これも読んだ。せっかくのなので自分の感想の履歴を・・・・

ドラゴン・ライフ 作者:チェロバス
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うーむ。おもしろかった。★3と半プラスアルファ。いくつも読んでいると、「うまい人」とそうでない人を、って言っても「僕が思う人」だけど、、、見分ける基準が見えてくる。このチェロバスさんなんかが当てはまるんだけど、ちゃんと「キャラクターを表現することができる」っていうのがあって、えっと、なんというのかなー、、、キャラクターが一つの人格として、作者のアバダーというか代理ではなく、「そこに自立している」という感じがするものを書けるかどうかなんだけど、、、なにが「この差」を生むのだろう?。。。視点にまとわりつく主観性を排除できるかどうか、だと思っているのだが、、、ああ、視点に存在する主観性との一致が、なろうネイティヴの基礎なんだろうなぁ、、。


えっとね、この作者うまいなーと思ったんだけど、それはね、異世界の日本の女性がドラゴン転生したと設定なんだけど、それはもーーおいしそーに、人間をバリバリ噛み砕くんだよね(苦笑)、なんだけど、このドラゴンは、どうも人間世界のだれか−−−−−要は好きな人と契約を結んでしまう、という設定なんです。主人公がチートな設定なのは、お作法的なんだけど、なんというか、そういったチート設定ではあるんだけど、ドラゴンの彼女が「人間は食べるものという倫理観」からほとんどぶれないんだよね。チート設定で、キャラクターが描けていないなぁ、と思うケースは、こういう「ドラゴンは人間を食べるもの=人間おいしい」という、通常の今の現代人の常識から離れた場合、、、特にこれは人権意識や「人の命は地球より大切」という現代の強い生命イデオロギーに関連する部分なんで、下手な人は、この常識にあっさり屈した描写や感覚を描いてしまう。そうすると、キャラクターの設定描写と齟齬が生まれて、ああ、このキャラクターはキャラクター自身ではなくて、作者自身の反映なんだな(作者のキャラクターの背後にある常識や倫理が、キャラクター設定より優先される)ということがわかって、ああ、これは物語としては私小説なんだな、という風にセンサーが判断してしまう。


さらに、じゃあ、この人って、ドラゴンの倫理が維持したまま、人間と恋をするという脚本上の設定を、設定してしまうので、「そこをどう描くか?」というのが、この物語の肝になる。んでもって、僕はそれがとてもうまくいっていて、面白いーーーという風になったんですよね。


ただ、やっぱりそこは、俯瞰プロットが弱い感じがする。まぁもちろん、小説は「長く書くことによって世界に深みが出る」ケースが多いので(うまい人は)、まだわからないんだけど、やっぱり、主人公に動機の設定がない状態で、、、って、転生ものは動機がないケースがほとんど、、、物語を始めてしまうと、このドラゴン・・・アースドラゴンのように、恋した人間の国を守るという使命(=物語のマクロ構造上の動機)を、作り出すと、、、まぁこのケースはとてもきれいに動き始めているが、動いたからといって、では「オチはどこへ向かうのか?」というものの設定があまりに見えない。見えないと迷走するケースが多いんだよね。で、そもそも転生ものは、自意識が充足することをその主目的とおくものなので、物語のダイナミズムのほうが、この自意識の充足(=全能感)よりも優先されるようになっていくと、キャラクターの存在感が色あせるケースが多い。自意識の優越よりも、物語のダイナミズムが存在感を出せるのって、なかなか難しいのだ・・・・って、そうか、キャラクターメインの小説と物語メインの小説の差は、ここか、、、、。



さてさて、ここまですごく面白いのだ、、、それを超えられるか、、、が見たいです。超えられたら、これとてもいい作品になると思います。というか、、、ドラゴンの倫理を持った人が、恋に目覚めていく過程って、初々しくて、僕は好きだなー。ヒロイン、とても好きです。




簡単になびくと思わないで下さい 作者:素子9 http://ncode.syosetu.com/n9036u/



キャラクターの描写が、あきらかに作者のアバダーなんだけれども、ひよらないで、それを貫いたケースがこれ。潔い。★3つ。これも異世界転生もの。現代日本の自意識や常識を完璧にひきずって、王様に愛される!というのを、倫理的に完璧に拒否しているその一貫性がすがすがしい(苦笑)。意固地すぎて、なんだかんーとは思う反面、その強烈な意固地さが、ヒロインの魅力。ただマクロの設定に抗おうとする強さが、なんとなくメタ意識を感じさせて、、、そこは不思議な不安感をあおる。


そして、「それが故」にマクロのプロット上に重大なミスマッチが発生して、たしかに、そのミスマッチ感の不安が面白いのだけれども、物語上は絶対にオチがつかない。というか、王様以外の人を愛すれば、話は進むんだろうけれども、「王様と相思相愛になって・・・」というマクロ上の物語のダイナミズムが走っているところで、それを回収するフラグや複線をことごとく、上記のキャラクターの動機や倫理を確固として貫くことで破壊してて、、、そして、破壊するという「キャラクターの性格の一貫性」が面白い作品なので、構造上ちゃんと終わらせるのが難しい作品なのだ。


この設定である限りは、王様以外の人と愛し合わないと、彼女は、「この世界に残る」という選択肢はないので、設定を完璧に裏切っている。もちろん「そういう物語」もありだとは思うけれども、それは、物語の完成度という意味では、なんというか、非常に例外的な系なので、やっぱり可能性としては凄く面白いけど、、、、と思ってしまう。



閑話休題



異世界転生ものの評価する軸としては、作者の主観性を排せて、キャラクターの自立性を獲得できる書き方をしているかどうかが一つ。



ちなみに、主観性を排さないが故に面白い、というのが僕がいう「なろうネイティヴ」。そして、主観性を排さない描きをする人は、まずプロにはなれないと思う。



それは、第二の軸である、物語場の俯瞰プロットとキャラクター人格の整合性のバランスで、物語のドラマツゥルギーを読者に理解させるという・・・俯瞰意識がゼロだから、全体として物語として質が高くなくなってしまうからだ。最終的には、だけどね。。。もちろん、ワンアイディアで、面白い作品を書くことはできるし、またそれが商業になるケースだったたくさんあると思う。けれども、少なくとも小説家として長く続くとは思えない。また私小説の亜流である主観ベースの物語世界を描く人は、自己の欠落の代償行為として疑似世界の立ち上げをしているので、ある程度現実に満足な出来事があると(名声とか金とか)が一瞬でも訪れると、書く動機が失われてしまうはずだ、と僕うは予測する(ほんとか?)。まぁ僕の好き嫌いもあります、、、三人称で「神の視点」で物語空間を作らない人は、僕は、そもそも好きじゃないんでね。究極的な話。あっ、わかった主観性(=一人称)で物語世界をスタートされると、物語世界での目的が描けなくなってしまいやすいからなんだ・・・・。なるほど、、、。主観と世界どっちが重いか?という問いに対して設定レベルで、主観が重いという判断をしているケースが9割だからだろうなぁ。