2024年のライブ鑑賞


2024年は多くの素晴らしいライブを鑑賞する機会に恵まれました。コロナ禍という不毛の時代が終わり、ようやく日常に戻りつつあることを実感しています。そんな2024年を振り返る。

3月30日 AJICO/ AJICOの元型 @日比谷公園音楽堂(野音)

2024年になって、AJICOのライブに参戦できる日が来るとは夢にも思いませんでした。チケットを発売日にネットで確保しようと挑戦したが、通信が混雑している間に完売してしまい、意気消沈。それでも諦めず『チケジャム』にリクエストを登録してみたところ1ヶ月前になって返信があり、奇跡的にリセールチケットを確保することができました。当日は、ベースのTOKIEさんが「AJICOライブ史上最高の天気」と表現した通り、初春の爽やかな天気に恵まれました。数々の歴史的公演*1が開かれた日比谷公園音楽堂で、AJICOのライブを満喫することができたのは小さな奇跡でした。もう一つ特別だったことは初めて息子とライブを観れたこと。AJICO結成時の2000年にはかけらもなかった彼が、このバンドに興味を持って楽しんでくれている姿に不思議な感覚と感動を覚えた。心地よい夜風の中で素敵なライブ鑑賞ができたことは鮮やかな記憶として残るでしょう。

4月7日 AJICO/ AJICOの元型 @茅野市民館

茅野は仕事で時に訪れる街で、この小さな地方都市での開催に感謝。茅野市民館は、茅野駅に直結しており中央本線沿いに住む身として抜群のアクセスの会場でした。ここでも小さな奇跡が起こります。ライブの終盤、UAが歌いながら通路を練り歩くパフォーマンス。幸運にも通路沿いの端の席だったため、目前30cmの距離でUAを見ることができました。パワフルな歌声からは想像できない小顔で華奢な姿に、ますます彼女に惹かれた瞬間でした。二週続けて同じミュージシャンのライブに参戦するのは、おそらく最初で最後でしょう。

4月17日 Robert Glasper @ビルボード東京

グラスパーは何回目でしょうか。最近はBurniss TravisⅡ (Ba.)、Justin Tyson (Dr.)、DJ Jahi Sundance (DJ)のメンバーでの公演が多くヒップホップ寄りの構成でした。個人的にはシームレスな演奏の中に“Stella by starlight”のソロが入ったところが聞き所でした。そろそろ、アコースティック・トリオの公演も観たいと願っています。

4月30日 Monty Alexander インターナショナルジャズデー 配信

インターナショナルジャズデー、今年はモンティー・アレキサンダーさん。(知りませんでした!)ありがたく無料生配信を拝聴しました。勉強したことによれば、モンティーさんはジャマイカ生まれのジャズ・ピアニスト。1976年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでの録音『モントゥルー・アレキサンダー・ライヴ』が最も著名な演奏のようです。

5月5日 AJICOの元型(野音) U-NEXT

U-NEXTで3月30日の日比谷公園音楽堂でのライブが独占配信されており、一月だけ課金して配信ライブを観ました。アーカイブでいつでも観ることができるようです。配信をじっくり観て、個人的には改めて初期の曲『波動』や『毛布もいらない』の素晴らしさを再確認しました。

5月28日 ジョシュアレッドマン featuring ガブリエルカヴァッサ @ブルーノート

2月にTiny desk concertsで観たライブ映像と、若き天才ガブリエル・カヴァッサ*2をフィーチャーした新譜が素晴らしく、期待を胸に観に行きました。ライブは新譜『Where Are We』から構成されており、レッドマンの演奏とカヴァッサの物憂げなボーカルのハーモニーが圧巻で、期待を裏切らない熱演。アンコールでは、カヴァッサが日本語で歌った『赤とんぼ』や、レッドマンの白熱したサックスが響く『The Tokyo Blues』が披露され、素晴らしいパフォーマンスでした。終演時には会場が総立ちのスタンディングオベーション。これまで多くのライブを観てきましたが、内容も観客の反応も過去最高とも言える感動を味わいました。今年のベストライブ。

6月5日 ジョン・スコフィールド(ジョンスコ師匠) @ブルーノート



ジャズ・ギターの巨匠の一人、ジョン・スコフィールド・トリオを初めて観ることができました。ベースは、グラスパーのアコースティック・トリオの一員、ヴィンセント・アーチャー。ジョン・スコフィールドのすぐ目前の特等席があたり、ジョンスコ節をタップリ堪能することができました。これからはジョンスコ師匠と呼ばせてもらいます。

8月2日 岡村和義 スペースシャワーTV、配信

2024年、斉藤和義と岡村靖幸は意気投合して『岡村和義』を結成。立て続けにシングルを発売し、ライブツアーも敢行。このライブを配信で鑑賞しました。二人の新曲も良いが、斉藤がソロで演奏した岡村のオリジナル『イケナイコトカイ』が絶品で、今年の個人的なベストパフォーマンスの一つ。NHKのSONGSに出演した際の二人のブレイク前のエピソードもほっこりさせられて良かった。

9月3日 矢野顕子トリオ @ブルーノート東京


毎年恒例の矢野顕子トリオのライブに、久しぶりに参戦しました。ウィル・リーはボーカリストとしてボビー・コールドウェルの「What You Won’t Do for Love」を披露。そして、今年のハイライトは坂本龍一さんの『千のナイフ』*3。クリス・パーカーの白熱したドラミングが圧巻でした。このトリオの幅広いレパートリーと懐の深さ、テクニックに、改めて感嘆するばかりでした。

9月18日 マーカス・ミラー(マーカス師匠)@ブルーノート東京


マーカス・ミラーもコロナ禍を挟んで久しぶりの来日。安定のゴリゴリしたベースプレイを聴かせてくれましたが、80年代のサンボーンの名盤『Straight to the heart』から2曲(Love & Happiness, Run for cover)を演奏してくれました。師匠、ありがとう。

10月18日 イマニュエル・ウィルキンス @ブルーノート東京


新世代を代表するアルト・サックス奏者、イマニュエル・ウィルキンス。新譜『ブルース・ブラッド』を発表し初めてのリーダー公演だったようです。
Blue Note Tokyoに通い続けた特典で、7回目の来場時に無料招待を受けることができ、彼の公演を選びました。サンボーンさんのなくなった年に新進気鋭のサックス奏者に邂逅できたことは幸運でした。弱冠27歳、10年後には間違いなくビッグ・ネームになっているでしょう。


こうして振り返ってみると、タイミングにも恵まれ、普段敬愛しているミュージシャンのライブを一通り観ることができた幸せな1年でした。2024年の鮮やかな記憶。来年も素敵な音楽と出会えますように。

*1:1960年代フォーク・ゲリラ、1978年サザン・オールスターズのデビュー後、1980年代THE ALFEE, RCサクセション、2000年代UAらのライブは伝説的イベントとして語り継がれている

*2:2019年サラ・ヴォーン国際ジャズ・ヴォーカル・コンクール優勝

*3:YMO結成前に制作されたデビュー・アルバムのタイトルトラック。坂本のヴォコーダー(KORG VC-10)による毛沢東の詩(1965年に毛沢東が井崗山を訪問したときに作成した「水調歌頭 重上井岡山」)の朗読で幕を開け、印象的な響きの和音が平行移動するイントロへとつながる。イントロ後の速いパッセージ部分のメロディーの音色は大正琴のシミュレート。坂本はレゲエや賛美歌、ハービー・ハンコックの「Speak Like A Child」にインスパイアされたと発言している。

2024年のベスト

2024年の夏のある日、部屋の整理をしていたら雑誌『ロッキング・オン』のバックナンバーが出てきた。毎年年末にロッキング・オンが選ぶ『アルバム・オブ・ザ・イヤー』と題する特集をしていて、長年この特集号を欠かさず購入していたのだった。手元に残る一番古いのは2002年そして直近の特集号は2017年のものだった。インターネットの時代になり、容易にベスト盤の情報にアクセスすることが可能になったせいかいつしかこの特集号を買わなくなっていた。奇しくもこのアドベントカレンダーに参加するようになったのも2017年だった。筆無精の自分が8年も続けて来れたのは、その年の良かったことを追憶することはとても有意義であるし、他人が選ぶベストも興味ぶかいのだが、自由に『アルバム・オブ・ザ・イヤー』を選ぶほうがもっと楽しいことに気がついたから。2024年に体験した『Greatest of All Time』を振り返る。

音楽のこと

今年の個人的な音楽シーンのハイライトは3つある。
1. AJICO再始動
2. ジョシュア・レッドマン featuring ガブリエル・カヴァッサ
3. 君島大空合奏形態 

1:2021年に20年ぶりに再始動したAJICOの復帰2作目の新譜EP『ラヴの元型』が3月に発売された。2021年の再結成時のライブはコロナ禍の厳しい制限のため参戦は叶わなかった。熱心なファンとして、新譜発売のニュースだけでテンションが上がったが、今年は規模を拡大したツアーが開催され、奇跡的に3月末の日比谷公園大音楽堂でのチケットを入手することができ、念願のAJICOのライブも体験できた。長年の夢が叶った瞬間であり、2024年最高の体験の一つだった。新譜については、別のページにもレビューしたが円熟の歌唱&演奏で熱心に聴いた。
ラヴの元型 | AJICO https://scrapbox.io/cd/%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%81%AE%E5%85%83%E5%9E%8B_%7C_AJICO

2:2月にyoutubeを見ていたらNPR tiny desk concertsにジョシュア・レッドマンが出演しており、その冒頭曲“Chicago blues”が凄く印象的だった。すぐに新譜『where are we』(実際の発表は2023年9月)を発見した。ブルーノート移籍第1作目で、13曲中9曲にガブリエル・カヴァッサさんという女性歌手がfeatureされており、レッドマンのテナーサックスとカヴァッサのヴォーカルのハーモニーがとても素晴らしい作品だった。この新譜を聴き始めてまもなく来日公演の情報を知り、5月にライブにも参加できた。ライブについては後に語りたい。

