ミニ特集:人類学や文化研究の本
『人類学と脱植民地化 現代人類学の射程』
『いれずみ(文身)の人類学』
『構造人類学のフィールド』
『人類学と脱植民地化』
太田好信 現代人類学の射程 岩波書店
ボアズは、人種論や進化論により人間の差異を説明していた人類学に、文化という概念を導入した。その結果、各文化の価値を階層化せず相対的に評価するという文化相対主義を、人類学のみならずアメリカ社会に広めた。
ヤノマミ人は、60年代から調査活動を続けてきた米国やフランスの人類学者たちに対して「アンソロ」という侮蔑の意--ギリシア語の「人間」とは正反対の意味--を込めたことばを使う。そのことばは、情緒が不安定で、狂気じみた奇癖をもった非人間、という意味なのである。
『いれずみ(文身)の人類学』
吉岡郁夫 雄山閣出版
香原志勢(人類学教授)によると、日本近海では八月の月別平均海水温度が25度の線のあたりに、いわゆる海女どころが集中し、それより南あるいは北へ行くと、海女より海士(男)が多くなる。
外骨腫を伴う縄文人骨のほとんどが男性であることは、主に男の海人(海士)によって潜水漁が行われたことを示している。
縄文時代の土偶で文身を表すと推定されているものは、すべて中部以東の東日本から発見されている。それに対して、西日本では土偶の発見例が少なく、文身を表現しているとされる縄文土偶は見られない。
弥生時代に日本の一部で文身が行われていた記録があるので、縄文後期以降も文身が行われたのではないか、という推測が可能になる。この時代に文身習俗があったという証明はできないが、早くから土偶の顔面文様のなかには、文身の文様を表現したものがあるのではないか、と考える研究者が多い。
『構造人類学のフィールド』
小田亮 世界思想社
遊牧民のヌエル人社会では、放牧は男の仕事だが、搾乳は女の仕事であり、成人男性が乳を搾ることは禁じられている。
つまり、ヌエル社会では、主食である牛乳を男が手に入れるには身内に女がいなくてはならないのである。そのような性的分業は、成人男性と成人女性とがカップルとして一緒にいる必要性を生む。
家事労働は、労働市場で売買されないので、誰が行うにしてもタダ働きとなる。市場原理からすれば、タダ働きをする労働者などいるはずはなかった。しかし、近代はこれらのタダ働きの担い手をうまく発明した。それが、家庭に引っ込む女性、すなわち「主婦」である。
「使用人なき女主人」である近代家族の主婦は、女主人が自分たち自身では行わなかった炊事や洗濯や育児などと一緒に担うことになり、主婦の仕事としての家事労働というものが生まれた。
労働力を商品とする市場社会において、なぜ主婦は家事労働というタダ働きをすることを納得できたのだろうか。そこに登場するのが、「家族愛」であり「母性愛」である。
文化相対主義は、「異なる文化に属する人々は異なる世界に住む」という命題の下に、各民族を固有の文化に分断し閉じ込めてしまう「文化的アパルトヘイト」として批判されることがある。
月見そばが「月見」と呼ばれたり、白雪姫が「白雪」と呼ばれるのは、たまごが月に似ていたり、その子が雪のように白いという類似性によるが、そのような記号同士の結びつきをメタファーと呼ぶ。
王殺しは一種の社会全体の通過儀礼なのである。大宇宙の力の媒体である王の身体の自然死を認めず、王の死というものを、王殺しによって王の身体を別の新しい身体と交換するという形に翻訳しているのである。
日本の中世には日食や月食のときに天皇の御所をムシロでつつむという作法があったという。この作法は天皇の身体に日食・月食の妖光を当てないようにするためとされており、そこには、王の身体と国土全体の安泰・豊饒との密接な関係が見られるが、それと同時に、日食・月食という日や月の「籠り」と王の身体の「籠り」という類似性も見られる。
狂言『唐相撲』で、日本人と相撲をとる中国の皇帝が、荒薦(あらこも)を身に纏う。玉体を浄らかなままに守るものとして、ムシロが機能する。 https://t.co/yClryi4nAS
— 大石ぬら之助 (@wwwnurajp) 2021年5月16日
コトバによって恣意的に自然の連続体を区切ることによって、はじめてモノの同一性が生まれるのである。(小田亮,『構造人類学のフィールド』,p12)
— Junji Yogi (@JunjiYogi1) 2012, 5月 30
贈与とか交換とかのことになるとなぜこの図がもっと広まらないんだろうと残念に思う。議論の見通しがよくなると思うんだが。
— 磯田和秀 (@gelaychamdo) 2019年12月27日
出典:小田亮『構造人類学のフィールド』 pic.twitter.com/BQ1EQaU3zL
『ミニ特集:人類学や文化研究の編纂書 その5』
『ミニ特集:人類学や文化研究の編纂書 その4』
『ミニ特集:人類学や文化研究の編纂書 その3』
『ミニ特集:人類学や文化研究の編纂書 その2』
『ミニ特集:人類学や文化研究の編纂書 その1』
『ミニ特集:人類学や文化研究 海外』