2024年アメリカ大統領選レポート(8)_カマラ・ハリスに対する民主党内部の評価〜民主党の穏健派とリベラル派の分断の深さと感じさせる

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渡辺将人さんは、アメリカウッチャーとしては、いつも追っている人の一人ですが、明確に民主党の立場の人で、その内部の世界を描写してくれるのでよい。国際政治経済学者の鈴木一人先生のXでのつぶやきで、見つけたんですが、これがすごく面白かった。

象徴的だったのはハリスへの党内の変わらぬ酷評(裏)と、 「リベラル ・ メディア複合体」の大絶賛(表)の落差だ


http://www.gaiko-web.jp/test/wp-content/uploads/2024/09/Vol87_p14-19_Presidential_candidate_Harris.pdf
渡辺将人 慶應義塾大学准教授


この外交の論文は、非常に面白かった。民主党の内部で言われているのは、カマラ・ハリスの無能説。これだけ言われているのを見ると、たぶん本当に、政治能力が低い人なんだろうと思う。そして、そんな「空っぽの器」であるからこそ、分断している民主党の器としては非常にうまくかつげる神輿であること。こういうのを見ると、リベラル・メディアって、ほんとうに欺瞞に満ちて、世論をコントロールしているんだなって、なんかうんざりする。

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これまでカマラ・ハリスさんを追ってきて感じるのは、「中身のなさ」だ。確かに、何にも議論する材料がない。というのは、これに比べると、会田弘継さんなど、トランプさんや、特にJDヴァンスの思想的なものは、アメリカの新世代、アメリカの新しく立ち現れてきている「構造」に対して非常にビビッドに照応している。その是非、好き嫌いは置いておいて、明らかにアメリカ社会のあり方に対して関連している。けれども、カマラ・ハリスさんの存在から、そういうものが何も感じられない。。。だから、あまり話すことがないんですよね、彼女について。彼女の存在が輝くのは、「反トランプの結集ポイント」としてであって、それ以上の、何かではない。

それはさておき、しかし、ここで語られていることは、非常に重要な構造だと思う。メディアの大絶賛、「大統領禅譲」 としてのバイデン=ハリス候補者交代劇を演出することで、民主党内部の質的な分断を覆い隠すための欺瞞で隠れているが、本質は、ここが重要なんだと思う。特に、2028年の大統領選挙の前提になる構造だからです。このある種の応急処置というか、特効薬としての「反トランプ」という麻薬が、2020年の選挙のように、機能するかどうかはわからないですがが、2028年においても変わらず背景となる構造ですよね。注目すべきは、応急処置の欺瞞としての「空っぽの容器」の問題ではなく、この民主党の穏健派とリベラル派の分断なんだと思います。

民主党内分断の核心も、実は文化争点にある。例えば、黒人内部の世代間分断の広がりが深刻化しているが、これは世俗性をめぐる分断だ。黒人新世代は多様なセクシュアリティに寛容である。しかし、もともと敬虔なクリスチャンでもある黒人年配層は必ずしも同性愛に賛成ではなかった。黒人の共和党支持者が緩やかに増えているのは、LGBTQが主要議題となる現在の民主党になじめない黒人も存在することを示している。クィア(既存の性のカテゴリに当てはまらない人々)が創設したブラック・ライブズ・マター(BLM)は、古い意味での人種運動をセクシュアリティの問題に包摂したことで、黒人以外の幅広いリベラルの共感を集めた。だが、牧師が指導した公民権運動のようには、黒人全世代からの支持を得られていない。

このような「質的構造の分断」 は、 格差解消優先 (サンダース派)と人種正義・アイデンティ政治優先(オカシオ=コルテス派) 、 カトリックと女性団体の人工妊娠中絶をめぐっての分断、化石燃料産業の労働者と気候変動活動家の分断など枚挙にいとまがない。「ジェネレーションZ」も、ジェンダー、人種、年代(二〇歳以と一〇代)を細分化すればかなりの差がある。

http://www.gaiko-web.jp/test/wp-content/uploads/2024/09/Vol87_p14-19_Presidential_candidate_Harris.pdf
渡辺将人 慶應義塾大学准教授

とりわけ、黒人内部の世代間分断の広がりは、なるほどと唸らされます。年齢が上の世代は、敬虔なクリスチャンなので、ある意味保守的なんですよね。しかし若い世代は、セクシャリティに対して寛容。これだけ感覚が違う層を一括りに一つの党にするのは、たぶん難しい。激戦州のペンシルベニア州での黒人層を抑えようとしても、解像度を上げて深く潜ってみると、黒人と一括りに動員できる根拠が失われていることが浮き彫りになってきている。これって、要は二大政党制が、、、、特に、民主党側が、民意を反映できていないということなんだと思う。これって、ものすごく重要なことだと思う。もう一歩皮がむけて、そういった分裂気味の支持を獲得できるような理念やありかたを変更できるのか、それとも分裂していくのか、、、、2028年がとても注目です。