3:君島大空は昨年発表の2枚のアルバムが良くて日常的に聞いていたが、10月にNHKで始まったTiny desk concert japanに君島大空合奏形態として出演したのを見て衝撃を受けた。まず動いている君島大空を見たのが初めてだったし、合奏形態のメンバー*1の演奏が各々素晴らしかった。売れっ子ドラマーの石若駿が参加していたことにも驚いたし、その演奏が特に印象的だった。
そして合奏形態をバックに12月に発表された新曲"Lover"は君島大空の儚げな歌唱にバンドのノイジーで重厚なギターサウンドが畳みかけるように重なる心に響くバラッドだった。このメンバーで活動している間に、ライブを観にいきたいと強く感じた。
www3.nhk.or.jp

年末に発表されるSpotifyのまとめは、意外な展開もなく、ほぼ納得のいく結果だった。ただ驚いたのは、今年もヴァン・モリソンがランクインしていたこと。御大は79歳で、隠居していてもおかしくない年齢だが、驚くほど多作で、今年だけでもライブアルバム、セルフカバー&デュエット、インストゥルメンタルと3枚の新作を発表している。その中でも『New Arrangement and Duets』というアルバムに収録された、1987年発表のオリジナルバラード”Someone Like You”をジョス・ストーンとデュエットしたバージョンは絶品で、繰り返し聴いていた。
ランキングには入らなかったものの、パティ・スミスのライブアルバム『Live in Oregon 1978』やパール・ジャムの新譜『Dark Matter』も印象的だった。前者は、当時のエネルギーが凝縮された音源で、衝撃を受けた。

2024年は、さらに音楽鑑賞がサブスクリプションにシフトし、購入したCDはAJICOの『ラヴの元型』と、ジョシュア・レッドマンの『Where Are We』の2枚のみだった。レッドマンの新譜も当初サブスクで聴きまくっていたが(Spotifyまとめによれば、ジョシュア・レッドマンを聴いていた時間は世界のリスナーの上位0.05%、トップソングの再生は上位0.005%らしい。もしかして世界一のリスナーかよ?やったね。)、5月に参戦したライブがあまりにも素晴らしく、この名盤を手元に置いておきたくなって翌日に限定ジャケット版を購入して机に飾ってある。
そんなワケで、2024年のアルバム・オブ・ザ・イヤーは満場一致で『where are we / Joshua Redman featuring Gabrielle Cavassa』でした。

youtu.be

街のサッカーチームのこと

蔚山とACL決勝トーナメントを戦う

2022年、街のサッカーチーム(ヴァンフォーレ甲府)はJ2リーグの下位から前代未聞の天皇杯優勝を達成した。
2023年、天皇杯王者としてACL(アジアチャンピオンズリーグ)に出場し、二部リーグのチームとして史上初めてグループステージを1位で突破し、決勝トーナメント進出を果たした。
2024年には、チーム史上初の韓国のトップチーム・蔚山との決勝トーナメント戦に臨んだ。この歴史的な挑戦に立ち会えた記憶を、ここに残しておく。

2月15日、蔚山とのアウェイ戦で0-3の敗戦。
甲府は期待の新外国人、アダイウトンとファビアン・ゴンザレスを先発に起用したが、左サイドを崩されて簡単に先制点を献上。その後も相手FW陣の個人技に対応できず、0-3の完敗を喫した。Kリーグの情報など気にしたこともなかったが、蔚山のクラブの実績*2や敵地のスタジアム*3を振り返って見ると、格の違いを痛感させられた試合だった。

2月21日 ホーム国立 88分に三平がゴールを決めるも1-2で惜敗。

試合が火曜日か水曜日になるかは時の運だったが、運良く出張日に重なったため遠く離れた国立競技場での観戦が叶った。試合は、またしても左サイドのクロスから先制点を許す展開に。終了間際の88分、左からのCKを三平がヘディングで合わせて同点に追いつく。彼のヘディング技術の高さには以前から注目していたが、世界の舞台でもその実力を証明した。しかし、終了間際に再び左サイドを崩され、あっけなく失点。結局、1-2で敗戦となった。二試合を通じて、アジアトップレベルとの実力差を痛感させられた。

悔しい敗戦では、誰もが下を向いて帰路を急ぐ。しかし、この日の国立競技場から駅へ向かうサポーターたちは、皆どこかやりきったような充実感を漂わせていた。自分も同じ気持ちだった。ちっぽけな街のサッカーチームが世界のピッチに殴り込んで、決勝トーナメントで予算規模に何倍もの差があるアジアのトップチームに果敢に挑んだ。そして、国立競技場にまで連れてきてくれた。感謝しかなかった。負け試合の帰り道でこんな満たされた気持ちを味わったのは初めてだった。

今シーズンのリーグ戦は、監督の途中交代や10試合未勝利という苦しい状況が続いた。こんなことを書くとゴール裏の熱心なサポーターに囲まれるかもしれないが、長いシーズンを振り返れば、ACL決勝トーナメントに進むという奇跡のような成果を見せてくれたチームがリーグ戦で苦戦するのは想定内だったと思う。イイことがあった後には、苦しいこともやって来るのは世の常なのだ。予算が限られたちっぽけな街のチームにとって来年も財布と相談しながらの選手編成が続くことだろうし、戦国J2のなかで厳しい戦いが待ち受けるだろう。それでも、何事もなかったかのようにホーム小瀬に出陣してその挑戦を見届けたい。いつかまた思いがけない幸運が巡ってくることを信じて。

今年、サッカー観戦にまつわる小さな奇跡が二つあった。
一つは、8月21日の天皇杯鹿島戦。リーグ戦とは異なり、ランダムで決まるメインスタンドの指定席チケットを購入して参戦したところ、アドベントカレンダー主催者であるtaizoooさんのすぐ後ろの席だった。偶然にも直接挨拶する機会を得られたのは、思いがけない幸運だった。
もう一つは、ひょんなことから長年ヴァンフォーレ甲府を担当しているフリーライターのM・Jさんと知り合えたことだ。近くで活動している人ならではのチーム事情を聞けたのはとても楽しかったし、これからも良い記事を書いてもらうようお願いしておいた。

読書

多くの本は読めなかったが、いくつか印象に残る読書体験があった。
2021年9月に単行本が刊行され話題になって以降、心の積読山脈に積んであった『嫌われた監督 〜落合博満は中日をどう変えたのか』(鈴木忠平)を、Kindle Unlimitedで配信されているのを発見し、3月についに読了することができた。ドラゴンズの番記者だった著者が、落合監督が率いたチームの光と影を多数の選手、関係者目線で記録した渾身のルポルタージュで、その濃密な内容に引き込まれた。
今年新たに出会った作家の一人が、河﨑秋子さん。ナツイチで読んだ『土に贖う』は、北海道の自然や産業を背景に人間の営みが描かれた独特の世界観が印象に残った。
新しいイベントは、『読書メーター』というアプリを使い始めたこと。大変な読書家であり、長年の馬友達でもある先輩に『嫌われた監督』を勧めたら、しばらくして「非常に面白かった、感想を読書メーターに投稿した」と返信をもらったのがきっかけだった。読んだ本や積読本を登録できるだけでなく、他の読者の感想を読んだり、感想に「いいね」がついたりSNSの一種でもあるが、有象無象な情報が溢れるそのへんのSNSとは一線を画す有意義なツールだと感じている。これから地道に本を登録していこう(心の積読山脈にもね)。

今日の宏斗

低迷するチームとは対照的に、ドラゴンズの若きエース・高橋宏斗にとって、飛躍の一年だった。今シーズン#今日の宏斗というハッシュタグでその日の投球内容と寸評を記録するようにした。長いこと不慣れなSNSに関わっていて、初めて有意義なハッシュタグを作れたなと、一人悦に入っている。

今季特に印象に残ったのは、貧打にあえぐチームの連敗を止めまくっていたことだ。もしかしたら宏斗を際立たせるためにわざと連敗しているのか?と思ったほどだ。今季の最終成績は、12勝4敗のキャリアハイ、防御率1.38で弱冠22歳で最優秀防御率賞を獲得した。来シーズンは、東での仕事が増えそうなので球場で宏斗のピッチングを生で見ておきたい。メジャーのヤツらが虎視眈々と狙っているし、日本で小さく収まる器でないことも分かっている。世界に羽ばたく前にその勇姿を脳裏に焼き付けておくのだ。(ほぼ父親目線)

2024年のサヨナラ

デイヴィッド・サンボーン

5月、ジャズ・フュージョン界で活躍したアルト・サックス奏者、デイヴィッド・サンボーンさんが78歳で亡くなった。長い間彼の演奏を愛聴してその音楽に育まれてきたので、その記憶を辿りたい。

高校生の頃、初めてサンボーンの音楽に触れたのは友人から借りたカセットテープ『Straight to the Heart』と当時の新譜『A Change of Heart』だった。それまで聴いていたロックや日本のポップスとは異なり、フュージョンという未知のジャンルでありながら、R&Bやブルースをベースにした彼の曲はどこか親しみやすく、すぐに心をつかまれた。後に知ったことだが、少年時代のサンボーンはレイ・チャールズのバンドでアルトサックスを吹いていたハンク・クロフォードに深く感銘を受けたという。そして、初めて加入したバンドがサンフランシスコを拠点とする白人ブルースバンド、ポール・バターフィールド・ブルースバンドだったことを思えば、彼の音楽にR&Bやブルースの影響が色濃く表れているのも当然のことだった。

それ以来、発表される新譜は欠かさず手に入れて聴き続けてきた。特に1992年の『Up Front』は、サンボーンの音楽活動に欠かせない存在であるマーカス・ミラーの存在をはっきりと認識するきっかけとなったアルバムで、印象深い一枚だ。

