文部科学省は2024年12月26日、2024年度の公立学校教員採用選考試験の実施状況を発表した。全国の都道府県および指定都市教育委員会が実施した同試験の競争率は、過去最低の3.2倍となり、前年度の3.4倍から低下した。採用者総数は3万6,421人で、前年度に比べて440人増加した一方、受験者総数は11万5,619人で、5,344人減少した。
この調査は、毎年度、文部科学省が実施しているもので、教員採用の現状を把握し、今後の教育政策に生かすことを目的としている。今回の結果では、採用者数が増加している一方で、受験者数が減少していることが明らかになった。特に既卒者の受験者数が減少しており、これが競争率の低下に寄与していると考えられる。
小学校の競争率は2.2倍で、前年度の2.3倍から低下した。採用者数は1万6,793人で、前年度に比べて241人減少したが、受験者数は3万6,259人で、2,642人減少した。特に既卒者の減少が顕著で、2,273人減少した。中学校では競争率が4.0倍となり、前年度の4.3倍から低下した。採用者数は9,830人で、241人増加したが、受験者数は3万9,030人で、1,930人減少した。高等学校の競争率は4.3倍で、前年度の4.9倍から低下し、採用者数は4,917人で、318人増加したが、受験者数は2万1,331人で、1,129人減少した。競争率は、小学校・中学校・高等学校のすべてにおいて過去最低となった。
文部科学省の分析によると、採用者数の増加は、2000年度以降の大量退職に伴うものであり、定年延長の影響で退職者数が減少したにもかかわらず、採用者数は高い水準を維持している。このため、既卒者の受験者数が減少し、競争率が低下しているとされる。
小学校では、過去最高の12.5倍であった2000年度に比べ、2024年度の採用者数は4倍以上となっている。中学校と高等学校でも採用者数が増加しているが、受験者数は減少しており、特に既卒者の減少が大きい。中長期的には、新規学卒者の受験者数も減少傾向にあるが、中学校では2021年度以降、回復傾向が見られる。
地域別に見ると、鳥取県が8.0倍ともっとも高い。一方、熊本市は1.8倍、東京都は1.9倍と2.0倍を下回った。
文部科学省は、学校における働き方改革の加速化や処遇改善、指導・運営体制の充実を進めることで、教職の魅力向上に取り組む方針を示している。また、産休や育休を取得する教師の代替者が正規の教師である場合の国庫負担制度の改正を行い、各自治体に対して計画的な正規教員採用を促している。さらに、中央教育審議会に対し、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成に向けた方策について諮問を行い、幅広い分野からの教師人材の確保を目指している。