黙然日記(廃墟)

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産経「主張」にあきれる。

 また1箇月ほど空いてしまいましたが、少しづつ通常運転に戻していこうかと思います。
 まずは音楽の話。20世紀米国の作曲家であるショージ・ガーシュインは、『ラプソディ・イン・ブルー』などの代表作を書き上げたあとも伝統音楽の素養がないことに悩み、パリに渡ってモーリス・ラヴェルに教えを請おうとします。しかしラヴェルは、「君はすでに一流のガーシュインなのに、なぜ二流のラヴェルになろうとするんだ」と、彼を励ましたそうです。ラヴェルのこの言葉も素晴らしいですが、その裏には、ヨーロッパの伝統音楽が限界を迎えていた20世紀初頭の状況があるのでしょう。新大陸からまったく新しい音楽が生まれることを期待していたのではないでしょうか。しかしクラシック音楽界全体はガーシュインの後継者(レナード・バーンスタインのミュージカル作品とか)に扉を閉ざし、自家中毒に陥っていきます。(この項、続かない)

【主張】被爆地訪問 中国の横やりにあきれる - 産経ニュース
http://www.sankei.com/column/print/150520/clm1505200003-c.html

 あきれるのは、こっちの方です。わたしは、全世界の政治指導者、特に核保有国のトップに、ぜひ広島と長崎の原爆資料館を訪ねてほしいと、真摯に願います。17歳のときに広島を訪れて、わたしの人生観は少しですがたしかに変わりました。人生の後半にさしかかった政治家たちにそれを期待するのは無理でも、なにかしらの影響は与えうるはずです。
 しかし、「安倍晋三政権の日本政府がそれを言うか」「産経新聞がそれを言うか」となると、わたしの変わった人生観の部分が頭に血を上らせます。日本国の指導者が、中国の南京大虐殺資料館を訪れる意味があるかは、わたしは訪れた経験がないのでなんとも言えませんが、少なくとも安倍氏にはその責務があるはずです。今日の党首討論でも、志位和夫日本共産党委員長の「あの戦争は間違っていたと考えるのか」という質問に対し、「迷惑を掛けた事実があり反省するのが内閣の立場」と繰り返すだけで、個人的に「間違っていた」とは一言も言わなかったような人物です。
 日本はあの戦争に対し、被害者と加害者の両方の側面を持ちます。特に、唯一の核戦争の被害国として、核兵器の悲惨さと愚かさをいくら強調しても足りない立場にあります。それだけに、被害を強調することで加害を帳消しのように見せかけるやり口には、反対しなければ鳴りません。今回のNPT会議がニューヨークで始まったとき、安倍氏はワシントンD.C.を訪問して、その後西海岸に向かい、各種のパフォーマンスを行いました。NPTには外相が出席しましたが、本気で核兵器を、戦争を憎み、絶滅させようと考えている人間の行動とは思えません。