1995年には、山中湖ジャズ・フェスティバルに出演した。山中湖は学生時代によく訪れていた場所で、そこでジャズ・フェスティバルが開かれることは望外の喜びだった。今振り返ると、ハービー・ハンコックやロン・カーターといったジャズの巨星たちが出演する中で、サンボーンの出番が大トリだったことは、日本でのサンボーンの絶大な人気を物語っている。
2008年『Here & gone』、2010年『Only Everything』はレイ・チャールズやハンク・クロフォードに捧げた曲もあり聞き所がある。2015年に発表された『Time and the River』は、久しぶりにマーカス・ミラーがプロデュースを手がけており、アルバムジャケットには漢字で「川」と記された奇抜なジャケットが印象的だった。2017年には、22年ぶりに東京で彼の演奏を観ることができた。
2017年のライブ鑑賞 - realfineloveのブログ
そして今年9月、マーカス・ミラーのライブを観る機会に恵まれた。その中で、80年代のマーカスプロデュースの名盤『Straight to the Heart』から「Love & Happiness」や「Run for Cover」を演奏してくれた。特に何も語っていなかったが、きっとサンボーン先輩への追悼の意も込められていたのだろう。

サンボーンの個人的なベストアルバムを挙げておく。
『Straight to the Heart』:唯一のライブ盤で、彼の魅力が凝縮されている名盤。
『Up Front』:マーカス・ミラープロデュースのファンキーな名盤。
『Only Everything』 原点であるハンク・クロフォードやレイ・チャールズに捧げた作品。「Hard Times」は特にお気に入り。

最後に、命日である5月にSpotifyで作成した追悼プレイリストを捧げる。サンボーンさんの演奏が永遠に響き続けますように。

・西田敏行さん. 10月
国民的俳優だった。一番古い記憶は、幼少期に見た西遊記の猪八戒。最近では、再放送されている『坂の上の雲』で主人公の一人・秋山真之の英語の先生でもあった高橋是清*4を元気に演じている。訃報を聞いて、大好きな映画『ザ・マジックアワー』を見直した。今は動画配信全盛の時代、多くの映画やドラマでいつだって元気な西田さんに会える。その演技、永遠に。

・火野正平さん 11月
今年、鬼平犯科帳のドラマが新キャスト(長谷川平蔵は松本幸四郎さん)で始まった。火野さんは、鬼平を助ける密偵“相模の彦十”*5を演じ欠かせない存在感を示していた。火野正平という芸名も池波正太郎先生が名付け親だったことを知り、まさに文字通りのはまり役だったのだ。次に相模の彦十を演じるのは誰になるのは知らんけど、火野さんのいない鬼平犯科帳、どこか物足りなさを感じてしまうだろう。5月に映画化された『血闘』、放送されたらもう一回見たい。

・ワイヤレスイヤホン(ソニー)
1年以上前に、アップルのair pods proの左側を落とし、コロコロと転がって格子つきの側溝に落ちてしまい回収不能になった。そこで気分を変えてソニーのBluetoothイヤホンを購入した。6月出張の時にカバンにケースごとつけていたが、新幹線で使おうとして開けてみると右側が無くなっていた。人混みに紛れてケースから落ちてしまったようだった。わずか3ヶ月の命だった。残された片ちんばのイヤホンたちを眺めてしばらく呆然とした。そうか、右にair podで左はsonyを使えばいけるじゃん!と閃いた。・・・試してみたがダメだった。『ワイヤレスイヤホンはなくすので高いのは買っちゃダメ!』、2024年に学んだ教訓です。

おわりに

2024年は大谷サンが大活躍し、ドジャース移籍1年目でワールドシリーズを制覇するという大きな盛り上がりがありました。この年末、25日間にわたる熱戦が繰り広げられたもう一つのワールドシリーズ、「#2024AC2024」もニューカマーの登場もあって大いに盛り上がりましたが、今日はその最終日です。このバトンは謹んで主催者のtaizoooさんにお返ししてゴールインとなります。
最後まで拙い記事に目を通していただいた皆様に感謝申し上げます。そして、2025年が皆様にとって素晴らしい一年でありますように。

・この記事は、Advent calender 2024の第25日目の記事として書かれました。
・前日はtomoyayazakiさん、次はたぶん来年のAdvent Calender 2025(開催未定)です。

*1:西田修大(Gt)、新井和輝(Ba)、石若駿(Dr)

*2:2022年Kリーグ優勝、2012年・2020年ACL制覇

*3:Ulsan Munsu Football Stadium:収容人数44,000人を誇り、2002年ワールドカップの会場にもなった

*4:立憲政友会第4代総裁。第20代内閣総理大臣(在任: 1921年〈大正10年〉11月13日 - 1922年〈大正11年〉6月12日)日露戦争の戦費調達のための外債募集を成功させたことで、近代日本を代表する財政家として知られる

*5:平蔵より10歳ほど年上の老人で、無頼時代の取り巻きの一人。平蔵と二人だけの時は「彦」・「銕っつぁん」と呼び合う程の昔なじみ。元は流ればたらきの盗人。それなりに顔が広く、聞き込みには欠かせない存在。

2023年のライブ鑑賞

2023年はCOVID-19がフツーの風邪になって、大手を振ってライブ会場に足を運ぶことができるようになった。待ち望んでいましたよ。
そんな今年一年のライブ鑑賞を振り返る。

1月3日 Robert Glasper Trio (Live Streaming)


グラスパーご一行は、年末年始ガッツリ稼ぎにやってきた。元旦を挟んで12月30日から1月7日まで8日間も。思わず『ユーは何しにニッポンへ?』と独りでツッコミをいれてみたが、人気ミュージシャンだもの、稼いで何が悪い、来てくれてありがとう〜。現地で観に行きたい気持ちもあったが1月3日のセカンドセットの配信をしてくれたので自宅のPCで鑑賞した。グラスパートリオは、ベース:ヴィンセンテ・アーチャーとドラム:ダミアン・リードのアコースティック・トリオ(2007年 In My Element、2009年Double Booked、2015年Covered)が一番好きなんだけど、最近このメンバーよりもDJのジャヒ・サンダースを加えたR&B/ヒップ・ホップよりのメンバーで活動していることが多い印象。ライブには何度か足を運んでいて、毎回うならされる程のクオリティで満足なんだけど、そろそろアコースティック・トリオが観たいな、と思う今日この頃です。配信で見るとこの日の演奏はあまり記憶に残っていません。2024年の来日公演できる限り出陣するのを楽しみにしています。

4月15日 エリック・クラプトン(日本武道館)


コロナでしばらく海外ミュージシャンの来日が滞っていましたが、今年ようやく動きが戻ってきました。クラプトンも4年ぶりの来日。個人的には実に28年ぶりにクラプトンのライブを現地で観ることができました。今回のツアーで日本での100回目の記念公演となるようですが、僕が参加したのは初日の97回目の公演です。クラプトンぐらいキャリアが長いと皆思い思いの好きな曲があると思う。この日の客の反応が上がっていたのはやはり『Layla』や、『Wonderful Tonight』でしたが、個人的にはブルースパートのギターが聞き所でした。

4月30日 'International Jazz Day' 黒田卓也 featuring 藤原さくら&井上銘(Live Streaming)

今年もGWのこの日にBlue Note Tokyoでの黒田卓也さんのライブを無料配信しており、有り難く拝聴しました。ゲストには売り出し中の女性シンガー、藤原さくらや、ギタリストの井上銘が出演。藤原さんのパートで演奏されたジャクソン5の"Never can say goodbye"がとても良かった。藤原さんの独特の低音のハスキーボイスなかなか味があって良いです。

5月21日 斉藤和義(YCC県民文化ホール)

新譜Pineappleをひっさげてやってきてくれました。なぜか、山梨公演は休日、祝日に組まれているので、今年も参加で皆勤賞を継続できました。斉藤和義のライブの魅力は下ネタ織り交ぜたゆるいMCとハイクオリティの演奏のギャップが凄いところ。この日もロックンロールパートの疾走感もさることながら、弾き語りバラッド”泣いてたまるか”は素晴らしく印象に残りました。


8月22日 J-Squad (ビルボードライブ東京)

J-Squadは、トランペッターの黒田卓也さんを筆頭に国際的に活躍するミュージシャンで結成されたバンドだが5年ぶりに活動を再開、ちょうど夏休みを取れたので観に行けた。サックスの馬場智章さんは今年映画Blue Giantで主人公の演奏するサックスを担当し認知度が高まっておりこのライブでもその活躍を紹介されていました。これまでに発表している2枚のアルバムからの曲のほか、新曲も披露していたので新しいアルバムも楽しみです。

10月18日 UA (ビルボードライブ東京)

UAのヴォーカル、パフォーマンスが好き。デビューの頃から注目されていたシンガーだったが、2000年のAJICO、2006年のCure Jazzを聴いてからそのヴォーカルの表現力に魅了されるようになった。発売と同時にネットで申し込んだが、一瞬で正面の良い席は埋まっており、なんとかステージの脇の席が取れた。この日のUAは素晴らしく声がでており、鳥肌が立つほどソウルフルな歌唱だった。特に良かったのは、『Harlem Blues』、そしてアンコールでの『微熱』のアコースティックバージョン。隣に座ったUAのライブに通い詰めている女性(多分同年代)の方と話したが、やはりこの日のパフォーマンスが優れていたことが確認できた。20年以上愛聴しているUAを生で観たのは初めてだったので感激した。そして彼女のベスト・パフォーマンスのライブが聴けたのは、今年最高の体験だった。UA、また観に行きたい。

フジロック (フジテレビOne録画)


コロナ禍で、毎年無料で配信をしてくれていたフジロックですが、今年は配信がストップし、そのかわり9/29-10/1に有料チャンネルで完全版が放送された。ラインアップの中で『The Strokes』と『アラニス・モリセット』は観てみたいと思ったので、1ヶ月だけスカパーの番組に加入して録画した。まだゆっくりと見れていない。The Strokes、好きなんだけどやはり生で観たいなと思った。


