写真が部屋中に飾ってある描写があって、これはブキャナンのナルシズムを笑うところなんだけど、ここで飾ってあるのはもちろんヒュー・グラント自身の若いころの写真。これが本当に美男子なんだよね。もともとロマンティック・コメディで人気を博した人で、この作品なんかもユーモラスな部分が強調されているけれど、若い頃は男も惚れそうな美男子で、そりゃこんなルックス生まれたらナルシストにもなりますわ(グラント自身がどうかは知らないが)。

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 今回は初回は日本語吹替で観賞。前作はパディントン松坂桃李、ヘンリーに古田新太、メアリーに斉藤由貴、ミリセントに木村佳乃といったいわゆるタレント吹替全開のキャスティング(僕はよく知らないのだけどジュディ役の三戸なつめも)。なので不安も不安で前作公開時は字幕版を選んだ。でも公開前の年末に1作目がTV放送されて、そこで初めて日本語吹替版を見た。そしてこれが実に良かったのですよ。なんといっても松坂桃李パディントンのとにかく丁寧で誠実な語り口がこちらによく伝わってくる。丁寧さではオリジナルのベン・ウィショーを上回るかもしれない。ご存知のように松坂桃李は「侍戦隊シンケンジャー」の主人公、志葉丈瑠としてドラマデビュー。スーパー戦隊はちょうどこの「シンケンジャー」からオールアフレコではなく、素顔での演技は同録となったものの、もちろん変身後やアクションシーンなどでアフレコするシーンもあっただろうし、そういうところで鍛えられたのでしょう。他のキャストも良かったので、今回は日本語吹替と字幕両方を最初から観る気満々であったのです。

 前作のニコール・キッドマン木村佳乃に変わってヒュー・グラントには斎藤工斎藤工自身のアフレコ、声優としての技術がうまいかはよくわからないが、グラントの大げさな演技にはあっていた。声優だと森川智之に近い声質。もちろん実際のグラントとは歳が離れていて若い声なんだけど、何しろミュージカル的な部分もあるので今回のヒュー・グラントにはぴったりだったと思う(他の作品だったらどうかは分からないが)。

 残念だったのはサリー・ホーキンスのメアリーの声が斉藤由貴から変わっていることですね。なんかスキャンダルがあって降板したらしいのですが……とはいえ替わった石塚理恵さんも素晴らしかったです。

 作品は前作ではそれほど多くはなかったアクション面でも強化され、舞台が大きく広がったこともあって大満足。前作が良かった人なら問題なく楽しめるでしょう。倫理や表現の限界に挑むような作品で賛否両論になるのもいいけれど、とにかく丁寧に不特定多数が楽しめるように作られた作品も良いものです。

 今回唯一残念かな?と思った部分はカリーさんですね。前作でも近所の厄介さんとしてパディントンを毛嫌いしミリセントと組み、でもミリセントがパディントンを殺そう(剥製標本にしよう)とすると密かに(すぐバレるけど)ブラウン一家に情報を与える役柄で、一応善性が示されていたのだけれど、今回は一人自警団として住人にパディントンの危険性を説き回り最後まで良いキャラにはならなかったのは少し残念(ラストのブラウン家に集まる人達の中にもカリーさんはいなかったと思う)。別に完全に改心する必要はないんですよ。もし新作が作られたらまた厄介さんとして登場してくれて良いのです。でも根っからの悪い人でない部分は示してほしいかな。


PADDINGTON 2 - Official Film Trailer (International)

 とにかく丁寧に作られた誰でも楽しめる作品だと思います。

 ラストもハッピー!「カンフー・ヨガ」とかと最近こういうエンディングが心地よい。年取ったかな。

クマのパディントン

クマのパディントン