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現在、「カメラの変遷・総集編」として、 各時代の各カメラ(やレンズ)の歴史の歩みを 解説する全8回の短期シリーズを連載中であるが、 今回は最終回とし、「ミラーレス機編」と称し、 主に2010年代に発売されたミラーレス機について、 世情を絡めて説明をしていく。 *2008年、初のミラーレス機の登場 本/旧ブログでは何度も紹介している機体で、 本シリーズ記事でも紹介済みの、史上初の ミラーレス機は、PANASONIC (LUMIX) DMC-G1 である。 しかし、「初のミラーレス機」という割には 本機の完成度は高い。シリーズの直接の後継機は G2からG99(2019年)までが発売されているが、 後継機では、仕様的に、若干だが改悪となった 部分もあるので、依然、このDMC-G1は、現役で 十分に使用できる程だ。 本機の様々な逸話は過去の旧ブログでも何度も 紹介しているので、今回は、ばっさりと割愛する。 1つだけ余談だが、2018年頃に大阪のPanasonic 本社に付設する資料館を見学に行った事がある。 「せっかくだから」とDMC-G1を首から下げて 見学していたのだが、展示物の中に全く同じ 機体色のDMC-G1が大事そうに球状のガラスの ケースに守られて保管してあった。 勿論「世界初のミラーレス機」といった見出しが 付いていたのだが・・ 私は、その時、なんだか複雑、というか、やや 不愉快な気持ちとなった。 「発売後、たった10年で、もう”博物館行き”かよ、 こっちは、まだ現役でバリバリ使っているのに」 ・・まあ、とは言うものの、確かにこのDMC-G1 は、非常に歴史的価値が高い機体である。 そして無駄の無い操作系は、なかなか優れていて 全ての所有ミラーレス機の中でも、個人評価点は かなり上(というか、トップの評価)である。 (下写真は、DMC-G1+NOKTON25mm/F0.95) *2009年、OLYMPUSとRICOHがミラーレスに参入 PANASONICと同じ「μ4/3陣営」のOLYMPUSも、 やや遅れてデジタル版のPEN(OLYMPUS E-P1、 未所有)でミラーレス機市場に参入。 なお、悲しい話だが、E-P1の発売同年同月に、 銀塩版PENの筆頭開発者であった「米谷美久」 氏が他界されている。 それと、「μ4/3規格の発表」が2008年夏で、 DMC-G1の発売が同年12月、E-P1の発売が 翌2009年7月なのだが、DMC-G1の発売が やたらと早かったのは、先にDMC-G1の試作機が 存在し、後から、μ4/3規格をDMC-G1の仕様に 合わせて纏めたのではなかろうか? 例えば、μ4/3のセンサー規格が4/3と同じ なのは、試作時点では、そのセンサーしか 使いようが無かったのかも知れない。 そして、DMC-G1の発売時には、「カメラ らしく無い」等の、新しいジャンルに反発する 声もあったのだが、OLYMPUSが「これぞ、カメラ らしいと言える、デジタル版のPEN」を発売して しまえば、μ4/3機に対する市場や消費者層での 懸念(や批判)も相当に減った。 思えば、従前の4/3時代のE-300(2004年、故障廃棄) の発売前にも「どうやらデジタル版のPENらしい」 という噂が流れていたのだが、いざ発売された E-300を見て「PENとは似ても似つかぬ」と 落胆の声が上がっていたのだが、E-P1は、まさに デジタル版のPENだったので、マニア層やシニア層 には歓迎され、銀塩PENを知らない新規消費者層にも 「斬新なデザインだ」と受け入れられた訳だ。 ともかく、OLYMPUSの「ナイス、アシスト」で μ4/3は、ここから「市民権」を得た事になる。 (下写真は、初期PENシリーズの派生機 OLYMPUS PEN Lite E-PL2、2011年) PENが発売された同じ2009年の暮れ、今度は RICOHから極めてユニークなコンセプトのカメラ が発売された、それが「RICOH GXR」である。 これをミラーレス機に含めるという判断は微妙だ。 この時代では唯一無二の「ユニット交換型」カメラ であるからだ。 ただ、「ミラーが無い(レス)」事は確かなので、 便宜上、ミラーレス機と見なしている。 (注:ユニットとは、レンズと撮像素子(センサー) を組み合わせた物で、下写真のように交換する) GXRには、その発売時点では、小型機としては、 当時最大のセンサーサイズであるAPS-C型の交換 ユニットが存在していた。(例:以下の写真の A12 50mm(相当)/F2.5 Macroユニット) (注:当時、他にはSIGMA DPシリーズ等も APS-C型センサーを搭載していた) そのMacroユニットから吐き出される画(え)は なかなかのものであり、とてもコンパクト機もどき の小型機で撮った写真とは思えず、その点1つを 見ても、GXRシステムを使う意味があった。 