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2025年4月28日月曜日

【復刻記事】イスラム国+マッドマックス:リビアでバトル・モンスターが登場した


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 この記事は、2016年3月20日に本ブログのオリジナル(本国版)である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

 これまで存在した中で最も洗練されたテロ組織と化した「イスラム国(IS)」の隆盛は、戦闘員に(形だけの)装甲防御力と重火力を装備させるべく無数のDIYプロジェクトを行うまでに至っています。こうしたプロジェクトの大半はシリアとイラクの戦場に限られる運命にあったものの、リビアのIS部隊が、映画「マッドマックス」からそのまま飛び出してきたかのようなワンオフの逸品を完成させることに成功しました。

 2016年3月に初めて目撃されたこのバトル・モンスターはリビアの北東部のデルナで建設され、リビア国民軍(LNA)やムジャヒディーン・シューラ評議会と戦闘しました。(敗北する前の)デルナにおけるIS戦闘員たちはリビア国内にある他のIS支配地から完全に切り離されていたため、リビアに存在する巨大な武器庫や敵対勢力から鹵獲した少数の装備だけで対処を強いられたという事情があります。

 今回取り上げるバトル・モンスターは、6x6トラックをベースにしたものであり、多種多様な装甲板とスラット装甲を備えているほか、「BMP-1」の砲塔のみならず車体自体を組み込んだものです。ただし、「2A28 "グロム"」73mm低圧砲と同軸の「PKT」7.62mm機関銃は撤去され、その代わりに「M40」106mm無反動砲(RCL)1門を備えるオープントップ式の砲塔が本来の砲塔の上に搭載されています。言うまでもありませんが、「M40」を旋回させるためには砲塔内に操作要員がいなければなりません。高い位置にあるRCLはバルコニーや屋上からの敵の射撃にさらされやすいという弱点があるものの、それでも(その高さゆえの)優位性を有しています。


 バトル・モンスターの装甲は控えめに言っても特別です。「BMP-1」の車体側面の装甲防御力は前面下部にも追加されたスラット装甲によって強化されていることに加え、「BMP-1」の車体とスラット装甲の間は土嚢によってさらに強化されています。スラット装甲以外でモンスターを覆っているのは、車体にボルト留めされた厚さと強度の異なる鉄板です。最も特徴的と言えるのは、露出したホイールとタイヤを保護しているのが再利用された「BMP-1」の履帯でしょう。

 モンスターの武装は、砲塔の「M40」RCL1門と「BMP-1」の車体に備えられた8個(車体後部のドアにあるものを含めると9個)の銃眼から発射される小銃や軽機関銃で構成されています。主砲の「2A28 "グロム"」が撤去された理由は不明ですが、損傷したか、あるいは過去に目撃されたテクニカル搭載用として撤去された可能性があるのではないでしょうか(編訳者注:リビアで「グロム」だけを装備したテクニカルを転用した事例が確認されているのはISではなくイスラーム系民兵組織「リビアの夜明け」であるが、こベースとなったBMPがISに鹵獲されたり、あるいは同様のテクニカルをISが使用している可能性は否定できない)。


 上の画像が示すように、この車両の役割は装甲兵員輸送車(APC)や歩兵戦闘車(IFV)に似ているものの、「BMP-1」の車体が高い位置にあるため、乗降が相当困難になっています。小型の梯子があればこのプロセスは大幅に楽となるはずですが、モンスターには装備されていないようです。

 特筆すべき点としては、このバトル・モンスターのドライバーが、デルナの狭い通りで運転するのに四苦八苦したに違いないということが挙げられます。もちろん、外を覗く窓が非常に小さかったため、後退時も進行方向を確認できないまま動くこと余儀なくされたであろうことは言うまでもありません。下の画像で、ドライバーが外に向けて「AK-103」7.62mmで狙いを定めていますが、これは単にカメラ用のカットでしょう(つまりプロパガンダ用)。


 リビアは間違いなく突飛なDIYプロジェクト発祥の地です。終わりの見えない長期にわたる内戦で勝利を確実なものとするため、各勢力が敵対陣営より優位に立つことを目的とした改造兵器が今後も数多く生み出されることでしょう。リビアへの武器禁輸措置を順守する意思のある国は少ないものの、各勢力に供給される(実用的な)重火器が不足しているということは、(実際に役立つかどうかは別として)今回のようなDIYプロジェクトを継続する必要があることを意味しています。


改訂・分冊版が2025年に発売予定です(英語版)

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2025年3月23日日曜日

勢力圏の拡大:イラン製無人機の輸出先(一覧)


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 
 イラン製UAVを運用する国の数が増加しつつあるため、この国が開発した無人機の成功は自身の勢力圏を拡大させる契機となっているようです。

 国外の運用者には、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、イラクの人民動員隊(PMF)といった無数の非国家主体だけでなく、(導入当初の苦労を経て2021年後半に「モハジェル-6」UCAVの運用を開始した)エチオピア、ロシア、タジキスタン、スーダンといった国も含まれています。
 
 特にイランの無人機産業とU(C)AVの海外輸出を標的とした外国による制裁が課されているにもかかわらず、この国が持つU(C)AVの開発能力が急速に進化しているため、イラン製無人機を運用する国家が今後も増加すると思われると同時に、フーシ派のような非国家主体も同様に新しいイランの無人機を入手し続けていくでしょう。

  1. 以下に列挙した一覧の目的は、イランの無人機を引き渡された国家及び非国家主体を網羅することにあります。
  2. 一覧には、イラン以外の国家または非国家主体で運用されていることが確認されたU(C)AVのみが含まれています。また、シリアなどでイラン人によって運用されているものは含まれていません。
  3. 各U(C)AVの名称に続く角括弧に記載された年は、当該機体が最初に目撃された年です(通常は引き渡された年を指します)。
  4. この一覧については、イラン製無人機の新たな運用者が確認された場合に更新される予定です(2023年10月時点で暫定的に終了)。
  5. イランの U(C)AVの全貌については、こちらをご一読ください
  6. 各機体をクリックすると、輸出先で運用されている当該機体を見ることができます。
  7. 用語について...UAV=無人偵察機、UCAV=無人戦闘航空機、徘徊兵器(自爆突入型無人機の総称)

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