ラブプラスに至るギャルゲ史の系譜

概要

ラブプラス

ラブプラス


『ラブプラス』の話題がネットで盛り上がっている。そこで、『ラブプラス』に至るまでにどのような経緯があったのか、コナミ*1を中心にしたときメモ以降のギャルゲ史(コナミ史)を振り返ってみたい。個々のタイトルへのコメントは適当に読み流して、全体の大まかな流れを把握して欲しい。それでは、「駆け抜けていくコナミのメモリアル」をご覧頂こう。

系譜

『ときめきメモリアル』シリーズ
  • 『ときめきメモリアル』
    • 恋愛シミュレーションゲームの源流となった初代ときメモ。『ラブプラス』のご先祖様。原作がPCエンジンで出たあたり、先駆性を感じさせる。後のPS・SS版まで合わせた売上は、ギャルゲ史上のトップクラスに位置している*2。今見れば陳腐な感じがするだろうが、先駆者の産物とはそういうもの。もちろん、『プリセンスメーカー』『同級生』など、ギャルゲ全体には、さらに先史を遡れる。
  • 『ときめきメモリアル2』
    • EVSでプレイヤーの名前を呼ぶという画期的なシステムを搭載した。まだ不自然な発音だが、大げさに言えば、『初音ミク』的な発想がある。CD-ROM5枚組の大作で、内容も洗練されたが、売上的には前作を超えられない。
  • 『ときめきメモリアル3 〜約束のあの場所で〜』
    • 3DCGを使用し、会話中にアニメーションする。もちろん、3Dというだけなら、『まじかるでーと』など先行作品はあるが、トゥーンレンダリングによるアニメ調の表現が新しい。この2.5次元的表現は、後の『アイマス』などを先取りした。が、シリーズで進歩し続けるにも関わらず、売上は落ちていく。その要因としては、恋愛ゲーム市場の広がりが指摘できる。
  • 『ときめきメモリアル Girl's Side』
  • 『ときめきメモリアルONLINE』
    • ときメモをオンラインゲーム化。現在はすでにサービス終了。ネットワーク化したい欲は、『ラブプラス』の女子同士の会話に関係あるか。現在、オンラインのギャルゲでは『ai sp@ce(アイスペース)』がある。
『ときメモ』以外のコナミギャルゲ
  • 『あいたくて… 〜your smiles in my heart〜』
    • 『ときメモ』を継承しつつも、それに対するアンチテーゼが入っている。たとえば、ゲームのラストに告白を配置する、ときメモ・スタイルを変えている。また、『ときメモ』のアニメ調の派手な原色路線ではなく、比較的淡い色彩でデザインされている。これらの特徴は、『ラブプラス』にも継承されているだろう。
  • 『Dancing Blade かってに桃天使!』
  • 『みつめてナイト』
    • ときメモを西洋風の世界観でやった。レッドカンパニーとの共同開発ということだが、後の『サクラ大戦3』で舞台が海外に進出したので、それと関連性はあるかもしれない。
コナミの関連作品
  • 『オトメディウス』
    • アーケードが原作のSTG。『式神』『虫姫』『東方』など、ギャルゲ化するSTGの流れに絡んでいる。タッチパネルを利用している(胸もさわれる)ところに注目。
  • 『クイズマジックアカデミー』
    • アーケードが原作のクイズゲーム。やはりタッチパネルのUIと、ネットワーク機能に遠いつながりが。
  • 『武装神姫』
    • オンラインゲームとフィギュアの連動企画。リアル空間と連動させようという部分に、『ラブプラス』との共通性が見られる。
  • 『ネギま』のような版権もの
    • たとえば、今年出た『ハヤテのごとく!! ナイトメアパラダイス』は、携帯機でアニメーションやポリゴンを使用している。そして、近年のギャルゲではそうした作品は珍しくない。現在のギャルゲにおいては無視できない勢力だろう。
  • ä»–
    • 『パワプロ』シリーズは、ギャルゲではなく野球ゲームだが、育成という点では関連ある。『ビートマニア』シリーズのような音ゲーを中心としたアーケードゲームも、直接ギャルゲとは関係ないが、当然UI周辺に関して何らかのノウハウを積んでいるだろう。
他社のギャルゲ
  • 『ルームメイト井上涼子』
    • 前のエントリでも触れた、時間同期型ギャルゲの先駆的作品。
  • 『どきどき魔女神判』
    • タッチペンを活用したDSのギャルゲでは先行作品。
  • 『キミキス』
    • 「キス」という明確なモチベーションを設定しているギャルゲでは、代表的な作品。
  • 『アイドルマスター』シリーズ
    • トゥーンレンダリングを使用している点で『ときめも3』と同じだが、MAD動画など時代の追い風を受けてブレイクした作品。これについては、コナミと異なり、二次創作に対して寛容な点がプラスになった。同じDSで『ディアリースターズ』が出る。
  • 『ドリームクラブ』
    • ちょうど同時期に発売された、やはりトゥーンレンダリングを使用したギャルゲ。前評判ではこちらに注目が集まっていたようだが、『ラブプラス』が一気に追い抜いた感じだ。
制作者の経歴

ラブプラスへの継承要素一覧

(※筆者の主観が入っています)

解説

こうして改めてギャルゲの歴史を振り返ってみると、『初代ときメモ』の大ブレイク以降、ギャルゲの流行にどこかしらコナミが関わっていることが分かる。

だが美少女ゲーム市場が拡散するにつれ、物語性を重視したノベルゲーム型ギャルゲの群雄割拠の時代に移っていく。そのポストときメモの時代においては、『ひぐらし』*3が選択肢すらないように、プレイヤーとのインタラクティブ性やコミュニケーション性よりも、長大なシナリオが重視される傾向にある。下表のように対照的な関係だ。

対照表 ストーリーの形式 重視する概念 ゲームの構成要素
恋愛SLG 単発のイベント インタラクティブ性重視 パラメータ管理とミニゲーム的操作
ノベルゲーム 連続したシナリオ ストーリー重視 テキストと選択肢とフラグ

しかしコナミは、オリジナルのギャルゲについては、インタラクティブ性を一貫して指向してきた。時代が変わってきたので、新しい追い風も出ている。ゲーム以外で言えば、ケータイなどモバイル環境の変化や、ロボットやAIへの受容といったことまでが、プラスに作用しているのではないかと思われる。

時間同期性や携帯性という個々の点では、先行したギャルゲがある。その意味では『ラブプラス』は新しくはない。むしろ、コナミの昔の作品が早すぎたと言いたい。だから言ってみれば、ときメモ以降の早すぎた要素に、プラスを与えつつ上手く回収・再構築して、時代の波に乗せてきたのが『ラブプラス』なのだ。

追記

『ラブプラス』がポッと出でないことを示すために、少なくともコナミの過去製品との関連性は存在することを指摘した。このまとめの意味はそこにある。

したがって、コナミのオリジナル性が強いということまでは論証していない。コナミの自社製品と他社製品のどちらが強く影響しているかについては、他社製品を中心にまとめた、また別のギャルゲ史との比較が必要になるだろう。

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