SIMフリースマホ「BlackBerry KEY2」を自腹購入レビュー!

既報通り、TCLコミュニケーションの正規代理店であるFOXから国内版の前面QWERTYキーボードを搭載したSIMフリースマートフォン(スマホ)「BlackBerry KEY2」が発売されました。

国内版は内蔵ストレージが64GBで本体カラーがシルバーのモデル(型番:BBF100-8)と内蔵ストレージが128GBで本体カラーがブラックのモデル(型番:BBF100-9)の2モデルがあり、シルバーのみがデュアルSIMに対応しています。

筆者はデュアルSIM対応のシルバーを自腹購入しましたので、BlackBerry KEY2のデュアルSIM周りのレビューは見かけなかったため、その当たりも含めて今回は購入理由と合わせてレビューしていきたいと思います。なお、希望小売価格(税込)はシルバーが79,800円、ブラックが89,800円。

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BlackBerry KEY2は日本で正規販売される「BlackBerry」シリーズのAndroidベースになってからの物理キーボード付きスマホ第3弾です。1号機が2016年に発売されたスライド式QWERTYキーボード搭載「BlackBerry PRIV」、2号機がBlackBerry KEY2と同じ前面QWERTYキーボード搭載「BlackBerry KEYone」なので、コンセプト的にlackBerry KEY2はBlackBerry KEYoneの後継機種となります。

なお、現在、BlackBerryはハードウェア事業から撤退しており、BlackBerry KEY2はTCLコミュニケーションがBlackBerryと提携して開発・製造・販売しています。しかしながら、この提携は単なるライセンス製品ではなく、設計やソフトなどにも関与しているものの、TCLコミュニケーションの色は一切ありません。

今回投入された国内版2モデルは128GB内蔵ストレージのブラックと64GB内臓ストレージのシルバーがあり、ストレージ容量と本体カラー以外の違いもほぼなく、わずかにシルバーのみデュアルSIMに対応しています。また、VoLTEやキャリアグリゲーションにも対応し、国内ではau系のSIMカードでも利用できます。

BlackBerry KEY2の日本語変換には当初、日本向け製品に百度が開発・提供するアプリ「Simeji」が採用されると発表されましたが、その後、変更されてオムロンの「iWnn」がプリインストールされています。主な仕様はディスプレイがアスペクト比2:3の約4.5インチ1080×1620ドットIPS液晶(約434ppi)、チップセット(SoC)がQualcomm製オクタコアCPU「Snapdragon 660」、内蔵メモリー(RAM)が6GBです。

またカメラは背面が約1200万画素デュアルリアカメラ、前面が約800万画素フロントカメラとなっており、前機種のBlackBerry KEYoneと外観はかなり似ているもののSoCやRAM、カメラがパワーアップされ、最大の特長であるキーボードも改良されています。OSは出荷時ではAndroid 8.1(開発コード名:Oreo)を搭載しています。

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外観については、縦長で下部にキーボードというレイアウトはBlackBerry KEYoneと同じですが、本体は四角くなり、より握りやすくなりました。これは例えば、BlackBerry KEYoneが「iPhone 6」系だとすれば、BlackBeery KEY2は「iPhone SE」系といったところです。

また全長は長くなっていますが、横幅は小さいので握りやすいです。デザインが四角くなりましたが、角は面取りしてあって手に当たって痛いということもありません。さらに背面に滑り止めのラバーが貼ってあり、カバーなしでも運用しやすいでしょう。サイズは約151.4×71.8×8.5mm、質量は約168g。ちなみに防水や防滴、防塵は対応していません。

4.5インチのディスプレイは最近のスマホとしては小さいですが、アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ(デレステ)やアイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ(ミリシタ)、LINE:ディズニー ツムツム、Pokémon GOなどのゲームもプレイできており、横向きでは使いづらいこともあって快適かはさておき、とりあえず動作しないようなアプリはなさそうです。なお、前機種のBlackBerry KEYoneよりも液晶は若干輝度が上がっているように思えます。

