荻上チキ『ウェブ炎上』(ちくま新書)発売記念ページ

10月9日、chiki が書いた書籍『ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性』がちくま新書にて発売いたします。


ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書)

ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書)


本書は、ウェブ上での流言飛語の拡散や、炎上現象などの事例に触れながらそのメカニズムを分析。「インターネット上でのコミュニケーションが社会にもたらす影響について考える」ための議論やリテラシーを共有することを目的とした一冊です。用語集や事例集としても楽しめるように工夫をしたので、どうぞお気軽に手にとってみてください。


また、このページでは、本書の発売を記念して掲載するキャンペーン用エントリーや関連エントリーなどをまとめていくつもりです。お付き合いの程、どうぞよろしくお願いいたします。

  • 目次

『ウェブ炎上 ネット群集の暴走と可能性』
はじめに(公開中)
一章 ウェブ炎上とは何か
日常化したインターネット/注目をあつめる「web2.0」/盛り上がるマーケティング言説/「怪物」としてのインターネット/「メディアはメッセージである」/「可視化」と「つながり」/「ロングテール」という期待の地平/集合知は信用できるか/サイバーカスケードという言葉/ブログへのコメントスクラム/個人情報をめぐる騒動/企業と「祭り」/商品をめぐる「祭り」/盛り上がる「投票ゲーム」/流行語をめぐる騒動/「怪物」の二面性/
二章 サイバーカスケードを分析する
デイリー・ミーとエコーチェンバー/エコーチェンバーがもたらす分極化/「デリート・ユー」の誘惑/集団分極化とサイバーカスケード/インターネットの起源/のび太くんに見る道具と欲望の関係/メディアの不透明性/アーキテクチャという思想/議論を左右するアーキテクチャ/自走するコミュニケーション空間/ブロガーとして、ニュースサイト管理人として/複数のコミュニケーションへの常時接続/可視化とつながりによる「誤配」の増大/記号流通回路の変容/
三章 ウェブ社会の新たな問題
イラク人質事件へのバッシング/「自作自演説」というハイパーリアリティ/流言飛語はなぜ生まれるのか/デマの出現とリアリティの構築/「分かりやすさ」へのカスケード/立ち位置のカスケード、争点のカスケード/「浅田彰の戯言」という流言飛語/潜在的カスケードと顕在的カスケード/「ジェンダーフリー」をめぐる騒動/まとめサイトと抵抗カスケード/アンチサイトの揺るがなさ/「福島瑞穂の迷言」をめぐって/リアリティと「ソース」をめぐる困難/自走するハイパーリアリティ/言説空間の不可避的困難とは?/
四章 ウェブ社会はどこへ行く?
サイバーカスケードの功罪/ネットがもたらす過剰性/道徳の過剰/ウェブにおける行動と予期の変化/ウェブと政治の不幸な結婚?/批判の語彙/「2ちゃんねらー=右傾化した若者」という間違い/シニシズムの回路と向き合うこと/監視の過剰/討議を豊かにするアーキテクチャへ/ハブサイトの役目/「鮫島事件」と自走への自覚/合意によるリアリティ/悲観論と楽観論を超えて/
あとがき

荻上チキ著『ウェブ炎上』とサンスティーン著『Republic.com 2.0』
「ニコニコ自演騒動」のさなかに垣間見た「ネット街宣」のすごさ
ネット社会について考える本(じんぶんやごっこ)
「福島瑞穂の迷言」という都市伝説について(事務所コメント付)
「バックラッシュ」についてマスコミ学会で喋ったこと
AERAに取材を受けたときのレポ 〜まとめサイトの作られ方〜
2ちゃんねる閉鎖騒動のコピペについて


  • 補足とか

p.53注部分:最初のセンテンス後に「(ウィキペディアより)」というのを入れ忘れていました。訂正します。
p.54 「〇円のグラフィックボードに至っては一億五〇〇〇〇万件もの注文が殺到しました」の数字は「一億五〇〇〇万件」。千野帽子さん、ありがとうございます。よりによってここが誤植(笑)
p.134 「コミュニケーションの二段の流れ」→「議題設定効果」(なぜこんな間違いが…!)

