別館号外さんちゃ0025号@アイヨシ

●成人コミックの3割“児童ポルノ” 警察庁、対策要請へ(産経新聞)
 表現の自由との兼ね合いという問題は当然あるのですが、それよりもまず、

大手のサイト書店のサンプル調査(11月)の結果、販売された成人向けコミック約9000点の3割が子供を性行為の対象としていると推測している。

 推測だけは勘弁して下さい。議論になりませんので。
●武者野vs米長訴訟が和解 解決金800万円
 ソフト開発における著作権問題として、単なる将棋界の内輪ネタ以上のニュースバリューがあると思うので紹介&自分メモ。詳細・謝罪広告の内容が気になるところです。



 ネタがないので、またまた少し前に書いた記事から風呂敷を広げます。
 ディックと太宰、『流れよわが涙、と警官は言った』と『人間失格』を肴にダラダラと駄長文を。
 P・K・ディックと筒井康隆は問題意識に共通のものがある、てなことを書きましたが、問題意識は別にして作品、ひいては著者同士も非常に似ているなぁと思うのがディックと太宰治です。女にモテて反国家活動に手を出して、ヤク中になり自殺未遂を繰り返し、そのくせ小説家としては一流で、またその作品には自叙伝的な要素が多数含まれているところも共通しています。太宰治のSF版がディックだ、と言っても過言ではありません。
 『スキャナー・ダークリー』はディックのヤク中経験が生かされていますが、その行き詰まり感は太宰の『人間失格』からも読み取れます。ってゆーか、明らかにダメ男なのにどうしてこんなにモテるんでしょうね(笑)。
 『人間失格』は『さよなら絶望先生』の作風に多大な影響を与えた作品として世間に広く知られていますし、ライトノベルでは『”文学少女”と死にたがりの道化』がモチーフにもしています。オススメというには不健康な内容ですが、まあ読んでおいた方が良いかと。
 なお、太宰治はその死後から50年がすでに経過しているので著作権が切れてます。したがって、青空文庫でその著作を全部(←多分)読むことができます。ありがたやありがたや。
 それにしても、太宰をモチーフにしておきながら”死にたがりの道化”と切って捨てる文学少女のタイトルは、自殺未遂を繰り返す太宰の真意についての解釈では絶望先生同じスタンスに立ちながらも、それよりも健康的で前向きで素敵です。ただ、『文学少女〜』の作中でも述べられているとおり太宰は暗い話ばかりではないですし、それはディックもまた同じです。著者に罪はないのですが、代表作が鬱な作品というのも困りものですね(笑)。
 閑話休題ですが、ディックの代表作に『流れよわが涙、と警官は言った』というのがあります。

三千万の視聴者から愛されるマルチタレントのタヴァナーは、ある朝見知らぬ安ホテルで目覚めた。やがて恐るべき事実が判明した。身分証明書もなくなり、世界の誰も自分のことを覚えてはいない。そればかりか、国家のデータバンクからも彼に関する記録が消失していたのだ! ”存在しない男”となったタヴァナーは、警察から追われながら悪夢の突破口を必死に探し求める……現実の裏に潜む不条理を描く鬼才最大の問題作!

 ってなあらすじです。世界中の誰も自分のことを覚えていない、となったら、『うしおととら』の潮(うしお)みたいな酷い目に遭うと考えるのが普通だと思います。ところがディックの作品の場合、会う女性会う女性が主人公に好意的な態度をとって何かしら助けてくれるのです。そんなわけねーだろ。どんだけアンタはモテてたんだ(笑)。いくらスイックス(=ガン種のコーディネーターのようなもの)だからってそんなに上手く行くか? このモテモテな流れもまた『人間失格』を彷彿とさせます。ちなみに、『流れよ〜』ですが、ディックの作品の中でもタイトルどおり”泣ける”作品として(一部で)評価されているのですが、私にはそれがさっぱり分かりません。どこで泣くのですか? 主人公であるタヴァナーが苦境に陥った原因も意外なものでしたが意外ならいいというものでもなく、別にミステリじゃないんですから目くじら立てるようなものでもないのは分かっちゃいるのですが、それでも「そんなのありか!」と思わずにはいられませんでした。
 そんなわけで、途中から何を言ってるのか自分でも分からなくなってきましたが、ディックと太宰はSFと純文学の交差点として最適じゃないかと思うのです。つまり、純文読みの方がSFに手を出すならディックが、その逆にSFファンが純文に手を出すなら太宰というのが、無理のないルートじゃないかと思います。まあ、わざわざそんな鬱な話ばかり読まなくてもいいんじゃね? と個人的には思わないでもないですがね(←だったら勧めんなよ)。

流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)

流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)