阪神タイガースさん「アレ」おめでとうございます🎉(今更感)
野球ファンの歴史を阪神ファン(厳密に言えば新庄剛志のファン)でスタートした私(参考文献), 今は日ハムのファンなれど阪神18年ぶりの「アレ」は心からうれしく思います.
現在は野球とは無縁の仕事*1をしている私とはいえ,
- 阪神って結局何が良くって「アレ」したんだ?
- あんだけ独走しての「アレ」だから何かしらの秘密・特徴がありそう.
- そうだ, データを見てみよう!
...と(本業もプライベートもまあまあ詰まっているにもかかわらず)気になったのでデータを見てみることにしました.
TL;DR
- 阪神タイガースはチームの投打共に「お散歩(四死球)」をいい感じにコントロールしたことで「アレ」をぶちかました.
- 打者は長打が出ない代わりに, 四死球を稼いだ結果出塁が増えて得点増加に繋がった.
- 投手は逆に相手に四死球を与えない, 相変わらずクオリティの高い投手陣の踏ん張りで圧倒.
- 打者・投手共に三振の数はやや心配, 「ソレ」が決まるかどうかは相手次第.
今回の評価方法
古典的なセイバーメトリクス(野球統計学)の手法・指標で評価してみることにしました.
得失点差による優位は言うまでも無しなので,
- チーム全体の成績傾向
- プレーヤー(打者・投手)のプレーの質および貢献
これらを思いつく限りのセイバーメトリクス手法・アプローチで切り出して考察を書いていきます.
- AIでわかるんじゃねーの?
- 今だったらホークアイとかトラックマンのデータとかもありそうだが
的な野球有識者・ファンの声も聞こえる気がしますが,
- 傾向をちょこっと見て評価するならAIに頼らなくてもちょっとしたデータの読み&可視化でわかっちゃうので使いません*2.
- 私のような素人*3がトラッキングデータを入手することはできないのでホークアイとかトラックマンとかそういうデータはありません(使いません).
って事でご了承ください.
なお, 言われなくても最初から下手くそとわかっている*4守備に関してはデータの不足&見ても面白く無さそうなので最初から無視します*5.
岡田タイガース強さのひみつ
世の中の話題的には「岡田監督の名采配」「コンバートがハマった」「湯浅が調子悪くても岩崎にスイッチできた投手陣の厚み」あたりだと思います&どれも正解だと思います.
データ的にもいくつか言えることがあるのですが一言でまとめてしまうと,
岡田阪神は打者も投手も「お散歩(四球)」をする or させないことが非常にお上手だった.
シンプルすぎる理由ですがこれに限るのではと思います.
チーム
私は古典的なセイバーメトリクスに魂を捧げた野球データオタクなので,
- 三振
- 四球
- 本塁打
セイバーメトリクス用語で言う所の「DIPS」と呼ばれる概念(を構成する指標, 参考記事)から攻めてみた結果あっさり答えが出ました.
※上図グラフの成績は2023/9/17時点のチーム成績を使っています.
ごちゃごちゃ書いてますが要約すると,
「阪神タイガースの打者は他のチームの打者より沢山四球を選び, 投手は他のチームの投手より四球を出さなかった」
という至ってシンプルな話でした, 難しく頭を捻る必要すらありません.
まあデータを見て論じたり, 私みたいなファンが外野からやんや言うのは簡単ですがこれをちゃんと実践できた選手の方々はマジで凄いと思います.
チーム成績を見た感じの傾向ですと,
- チーム打撃成績的に, OPSはセ・リーグ4位と低かったものの, 出塁率はダントツの1位でとかく塁にでる野球を徹底(しているように見える).
- チーム投手成績は近年の阪神タイガースらしく圧倒的でチーム防御率がセ・リーグ唯一の2点台, 与四球率も低い等とにかく相手にチャンスを与えていない.
