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今回の記事は「NIKKOR隠れ名レンズ」編と称し、 所有しているNIKON製(NIKKOR銘)レンズの内 ”あまり有名では無いが、描写表現力に優れる” と思われるレンズを12本選出して紹介する。 (紹介レンズ発売の時代は1953年~2016年迄) なお、通常では記事内でのレンズを装着する母艦は 重複しないようにしている(=「弱点相殺側システム」 を意識している為)のだが、本記事では、NIKKORの レンズばかりの為、例外的に一部の母艦(Df等)が 重複するケースがある。 ---- では始めよう、まず最初の「隠れNIKKOR」 レンズは、NIKON PC-NIKKOR 35mm/F2.8 (中古購入価格40,000円)(以下、PC35/2.8) カメラは、NIKON Df (フルサイズ機) 詳しい出自は不明だが、恐らくは1960年代末頃~ 1970年代頃発売の「シフトレンズ」である。 「シフトレンズ」では、レンズの光軸を手動で数mm 程度平行移動ができる(注:回転角度も変更できる) その結果、被写体の遠近感を調整する為のレンズだ。 具体的には、高層ビルや、大きな鳥居等の建築物を 上すぼまりを避けたり、または逆に、高さ等を強調 する目的に使う。ただこれは、「地味に、わからない ように使う」ものであり、多くのシフトレンズの解説 記事のように「使用前、使用後」と、写真を並べて 比較するようなものでもない、と思っている。 (注:ちなみに、シフトすると、構図もピント位置も 大きく変わるから、たとえ三脚を使っても、使用前、 使用後の比較写真を撮る事は、そう容易ではない。 --- 簡単では無い上に、効能の説明にしかならず、シフト レンズの実用性等を提示する作例にはならない為、 本/旧ブログでは、あまり、そうした比較の写真を 撮ったり、掲載をする事は好まない) 視点あるいは遠近感(=パースペクティブ)を コントロールする物だから、本レンズの型番名称は PC(Perspective Control)となっている。 だが、今回は本PC35/2.8の、その「シフト機能」は 封印して用いる。 ・・・と言うのも、であるが、 (銀塩35mm判用)シフトレンズは、その遠近感調整 の効能を最大限に発揮する為には、銀塩35mm判機、 又はデジタルでのフルサイズ機を用いないとならない。 しかし、2000年代から2010年代の初頭にかけ、 NIKONのフルサイズ・デジタル一眼レフは、まだまだ 高価な(又は、未発売な)時代背景があった。 その時代において、APS-C機を母艦として本レンズ を用いると、勿論、シフトの効果は顕著には現れない。 だが、本レンズは意外に寄れて(最短30cm、これは 「焦点距離10倍則」をクリアしている)、かつ 寄って背景をボカした際の「ボケ質」が、NIKKOR らしからぬ、なかなか柔らかいボケ質となる事に 気付いていた。 当時(1970年前後)の(オールド)ニッコールは、 被写体がシャープに写る事を主眼として設計されて いた(=報道や学術用途に良く使われた為だ)ので このような(ボケ質の良い)特性を持つレンズは、 当時のNIKKORの中では、かなり希少だと思われる。 ボケ質の良さは、近代のレンズと比べても、そう ひけは取らない為、フルサイズ機が普及した後の 時代においても、本レンズの本来でのシフト機能を 使うよりも、準近接撮影用レンズとして、本レンズ を利用する事もある。なお、その際、フルサイズ機 よりも、APS-C機またはμ4/3機に装着した方が、 撮影倍率が上がり、準マクロレンズとして使えたり、 画面周辺収差を消す意味では有益であろうが、その 場合は、もう「シフト機能」が使いたいケースでも、 使う事が出来ない(効能が少ない)事が、トレード オフ(≒二者択一)の課題となる。 (参考:だからNIKON Dfを母艦とし、フルサイズFX と、クロップしたDXの両者を使えるようにしている) また、本レンズは銀塩時代の購入だが、その時点でも レアモノ(希少品)扱いで、やや高額な中古相場で あったし、その後の時代でも、あまり見る事がない 準レアモノである。 入手性は、良くないと思っておく事が無難であろう。 なお、シフト効果そのものが必要な場合では・・ 他社製品を含めて、シフトレンズは多く存在する のだが、業務用の高価な製品か、または安価な 場合では、トイレンズ相当の場合もあり、なかなか 適正な商品が存在しない事も課題として挙げておく。 しかしながら、全てのシフトレンズにおいて、本 PC35/2.8のような、優れたボケ質が得られる保証も 一切無い。むしろ、本レンズの場合は「たまたま」 であると思っておくのが良いであろう。 ---- では、次のNIKKOR。 レンズは、日本光学 NIKKOR-P 10.5cm/F2.5 (中古購入価格 15,000円)(以下、S10.5/2.5) カメラは、SONY α7S(フルサイズ機) 1953年と、今から70年も前の発売だ。 銀塩レンジファインダー機NIKON Sシリーズ用の ゾナー型3群5枚構成レンズである。 元となったレンズ構成は、戦前のCarl Zeiss (CONTAX)のレンジ機用のSonnar 85mm/F2で、 それを、ほぼコピーした製品が、日本光学の NIKKOR-P 8.5cm/F2(1948年、未所有) である。米国の有名フォトジャーナリストの 「D.D.ダンカン」氏(1916~2018年、故人) が、それを褒め、世界に「NIKKOR」の名を 知らしめた逸話で著名なレンズだった。 (注:毎回記事で書く事だが、ダンカン氏が NIKKOR-P 85/2が、CONTAXのSonnar 85/2の 準コピー品であった事実を知っていたかどうか? は不明である。その為、この逸話は、あまりに 有名ではあるが、「あまり面白く無い話だ」と、 個人的には思っていて、その為、当該85mm/F2 級Sonnar系レンズの購入を、「ケチがついた」と ずっと避けていた状況である) (追記:近年のTV番組の中で、そのD.D.ダンカン氏 がNIKKORを褒めた時の、再現シーンが放映された。 その際、ダンカン役の役者は「日本製のSonnarか?」 と少し馬鹿にした口調のセリフを英語で言うのだが、 そのドラマを信じるならば、ダンカン氏は、その レンズの中身を知っていた事となる。 --- しかし、初めて見るレンズに対して、そこまでの 予備知識を持っていたとも思えず、かつ当時の会話を 一言一句、誰かが記録していた筈も無いだろうから ”TVの再現シーンが正しい”と信用する事は出来ず、 再現シーンでの、単なる”演出”かも知れない訳だ) (参考:旧ソ連製のJupiter-9 85/2は一眼レフ用、 およびKiev用を所有しているが・・ 後述の「Sonnarの一眼レフ転用時の課題」の為か オリジナルのSonnar 85/2と、一眼レフ用の Jupiter-9の光学系は、だいぶ異なっている) で(85/2の購入は避けたのだが)、その85/2系 の3群5枚Sonnar構成を、そのまま25%程度拡大 設計すると、105mm/F2.5というスペックとなる。 つまり、本S10.5cm/F2.5レンズは、Sonnar 85/2の、拡大コピーレンズであった次第だ。 2010年代、たまたま本レンズの中古品を発見した。 オールドNIKKORは、中古相場が非常に高価なもの (=コレクター向け、および投機的措置)が多いが 本レンズの中古相場は適正であった。 恐らく「今時、Sマウントのレンズなんか、欲しがる 人は居ない」という販売側の判断だったかも知れない。 ところが、このレンズ、極めて古い(購入時点で 60年以上も昔の)レンズながら、とても良く写る。 元々、Sonnarとは「コーティング技術が未発達」の 時代において、レンズの貼り合わせ面を増やし、 レンズの表面反射(空気面)を減らす事で、光線 透過率を高め、レンズのコントラスト特性を改善 する為の設計(思想)である。 だからSonnarでは3群5枚のように、一般にレンズ 群数に対して、枚数が多いスペックとなっている。 Sonnarは1929年の発明であり、後年1930年代 (戦前)から、1950年代(戦後)にかけ、主に レンジファインダー機用のレンズとして、多数の 当該、および類似レンズが存在した(注:戦後の 日本光学がSonnarの特許を、どう回避していたか は不明である。戦後のどさくさやドイツ東西分断 等で、権利関係が、とても曖昧な時代だったかも 知れない。又は、GHQ(在日米軍)の指示があった のかも知れない?という想像すらしている) しかし、その後1960年代頃から、主力カメラは 一眼レフの時代となり、Sonnar構成は、一眼レフ でのミラーボックスの厚みを得る為の、バック・ フォーカス長を稼ぐ構成にしにくい課題があり、 加えて、その時代からコーティング技術(注: 1960年代では単層または二層、1970年代からは 多層(マルチ)コーティング)が発展した為、 Sonnar構成でなくても、ビオメター(クセノター) 型や、変形ダブルガウス構成等の、標準~中望遠 レンズが増え、Sonnar型は廃れる事となった。 ただ、それは「Sonnar構成に課題があったから」と 言うよりも、あくまで機材環境や関連技術の変化が 理由である。 (注:以降の時代でも、Sonnar銘のレンズは、 YASHICA/京セラCONTAXやSONY等に色々あるが、 もはや、純粋なSonnar構成ではなくなっている。 ただし、近代のCOSINA Zeissには、オリジナルの Sonnar構成に近い製品もあったと思うが、未所有に つき、詳細の言及は避けておく) NIKONでは1959年の初代銀塩MF旗艦機「NIKON F」 (未所有)の発売時点で、本S10.5cm/F2.5を 一眼レフ向けとしたNIKKOR-P Auto 10.5cm/F2.5 を発売している。 参考関連記事:レンズマニアックス+(プラス) 第56/57回「NIKKOR 105mm グランドスラム」編 ただ、無理にバックフォーカスを稼いだ設計の 為か? 後の時代に、これは4群5枚型の構成に変更 されている(恐らくだが、10.5cm→105mm表記に 変わった頃であろう、1960年代か? 詳細不明) でも、個人的には、3群5枚型の方が研究目的では 適していると思われ、歴史的価値も高く、かつ、 一眼レフ用でもあまり描写力の課題は無い、とも 思っている為、4群5枚型は後のAi時代(1970年代 後半以降)のAi NIKKOR 105/2.5しか所有して いない。 さて、余談が長くなったが、本S10.5cm/F2.5は、 超オールドレンズ(個人的には、レンズの物理的 寿命は最大50年間と見なしていて、それ以前の 古いものは、もう実用価値も少なく、動態保存も 難しいと判断している)・・ながら、その古さを 感じさせないくらい、良く写る。 「Carl Zeissだから(凄い/有名だ/良く写る)」 等のブランド信奉は、個人的には一切無いのだが、 戦前から戦後の時代において、この性能(描写力) であれば、もう、「Zeiss神話」が広まったのも なんとなく納得が行く次第である。 (注:「NIKKOR神話」とは、あえて言わない。 当時の日本光学ではCarl Zeissのコピー品ばかりを 作っていたからだ) ---- さて、3本目の「隠れNIKKOR」 レンズは、NIKON AiAF NIKKOR 85mm/F1.8D (中古購入価格 23,000円)(以下、AiAF85/1.8) カメラは、NIKON D2H (APS-C機) 1994年発売のAF(小口径)中望遠レンズ。 D型とは「距離エンコーダー内蔵」という意味だ。 D型のレンズを、D型対応のNIKON銀塩一眼レフ機 (NIKON F90系等、1992年以降~)に装着 すれば、「3D測光」に対応し、被写体の距離を 加味して、露出精度やフラッシュ(スピードライト) の調光精度が上がる「可能性」がある。 ただし、D型と、それ以前(S型)の多くの光学系は 同一であるし、露出値や調光値を同じに設定すれば D型とS型の写りの差異は無くなる。 まあだから、当時(1990年代中頃)のNIKON機の ユーザー層が「新型のD型に買い換えたら、写りが 良くなったよ」と、多く評価していたのは、単なる 思い込み(誤解)であるか、または、カメラを、 「3D測光」等を含む、フルオート設定のままで撮影を しているビギナー層が、たまたま露出(精度)が 旧来のS型レンズよりも高い被写体状況に当たった、 と、ただそれだけであろう。 中古カメラブームが始まりかけ、ユーザー層のカメラ やレンズに関わる知識が増えた時代だとは言え、大半の ユーザー層は「技術」に関する知識が大幅に欠如して おり、D型の意味や原理、効能等を理解している人達は 全体層の1割にも満たなかったであろう。それでいて D型は割高(少し値上げを意図した。