俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

いまみちともたかと布袋寅泰

「いまみちともたか」でGoogle検索するとサジェストに「布袋」というワードも出てくる。

ハテ?布袋寅泰とイマサに何の関係が?と思った。

確かに80年代中頃から頭角を現したギタリストという共通点はあるけど、それ以外に接点が見当たらないと思ったら、なんと山下久美子のライブで共演していたのである。

1991年「Live Joy For U」より「ファンタジア」

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ある時期までBOOWY・布袋ファンだったが、山下久美子までは追ってなかった。そこまでコアなファンではなかったということなのかもしれない。

山下久美子は1988年に活動休止し、1991年に活動再開しているが、その際のツアーギタリストに当時解散直前のBARBEE BOYSのいまみちともたかと花田裕之が起用されている。そのツアーのいくつかに布袋がゲストで出演して何曲か共演している。おそらく、両者の共演はこれが最初で最後だと思われる。

山下久美子と布袋寅泰はBOOWYブレイク直前の1985年に結婚していて、山下のツアーに布袋が帯同していたのはよく知られた事実で、山下久美子のバックバンドに氷室以外のBOOWYのメンバーを起用しようとして氷室が起こったのが解散の原因になった、みたいな話はよく聞く話だが真相はよく分からない。

しかしBOOWY内での亀裂と同時に山下久美子の中にも葛藤があったようだ。BOOWYの名が世に知られるに連れ、布袋目当ての客が増えていき、同じ表現者としてのアイデンティティが揺らいでいった。BOOWYの曲がチャートインしても喜べなくなっていたという。それが原因で1988年に活動休止している。1991年に再開した時にツアーメンバーから布袋を外したのはそれが原因のようだ。そこで白羽の矢が立ったのがいまみちともたかだった。

実は布袋寅泰がいまみちともたかに言及しているものがYoutubeに上がっている。

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1990.9.13 NHK-FM ミュージック・スクエア(布袋寅泰)邦楽特集 Part 1

次に紹介するいまみち君っていうのは、僕はすごく仲良くて、BARBEE BOYS自体は僕はそんなにうーんて感じなんですけど、BARBEE BOYSが好きな人がいたら申し訳ないんですけど、怒らないでください
でも僕はいまみち君の才能には敬服しますし、彼とはいつかいい形で一緒になにかをつくってみたいなと思っています
(選曲はRADIO-Kで「JUST TWO OF US」)

BARBEE BOYSが好きじゃないという理由で RADIO-K なのだと思うが選曲が渋すぎる。仲良いというのは初耳だが、山下久美子のツアーに推薦したのは布袋なのだろうか?


今の自分の好みだと、ギターのトーン、フレージング、ボイシングや作曲センスなど総合的にいまみちともたかの方が好きなのだが、ステージ上での布袋寅泰の存在感は圧倒的だと思う。自分がギターを始めたのも布袋寅泰のライブをVHSで見てからである。音源だけだとギターをやっていなかっただろうと思う。山下久美子のライブでゲストとして登場した瞬間も縦横無尽に駆け巡り、激しいアクションで正確な演奏。ここまで華のあるギタリストは海外でもそんなにいないだろう。エディ・ヴァン・ヘイレンくらいではないだろうか?こんな人が後ろにいると、メインは一体誰なんだ?と思ってしまってもしょうがない。


同時代を駆け抜けてきた2つのバンドだが、ファン層はまったく被っていなかったと思う。

BOOWYは中高生メイン、BARBEE BOYSは大学生より上
みたいな感じで、実際に自分もBARBEE BOYSの本当の良さが分かったのは大人になってからだった。

BOOWYにも湿ったメロディの曲はいくつかあるものの(FUNNY-BOY、唇にジェラシー)すべて氷室の曲であり、布袋の作るメロディには湿った感じがまったくない。それが歌謡曲メインだった当時の風潮に風穴を開けたことは間違いないだろうと思う。一方BARBEE BOYSについては、音作りはポリスとかU2のようだし、演奏もかなりエッジが立っているがメロディはかなり湿っぽく、歌謡曲アレンジを施しても違和感がないだろうと思う。おそらく布袋がBARBEE BOYSを好みではないというのはこういうところだと思う。または同世代ならではのライバル意識も少しあるのかもしれない。

BOOWYはフォロワーがかなり多い。代表的なものはGLAYだろう。今ではあまり言われなくなったがGLAYが出てきた頃はよく言われていた。一時期のビーイングブームの頃にもBOOWYをコピーしたようなバンドもたくさんあった。学生バンドがコピーしやすいということも一因にあるだろう。ギターについてはとてつもなくインパクトがあるが、特段難しいことはしていない。アドリブもほぼなく頑張ってコピーすればコピーできるのだ。ちょっと難易度が高いのがJUSTYのソロとか、Bad Feelingのリフだが、それでも絶対に無理というほどでもない。

一方のBARBEE BOYSだが、これはかなりハードルが高い。ギターは耳コピできないほどややこしい。ギター教則本に載っているボイシングではないのだ。リフも常人では思いつかないようなフレーズが盛り沢山である。バンドフォーマットとしても男女ツインボーカルとソプラノサックスが必須のうえ、男性ボーカルが超ハイトーンである必要がある。ギターのほとんどに開放弦を含めているためキーの変更もほぼ無理(できても半音下げくらい)であり、コピバン権利保護をかけているのかと思うほどだ。それ故コピーバンドが少なく、フォロワーもいない。後年の再評価の要因もこの辺にもあると思われる。