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続いて動作速度やカメラ、キーボードについてですが、まず動作についてはミッドハイレンジ向けのSoCであるSnapdragon 660を搭載しており、速いわけではありませんが、遅くもありません。

筆者はAmdroidのメイン機種として「HUAWEI P20 Pro」を使っていますが、この機種のようなぬるぬる感はありませんが、6GB RAMも相まってサクサクと動作します。

また、前機種のBlackBerry KEYoneでは時々引っかかるような動作が度々あったのですが、そういったことはなく順当なパワーアップっぷりを感じます。実際、実用的に困るシーンはあまり感じません。

カメラは背面に広角と中望遠のレンズによるデュアルリアカメラを搭載しており、センサーはともに1200万画素です。オートフォーカス(AF)は高速で、昼間は写りもまずまず。しかしながら、食べ物の写真は若干青っぽく、低照度下では明らかにノイズが増え解像感が下がります。

これが画像処理ソフトウェアの問題なのか、センサーの問題なのか分かりませんが、カメラのスペック自体は低くないのでアップデートに期待したいところです。とはいえ、間違ってもHUAWEI P20 ProやiPhone Xのカメラ画質と比べると……特に夜間にはBlackBerry KEY2に期待しないほうが良さそうです。

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さて、最大の特徴であるハードウェアキーボードは、前述通りにBlackBerry KEYoneから大きく進化しました。まず最も大きいと思われるのが、キーボード自体が20%大きくなり、キーごとの傾斜や表面がマットになり、親指打ちする小型キーとしてはすごぶる操作しやすくなっています。

もちろん、最近ではタッチ操作でフリック入力でも十分速いという方も多いと思いますが、ハードウェアキーボードで特に便利なのは 「、。 < といった記号類で、配列は若干の慣れが必要ですが、記号の混在する文章は非常に高速に入力可能だと思いますし、あるいはプログラムの簡易な直しなどにはすごく使いやすいでしょう。

また英語と日本語が混在する文章もSlackやLINEなどでポチポチメッセージを返すのも楽でした。なお、BlackBerry KEYoneと同様にスペースキーには指紋認証センサーが内蔵されており、生体認証が利用可能で、キーボード全体も光学センサーでなぞるとスクロールができるようになっているのも画面をタッチしなくても良い場合には快適です。

さらに自慢のショートカットもあり、キーを押すだけでアプリの起動などもできます。新たにスピードキーで他のアプリを起動中もショートカットが使えるようになったため、筆者はメールの定型文やSMSに割り当ててササッと作業の時短ができました。

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BlackBerryといえば、セキュリティーやビジネスにもAndroidの中で最強と言えるでしょう。「移動体通信事業者(MNO)から発売しない理由がパッチを任意に配信できるから」と豪語するほどソフトウェア更新は提供されますし、DTEKというセキュリティー機能も協力です。

各アプリの細かな挙動も制御できますし、最低1回のOSバージョンアップも保障されています。カメラや連絡先、位置情報、通知、メッセージなどへのアクセス許可がiOSと比べると大雑把なところもあるAndroidですが、仕事に使うにはこれくらいが良いように思われます。前機種のBlackBerry KEYoneがGoogleによるAndroid for Enterprise(企業向けおすすめAndroid)に並み居るハイエンドモデルが並ぶ中で選ばれたのもうなずけます。

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最後にせっかくシルバーを購入したのでデュアルSIMについても紹介しておきます。個人的にはこのためだけにシルバーを購入しました。海外へ行く時に国内と使い分けをするのが主な目的です。そのデュアルSIMデュアルスタンバイ(DSDS)はざっくりと2つのSIMカードで待ち受け可能な機能で、従来のDSDSは一方は4G、他方は3Gという制限がありました。

