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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。すでに資格を持っている人はもちろん、資格を取って独立したい人や資格に興味がある人に必読のQ&Aを、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書「資格起業バイブル」から、再構成してお届けします。



■年商1,000万円までは「無料」でいこう
『Q.ネットからの相談を有料にするか無料にするかで悩んでいます。どちらがよいでしょうか?

インターネットからくる相談や問い合わせは、いたずら的なものも多いと聞きました。もともと相談料は無料でいこうと考えていたのですが、有料のほうが真剣なお客様が来るので、有料にしたほうがよいという話も聞き、悩んでいます。どちらがよいでしょうか?』

相談料を無料にするか、有料にするかという問題については、開業初年度でも開業10年以上のベテランでも同じように悩みます。なぜならば、そこには正解がないからです。

仮に相談料を無料にすれば、当然問い合わせの数は増えます。しかしながら、一方で冷やかしまでいかなくとも、真剣ではない相談まで対応しなければなりません。特にインターネットでは手軽にメール相談ができるため、相談料が無料であれば気軽に相談することが可能になります。

ただし、こういった無料相談をあたかも法律相談の自動販売機のように考えている方もいるので、場合によっては無料相談の対応だけでも精一杯……ということも考えられます。士業の業界では、開業してそれほど期間が経っていない、いわゆる新人士業が相談料を無料にする傾向にあります。これは実務の自信が万全ではないということと、仕事を量産したいという気持ちの表れといえます。

これに対して、有料相談は最初から報酬をいただくため、全体的な問い合わせの数は無料に比べて減少します。しかしながら、最初から相談にお金を払うということは、依頼を真剣に考えているといえますので、からかいの相談は極めて少なくなります。一般的には自信を持って実務をし、営業もそれなりに自信があるという場合に、有料相談を選択することが多いようです。

このように、無料相談も有料相談もどちらにも有利な点、そして弱点を抱えています。最終的には独立開業するあなたの決断、ということになりますが、私は自分自身の経験から年商1,000万円を突破するまでは、相談料は無料でいくのがよいと考えています。

なぜ、最初は無料相談にするべきなのかといえば、それは相談を受けることや実際の対面接客を通じて早く多様な経験を積むことが、実務能力や営業力の向上につながるからです。開業したばかりの新人にもっとも足りないのは「経験」です。多数の経験を積むことで実務にも営業にも自信がついてきますので、結果として成長は早くなるといえます。

私自身は、選択したというよりは自信のなさから無料相談でしか始められなかったということもありますが、無料でさまざまな相談を受けたことが結果としてよかったと感じています。市販されている法律Q&Aでは出てこない現場の法的な相談や、イレギュラーな許認可や行政手続きなど極端な言い方をすれば、ベテランの先生でも経験したことがないような業務まですることができました。

開業から1年も無料相談を続けていると、相談者のパターンもわかってきますし、また緊張することも減ります。なかには、まったく仕事につながらないような相談もありました。一切お金を払う気がないお客様や、ただただ愚痴を聞いてほしいお客様など、わかりやすい言い方をすれば「お金にならないお客様」も増えました。しかし、こうした経験を積むことによって、お金になる、ならない、という違いが少しずつわかるようになりました。

このようなことから、開業から年商1,000万円までは、よほどの自信か戦略がない限りは、無料相談を選択することが賢明でしょう。ところで、経験を積むという点以外にも無料相談を推奨する理由があります。

あなたはインターネットからの相談を有料にするか無料にするか悩んでいるということでしたが、インターネットからの問い合わせは無料で受けたほうがよいといえるでしょう。なぜなら、インターネットで営業をしている士業のほとんどが「無料相談」を実施しているからです。

もし、あなたが士業に依頼を考えていたときに、相談を無料で受ける事務所が数多ある中、少数派である有料相談のみ事務所に相談をするでしょうか。まずは無料で対応してくれる事務所に相談するのが自然ではないでしょうか。

いわゆる業界大手といわれるような事務所も相談料は無料の取り扱いの事務所が多いのが事実ですし、よほどのことがない限りは無料相談をうたうほうがスムーズに相談を増やせるでしょう。

■「回答」で解決できるのは「有料」
無料相談であれば経験を積めるとはいえ、仕事が増えてくれば永久に無料相談を行うことには限界があります。しかしながら、いきなりすべての問い合わせに対し、有料相談に踏み切る勇気が出ないのも事実です。そこで、段階的に次の方法を採ることで移行がスムーズになります。

その方法とは、「相談の先に業務の提案ができるもの」に関しては無料相談を提案し、「相談の先に業務の提案ができないもの」には有料相談を提示するというものです。

ここで、具体例を挙げましょう。たとえば、実際にこれは私が過去に受けた相談ですが、「ある事情で書いてしまった念書の効果について教えてほしい」という相談がありました。これは事情を聞いたところ、念書の効果について回答するのみに留まることがわかったので相談料は有料としました。こういった相談は無料で答えてもなかなか報酬に結びつかないのです。

もうひとつ逆の例を挙げます。別の相談で「悪質商法に騙されて商品を買ってしまった。解約したい」というものは、状況を聞くと内容証明郵便の送達でクーリングオフができるため、「内容証明郵便の作成」という業務の提案ができます。そのため相談は無料で受けました。内容証明郵便を送ったほうがよいという私の提案を受けてくださったお客様からは結果として書類作成の依頼を受けることになり、報酬を得ることができました。

このように、相談の先に業務の提案ができるかどうかの違いで無料相談と有料相談を使い分けることがひとつの考え方です。

横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士

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【プロフィール】
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1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ2,000人以上が参加。著書に『プロが教える潰れる会社のシグナル』(さくら舎)、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、他多数。

公式サイト https://yokosukateruhisa.com/
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