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科学な本のご紹介: ミニ特集:農作と土

科学に佇む書斎

土と施肥の新知識

『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』
『土・牛・微生物 文明の衰退を食い止める土の話』
『ここまでわかった自然栽培 農薬と肥料を使わなくても育つしくみ』
『土と施肥の新知識 環境・資源・健康を考えた 改訂新版』
『土が変わるとお腹も変わる 土壌微生物と有機農業』

ここまでわかった自然栽培


『ここまでわかった自然栽培 農薬と肥料を使わなくても育つしくみ』
 杉山修一 農山漁村文化協会

●育て方が違うと、どのくらい農作物の成分が違ってくるか。
 植え合わせしだいでどのくらい雑草を減らしていけるのか。
 いろいろ植物生態学の先生が試してみたよ。

こちらで紹介
→●本『ここまでわかった自然栽培 農薬と肥料を使わなくても育つしくみ』


『土と施肥の新知識 環境・資源・健康を考えた 改訂新版』
 後藤逸男,渡辺和彦,小川吉雄,六本木和夫
 全国肥料商連合会

●定評のある実用ノウハウ本。
 試行錯誤と調査記録を積み重ねて得られた、堅実な知見を記してくれている。
 植物の体液を採集分析して、そこから「土壌成分の何が足りないのか」を推察して肥料を調整するというくだりもあって、まるで人間の病院や獣医さんがやってる血液検査!

こちらで紹介
→●本『土と施肥の新知識 環境・資源・健康を考えた 改訂新版』


土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話


『土・牛・微生物 文明の衰退を食い止める土の話』
 D.モントゴメリー 築地書館

●地味ながら、土中生態系である根圏の復権、農業助成金の問題、不耕起と有機農業の可能性など、堅実に記してある。
 けど。
 昨今、行き過ぎた土中生態系ファンタジーを掲げる人々に称賛されている一冊でもあって、ちょっと悩ましい位置関係の書物。

-=-=-=-=-=-=-=-=
目次より抜粋:
 腐植と微生物が植物を育てる
 環境保全型農業の3原則
 雑草が生える余地をなくす方法
 ハイテク不耕起農業
 渇水から作物を守る
 菌根菌と土壌団粒
 過放牧神話の真実
 微生物を生かすバイオ炭
 根菜が高める土壌栄養素
 土を取り戻す新しい哲学

科学の本多様な作物を栽培する農場は、全体としてヘクタールあたりより多くの食糧を生産する。小規模で多様性の高い農場は、工業化された単一栽培の大規模なものより、面積あたりの生産量が多いのだ。



同じ著者さんの『土と内臓』『土の文明史』も合わせて読むと、もっと土色に渋くなれるよ。

土の文明史



土と内臓




土が変わるとお腹も変わる?土壌微生物と有機農業


『土が変わるとお腹も変わる 土壌微生物と有機農業』
 吉田太郎 築地書館

●科学方面から得られた知見と、著者の(ちょっとこじれた)希望的観測が練り合わさって扱いが難しいことになっている本。
 上掲のモントゴメリー『土と内臓』や、
●本ポール・ホーケン『ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法』
を参照しているけれど、著者の主張は「自分たちだけはわかってる」感を醸していてどこか特定の方向へ行こうとしている。
 ポピュリズムサイエンス?

科学の本植物は光合成した糖の30%を土壌中の微生物を養うために根から滲出液として放出している。これは液体カーボン経路(Liquid Carbon Pathway)と呼ばれている。


「Liquid Carbon Pathway」を検索しても、特定の団体系からのような情報しか拾えず、科学的な用語ではないらしい。
いや、植物が根圏と相互作用をしているということ自体は科学的には正しい知見なんだけれどね。


土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命


『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』
 ケイブ・ブラウン NHK出版

●健全な土には健全な作物が宿る!
 ファンタジーのない、ロジカルな実践の説得力が光る一冊。
 肥料と土壌の成分バランスや、畜産と農耕の実践などチャレンジ心をくすぐられる。

-=-=-=-=-=-=-=-=
目次より抜粋:
 ホリスティックな土地管理
 輪換放牧のシステム
 家畜の種類を増やす
 卵の生産量を増やす
 すべての牧場は羊を飼うべし
 土の健康の5原則
 カバークロップの偉大な力
 よりよい害虫駆除の方法
 見るべきは面積あたりの収益

科学の本ミネソタ大学の環境学者デイビッド・ティルマン博士の研究によると、植物の多様性は7〜8種類に達すると相乗効果が生まれるという。

科学の本地中で適切な養分循環が起こるような炭素率の作物やカバークロップを育てればよい。
 小麦など炭素率の高い作物は、炭素率の低いエンドウマメなどに比べ、ずっと分解に時間がかかる。

科学の本マメ科は炭素率のバランスを整え、大根の根は窒素を貯留し、翌春に放出する。
 窒素が増えたおかげで、作物残渣の分解速度は見事に早まった。


 窒素が足りない土壌にはマメ科を漉き込め、とか要点もわかりやすくて、余ったきなこを庭にまいてきたよ。




 おまけ

■2022年10月
  土壌の酸性環境に触発されて「落ち根」が増加しても、 土壌有機物の養分保持機能はかわらない
  森林研究・整備機構 名古屋大学

■2022年10月
 落ち葉は“ゆりかご”のように微生物を包み込んではぐくみ、細根は“肥料”として土壌に還る?  森を支えるそれぞれのやり方
  名古屋大学 三重大学 森林研究・整備機構

■2022年10月
Phys.org Study sheds light on life cycle of tree roots
落ち根の調査
 樹木の養分や水分の吸収を司る細根(直径2mm以下の根)のゴミを調査

■2023年2月 
アルバータ大学  Do forest trees really “talk” through underground fungi?
森の木は本当に地下の菌類を通して「話す」か?
 巷説「森全体のウェブ」は証明されていない
 共通菌根ネットワーク (CMN)の存在自体は科学的に証明されていますが、樹木やその苗木に利益をもたらすという強力な証拠はない
Nature 「wood-wide web」のエビデンスを調べる
 common mycorrhizal network(CMN)
 野外研究の結果にばらつきがあること、別の説明ができること、あるいは限定的過ぎて一般化が支持されない
 根拠のない記述を生む引用の比率が、CMNの構造に関しては25%、CMNの機能に関しては50%近くにも及ぶ






 おまけ デミルーン




→『ミニ特集:農作をしてみる本 その2』
→『ミニ特集:農作をしてみる本 その1』
 



このページ ミニ特集:農作と土 は以上です。

 No.2022,0730
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