ユクスキュルの環世界と客観性
前回の記事で『哲子の部屋』を紹介したが、第2回の放送に登場した環世界という概念が気になったので、ユクスキュルの『生物から見た世界』を読んだ。
環世界とは、それぞれの主体にとっての環境世界を指す。たとえば人間が森の中に入ると、そこには木があり土があり虫がいる事を認識するが、目が付いていない生物にとってはそれらは見えず、感触が違う物体でしかない。感覚機能によって世界は異なるのだ。
いや、世界はそこに存在しているではないか。誰かが見なくても、建物や公園、美女や野獣は間違いなくそこに実在しているではないか。そういった意見があるかもしれないが、そのような世界を思い浮かべている時点で既にあなたの主観が入っているのである。
『生物から見た世界』にはマダニ、ウニ、カラス、ゾウムシなど、様々な生物の環世界が登場する。物事は客観的に見ろ、第三者の視点に立てとよく言われるが、本書を読むと厳密な客観性は存在しない事を知る。
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