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写真用レンズ等について、マニアックな分析を行う 「レンズマニアックスEX」シリーズ。 今回第17回目では「アポダイゼーションレンズ」編 と称し、4機種の「アポダイゼーション光学エレメント 搭載レンズ」を紹介する記事とする。 以前にも(旧ブログでも)、この主旨の記事を何度か 掲載しているが、本記事では、同一のレンズに対して、 可能な範囲で母艦(カメラ/マウント/センサーサイズ) を変更しながら説明を行う。 --- ではまず、最初のアポダイゼーションレンズ。 レンズは、MINOLTA STF 135mm/F2.8[T4.5] (新品購入価格 118,000円)(以下、STF135/2.8) カメラは、SONY α99(フルサイズ機) 1998年発売、世界初で「アポダイゼーション光学 エレメント」を搭載した写真用交換レンズである。 「アポダイゼーション」は、以下「APD」または 「STF」(Smooth Trans Focus:MINOLTAおよび SONYでの用語)と略する。 これの原理は難解だが、ごく簡単に要点と効能等を 説明しておく。 <アポダイゼーション光学エレメント> 【要点】 ・交換レンズ内部、絞り機構の近くにあるレンズ等に 付与するフィルター又はコーティング技術であり、 円形での中央が明るく、周囲に行くに従って 暗くなっていくグラデーション状の構造素材を指す。 【効能】 ・ピントが合っていない「ボケ部」において、ボケの 輪郭部が滑らかな画像が得られる。 要は「ボケ質に優れたレンズ」となる。 【弱点】 ・特殊なフィルター等の開発/製造の費用や、生産数の 少なさから、どうしても割高な(高額な)レンズとなる。 ・周囲が暗くなる、という光学エレメントの性質上、 レンズの光線透過率が下がる。すなわち口径比(開放F値) が意味を持たなくなる為、これらのレンズでは実効F値、 通称では「T値」で、この仕様を表す場合がある。 ・当初、AF化が難しかった模様。2014年のFUJIFILM製 XF56/1.2APDではAPDで初のAF化を実現しているが、 詳しく調べると、像面位相差AFには対応しておらず、 コントラストAFのみの模様だ。 なお、さらに後年のSONY FE100/2.8STFでは、 コントラストAFと像面位相差AFの両者に対応している。 販売機種数が少ないが、時代と共に進化している模様だ。 【実例】 ・写真用レンズとしては、今回紹介の4機種がAPD/STF の光学エレメントを搭載。全て単焦点レンズである。 ・また、未所有だが「CANON RF 85mm/F1.2 L USM DS」 (2019年)では、フィルター(光学エレメント)では無く、 内部レンズ上に「DS(Defocus Smoothing)」という コーティング処理を施し、APD/STFと同等の効能を得ている。 ・MINOLTA α-7(2000年、銀塩一眼第29回記事参照) では、「(擬似)STFモード」を備え、この機能では、 絞り値を連続的に変化させながら7枚の写真を多重露光し、 「画面周辺に至る程暗くなる」というアポダイゼーション の効能をシミュレートする事が可能であった。 さて、ということで「アポダイゼーション」については 上記の通りだ。しかし、原理も効能も難解であるし、 しかも高価だ。そして1998年~2014年迄の間、16年間も この仕様のレンズは、MINOLTA (注:後にSONY)STF 135/2.8[T4.5]の1機種しか存在していなかった為、 これ(STF)のオーナーの実数や比率はとても少なく・・ (参考:2000年頃でのカメラ誌での、職業写真家層 100名へのアンケート結果でも、STF135/2.8の所有者 は、数名程度であったように記憶している) 一般層においては「STFといったら、ソフトフォーカス (軟焦点)レンズなのだろう?」という誤解が、長らく、 ずっと蔓延していた状態だ。 勿論、今回紹介の各種STD/APDレンズは、ソフトレンズ ではなく、いずれもシャープに写る、まっとうなレンズだ。 