GXRは、マニア的視点からは、銀塩GR1系(1996~) そしてGR DIGITAL系(2005~)から続く、 マニア向け「GR系列」において、「レンズ交換が できるGR」という位置づけである。 (注:「GX200の後継機」という話も、どこかからか あったが、まったく見当違いの観点だろう。 何故、GX200のユーザー層と、GXRのユーザー層が 全く異なるもの、という点がわからないのだろうか? --- 本件に限らず、他社の機種群においても、「xxは、xxの 後継機/低価格版機」といったような評論がとても多いが、 そういう風に、価格帯等でラインナップを分別できたのは 2000年代までの話だ。2010年代からは、機種群の企画は 「誰に向けて、どのようなカメラを売るか?」という視点に 変化してきていて、場合により異機種間の使用部品も共通だ。 だから「仕様」や「仕向」は、もはや価格帯では決まらない。 マニア層や評論家層、メーカー側に至るまで、世情の変化を 良く認識する必要があるだろう) ・・・なので、(GXRは)発売時にはマニア層を中心に、 かなりのインパクトがあった。 ただし、本体および必要な交換ユニットを揃えて いくと、20万円超えとなる高額なシステムだ。 私がこれを入手するのは、相場の下落を6年も 待った2015年ごろであった。 マニアックかつ優れた描写力を持つシステムでは あるが、大きな課題としては「閉じたシステム」で ある事が言える。 つまり、デジタル関連技術の進化の恩恵を受ける 事があまりできない。例えばこのシステムのAFは 2009年当時の初期ミラーレス機と同様の貧弱な 性能だが、他社では後年に「像面位相差」等の 新規のAF技術をカメラボディ側に搭載できたが、 GXRでは、そういう技術が出来れば、ユニットは 買いなおしになるだろうし、下手をすれば本体も 買い換えとなる。つまり、新技術を搭載しようと すれば、旧システムは何も残らなくなってしまう。 まあ、なので、GXRシステムの技術は、その発売 時点で「凍結」された形となり、後継機等は 一切発売されていない。 でも、マニア的観点では、こうした「唯一無二」 とも言えるシステムは好みであろう、後年に 至るまで、そのファン層は多い。 *2000年代末、画素数競争の終焉 2000年代の撮像センサーの技術は、主に解像度 (=画素数)を高める方針で進歩してきたので、 商業的観点でも「画素数の大きいカメラは良い カメラである」というキャッチフレーズを元に、 一眼レフ、コンパクト機、携帯電話内蔵カメラ 等で、画素数の向上を謳って(/競って)いた。 だが、2000年代末あたりで、撮像センサーの 製造技術(≒ピクセルピッチを狭めていく)も 4μmあたりで限界点を向かえ、それ以上の 画素数向上が難しくなる。 (参考:小型撮像センサーでは、より細かいピクセル ピッチでの製造が可能。だが、装着レンズ側における 像面解像力は、決して、その狭いピッチに対応できる 訳では無いので、例えば携帯電話カメラ等の小センサー システムは、本格的な写真撮影用途からすれば、全く 違う立場のものであると見なされている。 --- 例えば、スマホ搭載カメラが何千万画素に性能向上 したからと言っても、マニア層や専門家層から見れば その搭載レンズが、そこまでのセンサー解像度に対応 していない事は明白なので、「ふ~ん、良かったね」 程度の反応で終わりだ。いや、むしろ2000年代での デジカメでの無意味な画素数競争を思い出し、逆に そういうスペックは、意図的に無視をするだろう) ピクセルピッチを狭めずに画素数を上げる手段 であるが、例えば、2000年代前半における FUJIFILM社の(スーパー)ハニカム系センサーでの、 八角形構造のピクセルにより、元々の有効画素数の 2倍の記録画素数を得る事ができた。 (↓写真は、FUJIFILM FinePix F10) (注:後述のように、その「2倍」の効能は、 2000年代中頃以降、あまり謳われていない) また、2000年代後半頃からのSIGMAのカメラに 採用されたFoveon X3センサーでは、RGBの3層 構造により、1400万画素(約450万画素x3)や 4600万画素(約1400万画素x3)という数値を 得る事が出来ていたのだが・・・ こうした新技術は、他の陣営やユーザー層等から、 「実際の画素数よりも”盛って”いる」といった 批判が出てしまい、それらのメーカーも、声高には、 新技術の効能を謳えなくなってしまった。 (下手をすれば「誇大広告」だとか言われて面倒だ) だが、この話は「画素数競争に踊らされているだけ」 という消費者・ユーザー側にも多くの課題がある。 