又は、中古品は 発売年次が新しくて高価)であったので、なんだか 現代の感覚では、面白く無い(馬鹿馬鹿しい)話だ。 だが、本AiAF85/1.8(S/D)は、悪く無いレンズだ。 大口径版では、Ai85/1.4S(後述)が、やや NIKKORとしては、クセのある描写であり、なかなか 使いこなしが難しく、そのAF版であるAiAF85/1.4D (1995年、現在未所有)も、また、多少のクセが あって、個人的には「もういいよ」となっていた為、 AiAF85/1.4Dを下取りし、本AiAF85/1.8Dに ダウングレードした次第であった。 ダウングレードは少々奇妙な措置ではあるが、幸い これはピッタリとハマり、こちらは好みの描写特性 であった次第だ。 ただ、NIKKORのMF/AFの85mm/F1.4級にあった、 ピントリングのトルク感(操作性)は、本レンズ では大幅に悪化している。つまり、ほとんどAFで しか使えないレンズであろう。 その為、本レンズは銀塩時代であればNIKON F5、 デジタル時代初期ではNIKON D2H、同後期では NIKON D500と、高速連写機かつAF性能に優れた 機体を母艦とする事が、ほぼ全てであった。 中古相場は比較的安価だったので、2000年代 のデジタル初期あたりまでは、まだ知人友人には このレンズを推奨した事も多かった。 でも、2010年代ともなれば、さすがに、この時代 のレンズの設計は、古さを感じてしまう。 長い期間を隔てた後継型として、AF-S85/1.8G (2012年)が存在するが、未所有である。 なんだか、「待ちくたびれてしまった」という 感覚もあり、結局、このクラスでの代替レンズと しては、TAMRON SP85mm/F1.8 (Model F016、 2016年発売)を使用している次第だ。 現代においては、本AiAF85/1.8は、古いが、 「絞り環を持つ」という特徴もある為、安価に 購入して、他のミラーレス機等で使うのも、 なかなか良いとは思う。ただしピントリングの 操作性がスカスカな為、そこは我慢だ(汗) ---- では、次のNIKKOR。 レンズは、NIKON Ai NIKKOR 135mm/F2 (中古購入価格 47,000円)(以下、Ai135/2) カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機) 1977年発売の単焦点MF大口径望遠レンズ。 いつも、このレンズを使うたびに「ずっしりと 重いレンズだ」という感想がある。 重量は800g台、今時の高性能レンズと比べれば、 むしろ軽量な類だが、小さい鏡筒内に、重さが凝縮 されている状態であり、加えて、いくら今回のように 小型機を母艦としてトータル重量を軽減したとしても ピントリングや絞り環の操作の度に、左手の持ち替え の動作が発生し、手指が疲労する事に変わりは無い。 しかし、このレンズ、なかなか良く写るのだ。 そこが、このレンズの最大の長所であり、重く感じる 課題は、さておき、たまにこれを使いたくなってしまう。 なお、ライバルレンズとしてCANON (New) FD135/2 (1980年)が存在する。そちらも所有しているが、 それは本レンズと同じスペックながら、200g以上も 軽量なので、はるかにハンドリング性能が良い。 ただし、New FD135/2は、何故か、小口径版の New FD135/2.8と、ほぼ同等の描写傾向であり、 (注:両レンズを所有している知人の上級マニアの 人からの指摘があり、私も両レンズを持っているので 比較してみたら、指摘どおり、ほとんど同等であった) その点が、ちょっと「唯一無二では無い」という観点 から、最近では、あまり好まないレンズとなっている。 まあなので、本Ai135/2は、同等の描写傾向を持つ レンズは、NIKKORの範疇では皆無だと思われる為、 唯一無二の「隠れNIKKOR」と呼ぶ事ができるのでは あるまいか? 課題としては、この時代(1980年前後)の、大口径 オールドニッコールは希少価値(発売時に高額すぎた。 本レンズは96,000円ほどの定価だったと思われる。 Ai135/3.5の3倍も高価であれば、なかなか売れない) と、弱い投機的措置につき、中古相場は高額である。 あまりに高い値段で買うものでもない事は1つあるし おまけに、後年には135mmという焦点距離は、 ほぼ全ての望遠ズームに内包される画角であるから、 単焦点135mmは少ないのだが、あったとすれば、 それらは、とてつもなく高性能(高描写表現力)で ある事が一般的だ。(例:MINOLTA STF135/2.8 やSONY ZA135/1.8、SIGMA Art 135/1.8等) そんな近代高性能135mm単焦点と比べてしまうと、 さすがに本レンズの性能優位性は、もはや無い。 ---- さて、次のシステム。 レンズは、Nikon LENS SERIES E 35mm/F2.5 (中古購入価格 18,000円)(以下、E35/2.5) カメラは、NIKON D500 (APS-C機) 1980年頃に発売された、廉価版単焦点MF準広角レンズ。 まず、「SERIES E」表記は、全て大文字であり、 ”Series E”ではなく、”Eシリーズ”でもない、 そのあたりの誤記が世の中には多すぎる次第だ。 又、レンズ上表記は「NIKKOR」ではなく「Nikon LENS」 となる。これは「NIKKORはブランドだ!」という意識 がメーカー側に強いためであり、その為に、NIKKOR は、わざわざ常に大文字表記だ(=Nikkorは誤り) つまり「NIKKOR」はブランド故に、SERIES Eという 廉価版システムでは、その名称を使う事が出来なかった のだろうと思われる。 なお、「Nikon」表記については、先頭のみ大文字が 正しいのだが、本/旧ブログでは、各社の社名を大文字 で統一するケースが多く(=各社でまちまちである からだ)、NIKONと書く場合が殆どである。 「SERIES E」レンズを、現代機(今回ではD500) で使う上では、「レンズ情報手動設定」のメニュー から、少なくとも開放F値を正しく入力して、 Aiの露出連動機構を動作できるようにしておく。 他は、カスタムf4メニューから「絞り値の設定方法」 を「絞りリング」に変更しておく方が確実だが、 実は、これは、そう設定しなくても、絞り環は有効 であるし、むしろ一般的なGタイプ(絞り環なし) のNIKKORに付け替えた際に、戻し忘れがあるので デフォルトのメニュー設定のままでも良い。 