巨大バッカルコーンの恐怖 第7鉱区
基本ある程度事前情報を得てから観る映画を選ぶのだが時折、まったく情報なしでふらふらっと劇場で決める時がある。今回はそれが韓国映画「第7鉱区」だった。
物語
九州の西、石油資源の発掘を目的として第7鉱区では隊員たちが孤軍奮闘していた。20数年前に同じ場所で父親を失ったヘジョンは特に熱意が深い。しかし本社は毎度の失敗に撤退を決める。撤退を指揮するためジョンマンがやってくる。彼はかつてヘジョンの父が死んだときの船長でもあった。ヘジョンの熱意に促されジョンマンは作業の再開を決めるがその矢先新人隊員が作業中に事故で亡くなってしまう。そして生態研究員のヒョンジョンが謎の死を遂げたの境に次々と隊員が襲われていくのであった・・・
タイトルは明らかに「第9地区」を狙ったものだと思うけど(邦題ロゴだとさらに似せてある)内容はむしろ「海の『エイリアン』」といったところ。広いけれど閉鎖された場所を舞台に怪物が登場し、一人また一人と犠牲になっていく。似ているのはそれだけではなくて、怪物が出現する理由が半ば企業・人為的なものであったり、最終的に立ち向かうのが勇敢な女性であったりを踏襲しており「エイリアン」をよく勉強している作品だと思う。
出演俳優はアン・ソンギしか知らない(ヘジョン役の人は「TSUNAMI−ツナミ−」に出てたらしいが覚えていない)のだがキャラクターの個性がはっきりしているので誰が誰だか分からなくなることはない。
先ほど「エイリアン」の女性主人公を踏襲している、と書いたが最初の「エイリアン」の時点では観客はリプリーが生き残るとは思っておらずノストロモ号船員はほぼ同格の扱いで徐々にリプリーに焦点が合うつくりだったが「第7鉱区」では当然最初からヘジョンが主人公というつくりになっている。ヘジョンはもう一人の女性キャラ、ヒョンジョンと対照的に造形されており、肉感的な体育会系。デスクワーク中心で現場を知らない隊長に嫌味ばかり言っていたりする。ポスターでもタンクトップ姿がまぶしいのだが主にこれを見せてくれるのは前半部分。後半の怪物とのアクションでは主に作業服姿で頑張ってくれる、が前半のタンクトップが十分ヘジョンのキャラを印象付ける重要なアイテム。
さらにヘジョンのキャラを際立たせるのがヘジョンの恋人のドンスで瑛太と照英を足して二で割ったようなワイルドな風貌のイケメン。バイクの運転や仕事でも優秀な部分を見せてくれる。でもヘジョンとの絡みではもっぱらヘジョンに主導権を握られ全体として草食系っぽい印象を受けてしまう。
また、研究員であるヒョンジョンはこれまたヘジョンと対照的なスリムで知的労働が似合うタイプ(僕は少女時代のユナを思い出した)。ドンスやヒョンジョンと対比することでヘジョンの個性が際立つことになっている。
あとは隊長ですよ。彼はヘジョンに腰抜けとか散々言われてる身なのだけれど隊員たちが傷を見せ合い自慢する場面で「心の傷ならある」とか格好いいこといって、また最初にジョンマンの陰謀に気づくので実は「出来るやつ」なのだと思っていたのに・・・見事に裏切られた。十分余裕がある状態で一人逃げ出すなんて・・・
あとはこういうのでは欠かせないムードメーカー系の二人は楽しい。「ケツが二つに割れてしまった!」ギャグ久しぶりに見たよ。
あとはやはり重要な存在はアン・ソンギ演じるジョンマンである。彼は比較的複雑なキャラクターで隊員の尊敬を受け、勇敢に怪物に立ち向かうも実はその誕生に関わっていたという「エイリアン」でいうところのダラス船長とアッシュを合わせたようなキャラである。
さて、もうひとつの主人公である怪物について。この怪物は幼生はクリオネ*1みたいな5cmにも満たない美しい生物で本来は深海にすんでいるのだが多少凶暴(バッカルッコーン!)。そしてその体液が可燃性でありしかも燃焼効率が石油を超えるということで韓国が新エネルギーとして利用しようと密かに育てていたものだった。幼生時は小さいが大きくなると10mぐらい(?)に成長。水陸両用になって積極的に人を襲うようになる。まあ「エイリアン」でもウェイランド・湯谷社の本当の狙いがエイリアンの地球持込みだったようにこの施設(本社とか言ってるから韓国政府の事業ではないのかな)の真の目的はこの体液が燃料になる生物の飼育育成だったのだな。
あと思ったのがこういう怪物だとか宇宙人だとかにもお国柄が出ていて今回の怪物もなんとなく「グエムル」の怪獣に似ている。触手があってぬめぬめしていて。アメリカだと最近のブームは手が4本あるゴリラ体系の爬虫類型かな。
で、僕はこの作品2Dで観て(というか2D上映のみだった)あとから知ったのだけどこの作品、韓国映画初の3Dアクション映画!という触れ込みらしいですね(韓国初の3D映画かどうかは知らない)。あとから思うとバイクでレースするシーンとか「いやに合成が甘いなあ」とか思ってたのだけど3Dで見ることを狙ってた絵作りなのだね。思い返すと3Dを狙ってたような構図も多かった気がする。全体的には「TSUNAMI-ツナミ-」同様大味だけれど「エイリアン」フォロワーとしてよく出来ている作品だとは思う。
ラスト近く、ヘジョンが作業着を脱いで着替えるシーンがあれば完璧でした(「エイリアン」でもリプリーがやっていた!)。
ところでヒョンジョンの死体についてた精液みたいなものって何なの?普通にジョンマンが突き落としたんだからそんなのついてるのはおかしいのだが・・・
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