コロナの3年間は我慢の日々でしたが、今年は4回会場に足を運ぶことができた。UAを生で鑑賞できたことは幸せだったし、改めてライブ会場で見ると鮮やかな記憶として残ることが実感できた。来年も素敵な音楽と出会って、ライブで鑑賞できますように。

2023年のベスト

      
2023年は、COVID-19がフツーの風邪になって、3年間制限されていた日常が正常に向けて動き出した一年だった。

コロナと闘った

2月にCOVID-19に感染した。ワクチンを5回も打たれていたのにも関わらず感染したし、同僚にもお裾分けしてしまった。感染後に家族に移さないようにホテル療養を選んだ。感染してはじめて国や県の施策で整備されたホテル療養のシステムはとても有り難いと感じた。
この3年間感染症のあおりで生活に困窮した人々のことや、亡くなった国民的コメディアンのことなどを思うとウイルスに対して憎しみを抱いていたが、実際に感染してみるとどうやっても抗えない運命なのだと感じるようになった。未知の感染症との闘いは人類の歴史でもある。大袈裟かもしれないが、ウイルスと闘って生き延びた以上、やりたいことができなくなった人達の分もたくましく生きていかなければならないと思っている。ウイルスとの闘いを経験して憎悪の気持ちはほとんど無くなったが、一つだけ恨みを述べるならアイツのせいで楽しみにしていたサッカーチームのホーム開幕戦に出陣できなかった(自粛した)ことだ。

音楽のこと

時代の流れか、今年は音楽を聴く媒体がサブスク/メディア(CD)の割合が体感で9:1ぐらいになった。

年末に発表される恒例のSpotifyベスト。今年はトップアーチスト、トップソングともNo1は上原ひろみだった。

Spotify 2023年のベスト

2月にBLUE GIANTというアニメ映画が公開された。ビッグコミックに2013年に掲載されたジャズに魅せられた青年宮本大の成長を描いた漫画が原作だが、これについては全く読んだことも無く知識も無かった。映画の告知をみると、上原ひろみが作品全体の音楽を担当し、サックスはJ-SQUADのメンバーでライブを観たこともある馬場智章さんが担当しているとあり、楽しみにして映画館で鑑賞することにした。

劇中でサックス奏者の主人公が結成するバンドJASSのピアノ、サックス、ドラムは上原ひろみ、馬場智章、石若駿のプロミュージシャンが演奏し、ハイクオリティだったし、バンドが目標に向かって挑戦するストーリーも楽しめた。この映画のサウンドトラックを良く聴いていたという一年だった。振り返ってみると、アニメ映画を楽しみにして映画館に向かったことは記憶にないし、今年観た映画の中では一番印象に残るものだった。

今年購入したCDは4枚だった。

  • PINEAPPLE / 斎藤和義
  • 24ナイツ(オーケストラ・ロック・ブルース)/ Eric Clapton
  • Hackney Diamonds / The Rolling Stones
  • Harlem Blues / Phineas Newborn Jr.

ベストをあげるなら18年ぶりに発表されたストーンズのHackney Diamonds。今更ストーンズ?と思うかもしれないが、一聴してミック・ジャガーのヴォーカルが80のジジイとは思えない艶があることに驚愕した。先行シングル『Angry』のPVも過去のライブシーンやアルバムジャケットが登場してストーンズ・フリークのツボをつく出来だったのでベストPVに選びたい。

クラプトン回顧録

年始にエリック・クラプトンが4年ぶりに来日するという情報を見た。1月には高橋幸宏さんやジェフ・ベックの訃報を聞いたばかりだし、年齢的にもこれが最後の来日になるかも知れないと感じた。何とか都合を合わせて出陣することにした。そしてこの機会にクラプトンの回顧録を残しておこうと思った。

高校生のころ、NHK-FMで渋谷陽一さんがパーソナリティで放送していたお正月の特番でエリック・クラプトン特集をエアチェックして聴いた。この放送の一曲目は『いとしのレイラ』で、デュアン・オールマンの強烈なギターのイントロから始まり、印象的なアウトロに繋がる名曲に引き込まれた。そしてこの特集でクラプトンの代表曲を知ったのが原体験だった。それから、当時新潮文庫から出ていたロック名盤のディスクガイドでCreamを知り、若きクラプトンやブルース・ハープも名手のジャック・ブルース、ドラムのジンジャー・ベイカーが奏でるインプロヴィゼーションは刺激的で新しい音楽と邂逅した高揚感と鮮烈な記憶が残っている。

当時はインターネットがなかったので、ディスクガイドや、ライナーノーツで背景や関連するミュージシャンの知識を取り入れ守備備囲を拡げていったが、クラプトンのバックグラウンドにはブルースへの憧憬が色濃く存在しており、聞きこんでいくうちに自然にブルースという音楽に魅力を感じるようになっていた。

仕事に就く前に3度ライブを観に行った。押し入れから公演プログラムを引っ張り出して眺めながら振り返ってみる。

この年、ジョージ・ハリスンのサポートという形で来日した。演奏については、ビートルズのWhile my guitar gently weepsを演奏していたことぐらいしか記憶がない。ジョージ・ハリスンは10年後の2001年に癌のため58歳の若さでなくなった。’ビートルズ’を生で観たのは最初で最後だったという意味でも、2人の伝説的な日本公演を観に行けたことは幸せなことだった。

1990年代のミュージックシーンで流行し、クラプトンのアルバムも大ヒットしていた『Unplagged』の次の年のライブ。バックバンドのドラマーに敬愛するlittle featのメンバー、リッチー・ヘイワードが参加していたのを改めて発見して嬉しくなった。Unplaggedの翌年だから、アコースティックパートを多めに演奏し、『いとしのレイラ』もアコースティックにアレンジされており賛否両論だったことを記憶している。


この年の公演プログラムを見ると、クラプトンは短髪になって長渕剛みたいになっている。1994年にブルースに回帰したアルバム『フロム・ザ・クレイドル』を発表していたから、このアルバムからトラディショナル・ブルースナンバーを演奏していたようだ。シブすぎてライブの内容は全く記憶にない。


今年のライブ参戦は実に28年ぶりだった。なんでも今回の来日で100回目の記念公演となるようで、自分が参戦したのは初日となる97回目の公演だった。
この日のオープニングは聴いたことのないインストゥルメンタルだった。後でわかったことだが『Blue Rainbow』という、年始に亡くなったジェフ・ベックの追悼曲だった。4回目になるライブではさすがに新鮮さは感じなかったが、個人的にはブルースの古典『Key to the highway』やマディーウォーターズの『Hoochie Coochie Man』での熟練のギター・プレイがハイライトだった。

クラプトンが来日した春、サザンの桑田さんのFM番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』で来日記念でクラプトン特集を放送していたのを聴いた。若い頃からクラプトンのファンで、初めて来日した1974年にステージを観に行った時の貴重な話をしていたが、この頃はアルコール依存から抜け出して間もない頃で、『ガラクタ人形みたいだった』と語っていた。嬉しかったのは、好きなアルバム『EC was here 』(1975)が桑田さんと共通していたことだ。70年代のライブ盤だがここで聴けるスロー・ブルースは名演だ。

6月には、1991年発表のライブ盤『24 nights』の増補完全版が発売された。1990年〜1991年にロイヤル・アルバートホールで行われた公演を収録したもので、クラプトンのキャリアの中でもハイライトといってよい演奏だ。リアルタイムでも熱心に聴いていたのだが、未発表音源やDVDもついているというレコード会社の戦略に負けて小遣いをはたいて購入した。この完全版は3つの演奏形態『ロック』『ブルース』『オーケストラ』に分けられているが、このうち『ブルース』にはバディ・ガイやロバート・クレイといったコテコテのブルースマンたちが参加してゴキゲンな演奏を聴かせており、これを流しながらこの原稿を作成している。

クラプトンの偉大な業績は、バディ・ガイ*1が語っているように、ブルースという音楽とその魅力を敷居を低くして広く世界のリスナーに伝えてきたことだろう。そしてその演奏が心に響くのは、彼自身、人妻に横恋慕して奪ったあげく破局に至ったり、麻薬やアルコール依存、息子を事故で失うなど苦悩や悲しみをありのまま表現している'ホンモノの'ブルースだからと感じている。70年代にジャニスやジミヘンみたいに事故死してもおかしくなかった彼が、生き延びて薬物・アルコール中毒患者に救いの手を差し伸べている姿勢*2に人としての温かさを感じるし、今井美樹のファンだとか、いきつけのとんかつやがあるとか、なんだかロックスターっぽくないところもいい。今年ライブに参戦できたことはベストな体験の一つだった。

1 バディ・ガイ
クラプトンやストーンズをはじめとして、イギリスのミュージシャンたちがブルースマンたちのキャリアをどれだけ後押ししてくれたか。そして素晴らしいのは、彼らがズカズカっとやってきて、『ブルースは俺たちが始めたんだ』なんて言わないところだ。彼らはいつも真実を語ってくれるんだ。

2 クラプトン
中毒患者の治療施設を始めた理由はシンプルだ。僕のように、かつて薬物やアルコールを飲んでいたものの、もう飲みたくないと思っている人達のためだ。僕のヒーロー達は選択権がなかった。リロイ・カーは酒で死んだ。ビッグ・メイシオも酒で死んだ。僕が救われたような援助があれば、彼等は今も生きていたかもしれない。

