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本、レンズマニアックス+(プラス)シリーズは 写真用等交換レンズにおける雑多な「テーマ」を 取り上げ、マニアックなそれらを検証および紹介 する記事群である。 通算で第73回目の今回記事では「ぐるぐるボケ」 レンズの検証を行う事とし、該当する特性を持つ レンズを6本紹介する。 ---- ではまず、最初の「ぐるぐるボケ」レンズ。 レンズは、LENSBABY BURNSIDE 35 (35mm/F2.8) (中古購入価格 34,000円)(以下、BURNSIDE35) カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機) 2018年に発売された米国製のフルサイズ対応MF 単焦点準広角「ぐるぐるボケ」レンズ。 型番「BRUNSIDE」の意味は、当初不明だったのだが、 LENSBABY本社の近辺の「橋」や「道路」の地名で ある事が後年に判明した。つまり固有名詞である。 ちなみに、LENSBABY社のレンズでは、固有名詞らしき 型番名称は全てを大文字で書き(BURNSIDE、MUSE等) そうで無く、意味があると思われるものは、先頭のみ 大文字(Trio、Twist、Velvet等)で記載する模様だ。 それから、本記事で取り上げる「ぐるぐるボケ」の レンズは、全てがフルサイズ対応の商品である。 何故ならば、「ぐるぐるボケ」の主な要因である 「像面湾曲」と「非点収差」は、画角の2乗に比例して、 および、有効径に比例して大きくなる為、これは フルサイズ機で(かつ、絞りを開けて)使わないと 十分な「ぐるぐるボケ」の効能が得られないからだ。 (匠の写真用語辞典第29回記事参照/旧ブログ) なお、今回紹介の「ぐるぐるボケ」レンズの大半が 1840年代にオーストリアの数学者の「ペッツヴァール」 (ペッツバール)氏により発明された写真用レンズの 「ペッツヴァール式」2群4枚構成を元にしている。 「像面湾曲」と「非点収差」の制御を行いやすい このレンズ構成は、後に光学の研究の題材ともなり、 その為か「像面湾曲」と「非点収差」(注:両収差 は密接に関係があり、あまり個別には語れないが、 像面湾曲は画像の「水平面」、非点収差は「垂直面」 に影響が出る収差である)の発生条件やその程度に ついてを、「ペッツヴァ(バ)ール曲率」や、 「ペッツヴァ(バ)-ル和」と、その数学者の名に ちなんで呼ばれる式や数値で求める(表す) これは光学設計上、重要な概念であるが、非常に専門的 かつ高度な内容であるので、一般カメラマン層において、 これについて理解したり、説明を行っている情報等は、 まず見かける事は無い。 たとえプロだろうがマニアだろうが、光学の専門家で 無い限り、これについての理解も難しい訳だ。 でも、逆に言えば、そこまで詳細を理解する必要も あまりなく、「なんとなくそういうものがある」程度に 思っておけば良いであろう。写真撮影の実用上では ほとんど無関係な話だからだ。 実用上では、「ぐるぐるボケ」レンズを使うならば 「フルサイズ機で、絞りを開けて使う」と覚えておけば とりあえずは十分であろう。 ただ、「ぐるぐるボケ」レンズの難しいところは、 「フルサイズ機で絞りを開ければ、いつでもぐるぐるボケ が出せるとは言い切れない」ところである。 上記以外にも、レンズ焦点距離、撮影距離、背景距離、 背景の図柄という要素によっても「ぐるぐるボケ」の 量や質は変化してしまい、なかなか思うようには制御 (コントロール)する事ができない。 だが、少なくとも、これらの要素が「被写界深度の制御」 に密接な関係がある事を最低限理解していないとならず、 現代の初級中級層等で、大口径レンズ等を所有しておらず その使用経験も無ければ、「被写界深度」を制御する 技能を持たないケースも、とても多い。 そういう人達が、「玩具」として見なすには高価すぎる、 これら「ぐるぐるボケ」レンズを使っても、下手をすれば 「ぐるぐるボケ」写真を1枚も撮る事ができない状態となる。 事実、そうした初級ユーザーレビューを見た事もある。 いわく「ぐるぐるボケを、どうやって出すのかわからない」 という感じだ。それでは、せっかく(やや高価に)買った レンズが、完全に無駄になってしまう。 