光学原理からすると「アポダイゼーションフィルターを 搭載すると僅かに解像力が低下する」という情報を見かけた 事もあったが、それもまあ、レンズの設計次第であろう。 少なくとも、このSTF135/2.8や、後に紹介するSONY版 FE100/2.8STFでは、解像感(≒シャープネス感)に 対する不満は、個人的には感じた事が無い。(ただし、 「全てのSTF/APDレンズがそうだ」と言う訳でも無い) まあでも、ここは重要なポイントであり、いくら 「APD/STFを搭載したから」と言っても、その全てが 超絶的な描写表現力を持つ、「スーパーレンズ」に、 なり得る訳でも無いのだ、基本的にはあくまで、 APD/STFを付与しない状態でのレンズ設計での実力値 が問われる訳であり、低性能なレンズにAPD/STFを 追加しても、あまり意味は無い。 ましてや、開発・製造での費用の償却の為に、どうしても 高価に販売せざるを得ないレンズ群である。だから、 メーカーとしても、まさか高額な低性能レンズを売る訳 には行かず、APD/STFのレンズ群は、どれも基本的には 高描写力のランクに属している、という個人評価だ。 しかし、近代の「コンピューター光学設計技術」で あれば、まあ高性能な光学設計は、お手の物であろうが、 本STF135/2.8は、1998年と、やや古い時代の設計だ。 レンズ構成も、6群8枚という情報があり、シンプルだ。 それにしては、本STF135/2.8の描写力は高く、現代の 視点で見ても、古さを感じないどころか、かなり上位 のランクに属するように思えてしまう。 基本的に高い描写力に、STF搭載による綺麗なボケ質の 効能が追加されているので、総合的に優れたレンズだ。 MINOLTAが、SONYにカメラ事業を譲渡(2006年)の 後でも、SONYは、このレンズを継続販売(SAL135F28) していたので、超ロングセラーとなっている(いた) 価格(定価)は、時代とともに上がってはいるが、 長年販売されていただけに、中古相場はかなり下落、 およそ7万円台となっていると思われる。 「レジェンド」とも言える、この性能(描写表現力) で、その価格であれば、コスパは高いと見なせる。 ちなみにSONY α Aマウント(一眼レフ用)レンズ群 は、コロナ禍の時代、ひっそりと全てが生産完了と なっていて、STF135/2.8も新品購入は、もう出来ない。 ---- では、次のシステムはレンズはそのままで母艦を変える。 レンズは、MINOLTA STF 135mm/F2.8[T4.5] カメラは、PANASONIC DC-G9(μ4/3機) STF135/2.8の課題としては、近代においては、 SONY αの「Aマウント」は、かなりの縮小傾向であり、 これの将来性(今後、装着する母艦)が厳しい事がある。 勿論、SONYからは、電子マウントアダプターの 「LA-EA?」シリーズが販売されており、これを用いれば とりあえず、Aマントレンズを、Eマウント(FE可)に 装着する事が可能だ。 ただ、純正電子アダプターは高価(定価3万円前後) であるし、しかもSTF135/2.8を使うならば、 それは、MINOLTA αレンズでは、珍しい(唯一の?) MFレンズであるから、電子アダプターを用いてもAF が効く訳ではなく、無意味だ。 なので、α(A)→任意のミラーレス機、での通常型の (電子式ではない)マウントアダプター(数千円程度) を使っても、STF135/2.8を使う上では十分である。 その際に課題となる絞り値の制御だが、一応は、 通常型マウントアダプターでも、MINOLTA αレンズに 備わる、レンズ後部の絞り環連動機構を動かす事が 可能なものが殆どであり、アダプターを手で廻せば、 絞り込む事はできる。 しかし、その場合アダプター上には絞り値の目盛りが 無いので、使用上、ちょっと不安になったりする。 だがSTF135/2.8の場合は例外であり、他のMINOLTA αレンズと同様の絞りの「A位置」(注:オート位置、 すなわち、カメラボディ側のダイヤルから絞り値を 制御する設定。