ドラゴンズの話

ひいきの野球チームの中日ドラゴンズはこの10年間低迷している。昨年再建をかけて満を持してミスタードラゴンズと呼ばれた立浪監督が就任した。これでダメなら誰が立て直すのか?という背水の陣にも関わらず、1年目はぶっちぎりの最下位に終わった。巻き返しを図った今年も、気持ちとは裏腹に次々と不名誉な記録を打ち立て、5位に浮上する絶好のチャンスもつかみ損ねて最下位に沈んだ。どうしようもない低迷ぶりだが、こんななかでも一筋の光が見えている。3月に行われたWorld Baseball Classicで最年少、若干二十歳ながら決勝戦でも見事なリリーフを魅せた高橋宏斗投手だ。

シーズン開幕後、気がついたら高橋宏斗の当番日を気にするようになり、その勝敗や内容をスマホにメモをしていた。そしてDAZNでほとんどの野球中継を見られることもありここ10年で間違いなくドラゴンズのことを気にかけていた1年だった。6月に名古屋に出張する機会があり、その週末の土曜日、ホームのバンテリンドームで日ハムとの交流戦が組まれていた。高橋宏斗の当番日にあたることを祈りつつ、何十年ぶり(高校生の時以来だろうか)に野球を観に行くことにした。

バンテリンドームは一塁側指定席を選んだ。さすがに5万人収容のドーム球場、昔のナゴヤ球場のイメージは一新され、その広さと華やかさに新鮮な感動があった。残念ながら高橋宏斗の当番日には当たらなかったが、試合は幸先良いスタートで、WBCでも代表に選ばれた日ハムの主戦の伊藤投手から3回ウラ終了までに3点を奪い、久しぶりの野球観戦での勝利が見えたようで浮かれ心になっていた。

だが、ここからが低迷するドラゴンズを象徴するような展開だった。6回に先発投手がランナー2人を背負うピンチを招き、次のバッターはあろうことか昨年までドラゴンズに在籍していたアリエル・マルティネスだった。監督はリリーフを送った。抑えてくれと願ったのもむなしく、アリエルはライト方向に鮮やかに古巣への恩返し逆転弾を放ったのだった・・。

負け癖のついたドラゴンズに反撃する力は残っておらず、あえなく久しぶりの野球観戦での勝利は夢に終わった。

プロスポーツチームには、長い歴史の中では必ず浮沈がある。亡くなった星野仙一さんが指揮した熱血ドラゴンズや、落合監督が築いた8年間でリーグ優勝4回、日本一1回という黄金期も観てきた。良いときばかり応援することはフェアでは無い。来年は立浪カントク最後の契約年になる。このまま史上最低の監督という汚名を被ったまま終わるのか、辰年に奇跡の反撃を見せるのか。どんな結果が待っていても目をそらさず見届けよう。今年、沼底を這いずりまわるありのままのドラゴンズを体感できて良かった。いつの日か再び優勝することがあれば、今年の姿を思い浮かべてあんな時もあったな、と思いたい。そして高橋宏斗という希望の星が現れたことは、とてつもない幸運だ。我が目が節穴でなければ間違いなくメジャーでも活躍できる器だが、その右腕でまずは低迷するチームを浮上させて欲しい。そしてこれからのささやかな夢は、高橋宏斗の登板する試合を生で観戦することだ。

街のサッカーチームのこと

クラブ存続の危機を乗り越え、昨年天皇杯でクラブチームのてっぺんに立った街のサッカーチーム(ヴァンフォーレ甲府)は、アジアのトップクラブが集うACL(アジア・チャンピオンズ・リーグ)の出場権を得て、2部リーグの地方クラブとしては異例ともいえる世界のピッチへ進撃する年となった。現地で観戦して、鮮やかな記憶として残った試合を振り返ってこの歴史的な一年を回想したい。

  • 7月12日 第103回天皇杯 VS鹿島 小瀬

3回戦の相手は昨年準決勝で撃破したJリーグの雄、鹿島アントラーズだった。平日の夜だったが昨年の鮮やかな記憶と、再び王者に挑戦できる喜びを胸に同僚とバックスタンドで観戦した。試合はなかなかスタメンに絡めなかった野澤陸の鮮やかなボレーシュートで先制するも、アントラーズが意地を見せて同点に追いつき、延長でも決着がつかずPK戦にもつれ込んだ。このPK戦が記憶に残る激闘だった。2週目のジェトゥリオが決めて11-10で勝利した時には夜の10時を回っていた。感動したのは、二年続けて王者を撃破したこともさることながら、リーグ戦では出番の少ない野澤や、GK渋谷の活躍で勝利をもぎ取ったことだ。ACLで世界と闘うためには、控え選手のモチベーションや試合経験が重要だと思ったし、実際渋谷はこの日のPKストップでサポーターの心をつかんで、後半の活躍にも繋がった。


この試合でもう一つ印象に残ったのはキャプテン・須貝の奮闘だった。途中出場だったが、延長に入っても鋭いインターセプトから試合終了寸前まで勝利を目指して攻撃する姿勢を見せていたし、PK戦では先陣を切ってキッカーを務め、二回のPKをきっちり決めてチームを鼓舞していた。この姿を観て、後半戦への期待が大きくふくらんでいた。だが、すぐにやってきた7月22日のリーグ戦でキャプテン須貝の名前は無かった。アントラーズからのオファーがあり移籍が水面下で動いていたのだった。今思えば、鹿島戦での須貝君の奮闘ぶりはキャプテンとしての闘う姿勢をみせていたのと同時に、オファーを出してくれた鹿島の首脳陣へのアピールもあったのだろう。

予算の限られたちっぽけな街のサッカーチームでは、条件の良いオファーで選手が移籍していくことは日常茶飯事であり覚悟はできているつもりだったが、地元で育ちJ1昇格に向けて主力としてチームを引っ張る現役キャプテンを力技で引き抜かれてしまう現実にさすがに無情を感じた。2年続けて王者を撃破し、浮かれていたが10倍返しにされたのだった。この移籍で平常でいられるほどチームもタフではなかった。8月には下位チームにも勝てず、悪い方に潮目が変わったのが目に見えてわかった。一緒にACLを戦いたかったし、今考えても残念な移籍ではあったが、限られたフットボール人生、須貝君には茨城県にとどまらず日本代表や世界を目指して挑戦し続けて欲しい。そして世界で活躍した後は、ひょっこり戻ってきてオミのように長く活躍してくれることを願っている。

ACL予選リーグは平日の夜に甲府から遠く離れた国立競技場で組まれていた。フツーに仕事をしていれば現地参戦は無理な条件だったが、小さな奇跡が訪れた。今年の8月から月に2回、神奈川県に出張の仕事が入るようになり、その日程が2日間ホーム開催の日だったのだ。神様に感謝しかない。新築された国立競技場は広くて素晴らしい眺めだったし、Jリーグの他サポが日本代表として戦うチームの応援に駆けつけてくれたのは前代未聞の風景だった。平日の夜に集まった10000人を超えるサポーターの期待に応えたチームは歴史的なACL初勝利を挙げた。10番を背負った長谷川選手の決勝ゴールも素晴らしかったが、夏に戻ってきて甲府に三度力を貸してくれているクリスチアーノのアシストも本当に嬉しかった。

余談ながら、試合開始前に入り口付近で待機していると、NHKのカメラが2人組の女性にインタビューを始める場面に出くわした。カメラの角度的に映像に入ってしまうと判断した僕は、顔バレしないようとっさに後ろを向き続けた。はたして、試合後に#金曜やまなしで放送された「ヴァンフォーレが世界とつながる日」でそのインタビューが放送され、図らずもサブキャストとしてNHKデビューしてしまったことも良い思い出だ。(探さないで下さい。)

- 11月29日ACL MD5 国立競技場 VSメルボルン・シティ

勝てば互いに一位突破を手繰り寄せる大一番、激闘だった。開始5分での失点も、三浦君や井上詩音の活躍ですぐに追いつき、鳥海芳樹ならではのゴールで逆転した。後半開始直後にPK献上や鋭いカウンターであっという間に逆転され敗戦濃厚の空気のなか、またもクリスチアーノのアシストと純真のヘディング(公式戦初めてではないか?)で追いついた。執筆時点でリーグ突破を決めてはいるが、今思えばここで負けていればこの最終結果はなかっただろう。殊勲のクリス、純真の活躍と篠田監督の采配に拍手を送りたい。国立からの帰り、甲府サポーターで埋め尽くされた新宿駅のホームや中央線特急の前代未聞の風景もまた鮮やかな記憶として残るだろう。国立への2試合の参戦は心から楽しく、今年のいや最近10年間のなかでもベストの体験だった。


12月12日、ちっぽけな街のサッカーチームは遠く離れたタイの地でACLアウェイ初勝利を挙げ、二部リーグのチームで初めて決勝トーナメントに進むという歴史的快挙を成し遂げた。この記事をとてもハッピーな気持ちで執筆している。今年1年良いことばかりではなかったし、J1昇格プレーオフにも紙一重でたどりつけなかったが、サポーターにも新鮮な経験を届けてくれ、最後までドキドキさせてくれたチームに感謝している。

2023年のサヨナラ

1月 ジェフ・ベック

昨年のベストで彼の新譜を取り上げたばかりだった、残念だがまた1人ロックスターが伝説となった。2015年に、ヨコハマで開催されたBlue Note Jazz Festivalでこの稀代のギタリストの演奏を生で観ることができた。「なぜJazz Festivalにジェフ・ベックが?」というツッコミは永遠に心に残しておこう。

3月 坂本龍一さん
世間を席巻したYMOの音楽は幼少期無意識に聴いていたし、『ラストエンペラー』でのアカデミー賞受賞の快挙も記憶に残るが、個人的に最も記憶が鮮やかなのは1999年発表の『BTTB』『ウラBTTB』。この頃、映画『鉄道員』のテーマ曲を繰り返し聴いていた。