特に、このBURNSIDE35は「ぐるぐるボケ」レンズ群の 中でも、それを出す事や制御する事が、かなり難しい レンズである。加えて、かなり短い最短WD(ワーキング ディスタンス)15cmの近接性能や、特殊なドーム状の 絞りを「ゴールドスライダー」で制御し、物理的な 口径食(注:色々な意味や定義があるが、ここでは 最も単純に「瞳径」を狭める口径食を示す)を起こし 周辺減光をコントロールするなど、高度な光学知識や 撮影技能を要求されるレンズである。 よって、ビギナー層では「お手上げ」のレンズとなり そうした初級層のレビュー記事で良く書かれているのは 「LENSBABY社のレンズは、1本も、まともに写らない」 という話だ。 そうではなくて、「LENSBABY社のレンズは、高度な 撮影技能や光学知識を持たない限り、使いこなせない」 が正解であろう。 ---- では、2本目の「ぐるぐるボケ」レンズ。 レンズは、Lomography New Petzval 55mm/F1.7 MKⅡ (新品購入価格 41,000円)(以下、PV55/1.7) カメラは、SONY α7(フルサイズ機) 2019年に発売された、MF標準「ぐるぐるボケ」レンズ。 ここで出ている型番名称の「Petzval」は、前述の オーストリア(出身はスロバキア)のペッツヴァール 教授の事である。 Lomography(これは通称、正式名はLomographische) は、トイカメラを扱う世界的商社(兼メーカー)だが その本社はオーストリアにある次第だ。 地元の誇りである、ペッツヴァール氏に敬意を払って の商品企画であり、商品名称でもあるのだろう。 さて、本記事では「ぐるぐるボケ」レンズを取り上げて いるのだが、過去にも同様の趣旨の記事を何度か掲載 した事がある。 関連記事:(旧ブログ) *レンズマニアックス第37回「ペッツヴァール対決」 *レンズマニアックス第82回「ぐるぐるボケ・グランドスラム」 何で、何度も似たような記事を掲載するのか?は、 まずは、所有する当該仕様のレンズが増えていく為であり その掲載時期に応じ、2本→4本→6本と、紹介レンズ数 が増えている点がある。 第二に、レンズの特徴や性能等は、短期間だけでわかる ようなものではなく、非常に長期に渡って使用しない限り 詳細はわかってこない、という持論があるからだ。 この為、専門家層のレビュー記事等も、個人的には まともには参考にしないようにしている。その理由は、 1)専門的評価者は、必ずしも、そのレンズを購入している 訳ではなく、短期間借りてきただけで評価をしているから。 2)それら評論家は、流通(販売、店舗、メディア等)に 属している場合が殆どであるから、レンズの弱点等を 咎めるのではなく、売る為の美辞麗句の宣伝記事を書く 事が基本であるから。 3)まあそれでも、専門家と言うならば、レンズも多数 所有しているだろうし、沢山の写真も撮っている等で 経験も知識も豊富ではあろう。でも、そういう人達が その評価したレンズを返却してしまい、自身では買って いない様子が見られるのであれば、もうそれは、その 専門家が「買う価値が無いと見なした」という事となり つまり、これが最も信頼のおける「逆情報」となる。 で、余談はさておき、長期に渡り、所有レンズを使って いけば、色々と新しい発見もある。 また、個人的には、同様な特徴を持つレンズを複数所有し それらを徹底的に比較する、実験をする、といった 「研究」を行っている事も極めて多い。 なので、数年が経てば、以前にはわからなかった事が、 いくつか発見されていることも良くある訳だ。 よって、類似の記事を何度か、リニューアルやバージョン アップしていき、その情報精度を高めようとしている 次第である。 さて、本レンズPV55/1.7であるが、個人的に思う、 「最もコントローラビリティが高いぐるぐるボケレンズ」 であろう。 最大の特徴は、「BC環」の搭載であり(これは本レンズ だけの特徴ではなく近年の他のLomography New Petzval にも搭載されている場合がある) この操作子の効能は ペッツヴァール型の2群4枚のレンズの前群は、一般的な ダブレット(=軸上色収差を低減するアクロマート)で あるが、後群の2枚は、前群で残したコマ収差、非点収差 を、本来は補正する役割がある。 しかし、この後群のレンズ間隔を意図的に広げる事で 像面湾曲(および非点収差)が、わらわらと発生する。 