- 本拠地が広い甲子園で(例年通り)ホームランが出ないことで打者は損をしている一方, 投手は打たれない(チーム被本塁打はセ・リーグ2位*6)
という阪神タイガースの現状に適合した理想的な野球をしてたんじゃないかなって思います数字的には.
打者成績
(多分ですが)例年以上に優秀で機能したであろう打撃陣の成績を,
- OPS(On base Plus Slugging). 最近は当たり前に使うようになった「出塁率 + 長打率」を元にした指標.
- wRAA(weighted Runs Above Average). 一言で言うと「どれだけ打撃(と一部の走塁)で貢献したかを得点化した」指標. なお今回は独自に計算しています(頑張れば計算できるので*7).
以上の指標に着目して見てみました(200打席以上の機会を貰っている打者に限定).
ちなみにwRAAはマイナスが普通にあります(参考記事).
規定打席到達者でOPS .800超えが3人いる時点で「アレ」してんじゃん.
大山, サトテル, 近本の貢献っぷりが半端ないですね. 3人とも成績を見ると出塁に振り切ってる(OPSの割に長打が少ない)のもわかりました.
あと, 中野&木浪の二遊間が打撃でも貢献してるのが凄い.
(最初に宣言した通り)この記事の分析では守備は無視してるので守る方はわからんですが, 少なくとも打つ方に限ると中野コンバートは良かったようにも思えます.
せっかくなので,
- 低出塁率
- 得点が低い
チームと比較してみる事にしました.
「中日じゃないんかい!」っていうツッコミはよくわかります(一応データはあるので見たい方はこちら*8), 日ハムにしたのは私が日ハムファンだからです.
ぱっと見ると,
- OPSが低空飛行. 一番打ってる(私が大好きな)万波中正*9ですら.800切り
- 日常的に出ている選手が万波とまつごーの2人くらい(かつ, まつごーの貢献度はさほど高くない*10)で清宮やマルティネスがもっと出ていれば...と思えるような成績.
- 守備ポジである二遊間&捕手の選手(上川畑, 伏見)のマイナスは理解できるがにそれにしてももうちょっとどうにかなりませんか!?
元阪神の新庄監督の采配アンド育成力に👏すれど, 岡田阪神のマネをしてもうちょっと出塁とか頑張ってくれないかなと思いました.
投手成績
最後に投手成績を見てみます.
- 防御率(era)
- 奪三振(so)
- 与四球(bb)
- 被本塁打(hr)
上記のよく知られている成績に加えて,
- FIP(Fielding Independent Pitching), 一言で言うと「周りの状況や野手の守備力に左右されない真の防御率」を表す指標のこと(参考記事).
というあまり知られていない(けど便利な指標)を使って阪神タイガースと中日ドラゴンズを比較します.
なお, 対象は「9/18時点で100イニング以上投げている投手」です(実質先発投手の比較となります).
まず言っておくと, 阪神も中日も先発投手陣は優秀です.
特に阪神村上と中日高橋は見ていてウットリしちゃいます, 高橋なんで10敗もしなくちゃいけないの可哀想*11.
何か差がないかなと思い, 「上記グラフに出した投手(100イニング以上投げた人)限定の奪三振率・与四球率を算出」して比較してみました.
※100イニング以上投げた投手限定 | 9イニングあたりの奪三振(平均個数) | 9イニングあたりの与四球(平均個数) |
---|---|---|
阪神タイガース | 6.63 | 1.50 |
中日ドラゴンズ | 7.46 | 2.71 |
阪神タイガースの与四球率が異常に優秀です(9イニングあたり1.5個の四球しか許していない).
投手陣全体だと2.16なのですが, 特に先発がコントロール効いてるっていうところが強みっぽいです.
なお, (全球団見たわけではないですが)中日の2.71も悪くない数字だと思います&奪三振率は素晴らしいですね*12.
結び - 阪神黄金期は来るのか?