11月 伊集院 静さん
2020年の1月に脳卒中を発症して、日経新聞で連載していた夏目漱石の物語『ミチクサ先生』が休筆になったが、無事に生還されて物語が完結したのを喜んでいたばかりだった。急な訃報に驚いた。正岡子規を描いた『ノボさん』、サントリーを立ち上げた鳥井信次郎の生き様を描いた『琥珀の夢』も良かった。新しい作品が出ないのはさみしくなるが、個人的に好きな作品『なぎさホテル』『いねむり先生』はいつか時間ができたら読み返したい。

おわりに

今年も生き延びてAdvent calender 2023に参加することができました。僕自身、依頼した原稿をとりまとめる仕事も経験しておりその煩雑さを実感していますが、毎年この素敵なイベントを継続している@taizooさんには今年も敬意を表したいと思います。最後までこの拙い記事に目を通してくれた皆様にも感謝。2024年も皆様にとって幸多き年となりますように。

・この記事は、2023Advent Calendar 2023の第25日目の記事として書かれました。

・前日はShinoさん、次はたぶん来年のAdvent Calender 2024(開催未定)です。

*1:*

*2:**

2022年のライブ鑑賞

今年鑑賞したライブを振り返る。(残念ながら一度も生での鑑賞はできず、配信ばかりでした)

4月29日 'International Jazz Day' with Blue Note Tokyo All-Star Jazz Orchestra directed by ERIC MIYASHIRO

最近、4月30日のInternational Jazz Dayでは『Jazz Auditoria Online』として無料でライブ配信している。ちょうどGWだし、今年も鑑賞した。Eric Miyashiroさん率いるこのJazz Orchestraは、毎回有名なミュージシャンとコラボしているのだが(マーカス・ミラー師匠とも)、今年のゲストはピアニストの角野隼斗さんで、このライブで初めてその存在を知った。後半に3曲ぐらい角野さんとの共演が聴けたがこれが素晴らしかった。Pat MethenyのThe First circleやチック・コリアのSpainを演奏していた。

4月30日 黒田卓也 ゲスト 角野隼斗

黒田卓也もこのJazz DayのLive Stageに登場。そして角野隼斗さんも2日続けてゲスト出演。そこで共演したBobby Watsonの『In Case You Missed It』がめちゃめちゃ格好良かった。この日のこの演奏は、2022年に観たライブの中でベスト・パフォーマンスだった。2022年に角野さんを初めて知りましたが、黒田さんともども今後の活躍が楽しみです。


5月7日 Michel Camilo (カミロおじさん)


カミロおじさんを初めて知ったのが2011年、ニューヨークのライブハウスでした。2019年に東京で再会、その人気を実感。今回はソロでしたが定番のOn Fireの盛り上がった演奏が印象に残った。いつまでも元気にダイナミックな演奏を聴かせて欲しい。

5月12日 ゴダイゴ


幼少期から『ビューティフル・ネーム』や西遊記の『モンキー・マジック』を聴いて育った。タケカワユキヒデさんは心のベスト・ヴォーカリストの1人だし、国民的に愛されているバンドだと思う。このライブは、2020年に亡くなったオリジナルメンバーのギタリストの浅野さんの追悼ライブだった。ライブでのMCは、浅野さんへの友情とリスペクトに溢れていて感動的だった。ゴダイゴの歴史に立ち会えたと感じれたし、配信でこのライブが観れて本当に良かった。

7月11日 小野リサ


2007年に『Soul & Bossa』というアルバムをiTunesで購入して良く聴いていた。オーティス・レディングやスティービー・ワンダーの曲をボサノバに料理して歌う小野さんは凄いと思った。このライブ、配信でみたのだがあんまり記憶が無い。

7月30日 Fujiロック Jack White

今年もフジロックをYoutubeで観た。目当てのJack Whiteぐらいしか観れなかったが、多分今年のFuji Rockのハイライトの一つだっただろう。熱心なVF甲府のファンなので、『オークリスチアーノー』と口ずさみながら鑑賞しました。

8月23日 矢野顕子トリオ


コロナでしばらく開催のなかった矢野顕子トリオが久しぶりに登場。ウィル・リーとクリス・パーカーとの息の合った演奏は円熟しており楽しめた。
来年は生で鑑賞したいと思った。

8月28日 ロンカーター


御年85歳のベーシスト、ロン・カーターさんの演奏を観た。歴史を目撃した。

9月23日 Toku


フランク・シナトラの『Strangers in the night』がいい。Tokuさんに注目して聴いたのは2022年が初めて。

9月28日 リーリトナー&デイブグルーシン


リー・リトナーは、1990年代にフュージョングループ・フォープレイを聴いて知り、アルバムも何枚か持っている。デイブ・グルーシンさんは映画音楽を代表するピアニストだが詳しくは知らなかった。御年88歳だが、元気に演奏していた。昔映画でみた『グーニーズ』のサウンドトラックはグルーシンさんが制作しており、今更ながら無意識に彼の音楽を聴いていたことがわかったのでした。

11月19日 キャンディ・ダルファー


前回観たときはコロナ前で生で鑑賞しました。前回共演予定だった親父ダルファーが病気のため来日出来なかったが、今回は登場。
親子揃ってファンキーな演奏でした。凄い親子だと思いました。


配信のライブのおかげで、今年は角野隼斗さんを知ったし、ロン・カーターやデイブ・グルーシンさんというレジェンドのライブを鑑賞することができた。コロナ感染の拡大がなければこの配信ライブの文化は生まれなかったのかも知れない。ただ、やはり音楽はミュージシャンの息づかいや表情、会場の盛り上がりを五感で感じないと鮮やかな記憶として残らないと改めて感じている。スポーツと共通するところがあります。世の中が落ち着いたら、また会場にライブを観に行きたいと思う2022年の大晦日でした。

2023年にも、音楽での素敵な出会いがありますように。

2022年のベスト

音楽のこと。

CDオブザイヤー

音楽配信の時代、一昔前に比べると年間に購入するCDの数は激減したので、購入した中で一番再生したベストCDはどれか?を選ぶのはとても簡単になった。今年はこの5択になる。

  1. Live at the El Mocambo / The Rolling Stones
  2. Black Radio 3 / Robert Glasper
  3. Are you romantic? / UA
  4. Softly / 山下達郎
  5. 一青尽図 / 一青窈


Spotifyのように正確に再生回数が記録される訳ではないのでマニュアルの感覚だが、一番聴いていたのは間違いなく、UAの新譜になる。
ロックン・ロール、ジャズ・ボーカル、島唄など何を歌わせてもスペシャルな彼女は心のベスト・ヴォーカリストの一人。ということで、CDオブザイヤーはUAの新譜に決定。7月に記述したレビューのリンクを貼っておく。
scrapbox.io

もう一つ審査員特別賞を選ぶなら、山下達郎のSoftlyになる。なぜなら、配信で聴けないのはこれだけだから。彼が配信を解禁しないのは色んな理由があるのだろうが、ネットで拾った記事によると発表する音源の音質にこだわっているのだとか。その職人気質は尊敬しているし、これからも貫いて欲しいと思う。レコードやCDを購入して音楽を聴く時代に育った私にとっては、新譜を買って聴くのは長年の習慣であり、この昔ながらの音楽へのアプローチを残してくれている達郎サンは貴重なアーチストだと感じている。


2022年の心のベストテン(Spotify まとめ)
年末、恒例のSpotify まとめが発表された。これはマニュアルの感覚と違って、正確に一番再生した曲とアーチストがわかる。
そして今年のベストテン第一位はこんな曲でした:

  • トップソング Jeff Beck & Johnny Depp: 『Ooo Baby Baby』
  • トップアーチスト Robert Glasper
心のベストテン

ジェフ・ベックを初めて知ったのは高校生の頃で、聴いていたFMラジオでブリティッシュ三大ギタリストの1人として紹介されていたことを憶えている。それから熱心に追いかけているわけではないが、そのライブ演奏は素晴らしく手元のDVDはベストライブ映像の一つだ。夏に発表された新譜に収録されたこの曲はSmokey Robinson &The Miraclesの1965年のカバーで、60年代のソウルミュージックにベックのギターソロが重なる心地よい佳曲。今回の新譜にはマーヴィン・ゲイのWhat's Going onもカバーされているし、1986年のFLASHに収録されたPeople Get Readyなどジェフ・ベックの取り上げるソウル・クラッシックは名演ばかりだ。

ロバート・グラスパーはジャズ・ヒップホップシーンで活躍するシンガーやミュージシャンとのコラボレーション”Black Radio”の続編を発表して、今回も熱心に聴いた。このシリーズ共通だがグラスパーのピアノ演奏は脇役に徹しているのに印象的なフレーズを聴かせるところがいい。だが個人的にはアコースティック・トリオのグラスパーが好きなので(2015年のCoveredが最高)、次回はアコースティックトリオの新作が聴きたいと願っている。

2015年、横浜で開催されたBlue Note Jazz Festivalを幸運にも現地で鑑賞することができた。奇しくもこのとき出演していたグラスパーとジェフ・ベックの新譜を愛聴した2022年だった。

読書のこと。

2月、ロシアのウクライナへの侵攻が始まった。なぜこの時代に戦争をはじめなければいけないのか、島国でくらす日本人には理解しがたい複雑な民族間抗争や国の主権争いが背景にあることを改めて知った。ふと、太平洋戦争終戦間際の北方領土を舞台にソ連の不条理な侵攻を描いた「終わらざる夏」という小説が積読山脈の地層の底に眠っていることが脳裏に甦って、今こそ読むべき時だと感じた。物語は史実をベースとして、戦争に巻き込まれて占守島に連れて行かれる英語翻訳者、青年医師、歴戦の軍曹や女子工員など様々な登場人物の心境を描くフィクションだが、スターリンの命令で大義なき戦闘にかり出され翻弄されるソ連兵(ウクライナの将校)の視点でも物語が紡がれているのが印象に残った。かつて我々の祖先もアジアへの侵攻をしていたわけだし、最近の中国の姿勢や北朝鮮の動向をみると人ごとではなく、この年になって、戦争の歴史や民族の多様性についてもっと知らなければという気持ちがある。高校生の頃、真面目に世界史を勉強しなかったから。年末になっても毎日流れる悲惨なニュースに少し気が滅入っている。一日でもはやく戦争が終結することを祈る。あまり読書がすすまない1年だったが、次はもう少し明るい話を読みたい。



街のサッカーチームのこと。

今年、指揮官を引き抜かれた街のサッカーチームは後任に再登板となる吉田達磨監督を迎えた。前回の就任時、一部サポーターからのリスペクトを欠く行為があったのにも関わらず、このクラブに感謝して退任していったことを記憶している。そして現職のシンガポール代表監督を辞任してまで、このちっぽけな街のサッカーチームの監督を引き受けてくれた。人間力がないとできないことだと思った。

この3年間、地道に順位をあげ、J1昇格まであと一歩に迫っているサッカーチームだったが、J2リーグは10年前優勝した時よりも全体のレベルが底上げされ勝ち抜くのは容易でなかった。コロナ感染での選手の離脱や、予期せぬ主力の退団もあり、後半失速した。しかし、このちっぽけな街のサッカーチームは日本全国のクラブが参加する歴史ある天皇杯で奇跡ともいえる快進撃を続け、遂に優勝するという歴史的快挙を成し遂げた。この快挙に立ち会った記憶をここに残したい。

第101回天皇杯体験記(J2ですが、何か?)