この調整、すなわち、「ぐるぐるボケ」の発生量 (注:一部のマニア層の間では「回転数」と呼ばれる) を利用者の意図に応じて、制御(コントロール)する事が できる構造が「BC環」である(下図) 「BC環」をいっぱい(数値=7)にまで廻してしまえば、 背景をボカした、たいていの条件で「ぐるぐるボケ」が 発生するので、前述のように、ビギナー層等が、 「ぐるぐるボケレンズを買ったが、それが出ない」 という、かわいそうなケースは激減するであろう。 ただまあ、何でもかんでも「ぐるぐるボケ」を出せば 良いというものでもなく、「何故、そういう作画表現を したいのか?」は、いつでも意識しておく必要はある。 しかし、表現の一環として特殊レンズを使う事は、 超高難易度な話であり、これは職業写真家層や専門 評価者層でも、あるいは上級マニア層でも困難な話だ。 まあ、よほど、こういう特殊なレンズに入れ込んでいて 何万枚も、あるいは十万枚以上も、こういうレンズを 使った撮影経験が無いと、さらには、加えてアート的な 感性も無いと、「ぐるぐるボケ」を作画に活かすのは 難しいと思う。 ----- では、次のレンズは「準ぐるぐるボケ」である。 レンズは、LENSBABY Velvet 56mm/F1.6 (中古購入価格 30,000円)(以下、Velvet56/1.6) カメラは、NIKON Df(フルサイズ機) 2015年に発売された米国製単焦点MF中望遠レンズ。 「Velvetシリーズ」(注:先頭のみ大文字)は、 本記事執筆時点で、28mm、56mm、85mmの3本が 発売されているが、本来のこのシリーズのレンズの 効能は「ソフトマクロ」である。 「ソフト」とは、「軟焦点(ソフトフォーカス)」 効果の事だ、銀塩時代から現代に至るまで、「軟焦点」 レンズの市販数は、さほど多くは無く、数十機種という レベルに留まると思う。 関連記事:(旧ブログ) *特殊レンズ第7回「ソフト(フォーカス)レンズ」編 よって、現代においては「Velvetシリーズ」は希少な シリーズである事は確かだ。 また、Velvet28mm/F2.5(注:KenkoTokina社の Webでは、F2.8との誤記がある)は、未所有だが、 非常に希少な、フルサイズ対応広角ソフトレンズで あるが故に、いつか入手しようと考えている。 また、いずれのVelvetシリーズも、最大撮影倍率が 1/2倍のハーフマクロである。このソフト効果は、 センサーサイズを狭めても有効であるので、例えば μ4/3機に装着すれば、「等倍ソフトマクロ」となる。 そもそも、「ソフトマクロ」というレンズ商品自体が 他には存在していなかったと思われる(注:非常に 古い時代のマクロレンズで、球面収差等の発生で 必然的にソフト効果となってしまっている物は除く) ので、このVelvetシリーズの存在は唯一無二だ。 ただ、弱点があって、このシリーズは比較的高価である。 実勢価格で6~7万円台というVelvetシリーズは、 そう簡単に「ちょっと買って試してみるか」という 訳にはいかない。その値段を出すならば、通常レンズ であれば、新鋭(2016年断層以降)の「超高描写力 レンズ」ですらも買える値段だ。 でもまあ、一応、本Velvet56/1.6だけは入手した。 「ソフトマクロ」という効能は、中級層あたりで あれば、どんな風に撮りたいか?は、だいたい想像が つきやすいであろう。例えば、季節の可憐な花などを、 軟らかく象徴的に撮りたい、とか、そんなイメージも あるだろうし、ファンタジックな小物とか、魅惑的な 女性ポートレート等にも使える事であろう。 だが、本Velvet56/1.6を使っているうちに、 フルサイズ機に装着した場合、像面湾曲、すなわち 「ぐるぐるボケ」が軽く発生する事を発見した。 普通の感覚ならば「これは収差が出るダメなレンズ!」 と思ってしまうだろうが、幸か不幸か(?)近年の 私は、「ぐるぐるボケ」の効果にハマっているので 「やった、ぐるぐるボケも出る、ラッキー!」と、 むしろ大喜びであった。 だが・・ 「ソフト」「マクロ」「ぐるぐるボケ」 の3つの効果を自由自在にコントロールする事は、 超高難易度、あるいは不可能である事も発見して しまった。 例えば、ソフト効果を調整するために絞り値を絞ると、 ソフト効果の主因である球面収差は口径比(≒絞り値) の3乗に比例して急速に減少する。 