「書評」の記事一覧
<書評>『はじめての近現代短歌史』 豊かな広がりへと読者導く
重厚な一冊である。柔らかくて優しい一冊でもある。 明治時代から現在までの短歌の歴史がまとめられており、与謝野鉄幹・与謝野晶子といった教科書で学んだ歌人から、 ...
<書評>『黒島事典―黒島の言語・諺・歌謡・習俗―』 郷土に寄せる深い愛情
黒島は東北に石垣島、西に西表島をみる、隆起サンゴ礁の島である。古くから水田耕作は行われず、粟(あわ)などの雑穀生産の島であった。近年は人の数の10倍以上もの牛 ...
<書評>『琉球和文学 上』 堪能な和文と和歌の融合
『琉球和文学』上は、平敷屋朝敏の「若草物語」「苔の下」「万歳」「貧家記」、識名盛命の「思出草」、仲尾次政隆の「配流日記」を収録する。作品はいずれも平安文学を中 ...
<書評>『Okinawa 03 SKY』 沖縄と出会うための写真
岡本尚文は、アメリカの影響を色濃く受けて立ち現れた〈沖縄〉と対峙(たいじ)し続けてきた写真家である。〈沖縄〉とは、沖縄とニアリーイコール(≒)且(か)つノット ...
<書評>『沖縄の教師の語り』 奮闘する現場へエール
近年、教員不足が問題となっている。沖縄県内でも新学期には教員が何人足りないというニュースが流れる。教職の多忙さやブラック労働イメージの定着が一つの要因である。 ...
<書評>『鋳物と職人の文化史 小倉鋳物師と琉球の鐘』 知られざる工人が架けた橋
かつて琉球国内には多くの寺院が造立された。特に尚泰久(しょうたいきゅう)王(在位1454~60年)による仏教興隆は知られている。失われたものもあるが、この時代 ...
<書評>『南島ボートピープル』 奄美の苦難の一端接して
私は沖縄や奄美の住民の優しさに惹(ひ)かれる。歴史の厳しさ、その中で培われた人のつながり、思いやり、独特の人情がある。 奄美は近世に琉球から切り離されて薩摩 ...
<書評>『伊良波盛男詩集「魂」』 追い求め獲得した「女神」
積み重ねて来た長い歳月にわたる詩作の末、到達した境地を表白した作品(「第一章」)を中心に、係累への感謝(「第二章」)および孤独な旅と現状に関する断章(「第三章 ...
<書評>『ドキュメント「沖縄戦の図」全14部』 沖縄戦に精魂傾けた意味探る
著者の河邑は2023年公開のドキュメンタリー映画『丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部』の監督・撮影者である。宜野湾市にある佐喜眞美術館で『沖縄戦の図』を2 ...
<書評>『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集』 269人が紡ぐ非戦への誓い
本書は2023年12月1日発行の詩誌『コールサック』116号での呼び掛けで集められた269人の詩、短歌、俳句を収録している。9章から成り、1章「被爆者の声」、 ...
<書評>『終わらないPFOA汚染 公害温存システムのある国で』 日本社会の問題、白日の下に
沖縄の地元紙にはほぼ毎日、PFAS(有機フッ素化合物)汚染関連の記事が載る。しかし、この問題についての沖縄の人々の主たる関心は、県民の飲み水を供給している北谷 ...
<書評>『首里城と沖縄神社 資料に見る近代の変遷』 豊富な写真や図版、保存版に
本書は、神奈川大の後田多敦教授が「はじめに」で「首里城正殿と沖縄神社拝殿に関する写真や図版を中心としながらも基本的な文字資料も収録した」「沖縄神社については従 ...
<書評>『伝統芸能と民俗芸能のイコノグラフィー〈図像学〉』 画の奥に広がる世界の謎解く
芸能史と美術史を交差させることで、かつての日本人がどのようなイメージの世界に生きていたかを立体的に再構成する力作である。著者は江戸時代初期の屏風や絵巻を一つ一 ...
<書評>『フラミンゴのピンクの羽』 「文学の力」示す奇跡の物語
文学に何ができるだろうか。ウクライナやパレスチナで起こっている戦争、辺野古を含め沖縄が要塞の島と化す現状、これらに対峙すると絶望的な気分に陥る時がある。 本 ...
<書評>『火難の首里城 大龍柱と琉球伝統文化の継承』 龍柱の正面向き説、論拠詳細に
首里城跡に琉球大学のキャンパスがあった頃、友人の案内で発掘作業中の現場を見学したことがある。柱跡などが並ぶ広大な遺構を見ながら、ここに首里城があったのかと深く ...
<書評>『沖縄レコード音楽史〈島うた〉の系譜学』 普及の変遷、丹念に描き出す
人類の長い歴史において、文字や絵や彫刻と異なり、音楽の「音」は記録ができなかった。それが19世紀末、エジソンによるフォノグラフ(蝋(ろう)管録音機)の発明で、 ...
<書評>『佐藤優のウチナー評論2』 斬新な視点から沖縄論じる
現代沖縄の姿を規定する論理は、アメリカの覇権を前提として構築され、東京で整備されてきた。これは沖縄にとっては不条理な論理である。このような言説に対抗し、斬新な ...
<書評>『地球のリレー 豊里友行句集』 ちりばめられた歴史意識
著者の豊里友行は、俳人であると同時に写真家である。写真家であることが豊里にその俳句にも強い個性を与えている。 金子兜太に師事したことからも分かるように、社会 ...
<書評>『絶望からの新聞論』 ジャーナリズムの本旨問う
著者は、朝日新聞に21年勤務し、その間、新聞労連委員長も歴任した現役の記者。その彼から、日々新聞を読みテレビを見ている市民へ、さらにメディア人を自負する人々へ ...
<書評>『しのび寄る「新しい戦前」 ここまで来ている戦争準備』 阻止へ、あらゆる手段用いて
「新しい戦前」 2022年暮れのテレビ番組でタモリ氏が述べたこの言葉通り、戦争準備が突き進む南西諸島。そこでは防衛のためとして配備されるミサイルが逆に標的に ...
<書評>『決定版 目からウロコの琉球・沖縄史』 奥深い歴史研究、分かりやすく
幅広い読者を得てきた『目からウロコの琉球・沖縄史』の決定版がこのほど、出版された。2007年から計4冊が刊行され、一般にあまり知られていない歴史のエピソードや ...
<書評>『いちゅんどー!西原高校マーチングバンド』 葛藤や成長 リアルに描く
「ウチナーンチュでない小説家が“我らが西高”を表現できるの?」 疑問から本書を手に取る人は多いだろう。しかし、この小説には、フィクションを超えた ...
<書評>『石の声は聴こえるか』 スージグァに漂う記憶の淵
崎山多美の最新エッセイ集がこの「五月十五日」、私たちに届けられた。ふるさとのシマにたれこめる水と闇の幻。基地の街の路地裏(スージグァ)に漂う記憶の淵。ゆるゆる ...
<読書・BOOK>『琉球・沖縄の主体性確立を求めて 本村紀夫の軌跡』 時代を切り開く手がかりに
軍事植民地支配が濃厚になる沖縄で、本書は「私たちの生存を規定している被植民地状況に抗う」紙礫(かみつぶて)となるか。 1971年10月、沖縄返還に関する「沖 ...
いま注目のニュース
一覧へ