他のαレンズでは、特に「A位置」を 設けてはいないが、それでも同様に、ボディ側からの ダイヤル絞り値操作だ) ・・その「A位置」がある事に加えて、「STF」と 記載された「T値」(=実効F値)の目盛りが、 「T4.5、・、・、T5.6、T6.7」の範囲で 存在し、それを手動設定する事ができる。 つまり、通常型の(電子式では無い)マウント アダプターを用いた場合でも、STF135/2.8の場合 (のみ)においては、あたかも絞り環があるような 手動での絞り値設定が可能となる訳だ。 そうであれば本STF135/2.8は任意のミラーレス機 に、通常型の、α→?、のマウントアダプターを 介して、容易かつ効率的に利用する事ができる。 この為、「α(A)マウントの縮退」は、あまり ユーザー(オーナー)側でも気にする必要は無い。 「もっと絞り込みたい場合はどうする?」とは 聞く無かれ。そもそも「アポダイゼーション光学 エレメント」の効能は、絞りを開けていくほどに強く 発生するので、絞り込んだら通常のレンズと同等に なってしまう。わざわざSTF/APDの効能を期待して 高額な購入費用を投資しているのだから、絞り込む 用法は、基本的には有り得ない。 「しかし、どうしても絞り込みたい」という場合には 絞り設定を「A位置」にすれば、電子アダプターでも 機械式アダプターでも、適宜、絞り込む事は可能だ。 さて、μ4/3機で使用した場合、本STF135/2.8は 換算画角270mmの、かなりの望遠レンズとなる。 しかし、この場合、本STF135/2.8における仕様の 「最短撮影距離87cm、最大撮影倍率1/4倍」 という優れた近接性能が効いてくる。 μ4/3機に装着した時点で1/2倍であるから、これは もう「望遠マクロ」と類似の感覚で使う事が出来、 かつ殆どのμ4/3機には、最低2倍、ないし最大8倍 にも及ぶ、デジタル拡大機能(デジタルテレコン、 デジタルズーム)が搭載されているので、見かけ上 の撮影倍率を(実用レベルを超えるまでに)大きく 向上させる事ができる。 実用上では、中距離(数m)に居る昆虫や小動物等 を被写体として捉えるのに最適のスペックとなり、 本STF135/2.8を「最強のボケ質を誇る自然観察用 レンズ」として使う事が可能となる。 一般に自然観察用途では「中望遠マクロ」等が 使われるのだが、「被写体が小さくて、寄れない」 という場合においては、「望遠マクロ」の存在も 欠かせない。特に、中距離の昆虫(トンボや蝶、等) などにおいては、近寄ると逃げてしまう事も多々ある 為に、彼らが逃げない「アウトレンジ」(圏外)の 距離からの撮影機材は、それなりに利用価値がある。 「望遠マクロと、どこが違うのだ?」という話は それを本記事で書き始めると長くなるので、 そのテーマでの過去参考記事を示しておく。 (注:旧ブログ記事を含む) *レンズ・マニアックス第66回「望遠マクロvs近接135mm」 *レンズ・マニアックスEX第7~8回「最強近接望遠選手権」 なお、このように、母艦(カメラ、センサーサイズ等) を変えるだけでも、本来のレンズの用途が、ガラリと 変化してしまうケースも良くある話だ。 「ボケの綺麗なレンズだから、ポートレート専用だ」 といった思い込みが強いと、他の適正な用途がある事を 見逃してしまうかも知れない。 まあ、レンズを購入する前には、予め想定用途を決めて 買う事は必須だが、一旦購入してからは、そのレンズを 事前に想定した特定の用途にだけ使う事はあまり考えず、 様々な別の用途を、考察したり試してみる必要がある。 これを本ブログでは「用途開発」と言い、必須の作業だ。 さて、本STF135/2.8の総括だが、 まぎれもない「レジェンド名玉」である。 マニア層必携のレンズと言えよう、買って後悔は無い レンズだと思う。なお、「MFしか無いので。撮れない」 とか言うビギナー層に対しては、勿論非推奨となる。 ---- では2本目は、初のAFアポダイゼーションレンズだ。 レンズは、FUJIFILM FUJINON XF 56mm/F1.2 R APD (中古購入価格 112,000円)(以下、XF56/1.2APD) カメラは、FUJIFILM X-T10(APS-C機) 2014年発売、世界初の、AFレンズでありながらも、 「アポダイゼーション光学エレメント」を搭載した レンズである。 