  • 本書参照サイトとか

(参照サイト一覧を書けなかったので、発売してしばらく後、こちらでまとめていきます)


  • 本書フィードバックピックアップ紹介

次々と紹介される「炎上」の実例を見ながら、そこに可能性を感じるか恐怖を感じるかは、その人次第。著者のスタンスは中立的で、まず「実態を把握することが必要」と言っている。ただ、「炎上」の被害を受けた経験のある人にとっては興味津々のテーマだろうが、ネットを利用しない人にとっては、これ全体が「存在しない世界の話」かも。その乖離(かいり)が、最大の問題なのではないだろうか。
朝日新聞に掲載された香山リカさんの書評より

ネットについて語ることが、最新のビジネスについて語ることに等しいと考えるのは、貧しい発想である。ネットが社会の隅々に入り込み、多様な階層に利用されているいま、ネットの現象を分析する観点もまた、複数化し、多様化している。そのひとつの現れが、この数年間で急速に成長してきた、エンジニアの言葉ともマーケティングの言葉とも違う、「人文系」「社会学系」とでも呼ぶべきネットについての新しいタイプの分析的な言説である。
 その言説は多分に抽象的で、担い手の多くは若い学者やブロガーだ。その成果も、いまようやく書籍化されつつある段階なので――最近の本であれば、1981年生まれの若いブロガー、荻上チキ氏の『ウェブ炎上』(ちくま新書)をお勧めしておこう――、このサイトの読者はその存在すら知らないかもしれない。エンジニアの言葉がネットのツールとしての可能性に焦点をあて、マーケティングの言葉がそれを駆動する欲望に向けられているのだとすれば、人文系の言葉の標的は、ネットそのものにではなく、むしろ、そのような新しいコミュニケーションツールの誕生を通してはじめて見えてくるようになった、人間や社会の本質のほうにある。それは、短期的には「役に立たない」かもしれないが、筆者個人としては、やはりそこでも、ネットについて何か重要なことが語られているように感じている。
東浩紀さんのコラム席巻する「つながりの社会性」・人文系が語るネット(上)の中で。

荻上さんはウェブ上での「集団的な情報収集」を利点として挙げつつ、情報を自分用にカスタマイズすることによって「似たもの同士の同調が形成されやすい」ことを指摘。
荻上さんは解決策のひとつとして、「対立する意見」も含めた「まとめサイト」作りの重要性を指摘している。
TBS RADIO 小西克哉 松本ともこ ストリーム内での永江朗さんの紹介。

現在のインターネットがもつ高い匿名性によるコミュニケーションの危うさ、匿名メディアとしての不安定さを、荻上チキの『ウェブ炎上』はわかりやすくまとめている。(…)インターネットの本来的な存在意義の変化が「産み落としたさまざまな歪みに対し、極端な対応をすることで、有意義なものも十派一絡げに根こそぎにしてしまう」との問題意識は、すべての読者が共有すべきことだ。
『週刊文春』11月15日号、「文春図書館 今週の必読」内コラム、井上トシユキさんの「インターネットの“今”と“未来”を読む」より

メディア研究を専門とし、自身もブログを運営、ネット上でのキャンペーンを展開することもある若手研究者による本書は、こうした「炎上」現象が、なぜ、どのようなメカニズムで発生するのかを、社会学や心理学などの知見を用いて解説したものだ。ネット上で起きた実際の炎上やデマ・噂の事例を大量に紹介しながら、それがネット以前からも存在していたものであると同時に、ネットの登場によって増幅されたり、形式が変化したりしているのだということが、読者に分かりやすく提示されている。
『中央公論』2007年12月号、鈴木謙介さん「ウェブ上での“増幅した批判”が「希望」を生み出す可能性」より