小瀬開催だったが平日のナイトゲーム。放送もなくネットで結果を拾うしかなかった。甲府の未来である内藤大和、飯嶋陸、中山陸の得点で快勝、明るい気持ちになった。

2回戦の活躍をみて、内藤大和と中山陸を見たいと強く感じて平日のナイトゲームだったが、仕事もそっちのけで小瀬に向かった。残念ながら大和はU-18代表によばれ、中山陸もベンチ外だった。小瀬に到着したのは試合開始から30分後だったが、到着したとたん三平和司の2ゴールで逆転。もしかして自分がラッキーを運んできたのか?と勘違いした夜だった。2ゴールとも素晴らしいゴールだった。そして、2点目の荒木のアシストも素晴らしく、リーグ戦での上昇には彼の活躍が必要不可欠だと感じた。

  • 7月13日 4回戦 サガン鳥栖 3-1 (ネットで経過をひろう)

ネットで経過をみていた。今年新加入したブルーノ・パライバの活躍と松本凪生のスーパーロングシュートで勝利。パライバは加入後先発した大宮戦で流れを変える活躍をしてくれ、大いに期待していたがシーズン途中で解約となってしまった。ブラジル人選手の日雇い労働者のような扱いが気になった。ナギは来年もその力を貸して欲しい。

リーグ戦では先制しても追いつかれて引き分け、攻めながら相手のワンチャンスで点を獲られ敗戦というモヤモヤが続いていた。絶好調三平のゴールで先制したが、前半すぐに追いつかれ、後半からルキアンが出てきたときは相当分が悪いと感じていたが、この日は違っていた。延長戦前半、松本ナギのボール奪取、関口正大選手の鮮やかなスルーパスから抜け出した鳥海芳樹選手がゴール前で倒されながら素早く流し込んで決勝ゴールを奪った。ゴールを決めた鳥海も、その前のナギのボール奪取、関口の鮮やかなパスもJ1勢を打倒しベスト8の壁を突き破るという若い奴らの野心が伝わる勝利だった。

準決勝の相手は主要タイトルを20も獲得しているJリーグの雄、鹿島。この日は小瀬とNHK甲府でパブリックビューイングが開催予定で、たまたま出張の仕事だったので早く切り上げて小瀬に向かうつもりだった。夕方、冷たい雨が降っており、寒さのなかで観戦するのは気がすすまなかったので、予定を変更して駅北口のNHK甲府に向かった。

パブリックビューイングは初めてだったが、橋爪勇樹さんと、NHKのサッカー解説でよく見かける福西崇史さんがゲストで、試合前の見どころを解説してくれ、甲府勝利への期待感をさらに盛り上げてくれた。

前半37分、センターバックの浦上ニキ選手のロングフィードに、タイミングよく抜け出した宮崎純真は鮮やかなトラップでボールをコントロールし、飛び出したキーパーを冷静にかわしゴールに流し込んだ。これまでの甲府は格上相手に先制した後、持ち堪えた試合は記憶になかったが、この日は皆が集中して守り切り、見事に鹿島を完封した。

ちっぽけな街のサッカーチームを応援していて常々感じていることは、予算も環境も違うビッククラブには負けたくないし、このチームで育つ若手の活躍を見る喜びは何よりも大きいということだ。

この街のサッカーチームを応援する同志と興奮と歓喜を共有でき、くりくり坊主の高校生だった純真がこのチームで成長し、王者鹿島を撃破する活躍を見せてくれた感動で自然に涙がでた。福西&橋爪さんの解説と会場一体で体感することができた高揚感は鮮やかな記憶として残るだろうし、この感情を揺さぶられた試合は今年観戦した試合のベストだった。

余談ながら、福西さんは試合前、甲府が勝つならば1-0と予想していた。もともとカッコイイが、自分が女の子だったら惚れてしまっただろう。そして橋爪選手は同じ元プロサッカー選手としてワールドカップにも出場した福西さんはやはり特別な存在だったようで緊張しているのが伝わった。この素敵なパブリックビューイングを企画してくれたNHK甲府にも感謝したい。(安心して下さい。受信料、払ってます)

職場のTVで観戦した。天皇杯の決勝進出は夢にも思っていなかったので仕事の予定が入っていた。この歴史的な試合を現地で観戦することは叶わなかったが、TV観戦であっても記憶に残る激闘であり、奇跡のドラマだった。この試合については現地観戦の同志皆さんの鮮やかな記憶よりも良い文はどうしても書けないので、素敵な観戦記をここに引用させていただく。
copyanddestroy.hatenablog.com

matottorix.hatenablog.com

scrapbox.io

150TBmarrmsak.wordpress.com



最後のPK戦、両チームのベンチは対照的だった。甲府は、吉田監督が笑みを浮かべながら選手を指名し、それに一体となって応える選手たち。須貝や長谷川など若手主力の笑顔。ここまでくれば失うものはないし勝負は時の運、楽しもうぜ!という雰囲気が伝わり、今みても爽やかな気持ちになる。対する広島はキッカーを募り、笑顔をみせていた選手はいなかった。プロの世界は結果が全てであり、人間力のある監督が良い結果を残せる保証はない。仕切り直しで挑んだ今シーズンも厳しい現実が待っていた。だが最後の最後に勝利を手繰り寄せ、誰よりもチームの浮沈の歴史を知りそのフットボール人生を捧げてくれている山本英臣が決めて鮮やかに優勝する、という大団円に導いたのは、今年1年かけてこの雰囲気を作り出し、キッカーをセレクトした監督の力であり、人間力の賜物だったのではないかと感じている。

吉田達磨監督は、天皇杯優勝の2日後に解任が発表された。新聞記事を読むと、決勝の前にその通告はされていたようだ。この決勝戦をどんな心境で指揮していたのだろうか。きっと10年後には、リーグ戦の成績不振なんてちっぽけなことは全部洗い流されて、J2から天皇杯優勝に導いた伝説の監督として記憶に残るだろう。

年末、出張帰りの車内で聴いていたFMフジに、三平和司選手が出演しており天皇杯決勝のPK戦直前のベンチの様子を話してくれた。彼はすでにベンチに退いており蹴る権利がないのでちょー気楽に盛り上げ役に徹していたこと、同級生の河田選手にだけは頼んだよ、と直接声をかけていたことを語っていた。この天皇杯に限らず、シーズンを通してチームの結束のために三平選手の果たした役割は大きかった。天皇杯全試合を通してのMVPを選ぶなら、個人的には三平選手を選ぶだろう。

開催中、J1チームを撃破するたびに繰り返し胸の中で叫んでいたフレーズがある。そしてJ2の底のほうから頂点まで上り詰めたいま、そのフレーズが大きく増幅して頭の中で響いている。
『J2ですが、何か?』
元々はしばらく前に毎年発刊されていた企画本のタイトルだが当時J1にいた我々には関係がなかった。だが、2022年、この素敵なフレーズに惹きつけられ、この企画本の製作者のセンスに感心している。2022年の心の流行語大賞として、ここに記録を残したい。

2022年のサヨナラ

イビツァ・オシムさんが80歳で亡くなった。オシム監督については、代表監督時代熱心に日本代表を応援していたわけでもないし、オシムさん率いるジェフ千葉の試合に注目して見たことも無かった。だが我が愛すべきサッカーチームに在籍していた水野晃樹、羽生直剛というオシムの教え子たちの言動に接していると、間接的にオシムが素晴らしい指導者であったことは伝わっている。また以前にTVでみたドキュメンタリーや木村元彦氏のルポルタージュで、かつて多民族国家だったユーゴスラビアの代表監督として多民族、異文化の違いを許容しつつチームをまとめイタリアワールドカップでベスト8に導いたことや、日本代表監督だった2007年に脳梗塞で倒れて帰国後も民族対立の絶えない祖国ボスニアを団結させ、2014年のワールドカップ初出場に導いたことなど、人としてのスケールのでかさを知り畏敬の念を抱いていた。5月8日、オシム没後、リーグ戦で低迷していたジェフ千葉はアディショナルタイムに得点して劇的に勝利した。試合の詳細までは知らないが、きっと、クラブ関係者のオシムさんへの追悼と感謝の念がこの勝利を呼び寄せたのではないか、と感じた。ご冥福を祈る。いつか、時間に余裕ができたら「オシムの言葉」を読みなおしたい思っている。

