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紗倉まな、自作小説を語る「結果としてシンプルなセリフに」

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.05.01 20:00 最終更新日:2020.05.01 20:00

紗倉まな、自作小説を語る「結果としてシンプルなセリフに」

 

 作家として活躍するAV女優紗倉まなの新作小説『春、死なん』(講談社)が2月末に刊行された。収録されているのは、高齢者の性を描く「春、死なん」と、母親である女性の性を見つめる「ははばなれ」の2作。文芸誌『群像』に掲載されたものを1冊にまとめたものだ。作家としての繊細さを持つ彼女に、自作について語ってもらった。

 

 

ーー「春、死なん」では70歳の男性が主人公です。妻に先立たれて、コンビニで買ってきたエロ本で自慰するという、いわゆる「枯れた高齢者」が描かれていますが、モデルにした人物はいたのでしょうか?

 

 DVDのリリースイベントなどで会いに来てくださるファンの方のなかにも、主人公・富雄と同年代の方がいらっしゃって。仕事もやめてしばらく経って、今は暇を持て余しているんだ、とお話ししてくださったりするんですよね。70歳ならじゅうぶん若々しくいられると思うのですが、自分から進んで年老いた感覚に陥っているように感じることがありましたね。

 

 駅まで行けば栄えているものの、少し離れると田んぼもある。不便すぎず便利すぎない。私が生まれ育った街もそういった雰囲気がありました。近所の事情を把握できるような、そんな狭い地域のなかで過ごす登場人物たちをイメージして書きました。

 

ーー反響はいかがでしたか?

 

 掲載後に主人公と同年代の方たちから、「リアルだね」とか、「自分がこうなったらイヤだな」とか、いろいろな意見をいただきました。

 

ーー小説では、高齢者が自動車事故を起こすニュースについて触れられています。2019年、東京・池袋で、元通産省幹部が母子を死亡させた事件がありました。その後も高齢者の事故はたびたび報道されていますが、時事性は意識されたんですか?

 

『AbemaPrime』というニュース番組に携わるようになってから、日々さまざまなニュースを観るようになったので、時事性を無意識のうちに取り入れて書いてしまっている部分はありました。

 

ーー紗倉さんも、運転なさるんですか?

 

 はい。駐車場のある仕事現場であったり、遠方であったりすれば自分で運転して行くこともあります。ドライブ中に気持ちが整理されたり、一人で反省会をしたり、沈思する時間にもなっているので、書きたい描写が浮かぶこともあったり、心が落ち着くんですよね。

 

ーー「春、死なん」には、2世帯住宅による家族間の問題が出てきます。2世帯住宅によって、主人公の妻がうつ病を発症してしまうストーリーですが、紗倉さんもご経験あるのでしょうか?

 

 そうですね。小さいころは実際に2世帯住宅に住んでいました。父方の祖母が1階、私たち家族が2階で暮らしていたのですが、母と祖母はあまり良好な関係ではなかった記憶があります。私が確認できるような諍いはありませんでしたが、明らかに互いを疎ましく思っていることはひしひしと伝わってきて、ずっと不穏な空気が漂っていました。娘の私は絶対的に母親の味方だったので、その不穏さが伝染して、私も祖母には冷たく接してしまうことが多かったです。いま思うと本当に申し訳ないのですが……。

 

ーー嫁姑問題は死活問題になりますからね。

 

 大変ですよね。主人公の息子であり、嫁姑問題を引き起こすきっかけともなった賢治は、「これが正しい」と思っているものを悪気なく押し付けてくる、うっとうしさを持った人として描きました。年老いた親の面倒を見ること、二世帯住宅に住むことが、みんなにとって幸せで称賛されることだと思い込んでいる。親や妻が、自分たちは違うのだと言っても、理解できない。現実にもよくいる人物像ですが、極端に悪い方向に煮詰めて描いてしまったかもしれません。

 

ーー紗倉さん、ご兄弟は?

 

 私は1人っ子です。両親が共働きで寂しい時間も多かったので、兄弟のいる家庭に憧れていた時期はありました。

 

ーー1人っ子を意識する瞬間はありますか?

 

 これは友人と食事をしていたときに感じたことなのですが……。たとえば、食べたいものを注文したら、自分でそれを完食したいって思ってしまうんですよ。でも友人は、「私もそれ一口食べたい、シェアしよ~」って言うんです。そういうとき、「ええ? 自分が頼んだものだけを食べなよ」って拒みたくなってしまって(笑)。家族でご飯を食べるときもシェアをする習慣がそもそもなかったので、自分の皿に盛りつけられたもの以外は他人の領域だと思っていました。ただ協調性がないだけかもしれませんが、そういうときに1人っ子っぽいなと感じたことはあります。

 

ーーそもそもですが、普段はどのように作品を書かれていますでしょうか?

 

 書いてみたいシーンやフレーズを思いついたら、机に向かう感じです。丸一日休みでもまったく書けない日もあれば、仕事で疲れているのに唐突に書きたくなるときもあるので、コンディションによって筆の進みはだいぶ違いますし、「一日○○文字!」みたいに計画立てて執筆できたことは一度もないです。

 

ーー地の文の描写がとても丁寧に書かれています。たとえば、「人妻もの」に対する絶妙な表現に驚きました。「春、死なん」にはこう書かれていました。《人妻ものと言っても最近はもっぱら(中略)そのシチュエーションと所作だけが人妻であり、化粧の濃さと巻紙の程度により熟女に「させられて」いるのだった》……。

 

 これは日々思っていることです(笑)。実際の年齢は全然熟女ではないのに、人妻ものの売れ行きが安定しているせいか、こぞって熟女になりがちなんです。私はデビューが早かったので、当初はいわゆるロリ系と呼ばれていたのですが、年齢とともに人妻系を演じることも増えていきました。

 

ーー人妻ものを演じるときは、役作りなどされるんですか?

 

 世界観に入り込んでくれる優しいお客さんが多いので、パッケージや設定どおりの世界観に寄せるだけです。そこは甘えさせていただいてます(笑)。

 

ーー小説のお話に戻りますが、会話が少なめに書かれている印象があります。あえてそのようにされたんですか?

 

 比較的、会話を書くのが苦手なんです。説明くさくなってしまうことが多く、会話だけが文章の中で独立して見えちゃう気がして。「春、死なん」は発表後に、新聞や文芸誌などさまざまな場所で批評を頂戴しました。それを参考に、本にする過程で削った文章も多くあります。結果としてシンプルなセリフが残りましたね。

 

ーー「春、死なん」は70歳の男性のお話でした。もし、40~50代の男性をテーマにするとしたら、どんな作品にしたいですか?

 

 んー、そうですね……。今はそれをテーマに書きたいと思っていないので、あまり思いつきませんが……。『中間管理録トネガワ』みたいな、上司と部下に板挟みにされた男性の葛藤みたいな内容でしたら、自分でも読んでみたいです(笑)。

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