これで「SERIES E」レンズを現代機で使用可能だ。 なお、フォーカスエイドが効き、設定測距点で ピントが合えば、白色の合焦マークがファインダー 内に表示される。(注:測距点中央固定の用法が 安全である) さて、「SERIES E」は、複雑な事情から生まれた 製品群であり、本記事で、それを説明していくと とても長くなる為に割愛する。 詳細に興味があれば、以下の過去記事を参照されたし。 参考関連記事:旧ブログ *特殊レンズ・スーパーマニアックス第79回 「NIKON SERIES E」編 ただし、その記事を読んでみても、あまり気持ちが 良い歴史では無い事がわかるだろう。 ブランドイメージを守りたいNIKONが、必要以上に、 「SERIES E」に対して、様々な「仕様的差別化」 を施した事が、如実にわかってしまう内容だからだ。 だが、個人的には、こういう不遇な立場の製品は なかなか好みである(汗) つまり、差別化されていたとしても、製品自体の 出自や歴史を理解した上で、適正な用法を用いて 撮影すれば、別に「NIKKORに対して劣っている」 などの感想・感覚は持ちようが無いからであり、 うまく使いこなすことができるのであれば、 これはむしろ、逆に「痛快」でもある。 そういう人達(まあ、上級マニア層であろう)に 向けてのみ推奨できるレンズだとは言える。 さもなければ「NIKONにしては、安物のレンズだ。 作りも悪いし、良く写る筈がない」と、たいていの ブランド志向の「NIKON党」には、受け入れる事 が出来ないレンズだろうからだ。 ---- さて、6本目の「隠れNIKKOR」 レンズは、NIKON Ai Micro-NIKKOR 105mm/F4 (中古購入価格 8,000円)(以下、Ai105/4) カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ (μ4/3機) 1977年発売のMF小口径中望遠1/2倍マイクロ レンズ。(注:NIKONでは、「MACRO」ではなく 「MICRO」と呼ぶ、ただし「Micro-」等の表記は、 大文字小文字の区別やハイフンの有無が、時代や 製品毎に、まちまちとなっている。 ブランドを守りたいNIKONであるのに、こういう 製品毎の名称記載の差異には、無頓着だ) で、本レンズは3群5枚のヘリアー型である。 前述のSonnar(3群5枚)と、同等のスペックだが、 ヘリアーは、元々の1890年代の3群3枚トリプレット 型の、前群と後群を2枚の貼り合わせ構成とした、 2+1+2枚という光学系であるのでSonnarとは異なる。 ヘリアーは、1900年に(旧)フォクトレンダー社 (当時、独国)で開発された。 当時としては、とても優秀なレンズであったと 思われるが、数年後、Carl Zeiss(当時、独国) により、3群4枚構成のTessar(テッサー)が 開発されると、そちらの構成の方が、ややシンプル で作りやすく、性能も、ヘリアーと余り変わらない 状態であった為、Zeissの特許が切れた1920年代 頃からは、世の中の非常に多くのカメラ用のレンズ が、Tessar型になったという歴史である。 (旧)フォクトレンダーも、1920年代にはTessar と同等構成である「Skopar」(スコパー)を開発。 せっかく、Heliarを発明したのに、Tessarの 同等品を作るのは悔しかったのかも知れないが、 まあ、世の中の、そして時代の流れでもあった。 さて、ヘリアーは、その後の時代においても、 主に中大判カメラ用のレンズとして多くの機種が あったのだが、フォクトレンダー社自体、1950 年代までは成長を続けていた(注:企業自体は、 1756年と、はるか昔からある世界最古の光学 機器メーカーである)のだが、1960年代とも なると、業績が悪化。その背景には日本製カメラ の台頭もあり、当時の西独の光学メーカー間での 統廃合を繰り返し、ついにフォクトレンダー社は 200年を超える歴史のもと、操業を停止してしまう。 その後も色々とあったが・・ 結局、1999年頃に 日本のCOSINA社が、フォクトレンダーおよび そのレンズ・カメラの製品名(商標)の使用権を 獲得し、その後20年間以上もフォクトレンダー銘 での高性能なレンズ等を作り続けている歴史だ。 さて、ヘリアーだが、近代の国産フォクトレンダー により、数機種のレンジファインダー機用の 同名のレンズが発売されている。なお、カラー・ ヘリアーとか、ワイド・ヘリアーとかの名称の ものは、本来のヘリアー型3群5枚構成ではなく、 純粋なオリジナル型構成のものは、僅か数機種 (恐らくは2機種のみ)と、極めて少ない。 (追記:近年、それらを入手したので、いずれ ヘリアー型レンズの比較紹介記事を掲載する) (銀塩)一眼レフ用のヘリアーも同様に極めて 少なく、今回紹介のAi105/4と、および、これの 設計をコピーした(または、共同開発/OEMした) KONICA AR 105/4の、たった2本(2系統)の レンズしか存在しない。 (追記:近年に入手したCANON (New) FD100mm/F4 Macroが、これらヘリアー型の写りに極めて近い。 ただ、CANONは、それをヘリアー型と公言しておらず、 「変形テッサー型である」との記述を見つけた。 この真相については、長い期間をかけて研究予定だ) 本Ai105/4は、Heliar型3群5枚構成ではあるが、 一眼レフ用のバックフォーカス長に適合する為、 恐らくだが、後群には分厚いレンズを入れるなど、 少し無理をした設計であろう。 使いこなしとしては、フルサイズ機には絶対に 装着せず、必ずμ4/3機(又は、せめてAPS-C機) に装着して使う。これで周辺収差や、周辺ボケの 課題が綺麗に消え、(前後)対称型レンズ構成に 良くある、「画面中央部が、恐ろしくシャープ」 という特性を有効活用する事が出来る。 μ4/3機に装着すると、換算210mm/F4であり、 最短撮影距離47cm、等倍相当、またはμ4/3機 に備わる各種デジタル拡大機能を併用すれば、 簡単に等倍以上の高い撮影倍率が得られ、これは 準望遠マクロとして自然観察撮影全般に活用でき、 かつ、その写りは「これぞカミソリマクロだ」と 呼べる程に、シャープで気持ちが良い。 (注:上写真は「アートフィルター」機能を 用いているので、念の為) 非常に好みのレンズであり、個人評価点も高い。 