しかし、「ぐるぐるボケ」の主因の「像面湾曲」と 「非点収差」も、口径比の2乗に比例して減少する。 これでは、両方の効果を自分の好きなようには調整 する事ができない。絞りを開けすぎて、ソフト効果と ぐるぐるボケが出すぎると思って、絞り込んだら 両方が同時にガクンと減ってしまい、「あちゃ~、 ぐるぐるボケだけ残して、ソフトだけ減らしたいん だけどなあ・・」と思って、撮影距離とか背景の 図柄を変えてみる、あるいはフルサイズ機での クロップ機能や、デジタルズーム機能を組み合わせて みるなど、色々な試行錯誤をやってみるのだが、 これらは光学的な原理に精通しておく必要は勿論、 あれこれと試行錯誤の要素が多く、ほとんど対処 不能になってしまう訳だ。 「偶然、ぐるぐるボケが出ました、ラッキー!」 という程度の考え方ならば、それでも満足であろうが 自身では「アンコントローラブル」(制御できない) 状態で、いくら面白い写真が撮れたところで、 それでは意味が無い(もう一度、同じような写真を 撮ろうとしても、もう二度と撮れない)と思って いるので、この状態は困る。 しかし、難しすぎる撮影なので、手におえないのだ。 先ほど、 「LENSBABY社のレンズは、1本も、まともに写らない という評価は、ビギナーだからだ」という主旨で 前述したが、本Velvet56/1.6のレベル(高難易度) ともなると、もう「誰もまともに使いこなせない」 かも知れない。 まあでも、それはそれで、この難しいレンズに 挑戦してみよう、というマニアックな意識も出て 来る事でもあろう・・ --- さて、次も、非常にユニークなレンズである。 レンズは、LENSBABY Trio 28 (Twist効果) (中古購入価格 10,000円) カメラは、SONY NEX-7(APS-C機) 2016年に発売された、3つの特殊効果を選択できる MFレンズ、焦点距離は28mm、絞りは固定でF3.5、 ピントリング有り、最短撮影距離20cmである。 特殊効果は、Sweet(ティルト効果)そして Velvet(ソフト効果)、Twist(ぐるぐるボケ) を切り替える事ができ、ターレット(回転式) 構造が、とてもマニアックである。 関連記事:(本ブログ) *本シリーズ「Trio28」 ただ、本レンズの単品発売は、2010年代末には 既に終了している模様であり、2018年頃からは 輸入代理店のKenkoTokina社のWeb上では 「ホリデーキットTrio28」という、フィルター が付属したキットのみでの販売の模様だ。 このキットは、レンズ単体発売時の価格に比べ 若干値上げされてしまったし、おまけに、付属の フィルターは、ND、PL、クロスと、一般的な効能の ものばかりである。Trio28は、特殊構造ながら 一般的なφ46mmのフィルター枠が存在するので ND/PL/クロス等は、中古のジャンク品を探し集めた ものでも十分だと思う。だから、このキット商品 には魅力が無く、レンズ単体の中古が流通するのを 待って、それを入手した次第である。 さて、Trio28については、従前の「特集記事」等 でも詳しく述べているので、詳細は割愛する。 今回使用しているTwist(ぐるぐるボケ)効果では、 変形ペッツヴァール構成の3群4枚と、本格的な 光学系ではあるが、残念ながら絞り環が存在しない ため、その効能を調整する事ができない。 裏技としては、APS-C機で用いて、ぐるぐるボケを 減らす事はできるが(今回の用法)、だが、自在には 調整はできないので、フルサイズ機に装着のままで、 デジタルズーム機能を用いて、画角を狭めるとともに、 ぐるぐるボケの発生量(≒回転数)を減らしてしまう のが、1つの技法だ。 だが、逆にぐるぐるボケを増やそうにも、焦点距離が やや短く、開放F値もやや暗い為、そもそも、被写界 深度を浅く取る事ができない。 まあ、あくまで「ぐるぐるボケ」のお試し版レンズ 位に考えておく事が賢明であろう。 Sweet/Velvet/TwistのLENSBABYを代表する3つの 特殊効果については、アンコントローラブルな Trio28では済ませず、各々、専門の効能を持つ 本格的な上位レンズを購入する事が良いと思う。 その際、どれを(優先的)に買うか?等の相性や 好みを見る際にだけ、本Trio28は「試供品」 としての効能が出ると思う。 ---- では、5本目の「ぐるぐるボケ」レンズ。 