本レンズは、FUJIFILM Xマウント(APS-C)専用 レンズである為、他社機には装着できない。 また、本記事では、本レンズのみ、フルサイズ対応 ではない。 まあなので、本記事における本レンズの母艦は、 X-T10の、ただ1機種のみに留めておこう。 なお、このXF56/1.2APDを購入時に同時にあてがった カメラは、FUJIFILM X-E1(2012年)であったのだが、 それと本レンズとの組み合わせでは、AF性能が低くて ピントが合いに難く、実用的とは言えなかった。 ましてや近距離撮影と遠距離撮影を手動で切り替える 必要があり(≒二重式の距離エンコードテーブル方式) 非常に使いにくかった。 数年後よりXF56/1.2APDの母艦として、FUJIFILM X-T1(2014年)やX-T10(2015年、今回使用機) をアサインしている。 これらは若干だが、それまでのAFの課題が解消されて いる。 つまり、近距離撮影と遠距離撮影は自動で切り替わり (注:自動で切り替わるあたりの撮影距離→1m前後 で、AF動作が少し怪しくなる)、かつX-T1/T10は 像面位相差AF搭載機だ。 ただし、像面位相差AF機能があると言っても、 本レンズを使用時のAF性能(速度、精度)に劇的な 改善があった訳ではなかった。 後年、詳しく調べてみると、どうやら本XF56/1.2APD の場合は、像面位相差AFには非対応の仕様だった。 まあそれでも、若干は改善されている、と思えたのは コントラストAFの合焦アルゴリズムも、年々、改善が 進められているからであろう。 基本的に、本XF56/1.2APDの弱点は、その「ピント 合わせ」にある。AFは合い難いし、MFに切り替えても ピントリングが「距離指標無しの無限回転式」の為、 使い難いし、ピーキング機能の精度も出ていないし、 EVFの表示解像度において、ピーキング利用時には バグとも思われる動作設定上での課題が存在する。 この為、本レンズはAPS-C機専用なので、換算画角が 約85mm/F1.2の、いわゆる「ポートレート画角」と なる事から「人物撮影用のレンズ」とする事も、 本レンズ購入前の想定用途ではあったが、これを諦め ざるを得なくなった。このピント精度では歩留まりが 悪くて、実用(人物)撮影には向かない。 この弱点は、母艦を、X-T1から、さらにX-T10 を買い増ししても同等であったので、この時点で 「もっと後年に、AF性能が上がらないと無理だ」と 判断し、以降のFUJIFILM機の購入を保留としている。 まあ、いずれは新型機を買い増しする事にはなるが かといって、どの機種から「AF性能の向上」が 見られるようなるかは不明であるし、メーカ談や 他者のレビューも、さほど参考になる情報では無い 為、私自身が、ポツポツと新型機を入手してから また(AF/MF性能を)評価するしか無いと思っている。 それまでは本レンズは「趣味撮影専用」レンズである。 総括だが、APD搭載レンズながらも圧倒的な描写力 を持つ訳では無い。大口径化の設計が起因なのか? 解像感はやや甘い。また、ボケ質破綻も出る。 レンズ設計自体は、コンピューター光学設計に よる、新しい時代の構成となっているのだが、 まあ、やはり開放F1.2が、ちょっと無理をして いるのではなかろうか?というか感じだ。 (ちなみに、APDによる実効F値(T値)は、 開放でT1.7となっている) また、価格が高い(定価20万円以上)も大きな 課題であろう。総合的に、コスパはあまり良くない ので、FUJI Xマウントユーザーのマニア層向けだ。 --- では、3本目のアポダイゼーションレンズ。 レンズは、LAOWA 105mm/F2 (The) Bokeh Dreamer (LAO0013) (新品購入価格 90,000円) カメラは、SONY α7(フルサイズ機) 2016年発売、世界初の、日本製以外(中国製)の 「アポダイゼーション光学エレメント」を搭載した MFレンズである。 型番名称での「The」は、正式には、入るかどうかは 不明だ。 