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予想以上におもしろかった『チャンネルはそのまま!』

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。最近、『みをつくし料理帖』の小説を読みはじめました。以前、NHKのドラマがよかったので、いつか原作も読もうと思いつつも、ずいぶん経ってしまいました。
 じつは私、時代小説って好きじゃないんです。なんか、わざとらしさばかりが鼻につくというか。これまでおもしろいと思えたのは、笹沢左保の股旅ものと、山本周五郎の戦後の短編くらい。山本周五郎の「らしさ」が開花したのは戦後になってからで、戦前の作品は型にはまりすぎでつまらない。
 『みをつくし料理帖』はまだ2巻までしか読んでませんけど、絶品ですね。時代考証、人物描写、筋運び、言葉の選びかたまで、すべてにおいてムリがなく、細部まで目が行き届いてます。ベタな人情ばなしにとどまらない、独自の味わいがあります。

 ここしばらくばたばたしてたあいだに溜まったテレビ録画を、ぼちぼち観ておりますが、今期の連ドラは全滅でした。
 『動物のお医者さん』以来、欠かさず佐々木倫子作品を読んできたファンとしては、北海道ローカルで放送された『チャンネルはそのまま!』の実写ドラマが観られないのが悔しかったのですが、関東ではなぜか千葉テレビで、たいした前宣伝もなくひっそりと始まりました。知らずに見逃してるひと、多いんじゃないですか。
 ただ、観るのがコワくもあったんです。というのは、伝説の黒歴史とされる『動物のお医者さん』の実写ドラマを、私はリアルタイムで観てしまったからです。そのあまりのヒドさゆえ、以来、佐々木さんは自作の実写化を拒否し続けてきたのではないか、とウワサされていたくらいです。
 しかしうれしいことに、ドラマ版『チャンネルはそのまま!』は、予想以上の出来でした。文句をいいたいところはあります。テロップが多すぎるとか。マンガの雰囲気に忠実にしたかった狙いはわかるけど、役者の独白があって、その同じセリフが文字でも表示されるのは、実写ではクドすぎます。どちらかでじゅうぶん。
 5話のミニシリーズということもあり、原作のおもしろいネタを惜しみなくテンポよく繰り出してるので、ダレずに楽しめます。ワンクールの連ドラだったら、話を引き延ばしてつまらなくなったかもしれません。
 なにより意外だったのが、芳根京子さんの好演でした。目の演技が特筆もので、おや? こいつひょっとしてバカだな? と思わせる目をして、雪丸のキャラを自分のものにしてるんです。こんなコメディエンヌとしての才能がある女優さんだとは思わなかった。

 さて、そうなると、7月からの『Heaven?』の実写化のほうが心配です。個人的には、佐々木作品のなかで『Heaven?』はとても好きな作品だけに、え~? 主人公が石原さとみ? とか思っちゃいました。前にもいいましたけど、私は石原さんの演技力をあまり評価してないので。でも、観てみないことにはわかりませんけどね。私は役者をあくまで演技で評価しますから。近頃の日本には、政治的な発言が気に食わないってだけで三流役者と決めつけるマヌケもいるようですけども。
[ 2019/05/14 20:45 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告