新型コロナウイルスの感染拡大が続く影響で、入院患者の増加に伴い県内の医療機関では病床確保が難しくなり、7カ所が救急の一部制限、3カ所が一般医療を制限する事態になっていることが21日、沖縄県などへの取材で分かった。22日に発表される感染者の定点報告数も前週より増えるとみられており、医療者らは「今後は必要な医療を受けられなくなる状況もあり得る」と警鐘を鳴らしている。
県独自の入院情報共有システム「OCAS(オーキャス)」によると、新型コロナの入院患者は500人を超える。病床不足に加え、数カ所の病院では院内クラスター(感染者集団)の対応にも追われている。
県立中部病院の木全俊介救急科医長によると、職員の相次ぐ感染で人手不足も重なり、病棟に余裕がないため救急外来を一部制限しているという。
中部地区では中部病院と中頭病院、中部徳洲会病院が救急医療で連携。コロナや重症度の高い外傷、心停止などの受け入れ状況を消防とも共有しているという。現状ではどうにか機能しているが「すでにぎりぎりの総力戦」という。木全医師は「さらに感染が拡大すると、その他の病気に対応できなくなることを想像してほしい」と訴える。
那覇市消防本部では、すでに救急搬送時に「医療機関へ4回以上の受け入れ要請」かつ、搬送先が決まらず「現場で滞在30分以上」の緊急搬送困難事例が増え始め、6月5~11日は4回、12~18日は5回起きている。1日の新規感染者が6千人を超えた昨年8月頃の第7波と似た状態だ。
5類移行前、県対策本部で入院調整を担っていた佐々木秀章医師(沖縄赤十字病院)は「今後は熱が出ただけでは受診できなくなる状況もあり得る。市販薬を用意しておいてほしい」と訴える。
流行の収束が見えない中、ワクチン接種から半年以上過ぎて感染予防や重症化予防の効果が薄れている人が増えている。免疫逃避の可能性がある変異株「XBB系統」が流行している現状から、佐々木医師は「医療ひっ迫を回避するためにも、個々の感染対策を徹底するとともに、積極的にワクチンを接種してほしい」と呼びかけた。
(嘉陽拓也)
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