どうもLAOWA製のレンズは、同じレンズであっても 出典(Webや製品元箱等)により、あるいは時代に よっても、製品名が微妙に異なっている場合がある。 本レンズの場合、発売の前年頃の展示会では、 「Smooth Trans Focus」(STF)と書かれて、展示 したあった模様だ。だが、STFは、MINOLTAおよび SONYが用いている用語(商標?)であるから、 発売時には、その記載は避け「The Bokeh Dreamer」 となったのであろう。 「何故STFなのか? 何故中国のメーカーが、 こういう類の特殊なレンズを発売するのか?」 と、その展示会のレポートを見た時に思ったのだが、 後年にその理由は判明する。 つまりLAOWAの創業者は、元、日本でMINOLTA系 の企業でレンズ設計を行っていた模様なのだ、 もしかするとSTF135/2.8の開発にも関わっていた のかも知れない。 しかし、ご存知のように、MINOLTAは2003年頃に KONICAと合併した後、2006年にはカメラ事業 (α)をSONYに譲渡して、撤退してしまっている。 デジタルの時代では、研究開発費が膨大となる為、 それが馬鹿にならない他、発売する商品の失敗も 許されない。膨大な費用をかけて開発した商品が 市場で不人気となると、それだけでメーカ-には 大きなダメージとなってしまう。そうやって近年 では、いくつものカメラメーカーが撤退してしまい、 もう残っているカメラメーカー数は、数えれる程の 少数である事は、消費者層も良くわかっているだろう。 同様に、マーケティング(市場調査、商品企画)も とても重要だ、「より多くの消費者が、高価でも 欲しいと思ってくれる、高付加価値化商品」を 企画しないとならない。 まあつまり、昔の銀塩時代のように、設計(研究・ 開発)側の技術者が「こんなものを作ってみました、 これ、売れますかねぇ?」といったような手法、 いわゆる「プロダクト・アウト型商品」の方法論は 現代の世情では、やりにくくなっている訳だ。 そうなると、技術者の特性としても「新しいものを 生み出そうとする創造型」やら「これまでの製品を 地道に改良をしようとする実践型」等がある訳だから、 前者の「創造型」技術者においては、マーケティング の方から「あれを作れ、これを作れ」と言われるのは ちょっと心理的に合わないかも知れない訳だ。 まあ、恐らくはこういった理由でLAOWAは創業され 中国において「日本のメーカーでは絶対に作らない であろう」特殊な仕様を持つレンズ等を製造販売 しているのだろうと思う。 逆に言えば、日本のメーカーによる新製品のカメラ やレンズが、市場縮退の理由や、前述の「マーケット・ イン型」の商品企画により、なんだか「無難に売れる 製品」ばかりになってしまった事は、まあビギナー層 等では気付いていないかも知れないが、旧来からの マニア層等では「大きな不満」に思っている事は 確かである。 つまり「個性的な商品、面白いアイデアによる商品、 挑戦的な商品、遊び心のある商品」などが、ここ 10年以上、日本のメーカーからは、ただの1つも 発売されない為、「つまらない、魅力的では無い」と 強く不満に感じる次第だ。 よって、2010年代後半頃からは、マニア層は激減 してしまっている。いや、正確に言えば、マニアと して続けていても、「欲しいカメラやレンズが無い」 状態であれば、実質上、新製品を何も買ったり評価したり 実用とするケースは無いのだから、「マニアを休業中」 と同じ事である。 世間でフルサイズミラーレス機が話題となってようが 大三元レンズを皆が欲しがっていようが、マニア層に とっては無関係な話だ。 「ビギナー層とかの誰でもが欲しがるような商品は マニアックでは無く、魅力的では無い」と思うからだ。 他にもマニア層が抱える、近代の市場や新商品に対する 不満はいくらでもあるが、キリが無いので、このあたり までにしておく。 そんな状況において「LAOWA」の(あるいは、国内で 言えば、COSINAフォクトレンダー等も同様)の企画 商品は、マニア層からみれば「魅力的な商品が1つも 無くなってしまった市場の中では光った存在」に 見える。 