ただ、先年、調子に乗って、本レンズを銀塩機の NIKON F2A(ほぼ、同時代のカメラ)に装着して 使ってみたが、銀塩撮影環境では、本レンズの 使いこなしは、かなり難しく、このレベルだと 発売当時(本レンズの系譜としては、1975年~ 1984年ごろまで、と、結構短期間だ)では、 皆、これを上手く使いこなせず、あまり好評価が 得られていなかったのではなかろうか? でも、これぞ「隠れNIKKOR」の名玉であろう。 (ただし、本Ai105/4の個人評価点は、3.9点と 個人的に名玉の条件としている「評価点4点以上」 には僅かに届いていない。まあ「準名玉」だ) 入手性は、準希少品ではあるが、皆無では無い。 見つけた場合、中古相場も安価だと思われるので、 「希少なヘリアー型のマクロ」を体感したいので あれば、研究目的としても実用としても悪く無い。 ---- では、次のレンズ。 レンズは、ニコン おもしろレンズ工房 ぐぐっとマクロ (120mm/F4.5) (中古購入価格 レンズ1本あたり7,000円相当) カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機) 「おもしろレンズ工房」とは、ビギナー層に向けて レンズ交換の楽しさを訴求する目的で企画された 一種の「エントリー(お試し版)レンズ」であるが、 20mm魚眼風、マクロ+ソフト、400mm超望遠の 3本セット、と、あえて特殊な仕様のレンズのみ を販売している。 勿論、これで「レンズ交換が面白くなった」という オーナー層が、後に高価なNIKKORの本格的レンズを 購入してくれる事に誘導するビジネスモデルである。 これは、ニコン社内ではなく、関連会社での企画開発。 この意味は「NIKON製品とは認めない」という、ここも 「仕様的差別化」であり、このセットは、そうした 様々な「差別」的措置ばかりで、ユーザー側としては、 何かにつけて気分が悪い。 そこを一々述べていくと、書いている方のみならず 読者の方も不快になる一方であろう、今回、そのあたり の話は割愛するし、参考関連記事も紹介しない。 でも、まあそこは、SERIES Eのところで、少し前述した ように、そういう「差別化」された製品を、ちゃんと 使いこなす事で、メーカー側の意地悪とも言える企画 方針への反発心を持って、それを乗り越える事が出来る ならば、「むしろ痛快である」とも言える。 で、これは初代の製品が1995年に限定発売されている が、意外に人気があったからか、2000年に再生産品が 同じく限定販売されている。 通常店舗等で販売されたものではない(注:ここも、 「これは正式なNIKON製品では無い」からだ)ので、 発売当時約2万円と、比較的安価ではあったのだが、 流通経路の課題で、やや希少品となっている。 現在の中古市場では殆ど見る事は無いが、希少品故に プレミアム相場となってしまう事もある模様だ。 ただ、数年前に、大阪の中古店で、3本セットで 9,800円で売られていたのも見かけた、このあたりが まあ適正な相場であろう。 ちなみに、私の中古取得価格も、セットで約2万円と、 発売時の定価そのままか、むしろやや高目であった。 このレンズは、「組み換え式」という珍しいレンズだ。 ユーザーがレンズを(簡単に)分解して、部品を組み 換える事で、マクロレンズとソフトフォーカス(軟焦点) レンズの各々に変身させる事が可能だ。 ここではマクロの形態で使用する。 (注:NIKON製品では、通常「マイクロ」と呼ぶが、 本レンズのみ「マクロ」と、一般的な呼称である。 ここも勿論、差別化の意識から来るものだ) 1/3倍まで、と、ここも仕様的に差別化されているが、 現代の利用環境では、APS-C機やμ4/3機に装着すれば 撮影倍率は高めて使う事ができる。 (参考:ソフト形態で利用したほうが、むしろ 最大撮影倍率が高まる、という矛盾した仕様である) 絞り環は無く、絞り値の変更はできない。 だが、ここも、撮影距離の変更+デジタルズーム により、同一構図であっても仮想的に、被写界深度 を変更(深める)する裏技がある。 (注:FUJIFILM X機には、デジタル拡大機能が 入っていない。こうした用法を知らないから、単に 「トリミングと同じだ」(だから不要だ)と思って カメラを企画しているのであろう。 --- FUJIFILM製のカメラは、銀塩時代の各種製品では、 非常に高度な銀塩撮影のノウハウの裏づけがあった のに、デジタル時代製品では逆に、デジタル撮影の 方法論等を活用できていないように思えてならない) 当時のNIKONでの”ブランドイメージ戦略”により (つまり、会社の都合で)、様々な仕様的な差別化を 掛けられてしまった、不遇な「ニコン おもしろ レンズ工房」ではあるが、社外で、または出向して これを設計した技術者の気概は伝わってくるレンズだ。 つまり「差別や制約があったとしても、良いレンズを 作りたいという気持ちには変わりが無い」という視点 で、様々な困難(コストの制限もあるだろう)の中で とても見事にまとめたのが、「おもしろレンズ工房」 であると思う。 「NIKKOR」とは、当然、そう名乗る事ができなかった レンズだが「隠れNIKKOR」として認めることは出来る。 ---- では、8本目のNIKKOR。 レンズは、NIKON AiAF NIKKOR 50mm/F1.8S (中古購入価格 5,000円)(以下、AiAF50/1.8) カメラは、NIKON Df (フルサイズ機) 1990年に発売されたAF小口径標準レンズ。 1970年代のAi NIKKOR系50/1.8のAF変更版であり、 AF化において、レンズ構成には殆ど変更が無かった。 その後2000年代前半に距離エンコーダー内蔵のD型と なっているが、ここでも光学系は本レンズと同じものだ。 ちなみに、NIKKORでのS型とはMF時代の1980年頃から の仕様であり、旧来のS無しが、マニュアル露出および 絞り優先AEへの対応であったのに対して、S型では 自動絞り機構を組み込み、つまり絞り値がカメラ側 から制御できるから、プログラムAEやシャッター 優先AEに対応できる。 なお、余談だが「瞬間絞込み測光」機能を備える 銀塩(MF)NIKON機、具体的には「NIKON FA」 (1983年、譲渡により現在未所有)や 「NIKON FG」(1982年、所有しているはずだが、 行方不明中・汗)においては、S型では無いAiレンズ でも、プログラムAEが利用できる。 