  • 5月の連休 g.o.a.t

ブログの引っ越しをした。2017年に選んだg.o.a.tというサービスは使いやすくて気に入っていたが、5月末で終了してしまうため、移行作業を余儀なくされた。引っ越しは面倒なので、簡単にサービスが終わらなさそうなのはどれか?という基準で考えたとき、はてなブログに納まった。アドベントカレンダーの多様性が薄れてしまうのはちょっと残念だが仕方が無い。筆無精の自分がどこまで続けられるかはわからないが、マイペースでやっていきたい。

  • 6月25日 Suunto traverse alfa

2016年に登山用に購入した腕時計SUUNTO traverse alfaを紛失した。この日、運動後に汗をかいて腕から外していたが、車から下車のタイミングで落としてしまったらしい。気がついたのは当日の夜だったが警察に届け出をして、落とした駐車場の会社にも問い合わせてみたがが、2週間音沙汰がなく、泣く泣く別れを告げた。それから1ヶ月の喪失感が半端でなかった。結局夏休みに、ヤフーオークションで同じ時計(色がブラックからカーキに変わったが)を中古で買い戻した。後にも先にも、ネットのオークションで物を買ったのは初めてだった。この時計、登山用の時計として高度はもちろん、GPSでルートの記録ができる。日常の時計としても見やすくて、ちまたで人気のスマートウオッチのように余分な情報が入ってこないのもいい。気圧計付きで急激な変化があるとストームアラームが鳴るのだがこれが全く当てにならないというお茶目な所も愛おしい。失って初めて大事な存在であることがわかった。これからは汗をかいても外では肌身離さず、故障するまで使い続けようと心に誓った2022年だった。

  • 7月  Galaxy S9

3年使ったGalaxy S9をアップデートして S21になった。まだ十分使えたのに、電池持ちが悪くなったな、と感じていたことと型落ちとなるS21の割引をしていたのでセールに飛びつくオバチャンの心境で機種交換してしまった。新しいS21は少し大きいと感じている。S9はエッジスクリーンになっていて大きさ、持ちやすさという意味では神機種だった。モノにはちょうどいい大きさというものがある。次にはこのS9のサイズを基準に選びたいと思った。モデルチェンジした新しいものが必ずしもイイとは限らないことを改めて実感した2022年夏だった。

  • 9月30日 サトミキ

Jリーグマネージャーのサトミキが引退してしまった。小瀬でハイタッチしてもらってから密かにファンだったので悲しかったが、twitterのアカウントやブログもこの日を境に閉鎖するとなっていたから、普通の女の子に戻るって事だなーと思った。芸能生活、色々あったのだろう。サヨナラ、サトミキ。いつか、普通の女の子として小瀬にきてくれるといいな。

おわりに

全世界を熱狂させた2022ワールドカップは、天才メッシの華々しい活躍もあってアルゼンチンの優勝で幕を閉じました。インターネットの世界を熱狂させたもう一つのワールドカップ、Advent Calender 2022も本日が最終日です。この素敵な大会のプロデューサー兼マネージャーの@taizoooさんには敬意を表したいと思いますし、この拙い記事に最後までお付き合いいただいた皆様にも感謝です。来年も皆さんにとって良い年でありますように。

・この記事は、2022 Advent Calendar 2022の第25日目の記事として書かれました。

・前日はwazuraiさん、次はたぶん来年のAdvent Calender 2023(開催未定)です。

2021年のライブ鑑賞

昨年突然降りかかった未知の感染症の前に、ライブ開催が大幅に制限された。ライブストリーミングは手探り状態で始まったが、長引くコロナ禍で必要不可欠な手段となり、2年目の今年はLive streamingが日常となった。

生で観るライブのほうが絶対にいいのだが、普段は容易に参加出来ないライブも手頃な値段で鑑賞できるメリットは大きい。ほとんどがインターネットだったが例年よりもたくさん鑑賞できた。そして、このコロナ禍のなかでも一度だけ生のライブにも参加できた。2021年の記憶を残したい。

1月4日 上原ひろみ

ジャズ・ピアニストの巨匠チック・コリアにその才能を認められた上原ひろみのライブを観た。そのチック・コリアは2021年2月9日に癌によって亡くなった。追悼の意をこめてチックコリアと上原ひろみの共演ライブCDを購入して今年の春は聴いてた。Fool On The Hillの二人の演奏が好きだ。

3月30日 Soil & Pimp Sessions

Soil & Pimp Sessionsは今年ジャズのカバーアルバムを発表。そのアルバムの曲を演奏するセッションのライブだった。仕事が終わってオンデマンドで夜観ていたが、もう記憶に残っていない。(ライブ・ストリーミングは手軽だけど、五感で感じる生のライブよりも記憶に残りにくいようだ。)

4月30日 Jazz Auditoria 2021

世界Jazz Dayで無料配信されるJazz Audutoriaを今年も観た。昨年に続いて平原綾香が出演していたが、今年も素敵だった。どこかの空港のロビーでのライブが印象に残る。ハービーハンコックを始め、世界的なアーチストが出演しているのに無料配信の太っ腹。毎年観るよ。

5月1日 斉藤和義  

2021年の4月27日、28日に緊急事態宣言下で中野サンプラザで開催されたライブの配信。ライブが完全にできなかった2020年のツアーのセットリストで演奏された。自宅で東京のライブが鑑賞できる日が来るとは想像していなかった。コロナ禍も悪いことばかりではない。

5月15日 Chara

Charaのライブを観るのは2回目だ。1回目はコロナが蔓延する前、青山のブルーノートで生で観た。今回、HIMIという初めて聞くゲストシンガーが登場。やけに自然で息が合っているなーと思って調べてみると、なんとCharaの息子さんでした! そしてHIMIのオリジナル曲「Allday」を歌っていてこれがまた良くて印象に残った。

8月21日  Fuji Rock 2021

8月はコロナ感染が過去最悪の状況だった。フジロックの有観客での開催は賛否両論あったが、昨年の経験を元に様々な対策が講じられ、実行された。中止するのが一番安全だが、これで生活している人も多くコロナと共存する上で考えて実行したことは英断だったのではないかと感じている。そして有り難かったのはYou tubeで無料配信されていたこと。おかげで自宅にいながら初めてFuji Rockを観ることができた。お目当ての忌野清志郎Rock'n Roll ForeverとAJICOを観ることができてとても良かった。世の中が落ち着いて、海外のミュージシャンも参加出来るようになった時にはいつか現地に参加してみたい。

8月31日 矢野顕子

今年新しいアルバム「音楽はおくりもの」が発表された。Spotifyで聴けるようになったからCDは買わなくなったけど、その代わり配信ライブを観た。バンドメンバーは年末に恒例で開催しているさとがえるコンサートの気心知れたメンバーで息のあった演奏を楽しめた。矢野顕子はピアノ弾き語りのアルバムが良くて、近年では2017年のSoft Landingが一番好きだ。

9月14日 Cure Jazz 

デビュー25周年を迎えたUAが、AJICOに続いてCure Jazzの活動も再開した。本当は今年の1月に開催される予定だったが、コロナの影響で9月まで延期になったが開催されて本当に良かった。菊池成孔とのunitだが、今回のライブではバンドメンバーが若く一新され、素晴らしい演奏を聴かせてくれた。そしてロックバンドでもジャズ・ヴォーカルでもその才能を遺憾なく発揮するUAに心酔した。個人的には間違いなく今年鑑賞しらライブの中のハイライトだった。出来ることなら、この日のライブ音源をCD化して欲しい。また新しいアルバムを出して欲しいと願う。

9月19日 斉藤和義

2020年4月にコラニー文化ホールで開催される予定だったライブは、コロナの影響をもろに受けて9月に延期された。昨年一年は状況は好転せず、さらに1年延期になりようやく今回の有観客ライブ開催にこぎ着けた。

コロナウイルスが蔓延し入院治療が必要な患者も減らず世間はまだ大手を振ってライブに行ける状況ではなかったが、コロナが拡がる前に購入していた昨年のチケットを大事に持っていたので、人目を忍んでライブ会場に向かった。ツアーはコロナ禍でもこれまでの経験をもとに会場の感染対策は万全になされ実施されていた。また参加者もみなマナーを守っており、マスクをつけて静かにライブを見守っていた。違和感はあったがコロナ禍のなかでのライブを初体験することができた。そして斉藤和義の山梨公演の皆勤賞を継続する事ができて良かった。2021年の大切な記憶の一つだ。

9月26日 矢野顕子

またまた矢野顕子の配信ライブを観た。ここまで手軽に観れると、どんな曲を演奏していたのかすでに記憶がない。来年はウィル・リーとクリス・パーカーとの熟練トリオの生のライブを観に行けるといいな。

11月 AJICO Tour接続 (WOWOW) 

11月だけWOWOWに加入して再結成したAJICOのライブを観た。衛星放送に入っていなくてもオンデマンドでPCで見れるから便利だ。20年前の代表曲、新しい曲、浅井健一のバンドSHERBETSからの曲、UAの曲、どれも生き生きとしていて最高だった。新しい曲では「惑星のベンチ」が好きだ。ラジオ番組で浅井健一がバンドの主導権をとってUAをコントロールしたかったけど、UAは“番長”で無理だった・・というようなエピソードを話していたのが印象に残った。とにかくそれぞれの個性が奇跡的に融合した、最高にカッコイイバンドだ。

11月28日 東京JAZZ

ハービー・ハンコックが今年亡くなった巨匠・チック・コリアの処女航海を演奏。

平原綾香は、この日の2日前に父・まことさんを無くしたばかりだったが、毅然としてこの日のMCをつとめ、その素晴らしい歌唱を聴かせていた。歌手としての魂を感じた。

2021年は、Live Streamingが日常化し、たくさんのライブを鑑賞することができた。

ただ、自宅のPCで鑑賞するのと生のライブで体感するのでは、ライブの感動の記憶の残りかたが全然違うことに気づいた。状況が許す限り、生のライブに行って五感で楽しめる日が戻ることを願っている。