というわけで,
- 阪神タイガースはチームの投打共に「お散歩(四死球)」をいい感じにコントロールしたことで「アレ」をぶちかました.
- 打者は長打が出ない代わりに, 四死球を稼いだ結果出塁が増えて得点増加に繋がった.
- 投手は逆に相手に四死球を与えない, 相変わらずクオリティの高い投手陣の踏ん張りで圧倒.
阪神タイガース, マジで強いわーっていうポジティブ・トークでございました&引き合いに出した日ハムと中日, 申し訳ない🙏(頼むもっと頑張ってくれ).
ただ, 弱点もあるなと思っていまして, 打者は三振が多く, 投手は三振が少ないはやや心配しています.
例えば今パ・リーグで無双しているオリックス*13と日本シリーズでぶつかった場合,
- オリックスはパッと見(するまでもなく)投手陣の三振が多いなどクオリティが半端ない.
- オリックスの打撃陣はチーム全体だと「三振と四球が少なく*14, ホームラン多い」という阪神とは真逆の特性.
なので, かみ合わせが悪いと苦戦するかもしれません, 「ソレ」が決まるのは三振と四球の数次第と言っていいかもしれません.
来月が楽しみになってきましたが, 個人的には阪神タイガースのセ・リーグ制覇は「そら、そうよ」で納得しました.
繰り返しになりますが,
阪神タイガースさん「アレ」おめでとうございます🎉(真顔)
以上, 久しぶりの野球ネタでした, 書いていて楽しかったです⚾また会いましょう🐯*15
Appendix: 参考文献&本記事の全グラフデータ
チーム成績
打者成績
投手成績
参考文献
真似してみようかな?と思った方向け情報.
*1:ちなみにデータサイエンスとも無縁です, たまにAI系の何かをすることはありますがほぼ趣味.
*2:私自身, ほぼ電卓でセイバーメトリクスを見る人なので, AIに頼るのは予測ネタ等「何か新しいものを作る」ぐらいしか使っていません. AIでやりたいこともあるのですがそれはまた追々...
*3:元・玄人だろ!ってツッコミは受け付けません, 事実だけど笑.
*4:守備が?なのは90年代以降の阪神においてある意味伝統だと思う.
*5:トラッキングデータがあれば最も興味深い分野であることは認めます...マジで.
*6:ちなみに1位はお察しの通り中日で, ワーストは...これもお察しヤクルトでした.
*7:私はBigQueryなどを駆使してやりましたが, 普通の方はエクセルなどで計算してもいいと思います, ちなみに計算は少しややこしいです(最初にwOBPを出さないといけない).
*8:データを見る前から想像してましたが, あまりに落差があるので本ブログでは不採用にしました, 米騒動だの戦う顔の男云々以前の問題やて...(ファンの皆さんの心境お察しします.)
*9:これはブログで丁寧に取り上げたいのですが, 想像の斜め上を行く成長ぶりにびっくりしてます. 長打はともかく打率が残ってるのは意外(.250打てたら御の字だと思ってました).
*10:パ・リーグ全体が投高打低とはいえなんで今年こんなに打てないんでしょう?
*11:他の投手陣もそうですが不憫でしょうがないですよね, なおバンテに守られている模様(阪神も甲子園なので似たような事情ではあるが)
*12:本音言うと, バンテという広い球場に岡林を初めとした(少なくとも守る方は)動けそうな外野手を抱えているなら「三振を取るよりフライを打たせる」努力をしたほうが良い気もします, 先発のイニングも伸びると思うので.
*13:最後の最後でデータ見たら阪神より334倍面白い傾向だったので, セイバーメトリクス的にはこっちの方が面白いかもと思ったり.
*14:特に四球の少なさはやばいです, 出塁率が日ハムと大差ないとわかった時は変な声出ました.
*15:本当はこんな事をしてる場合じゃないのですが書いてて楽しくなってきたので...w