レンズは、Lomography (xZenit) (New) Petzval (85) (Art) Lens 85mm/F2.2 (中古購入価格 50,000円)(以下、PV85/2.2) カメラは、NIKON Df(フルサイズ機) 2014年発売のロシア製ぐるぐるボケMF中望遠レンズ。 (注:本ブログでは、同一記事中ではレンズの母艦を 同じ機体を使わない、というルールがあるのだが・・ 今回、所有フルサイズ機と使用レンズのマウントとの 関係で、このNIKON Dfを重複使用せざるを得なかった。 まあ、やむなし、という事で例外的に認めておく) なお、一応「ロシア製」と書いているのは、本レンズ の企画と販売は、オーストリアの「Lomography」社 ではあるが、製造はロシアの「ZENIT」であるからだ。 ZENITは、旧ソ連時代からの光学製品の国営工場 であり、高い技術力を持ち、マニア層には著名だ。 現代においてはメーカーとなっているかも知れない。 でも、このように国際分業が進むと、どの国の製品 なのかも、良くわからない。 例えば、ビギナー層やシニア層等では近年の中国製の 安価なレンズ等を見て「中華レンズだ」と見下した 表現を良く使うのだが、では、そのシニア層等が 信奉する、NIKON製の30万円近くもするNIKKORを 買ってきて、その高級レンズの裏を見たら良い。 そこには「MADE IN CHINA」としっかり書かれている。 (注:機種によっては、MADE IN JAPAN製品もある) まあ、要は現代の国際分業の時代では、製品の最終 組み立てを行った国の名を「Made In・・」と書いて あるだけの状態だ。だからそんなのはどうでも良い 話であり、生産国の優劣等は、現代では関係ない。 現代と書いたが、例えば1970年代後半~1980年代 前半にも、YASHICA/京セラのCONTAXが、日本製の レンズ部品を西独に送り、ツァイス系の工場で、 それを組み立て「Made In West Germany」と称して 逆輸入した事があった。 当時の金満家のマニア層等では「西独製は良く写る」 等と思い込み、輸入関税が掛かって無意味に高価と なったレンズを買って喜んでいたものであった・・ (注:そう思わせるため、わざわざそうした面倒な 措置を取っていたわけだ。また、ツァイスはこの時代 に交換レンズ事業から撤退してしまったので、残った 工場の操業確保(従業員等を急にクビにはできない) も、西独製造の理由であった事であろう) でもまあ「Made In・・」の極めて単純なトリックに 気付かない消費者層側にも問題点がある話であろう。 さて、恐らくだが「ぐるぐるボケ」の効能を謳った レンズとしては、本PV85/2.2が世界初であろう。 オールドレンズ等で、像面湾曲や非点収差の発生 により、意図せずに「ぐるぐるボケ」が出るものは、 それはもう「欠点」と見なしておくことが賢明だが 積極的に「ぐるぐるボケが出ます」と謳ったケースは 過去には無かったと思う。 なので、本PV85/2.2は歴史的価値が高いレンズだ。 また、「クラウドファンディング」を2013年に実施 して開発されたレンズでもあり、このビジネス様式を 使って開発された写真用機材も、恐らくは本レンズが 初であろうから、ここも歴史的価値が高い。 惜しむらくは、まず、初のクラウドファンディング なので、若干高価であったし、入手性も良くない (投資者に優先的に頒布したからであろう)点だ。 また、元箱等は大変豪華(豪華すぎる)様相もあり 立派な写真集まで付属している等、投資者に配慮した 様相も見られるが、ちょっとやりすぎだ。 (注:鏡筒色は、本レンズの黒色の他、金色の真鍮 のバージョンもあるのだが、恐ろしく派手な為に、 さすがに、そちらの購入は見送った) 個人的には、本レンズに限らず、豪華な元箱などは 不要だから、その分、性能を高めるか、少し安価に してもらいたい、と常々思っている。 ・・で、その性能だが、本PV85/2.2は、一見して 大口径の中望遠だから、「ぐるぐるボケ」も強く 発生しそうな、仕様的な雰囲気があるのだが、実は 逆であり、今回紹介の純粋なぐるぐるボケレンズ群 の中では、BURNSIDE35と本PV85/2.2の2本が、 ぐるぐるボケを自在に制御する事が難しいし、また、 ぐるぐるボケ自体が、若干出難い傾向もある。 まあ、史上初のぐるぐるボケレンズでもあるから、 まだ、どういう仕様にするのかが、定まってなかった のだろう、と解釈しておこう。 