しかしながら、今回のBlackBerry KEY2のシルバーはFOXの公式製品情報には掲載されていませんが、両方のSIMカードで同時に4Gが利用できるデュアルSIMデュアルVoLTE(DSDV)に対応しています。特にauのVoLTEにも対応していて、双方で通話と4Gに対応しています。

手持ちのNTTドコモやau、ソフトバンクのSIMカードを差し込んだところ、どれも通話や通信といった利用が可能でした。ただし、欠点としてはSIMカードスロットを2つ使ってしまうと、microSDカードが使えない点でしょうか。

サポートにあるAPN設定を入れるとNTTドコモおよびソフトバンクともにデータ通信が可能です。また、サブブランドのワイモバイルもまったく問題なく通話・通信が可能で、DSDVで待ち受けが2番号あるので仕事用と個人用として使えます。もちろん、大手携帯電話会社などの通話放題と格安SIMによるデータ通信などといった使い分けも便利そうです。

さらに驚いたのはソフトバンク以外では、そのまま既存のAPN設定を選択するだけで通信できたことです。格安SIMの大半のAPNも入っていましたし、かなりソフトウェアは日本向けに作り込んであるようです。

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さて今回、auからも公式アクセサリーブランド「au+1 collection」としてBlackBerry KEY2のブラックが販売されていますが、auはLTE for DATA(月額500円)を契約しないとデータ通信はできないのでご注意ください。筆者はこれまで契約していなかったので、このためにサクッと契約して試してみました。

その結果、LTE for DATAのAPN設定で通信可能なのを確認できました。MNOの中でこのような追加料金を取るのはauだけなので、できれば通常の料金で対応して欲しいところです。

格安SIMなどの仮想移動体通信事業者(MVNO)ではNTTドコモやau、ソフトバンクのどの回線を利用しているサービスでもほぼすべての回線で通信と通話が可能だと考えられます。現在、日本で発売されているDSDV機種は少ないですし、VoLTEの通話しかできないauのSIMカードにも対応という意味でも非常に貴重な1台だと思います。

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最後にBlackBerry KEY2がどういった人に向いられた製品なのか考えてみました。キーボードや画面の小ささからともするとガジェット好きのマニアックなスマホと思われがちですが、発売からレビューを行ってみていろいろな作業をしてみたところ、かなり万能なスマホだと思いました。

カメラ機能は若干残念ですし、もう少し処理パワーがあっても良いとは考えるものの、電池持ちとの兼合いもあるでしょう。価格も約8〜9万円とハイエンドモデルが見えて来ますが、日本向けに通信機能などカスタマイズしている割に内外価格差はそれほどなく割高ではありません。

もちろん安いSIMフリーがある中でミドルの絶対性能比的にお値ごろではないですけど。なにはともあれ、キーボード付きは他に選択肢はなく、ビジネスマンやブロガー、編集者、プログラマーなどといった文字が主な仕事としていて効率を求めたいユーザーにはおすすめの機種です。特にしっかりとショートカットを駆使すればものすごく作業が捗りそうです(現に私がすでにそう)。

またシルバーはDSDVでau系を含めたSIMカードの運用が可能になっており、限られた選択肢の有力候補に上がるのではないでしょうか。逆におサイフケータイ(FeliCa)はないですし、横向きのゲームにも向きませんので、この1台だけで常時運用するには厳しいかもしれません。

もう1点、個人的に残念だったのが、デュアルSIMに対応したシルバーは内蔵ストレージが64GBに限定されている点。今のところ少なくて困ってはいませんが、ブラックは128GBとなっており、本体色と内臓ストレージ、デュアルSIMが選べないのは惜しいと思いました。

後、SIMフリーのAndroidでは良くあることですが、ケースやフィルムの選択肢は少なく通販主体になってしまいます。今回から一部のビックカメラなどの店頭で展示や販売を開始していますので、実際に触ってみてキーボードの良さ、ボディーの作りの良さなど確かめて「これしかない!」という魅力を感じれば、マニアでなくても欲しくなる要素満載の1台だと思います。





記事執筆:IINAlab工場長


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