LAOWAのレンズ商品は、他の激安中国製レンズと 比べて数倍から十倍も高価ではあるが、その価格を 見ても、なおかつ欲しいと思うならば、それは、 消費者から見た「真の付加価値」であろう。 近代の日本製品は、同じ「付加価値」でも、それが メーカーや流通における「利益」と等価な概念となって しまっている、すなわち、あまり魅力的や実用的とは 思えない「超絶性能」等を搭載し、それを「値上げの 弁明」とするような商品には、ハイアマチュア層や マニア層は、もはやそれを「付加価値」とは思えない 訳である。 消費者から見た「(高価でも)欲しいと思える魅力」 (=すなわち「真の付加価値」)を持つ事が、 LAOWAのレンズ製品の魅力であろう。 ただまあ、全てのLAOWA製レンズに、その魅力が ある訳でも無いし、どういう仕様・性能を魅力と 感じるかは、もともとは、その消費者個々で異なるで あろう。でも、そういう選択肢を含めて、多数の レンズ新製品を供給しつづける姿勢は悪く無いと思う。 参考関連記事:(旧ブログ) *レンズマニアックスプラス「海外レンズ・マニアックス」 シリーズ第10回「LAOWA マニアック」編 --- では、次は母艦を変えたシステムとする。 レンズは、LAOWA 105mm/F2 (The) Bokeh Dreamer カメラは、CANON EOS M5(APS-C機) 本レンズは、今回紹介の4本のアポダイゼーション レンズの中では、最もマウント汎用性が高い。 NIKON Fマウント(注:非Ai仕様)で購入している ので、およそ殆どのミラーレス機と、一部の一眼レフ へも(マウントアダプターを介して)装着可能だ。 また、本レンズのみ、様々なマウント(一眼レフ用 及び一部のミラーレス機用)で発売されている。 他の全てのアポダイゼーションレンズは、基本的には メーカー純正マウントのカメラでしか使用できない。 一応、一覧でまとめておこう(レンズ名は省略表記) 1)STF135/2.8→MINOLTA/SONY α(A)、各種ミラーレス機 2)XF56/1.2APD→FUJIFILM X機のみ 3)LAOWA105/2→一眼レフ(NIKON、CANON等)、各社ミラーレス 4)FE100/2.8STF→基本的には、SONY E/FEマウント機のみ 5)CANON RF85/1.2DS→基本、CANON RFマウント機のみ 内、5)のRF85/1.2DSは、2019年に発売された アポダイゼーション類似原理の「DSコーティング」 を採用したレンズであるが、高価な為に未所有だ。 本LAOWA105/2の総括だが、 長所としては、前述の”高い汎用性”である。 特殊レンズであるSTF/APDを、メーカー純正マウント 以外で購入し、様々なマウントの機体で併用できる 事が大きなメリットとなる。 また、本レンズはT値(実効F値)T3.2という仕様 であるが、T値絞りとF値絞り環を独立で備えている。 その効能や有益な用途は、依然、良くわからないまま ではあるが(注:メーカーは動画撮影用を謳っては いるが、それは違うと思う。ここで注目すべきは 光学的な原理からの効能の話だ) ・・・まあ、何かの際には役立つのであろう。 弱点としては、APD搭載を謳うならば、もう少しだけ レンズの基本的な描写力を向上してもらいたい所だ。 8群11枚と、これはコンピュター光学設計であろうが、 構成図が無く、良くわからないのだが、異常低分散 ガラスや非球面レンズは使っていないと思われる。 直接的にその事が原因とは思えないが、描写力上で 「あと一声」と、ほんの僅かだが不満を感じる。 特に、他のSTF系レンズが完璧とも言える描写表現力 を持っている為、本レンズにも、そのレベルを期待 してしまう訳だ。 また、最短撮影距離が0.9mと、「焦点距離10倍則」 に近く、近接撮影の優位点を持たない。 近接撮影が可能であれば、前述のSTF135/2.8の ところで述べたような「自然観察撮影用レンズ」 としての用法が可能となる。そういう分野では、MF である事も弱点にはならず、むしろ利点となるから ちょっと惜しい限りだ。 