未所有だが、後継版(New Petzval 80.5mm/F1.9 MKⅡ)が発売されており、それには「BC機構」を 持たない廉価版もあって、そちらは本PV85/2.2の 中古購入価格よりも、むしろ安価だ。 今から入手するならば、後継版の方が良いであろう。 ---- では、次は今回ラストの「ぐるぐるボケ」レンズ。 レンズは、LENSBABY Twist60 (60mm/F2.5) (新品購入価格 39,000円)(以下、Twist60) カメラは、SONY α7S(フルサイズ機) 2016年発売の米国製MF単焦点標準「ぐるぐるボケ」 レンズ。 LENSBABY社としては、初の「ぐるぐるボケ」レンズ である。それまでのLENSBABYは、ほぼティルト効果 に特化したレンズばかりを販売するメーカーであった のだが、この頃から、前述のVelvet56/1.6等 も含め、Tlit効果以外の特殊効果レンズの横展開を 始めるようになった。 本Twist60は、恐らくはLomographyのPV85/2.2 に触発されて開発されたレンズであろう。 レンズ構成は、定番の「変形ペッツヴァール」であり、 3群4枚。当然ながら、後群2枚を適当に分離して、 像面湾曲と非点収差を増大させている。 絞り環がついているので、「ぐるぐるボケ」の コントローラビリティは高い。 また、単体レンズのみならず、LENBABY COMPOSER 系の交換光学系(Optic)として利用できる簡易版も 販売されている。そちらの方が若干安価なのだが、 個人的にはCOMPOSER系のTiltレンズ母体を所有 しておらず、旧型の「MUSE」が所有機なので、それは 一応光学系交換式だが、恐らくTwist Opticは嵌らず (注:未検証)購入していない。 また、Tilt型レンズにおいて光軸を傾ける使用法は、 Twistの効能とは異なるし、撮影技法も共通では無い ので、ますますOptic版の購入は避ける事となった。 で、本Twist60は、比較的「ぐるぐるボケ」を 出しやすいレンズではある。 ただ、最短WD(注:LENSBABY社のスペック表記は 最短撮影距離ではなくレンズ先端からの撮影距離だ。 これを「ワーキング・ディスタンス」(WD)と呼ぶ。 --- これは日本の各メーカーの表記法とは異なり、混乱を 招きやすい。最短WDの仕様の方が、短い数値が書ける ので「より高性能だ」と消費者層に思わせやすい 効能があるからだと思うが、なんだか公正では無い。 --- ただ、そのように業界において厳密なルールがある 訳でも無いかも知れず、例えば銀塩・デジタルの 国産コンパクト機でも、たいてい最短WD表記である。 --- 本件の実例として、銀塩高級コンパクト機の草分け RICOH GR1(1996年、故障廃棄)では、市場に 残る情報として、最短撮影距離30cmと35cmの 仕様表記の2種類が現存して混乱している、これは 恐らく30cm表記は、最短WDであった事であろう。 なお、本Twist60のKenkoTokina社の販売Webでも 「最短撮影距離」記載のままで、好ましくない) ・・で、その最短WDは、45.7cmであり、 これは一般的な標準レンズ(50mmレンズでは 最短撮影距離45cmが普通。近年では、さらに 寄れて、30cm以下というケースも稀にある) ・・よりも寄れない仕様であるから、被写界深度を あまり浅く取れず、結果的に「ぐるぐるボケ」の コントローラビリティも若干低い。 まあ、被写界深度だけが「ぐるぐるボケ」の発生 を決定する要素では無いが、少なくともこれを 意識せずには、「ぐるぐるボケ」の制御は出来ない。 それと、Twist60は、滅多に見ない「ぐるぐるボケ」 レンズの中古としては、かろうじて、中古流通品を 何度か見かけたレンズでもある。うまく中古品を 探し当てれるのであれば、相場は2万円程と、 高価である事が普通な「ぐるぐるボケ」レンズの 中では、最も安価に入手できるレンズになるだろう。 --- では、本記事はここまでで。 次回「レンズマニアックス+(プラス)」記事は 内容未定、不定期連載としておく。
by pchansblog2
| 2023-11-29 07:04
| 完了:続・レンズマニアックス・プラス
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