アイヌの歴史 海と宝のノマド
すごいぞ北の民!
この本を読めば北方のダイナミックな民族交流・物資流通が、ビビッドに立ち上がる!
札幌を起点として、サハリンの北緯50度までの距離は東京〜本州西端間に相当し、シュムシュ島までの距離は東京〜沖縄間に相当する。アイヌは宝を求めて広大な空間を往来する「海のノマド」だったのだ。
『諏訪大明神絵詞 すわだいみょうじんえことば』によれば、一四世紀はじめの北海道には三種類のエゾ、すなわち「日ノ本 ひのもと」「唐子 からこ」「渡党 わたりとう」がいた。このうち「日ノ本」と「唐子」は和人と言葉がまったく通じず、夜叉(やしゃ)のような姿をしていた。
そういえば、『諏訪大明神絵詞』には、蝦夷についての記述があるそうだ。三種類の蝦夷がいて、「日ノ本」「唐子」「渡党」という。このうち言葉がまったく通じないのが日ノ本と唐子で唐子が大陸系、日ノ本がアイヌではないか、という説がある。諏訪大明神絵詞は中世アイヌの唯一の資料らしい。
— 五蟻(いつあり) (@abysmalhypogeum) 2010年5月15日
オオワシの尾羽を「命ト等シキ財」と認識し、助命に値する最上の「宝」とみていたのは、蝦夷というより、むしろ本州の貴族層であり、またその交易にかかわる商人の方だったようだ。
サハリン・アイヌはミイラづくりをおこなっていた。この習俗は、ニブフやウィルタをはじめ周辺の人びとにはみられないことから、サハリン・アイヌに固有の文化とされてきた。
1950年に平泉中尊寺の学術調査がおこなわれ、金色堂の下に眠る藤原三代のミイラが確認されたときも、サハリン・アイヌのミイラ習俗との関連が注目された。
擦文文化は、七世紀以降、東北北部から道南や道央へ移住した農耕民の文化を在地の人びとが受容し、また移住者と同化して成立した。
アイヌの刀子(マキリ)は柄元が鞘にのみこまれる形式で、柄が強く反る特徴をもつが、これも奈良時代の日本の刀子の特徴と一致する。
あと、アイヌ関連の展示にマキリがあった。
— 週末審神者さまんさ (@thavasa1002) 2016年3月5日
彫りがかわいい! pic.twitter.com/I5UkthGOzw
中川裕 ”アイヌの古老が一様に博識で物覚えがいいのは、忘れてしまえば二度と取り戻せないという気持ちでいつでも物事に接してきたからであり、かれらは文字を知っていても自分の記憶を書き残そうとはしなかった。”
クラストルによれば、未開社会には歴史がないのではなく、位階秩序・権力・服従・統合・国家への抵抗の過程こそ歴史とされる。これにしたがえば、北の狩猟採集民は、異文化の宝が生みだす不平等の流れに抗うことはできなかったものの、国家になる一線を越えることには抵抗し、踏みとどまったといえるだろう。
アイヌが文字をもたなかった事実も、かれらが国家をもたなかったことと関連しているのかもしれない。文字の使用は国家社会の成立に深くかかわっていると考えられているからだ。
そして、アイヌに国家がなかった事実を歴史的な停滞と即断できないのと同様、文字がなかった事実についても、それがネガテイブな意味しかもたないことなのか、あらためて考えてみる必要がある。
瀬川拓郎「アイヌの歴史 海と宝のノマド」読了。考古学と古文書と経済と自然史と民族の宗教観。多方面の資料から読み解くアイヌ史は説得力ある。平清盛の時代は北海道の狩猟産物が奥州藤原氏経由で関西まで届いてた時代なんだろうな。
— オハラ ショウスケ (@shouske) 2012, 1月 2
瀬川拓郎「アイヌの歴史」読書中:宝は北の狩猟採集民に外部へ膨張してゆく大きなエネルギーをもたらした。アイヌの文化やアイデンティティは、自閉的な環境ではなく、戦争対立同化といった異文化との様々な接触関係の中で形づくられた。アイヌは宝をもとめて広大な空間を往来する「海のノマド」だった
— 花澤晋也 (@ogawasusum) 2012, 2月 12
アイヌといえば、今読んでいる瀬川拓郎の『アイヌの歴史 海と宝のノマド』は考古学的見地からアイヌの歴史を記述していて、アイヌのイメージを良い意味で壊してくれている。しかし言語学的な意見がまったくない。考古学だけだと言語学的な観点は抜けるものなんだなあと思う。
— 五蟻(いつあり) (@abysmalhypogeum) 2010, 5月 21
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『アイヌの歴史 海と宝のノマド』
瀬川拓郎
講談社選書メチエ
ゴルカムが北方民状況をかき回す前の著述です。
著者も参加している 『東アジア内海世界の交流史』 とも読み合わせると、さらにさらに知見が深まります。
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『ミニ特集:アイヌの過去を繙く本 その8』
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『ミニ特集:アイヌの過去を繙く本 その5』
『ミニ特集:アイヌの過去を繙く本 その4』
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『アイヌ語のカナ小文字ってどう書くの:小文字カナ入力』