自分がBOOWYを知ったのは1990年に放映された夜のヒットスタジオ最終回である。実は同じ日にBARBEE BOYSも流れていたし、「三日月の憂鬱」も聴いていたのにハマるまでいかなかったのは、中高生にはまだ早すぎたのだろう。

一方、いまみちともたかが布袋寅泰について話しているものもある。

2018.9.28 伊藤銀次のPOP FILE RETURNS 第261回『バービーボーイズ1988』特集その2 ~他人の過去は覚えてるけど、自分のことは今の楽しみ優先で忘れちゃう編~ ゲスト:いまみちともたか

www.110107.com

銀次:
こないだFacebook見てたら、山下久美子さんの・・


いまみち:
久美ちゃん!久美ちゃんも30年ぶりぐらいかな?
ちゃんとバンド形態で・・(2018年のライブで山下久美子といまみちともたかが共演)


銀次:
昔から交流はあったの?


いまみち:
彼女のワンツアー全部付き合った時があって(1991年夏頃)、もうなかなかスリリングでしたけどね
某ギタリストの代わりですから


銀次:
ああ、そういうことね


Rio:
それは結構前ですか?


いまみち:
それこそ30年前ぐらいですよ
本当すごい久々でした
ちょっと嬉しかったのは、いまみち君が弾くからいまみち君が弾きそうなギターの曲ばっかり集めてきたって言って・・・


銀次:
ニクいこと言うね


いまみち:
すごい久美ちゃん嬉しいなと思うんだけど、その曲がやっぱり某ギタリストの書いた曲ばっかだから、これは楽しいぞとか思って
ある意味燃えましたね


Rio:
やっぱり複雑だったりするんですかそのギターの部分が


いまみち:
いやいやそうじゃなくて、やっぱりリスペクト込みで、「てめえと同じことやりたくねえ」みたいなのもあるけど、やっぱりもう外せないとこを押さえててやっぱり素晴らしいし・・
あと当時じゃわかんなかった、久美ちゃん、「あなたもうこんな危ない歌詞書いてんの?」みたいなね
「作曲者はラブラブ、作詞者はちょっと冷めてる」みたいなのが、今読むとすごい分かるわけ
それを「これ結構久々にやるんだよね」とか言われるとじゃあもう頑張るしかねーじゃん


銀次:
そういうのをきちっと作品としてやるっていうのがさ、俺なんかだったらナイーブだから
そういうの出してきてやろうとした瞬間にいろんなもん思い出しちゃって・・・


いまみち:
でしょ?だけどそれをね、もうガーンてやってきたらやっぱりちょっと・・・
そんな機会の時に呼んでくれたからすごい嬉しくって、ちょっと楽しくってね


銀次:
それすごい、やっぱ久美ちゃんすごいね


いまみち:
すごいすね、やっぱ


銀次:
やっぱり、女の人でバンド従えてやっていくって結構大変なんだよね
男でも大変なんだから
もうわがままなやつらをさ


いまみち:
でもねやっぱり思った
この曲を提供されることも含めて、久美ちゃんって愛されてる人だなっていう
それに答えるように、さらけ出す作詞・・
俺、曲を覚える時に詞込みで覚えるので、なのでうっかりちゃんと聞いちゃうわけですよ
そうすると何曲か背筋が凍る思いしたんだよね
「久美ちゃん、これずいぶん闇深いよね?」って言ったら「わかるぅ?」とか言われて・・


銀次:
久美ちゃんなんかのバンドで弾くイマサのプレーってのは割とちょっと昔っぽい感じ?


いまみち:
指名で呼んでくれるライブの時は昔っぽいっていうよりも、いまみち君尖った感じのイケイケなギター弾いてくれるんでしょ?って感じで来るので、逆にきめ細かに覚えていきますよ

最後に、いまみちともたかの著書でスージー鈴木との対談中にちょっとだけ布袋寅泰のお話。

いまみち:
あのね。俺、ホントにソロを弾くのがイヤなのよ。


スージー:
布袋寅泰さんは好きそうですよね。


いまみち:
いや、彼の例えばBOOWY時代のギター・ソロとか、全部フレーズは作曲していると思うよ。
俺も、そういうつもりでレコーディングの時はやるんですよ。それでベストのテイクを録る。本当にギター・ソロをやるんだったら、ソロのために別のコード進行を作る。


スージー:
布袋寅泰も完璧にアレンジメントしてて、そういう意味ではギターは歪んでいて、いわゆるソロっていう感じですけれども、インプロビゼーション5分とかって人じゃないですよね。


ちなみにいまみちともたかと布袋寅泰の共通点としてはローランドのジャズコーラスというのがある。BOOWY時代の布袋寅泰は、ギターの音が全然歪んでいなかったと思うが、いまみちともたかの音色はそれに輪をかけて歪んでいない。両者ともに今はバンド時代よりも歪んではいる。
なお、布袋は「FLY INTO YOUR DREAM」でインプロビゼーション5分の人になる。