ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

小説版『エマ』

小説 エマ (1) (ファミ通文庫)
結論から言うと、今の時点では、合いませんでした。



描写は素晴らしいですが、衒学的というのか、知識と時代考証を強く出し、微細に描かれた世界が「これって『エマ』なの?」と、違和感が強いです。知識はあくまでも道具であるべきで、風景の中に織り交ぜられ、色彩を増す絵の具です。今回は、知識に振り回された感じがします。



意識的にせよ、あまりにも細かすぎるのです。



筆者の人の個性、文体や表現は存分に発揮されておりますが、今回の本には、「好き」を感じません。普通はあとがきで、原作の中身についてふれると思うのですが、ヴィクトリア朝にも『エマ』にもほとんど言及が無く、時代考証や描写の話ばかりで、そこが残念でした。好きな人に、書いて欲しかったです。



知識や描写があっても、ストーリーや価値観、キャラがいないという印象が残りました。



「メイドさん」「ヴィクトリア朝」、あの世界を好きでしょうがない森薫先生の雰囲気が好きでしたから、職業的に書かれた感じのする今回の作品、残念ながら、続刊を買う気になれませんでした。