学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第211回のテーマは「学級崩壊して落ち着いて授業が受けられない」。
まずは状況の確認や整理をする
学校に「学級崩壊」について親から連絡があった場合、学校としては状況の確認や整理をすることが必要でしょう。親から何らかの申し出がある状況であれば、学校(管理職など)としてもそれなりのことは把握していると思います。学校として把握できていることと把握できていないこと(子供や親だけが把握できていること)など、状況をきちんと整理することが必要です。そのうえでどういった対応をとっていくことが望ましいのかを考えていくこととなります。
学校において近年、学級崩壊が問題となっていることにはいくつかの理由があります。「経験年数の少ない教員の増加」「教育環境の変化」「コロナの影響」などです。
「経験年数の少ない教員の増加」に関しては、教員採用試験の倍率の低下などと関連しています。また、教職のイメージの悪さなどもあり、採用試験を受ける人が減っていることがあります。現在のあまり余裕のない学校現場において、経験年数の少ない教員が増えているのに、十分な研修やフォローなどができないのが現状です。
学校の「教育環境の変化」についていけない教員が一定数います。コロナにより、GIGA端末が日常的に使われるようになりました。そういったことへの対応が求められています。GIGA端末だけではありませんが、学校の変化にうまくついていくことのできていない教員がおり、それが学級の状態にも影響を与えるということは十分に考えられることです。
「コロナの影響」もあるでしょう。本来、ある年代で経験していたものを経験していないまま、年齢が大きくなっている場合があります。たとえば、現在の小学校中学年の子供は、コロナの流行が始まったころ、幼児期でした。本来であれば、幼児期に色々な形で周りの子供と関わり、楽しさを味わったり、時にぶつかったりしながら、人との関わり方を学んでいました。そういった「人との関わり」を十分にできないまま、大きくなり、その影響が今になって出てきているということも指摘されています。
レクリエーションのすすめ
そういった状況において学校が取り組むことは色々とあります。簡単に取り組めるものとして、私はレクリエーションを勧めています。レクリエーションには、運動面、精神面、社会面において効果があるという研究があります。ただ、集団が少し難しい(混乱)状況で実施するにはコツがあります。配慮をせず、レクリエーションなどに取り組むと、新たなトラブルを発生させ、集団の雰囲気をさらに悪いものにする場合があります。たとえば、私が実際に学級崩壊ぎみのクラスで鬼ごっこをやっていたのを見たのですが、タッチの際にぶつようにタッチをする子供がいました。また、一人ねらいや仲間ハズレのようなことも起こっていました。そういった状況においては、やり方に工夫が必要になります。取り組む際に「ルールをシンプルなものにする」ことなどは工夫の一例です。取り組むことによって、楽しさを味わったり、満足感を味わったりすることと主眼とします。そういった取組みにより、体を動かすことによりストレス発散にもなりますし、仲間との関わりに良い影響がある場合もあります。
今回、レクリエーションの例を示しましたが、他の取組みにも共通する部分があるのだと思います。日常の授業においても取組みをシンプルにすることで、うまく取り組める子供が増えてきます。そのことで褒めることもできるようになります。そういったことの繰り返しが学級の状況を変えていくことになるのではと思います。学校の現場はそんなに単純なものではありませんが、取り組めることをやっていくことで状況が変わる可能性があるのだと思います。
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