それと本レンズは、一応定価レベルでは、他の STF/APD/DSレンズと比較して、最も安価なのだが、 中古品が殆ど流通しておらず、急いで欲しいならば 新品の購入を強要されてしまう。STF135/2.8等は その中古価格が、本レンズの新品価格よりも安価 なので、「そちら(STF135)を買った方がベター」 という事になってしまうかも知れない。 LAOWAの、日本市場での広告宣伝戦略は、実施が 難しいとは思うが、もっと一般層にも知名度を 上げ、もっと販売数を増やしてもらって、結果的に 新製品の価格が(量産効果で)安くなったり、 中古流通が盛んとなり、安価に入手できるように なれば、好ましいのだが・・ ---- さて、4本目のアポダイゼーション。 レンズは、SONY FE 100mm/F2.8 STF GM OSS (SEL100F28GM) (中古購入価格 129,000円)(以下、FE100/2.8STF) カメラは、SONY α6000(APS-C機) 2017年発売、本レンズには世界初の称号はつかないが SONY初のAF中望遠アポダイゼーションレンズである。 高い描写表現力を持つ新型STFであり、近接性能も 兼ね備えている。(ただし、マクロ手動切り替え必須) ・・まあ、それもその筈、19年前の旧型STFに対して、 全ての点で上回る性能や仕様にしないかぎり、 新型のSTFを新発売する必要性は少ないからであり、 かつ、市場やユーザー層において、どうしても旧型と 比較されてしまう事も明白だ。そんな状況であれば、 あまり手を抜いた設計(仕様・性能)である事は 許されない。 旧型のSTFと比較は、あまり意味が無いとは思うが 一応あげておく、これは、すなわち新商品の企画 コンセプトであったのだろうとも思われる。 臨場感を出すため、「要求仕様」のような形で 書いておこう。あくまで架空のものではあるが、 こういう文書が、企画部等から開発部等に廻って きて、技術者はそれを見て製品の開発を始める訳だ。 <新型STFレンズ要求仕様(仮想)> 1)アポダイゼーション光学エレメントを搭載する事。 その際、STF領域には手動の絞り環を搭載する事。 2)旧型はα Aマウントだが、α Eマウントとする事。 勿論、フルサイズ対応(FEマウント)とする事。 3)旧型はMFだが、AFである事。 また、AFは、コントラストAF/像面位相差AFの 両者に対応する事。 4)AFは、超音波モーターまたは、新規開発中の 新型モーター(DDSSM)とする事。 シームレスMFとするが、ピントリング等の 仕様は任意。 5)手ブレ補正(OSS)を搭載する事。 補正段数は?段とする事。 ON/OFF切り替え式とし、OSSのモード切替は不要。 6)GM(G Master)レンズとして発売する為、 旧型と同等以上の光学性能を発揮できる事、 その際、GMの社内定義に沿って、解像力は??以上 の性能とする事、他の性能も??以上とする事。 7)焦点距離は、旧型よりも短い100mmとする事。 これはポートレート撮影も意識する為である。 8)最大撮影倍率は、旧型の1/4倍と同等以上にする事。 9)販売価格は約20万円を想定、その際、原価は 社内規定に沿って、??円以下とする事。 恐らくだが、こういう「レンズ要求仕様書」を 貰って、まず技術者は「えぇ~? 厳しいなぁ」と 言うだろう。でも、「じゃあ、どこが厳しいですか?」 という話となり、結局、詳細の検討をスタートせざる を得なくなる。 上記の「要求仕様」で技術者が実現できなかった点、 又は元より想定外であった点が「仕様の取りこぼし」 となり、それがすなわち本レンズの弱点となる。 それは、具体的には以下となる、 <FE1002.8STFでの要求仕様のとりこぼし点> *超音波モーターを搭載できず、ピエゾ(圧電) 素子の収縮で駆動する「DDSSM」方式となった。 これとて、決して悪い技術では無いが、やはり USM(RDSSM)に比べて、AF速度面の課題にはなる。 *AFのままでは、最大撮影倍率1/4倍が実現 できなかった。結果的に「マクロ切り替えスイッチ」 を搭載し、57cm~1m、85cm~∞ を手動で 切り替える事となった。