ただ、AF時代からの(AiAF)NIKKORは、少なくとも ほぼ全てがS型対応である。よって、AFのNIKKORを 近代機で使う上では、S型か否かは全く関係が無い。 (ちなみに、本記事で2本紹介しているSERIES Eの 廉価版レンズも、S型相当の仕様だ) また、デジタルのミラーレス機時代において、 それらのMFのNIKKORを、マウントアダプター経由で 使うならば、その時には「絞り優先AE」または、 「マニュアル露出」でしか使わない(使えない)ので S型か否か?は、どうでも良い話となる。 さて、本レンズだが、D型(距離エンコーダー内蔵) への対応が遅れに遅れていた。市場にあるレンズの 多くは、S型対応と思われる。ただ、D型でも前述の 通り「露出精度が高まる”可能性”がある」だけの 話なので、それぞれの差異や効能が良くわかっている ユーザーであれば、別に、そのあたりはどうでも 良い話だ。 ましてや、2000年代からのデジタル時代であれば、 撮影後に露出状態は写真を再生して確認できるので、 趣味撮影であれば、露出が気に入らなければ撮り直し しても良いし、事後でのレタッチ編集も可能であるし それでも心配ならば、AEブラケット機能で、露出を バラして複数枚を撮影しておけば良い。 デジタルでは、撮影コストは限りなくゼロに近いの だから、いくら撮り直しても良い訳だ。 だが、現代では、ビギナー層とかだと「最新の機能が 入っていなければ(上手く撮れないかも知れず)心配だ」 と、常に、自信の無いそぶりを見せるし、その為に、 不要な迄の高性能・高機能な機材を高価に買ってしまう 傾向も見られる。まあでも、それで市場が潤っている ならば、過剰な高性能機を買おうが、それは買う人の 勝手であるし、むしろ(市場維持からは)望ましい。 そして、そのビギナーユーザー層は、せっかくの デジタル撮影でのコスト的な恩恵があっても、それを 活用せず、年間で1万枚も撮影するような人は、極めて 少ない。ちなみに、年間1万枚は写真をやっているならば 最低線の数値であり、マニア層やハイアマチュア層向け には「トリプルスリーの法則」(旧ブログ参照)により 「年間3万枚以上の撮影を行う事」を推奨している。 まあ余談は良い。本AiAF50/1.8であるが、銀塩時代 からの光学系の焼き直し(または、ほぼ変化なし)で あったとしても、元々、1970年代頃においては、 小口径標準(50mm/F1.8級)レンズでの、5群6枚 変形ダブルガウス型構成の完成度が高まった時代であり、 近代に至るまで、何十年間もの間、その光学系は特に 改良する余地も必然性も無かった次第であった。 でも、1970年代~1980年代のMF時代では、各社に おいて、小口径標準(50/1.8級)レンズと、大口径 標準(50/1.4級)は、ほぼ必ず併売している状態で あった為、小口径標準には、大口径版に比べて、 「仕様的差別化」が施されることが殆どであった。 具体的には、50/1.4版は、最短撮影距離が各社とも 横並びで45cmであった事に対し、小口径版標準 (50mmのF1.7~F2級)の最短撮影距離は、 50~60cmに制限されている。 もし、これを同じ最短撮影距離にしてしまうと、 大口径版より、ずっと安価な小口径版の方が、全般的 に優れるレンズとなり、ラインナップの整合性が崩れる。 この仕様的差別化を施しておけば、最短撮影距離での 両者のレンズは、被写界深度が最大で2倍も異なり、 販売店等においては、店員から顧客に対して 店「ほら、F1.4の方が、ずっとボケるでしょう。 おまけに、暗所でもブレ難い、だからこの F1.4は、F1.8より高価なのですよ」 と説明できる。 お客は、たいてい「そうか、F1.8は、安物なのだな」 と判断し、高価なF1.4版を買う事であろう。 良くできた販売上のトリックであるし、その印象は 後年にも、現代に至るまで「F1.8版は安物」という 誤解として初級中級層全般に根付いてしまっている。 (参考:ただし、銀塩機では日中の撮影でF1.4の 開放を使う事はできない。その為には、ISO100の 低感度フィルムを使った場合でも、1/16000秒以上 の高速シャッターが必要だ。銀塩機での標準は、 高級機でも、MF時代は最高1/4000秒、AF時代でも 1/8000秒(稀に1/12000秒)が最速である。 なお「NDフィルターを使えば良い」というのは 屁理屈であり、銀塩時代では、それは普及して おらず、ほぼ誰も持っていなかった時代だ) で、本AiAF50/1.8だが、最短撮影距離の仕様的 差別化が撤廃されていて、最短45cmと大口径版と 横並びである。 こういう仕様を持つ小口径標準レンズは極めて少なく 他に代表的なものは、CANON EF50/1.8 Ⅰ/Ⅱ位しか 無いかも知れない(他にもあったか? 詳細不明) つまり「差別化されていない小口径標準」である。 これはもう、希少な上に、実用性の高さから、必要性 が、かなり高まる次第であり、加えて、勿論ながら 「隠れ(名)NIKKOR」でもあろう。 ---- さて、次のNIKKOR レンズは、NIKON Ai NIKKOR 85mm/F1.4S (中古購入価格 60,000円)(以下、Ai85/1.4) カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機) 1981年頃に発売されたMF大口径中望遠レンズ。 MF時代の末期の製品であり、NIKKORにおける レンズの戦略転換の時期に当たる製品でもある。 つまり、それ以前のNIKKORでは「シャープだが 固い描写」を特徴としていた次第であり、それは 長所ではあるが、短所とも言える特性であった。 時代が変わってきていて、すでに1975年には、 YASHICA(後に京セラ)CONTAXから、高い描写 表現力を持つCarl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4 が発売されていて、一部のユーザー層からは、 神格化される程の高評価を得られていた。 ただ、Planar 85/1.4は、使いこなしが非常に 困難なレンズとしても著名であり、もっと簡便に、 そのクラスの描写表現力を持つNIKKORが戦略上 必要とされたのであろう。NIKKORの85mmでは、 口径比F1.4級レンズは、本レンズが初である。 また、同時代1980年前後においては、NIKKOR の大口径中望遠の多くが、こうした「固い描写 ではなく、ボケ質までを含めたバランス型」の 設計コンセプトとなっているものが多い。 参考関連記事:旧ブログ *レンズマニアックス第69回 「Ai NIKKOR 大口径望遠マニアックス」編 本レンズの課題だが、バランス型とは言う ものの、解像感が低く、他の同時代のNIKKORと 比べたら、それは顕著なので、用途が制限されて しまう、という点がまずある。 第二に、準希少品(理由は、従前のNIKKOR 85mm、 例えば Ai85/2(未所有)に比べ、2倍以上も 高価な9万円という定価であったからだ、これは なかなか簡単には手が出る価格帯では無い) なので後年の中古相場も高額で推移している為に、 入手性が良くない事である。 あまりに高価に入手してしまい、かつ、このレンズ の出自や開発の歴史的背景を知らないままだと 「シャープに写らないNIKKORだ、これはダメだ!」 となってしまうので、要注意だ。 ---- さて、10本目の「隠れNIKKOR」 レンズは、NIKON NIKKOR-H Auto 50mm/F2 (中古購入価格 5,000円相当) カメラは、OLYMPUS PEN-F(μ4/3機) 1964年発売のMF単焦点標準レンズ。 非Ai仕様のレンズにつき、1970年頃までの NIKON銀塩MF一眼レフ、またはデジタル時代では NIKON機では、NIKON Df(2013年)を使うか、 もっと簡便には、現代の任意のミラーレス機に マウントアダプター経由で装着して用いる。 Fマウント初期(1960年代)のオールドニッコール は描写が固い(解像感はあるが、ボケが汚い) 事で著名であるが、本レンズにも、その傾向がある。 まあでも、同時代の大口径版50mm/F1.4は、さらに その傾向が強いため、それを好まず(私も、それは 処分してしまった)、こちらのF2版を好むユーザー も多かったかも知れない次第だ。 本レンズは、多層コーティング採用以前の時代の ものの為、逆光耐性等には留意をして使用する。 なお、逆光時のコントラスト低下、以外には、大きな 実用上の課題は無い為、そこだけ注意をすれば十分だ。 中古流通市場では、多層コーティング化前のNIKKORを 「Cナシ」と呼び、これの単層コーティングの反射光 が、アンバー色(琥珀色、黄色)に見える事から、 「これはモノクロ写真用、カラーでは使えない」と 誤解された話が伝わっているのだが・・・ 技術的な中身を理解して使うのであれば、「Cナシ」 版は、安価に流通しているので、むしろ助かる。 勿論、カラーでも何も問題なく撮れる訳だ。 近年では、COSINA社が、ごく一部のレンズにおいて 単層コーティング版を、多層コーティング版と併売 し「単層版は、クラッシックな描写が得られる」と むしろ、それを「付加価値」としている位なので、 「CナシNIKKORは、黄色く写る」などの酷い誤解を 持たず、この時代のレンズを入手しても悪く無い。 (注:黄色光が「反射」して見えるのならば、 もはや、黄色く写る筈もない) 「Cナシ」版は、それこそ「隠れNIKKOR」なのでは なかろうか? ---- では、次のシステム。 レンズは、Nikon LENS SERIES E (Zoom) 70-210mm/F4 (中古購入価格 1,000円)(以下、E70-210/4) カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機) 1982年に発売された、開放F値固定型MF望遠ズーム。 前述の廉価版、「SERIES E」の内の1本だ。 ただ、廉価版と言っても、このレンズは相当に まともであり、望遠ズームとして十分な実用価値を 持つ。 (注:想像だが、数年後に発売された同仕様の AF版のAiAF70-210/4とは同等光学系、および 同等価格だ。この状況だと「NIKKOR相当」とも 言えるかも知れない。ならば、中古価格は安価 なので、とてもコスパが良い) 今回は、その為「MF望遠ズーム母艦」である PANASONIC DMC-G6を出動させよう。 本レンズのような、ワンハンドズーム(つまり ピントリングとズームリングが一体構造であり、 左手だけで両者の操作が同時並行で行える)と DMC-G6にあるファンクションレバーにアサイン された、デジタルズーム(画素補間型であり、 2倍迄は画質無劣化、加えてデジタルテレコン 最大4倍(画質劣化あり)が併用できる)との 組み合わせでは、無類、あるいは唯一無二とも 言える、望遠画角全般での、極めて高い操作性・ 操作系と、実用性を得る事ができる。 (→近年の流行語で言えば、デジタルズームと 光学ズームの「二刀流」が実現でき、その独自性と 実用性は、まさに「ユニコーン」だ) 最短撮影距離は1.5mであるが、広角端70mm側では マクロモードが使え、その場合、最短撮影距離は 56cmと、大幅に短縮できる。 MF時代当時のズームレンズでは、マクロ機構を 持つものが多かったが、その際、望遠側でマクロが 使える機種と、広角側でマクロモードとなる機種が 混在していた。 それぞれの特徴を簡単に言えば、望遠側マクロは、 より撮影倍率を高める措置となり、広角側マクロ では、撮影アングルの自由度を高める(=つまり 前後左右上下、どこからでも近接撮影ができる) 利点があったと思う。 さて、「望遠母艦」のDMC-G6と本E70-210/4の 組み合わせは快適だ。ただ、E70-210/4は、大型 で重量級のレンズであるので、その点では若干の ハンドリング性能の悪さを感じる。 他のレンズで言えば、同じスペックの同時代の CANON New FD 70-210mm/F4のワンハンド ズームは、さらにシステム的に優れるのだが、 まあ、もしそれが無いならば、本E70-210/4は、 次善の選択肢となると思う。 「不遇な立場であった、SERIES E」とは毎回の ように説明しているのだが、本レンズの場合は あまり、そんな安物感もなく、むしろ「デカくて 格好良いレンズだ」という感覚も、当時での 「カメラやレンズをステータスと思う」ような 見栄っ張りなユーザー層にはウケが良かったかも 知れない。 そのせいか、本レンズの中古流通は、いつの 時代であっても比較的豊富だ。 しかも安価である、本レンズには何も、瑕疵 (問題点)が無かったが、ジャンク同然の、 税込み1,000円という捨て値での販売であった。 