なお、近接撮影モードでも AFは動作するが、速度、精度はかなり厳しい。 *ピントリングが距離指標無しの無限回転式である。 AFが合い難い場合、MFに切り替えた際での操作性や 迅速性に劣ってしまう。 他はOKである。この難題の開発に、よく技術者達は 挑戦し、見事、これを実現していると思う。 ただまあ、こういう話は、本レンズだけではなく、 全てのレンズ、全てのカメラの設計開発において、 まず、企画コンセプトがあって、それを全て実現 する為に、技術者達は、課題をクリアしていく訳だ。 --- では、ラストは母艦を変えたシステムとする。 レンズは、SONY FE 100mm/F2.8 STF GM OSS カメラは、SONY α7S(フルサイズ機) フルサイズ機で本レンズを使った場合、まず気になる 点は、撮影倍率の低さである。 旧型のSTFは、135mmの焦点距離があるので、特に APS-C型以下の機体を母艦とした場合に、撮影倍率の 高さと近接撮影能力が利点となったのだが、本レンズ の企画意図では「ポートレート撮影」も前提にあった と思われるので、あまり高い撮影倍率は与えていない。 しかし、それでも「撮影倍率1/4倍以上」という 「要求仕様」があった為(=旧型に負けない為だ)、 近接撮影を試したくなるのだが、まずはフルサイズ機 では、マクロレンズ並みの撮影倍率が得られない。 そして「手動による近接撮影モードへの切り替え」が かなり繁雑だ。 「常に近距離(または遠距離)の被写体ばかりを撮る」 という訳でも無いので、頻繁に手動による設定変更が 必要となる。そして、その際にAFが合い難い課題が 出るのだが、MFでの操作性が良くない点が問題となる。 まあすなわち、近接撮影は、本レンズの仕様や性能 では不得意であり、その目的には適していない。 ましてや、フルサイズ機を母艦とする場合は、 なおさらであり、AFで中遠距離の撮影しか出来ずに、 それこそ「ポートレート専用」レンズとなってしまう。 でも、別に人物撮影専用でも、それはそれで良く、 被写体面のシャープさ(解像感)と、良質なボケ質を 兼ね備えたレンズとして、本レンズをそういう目的に 使えば良い訳だ。 総括だが、悪く無いレンズである。 STFやAPDというと、ちょっと「特殊レンズ」として 一般層から見た「敷居」が高かったかも知れないが、 本レンズは、一般的なレンズの延長線上に位置する 「高描写力」レンズという位置づけだ。 つまり、SONYでの企画としても、もうフルサイズα (ミラーレス)は、決してマニア層向けでは無く、 一般層向けの商品であるから、そういう市場ニーズの 中で、高性能で高付加価値型(=つまり、高価に売れる) レンズをラインナップすれば良い訳なのだろう。 ある意味、マニアックさが薄まってしまっているので、 マニア的には面白く無いレンズではあるが、その分、 汎用性が高く、一般層に向けても推奨できるレンズと なっている。 ---- さて、最後に以下は、STF/`APD関連の関連過去記事だ、 *特殊レンズ超マニアックス第0回 「アポダイゼーション・グランドスラム」編 *特殊レンズ超マニアックス第82回 「アポダイゼーション・コンペティション」編 *レンズマニアックス第31回「新旧STF対決」編 過去記事(旧ブログ)、および本記事とも、少ない 機種数のSTF/APDレンズを繰り返し紹介しているので、 重複する説明が、どうしても多くなってしまう(汗) まあでも、個人的には、このカテゴリーのレンズは 好みなので、もっと一般層にもSTF/APDの事を知って もらいたいし、メーカー側でも、この手のレンズが 沢山売れるようになれば、機種数が増えたり、流通 価格が安価になって来るであろう。 そういう時代が来る事を夢見て、また、定期的に STF/APDの記事を書いていく事にしよう。 --- では、今回の記事はこのあたりまでで、 次回記事の内容は未定としておく。
by pchansblog2
| 2023-12-05 20:50
| 完了:レンズマニアックスEX第一部
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