「もう古すぎて、売れない」という販売店側の 方針だったかも知れないが、ところがどっこい、 現代でも十分な実用価値を持つので、なかなか 痛快だ。 あまり「知られざる」状態では無いレンズだが (つまり、ある程度は売れていたと思われる) それでも「隠れNIKKOR」(注:厳密には、仕様的 差別化で、本レンズには「NIKKOR」銘は無い) とは言えるであろう。 ---- さて、今回ラストの「隠れNIKKOR」 レンズは、NIKON AF-S NIKKOR 105mm/F1.4E ED (中古購入価格 148,000円) (以下、AF-S105/1.4) カメラは、NIKON Df(フルサイズ機) 2016年に発売された高付加価値仕様大口径AF 単焦点中望遠レンズ。 本AF-S105/1.4は、「三次元的ハイファイ」の コンセプトに基づいて設計された(第二弾)レンズ である。 ただし、「三次元的ハイファイ」が何であるかを 説明する事は、非常に困難だ。 これは、他分野で言えば「料理の味付け」のような 話であり、料理の具材や調理法に特別なものを 使っている、という訳では無い。すなわちレンズ としても、特殊な部品や特別な光学系な訳では無い。 一面的な話に限定すれば「ボケ遷移」または、 その表現が難しければ「ボケ質に優れたレンズ」 だと思っておけば無難だ。 しかし、効能がわかりにくく、かつ、高価であり おまけに2010年代後半では、既に一眼レフ市場の 縮退が顕著となっていた時代での発売であり、 あまり売れていなかったであろうから、本レンズ に関わる、好(高)評価は、ほとんど無い。 又、本レンズ以降、NIKON Fマウントにおいての 「三次元的ハイファイ」あるいは、もっと言えば 「高性能な(Fマウント)単焦点レンズ」が発売 された実績は無い。 つまり、NIKON Fマウント最後の「(隠れた) 優秀なNIKKOR」になってしまう恐れがある というレンズである。 勿論だが、2018年よりNIKONは、Zマウントの ミラーレス機に注力しているし、Fマウント用 NIKKORは次々に生産が完了、又、Fマウント機の 生産も、いつまで続くか? わからない状況だ。 私が、個人的にZシステム(Z機、Z用レンズ) を所有していないのは、現状、Fマウントの システム(機体やレンズ)を多数所有していて しかも、それらは現役で、まだまだ使える為に Zシステムに必要性を感じない事、かつ、高価 すぎてコスパが悪く感じ、加えて、魅力的な 製品が少ない、という課題を鑑みての事である。 いずれ、Fマウント機が全て「仕様老朽化寿命」 を迎えてしまえば、Z機に転換せざるを得ないが それは、少し先の話であろう。 さて、本AF-S105/1.4だが、希少な105mm級 大口径(F1.8版は、昔からNIKKORにもあるが、 F1.4版はNIKKOR初。又、史上初かも知れず 他社では、後年でのSIGMAとCOSINA Zeiss にしか無い)である事は特徴だが・・ そのスペックだけに注目するのではなく、むしろ 用途や使い方(用法)を考察するべきであろう。 用途は、人物撮影以外には難しいと思うが、 本レンズは、コロナ禍の中では、人物撮影以外 での「用途開発」を進めていた。まあ、すると、 「優秀な描写表現力を持つので、別に、どんな 被写体を撮っても構わない」という結論は 得られたと思う。 用法については、フルサイズ機で使う事が普通だ とは思うが、APS-C機、具体的にはNIKON D5300 等の小型軽量機とのバランスも悪く無い。 というのも、D5300は高画素かつローパスレス機 でもあるから、本AF-S105/1.4の、描写表現力上 での、ボケ質(すなわち「三次元的ハイファイ」) よりも、描写力(すなわち高い解像感等)を活用 するのに向く次第だ。 やや重いレンズ(985g、公称値)でもあるから、 小型軽量機ではトータル重量の軽減が出来る。 (参考:単焦点のAFレンズで絞り環無しの仕様は、 極端に言えば、カメラを構え、レンズを支える 左手は、何も操作する必要が無い。 つまり、システム(カメラ+レンズ)の総合重心の 位置を左手で常時支えていれば良く、MF、ズーム、 絞り等の操作が、一切無いならば、左手は、その 重心位置から動かす(持ち替える)事が無い。 --- これが銀塩システムだと、総合重心位置を支える 左手は、ピント、絞り、ズーミング等の持ち替え 操作が無い場所になくてはならない。そうでないと 撮影者の手指の疲労が激しくなるからだ。 --- この事が、銀塩時代に「重たいレンズには、重たい カメラをあてがえ」と言われた理由の1つであり、 これは決して「(慣性重量により)手ブレを起こし にくくする」等と伝わっている、物理学的な根拠が あまり無い話ではないし、かつ「重たい+重たい」 という、不条理なシステム構築をする必要性も無い。 三脚を使う人達ならばまだしも、銀塩時代でも AF時代(1990年代)は、もう誰もが「手持ち撮影」 であった、その際、重いシステムは勿論不利だ。 --- だから「重たい+重たい」ではなく、システム (カメラ+レンズ)の総合重心を左手でホールド する際、そのレンズに必要な操作が、左手の 「持ち替え」動作を伴わないこと、というのが、 真の条件である。この為には、レンズに適した カメラを選択しなければならない。 --- 実際に試してみれば、誰にでも、理解は容易で あろう。何故、こういう単純な事でも、ユーザー 層においては、何十年間もの間、あまり正当性 の無い情報が広まってしまっているのか?そこが 良くわからない。恐らくは多数のカメラを所有して レンズに合わせて、適正なカメラを選ぶという発想 が銀塩時代には(現代でもか)一切無かったので あろうと思われる) さて、本AF-S105/1.4の総括だが、「105mmで F1.4である!」というカタログスペックを見た だけの購買動機は、ちょっとやめておく事が無難だ。 「高い描写表現力を持つが、三重苦(大きく、重く 高価)のレンズだ」という認識が正解だと思う。 それを理解した上では、推奨に値しないレンズでは 無い、むしろ「隠れNIKKOR」の近代での代表格だ。 ---- では、今回の記事は、このあたりまで。 本シリーズは、本記事をもって暫定終了とする予定 であったが、もう1本、補足編記事を追加しよう。
by pchansblog2
| 2023-12-20 21:23
| 完了:続・特殊レンズマニアックス
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