で、技術的側面から画素数向上が頭打ちとなった この2000年代末頃から、各社では、各カメラの 大型センサー化に乗り出す事となる。 一眼レフのフルサイズ化は勿論、コンパクト機 でも、CANON PoweShot G~X系、RICOH GR系、 SONY RX系等で、1型以上の大型センサーが 使われている。 大型センサー機では、Dレンジの向上は勿論、 必要とあれば、同じピクセルピッチでも画素数を 高める事もできたのだが、・・中にはあえて 1000万画素程度の解像度仕様に留める事で、 むしろ「写真は実用的には、この程度の画素数が あれば十分です、これからは画素数競争では無く、 センサーの大型化の時代です!」といった概念や 消費者への啓蒙活動を強く打ち出したケースもある。 まあでも、この啓蒙活動は、効果が強すぎたかも 知れず、その後10年以上も「フルサイズ至上主義」 のような偏った概念が、市場での初級中級層に 根付いてしまっている。そして、当然ながら そういう大型センサー機は、「付加価値」により 高額な為、大型センサー機を「高価でも買って くれる」消費者層と、それを付加価値とは感じずに 「買い控えをする」消費者層に、綺麗に二分化されて しまい、後年でのカメラ市場縮退を加速する要因の 1つとなってしまったように思えてならない。 (注:技術的観点において「解像度」とは「画素数」と 同義である。だから、レンズの「解像力」(性能)の 事を「解像度」と称したり評価する事は誤りだ、 --- ただまあ、光学やデジタル光学の世界では「用語統一」 が、全く出来ていない事が、根源的な問題点ではある。 しかし、そうだとしてもビギナー層はともかく、専門家 層に至るまで、用語の使い方が曖昧であったり、原理的 な理解が出来ていない事は、やはり問題であると思う) *2010年、SONYがミラーレスに参入 同年6月、SONY NEX-3/5の登場である。(下写真) 小型・薄型・軽量を特徴とし、かつ、APS-C型の 大型センサー搭載機である。 発売当初のNEX-3とNEX-5には、ほとんど仕様上 での差異は無く、何故2機種がラインナップされて いるのか不可解であったが、後にその理由は 明らかになる(次項目で説明) ただ、ここから「APS-C型センサー搭載機」が 以降のミラーレス機のスタンダード(標準的)な 仕様となったのは明らかであり、加えて前述の 「大型センサー化」の「市場啓蒙活動」も強くなり μ4/3陣営(=4/3型センサー。これはAPS-C型の 約半分の面積)は、センサー仕様だけに関して 言えば、市場/消費者へのアピールが苦しくなる。 まあ、当然、他社としても2008年~2012年 頃まで、μ4/3機が爆発的に普及した事へ対抗 する為の、センサー大型化戦略でもあった訳だ。 中には、もっと直接的に「μ4/3機はセンサー が小さいから、良く写る訳が無い」といった ネガティブ・キャンペーン(≒否定的な流言を 拡散させる)を行った人達(対抗勢力?)も 居たのだが、2013年ごろから、超絶性能を 持つμ4/3機(OLYMPUS OM-D E-M1、2013年 や、PANASONIC DMC-GH4、2014年、未所有) が発売されるようになり、μ4/3機が独自の 展開を始めるようになると、そうした流言も だいたい収まっていく。 *2010年前後、テストマーケティングの時代 初期のミラーレス機は、いったいどんな人達が それを買ってくれるのか? メーカーや流通側に おいても、それが良くわかっていなかった。 まあ、全くの新規分野のカメラだから当然だろう。 そこで、各社は、いままでの一眼レフ等での 「段階的戦略」(つまり、初級機、中級機、高級機 のように性能差と価格差を設ける)は通用しない 状態なので、「ユーザー・ターゲット別」での 製品展開を始める。 具体的には、前述のSONYのNEXシリーズでは、 当初のNEX-3/5は、後年に、NEX-3を女性向け NEX-5を男性向けと、仕様の振り幅を大きくした 展開を見せる(例:NEX-3系には自撮り機能搭載等) また、上級/マニア層向けのNEX-7等も追加された。 それと、NEX-6(未所有)は、翌年のフルサイズ・ ミラーレス機、α7系機種群に対する実験機と 思われ、像面位相差AFや、続くαと同等の操作系を 試験的に搭載していた。 (↓写真は、超絶的な「動的操作系」を持つNEX-7) OLYMPUSも、PEN 、PEN Lite、PEN Miniの 3シリーズを並行展開、それぞれターゲット層が異なる。 さらには、2012年からは、銀塩OM機ライクな外観の、 OLYMPUS OM-D E-M5(シリーズ)を発売開始している。 PANASONICは、もっと極端でG、GF、GH、GX、GMの それぞれのシリーズに強い個性と特徴を持たせた。 まあつまり、これまでの一眼レフでは、カメラの 「性能」で差別化を行っていたのだが、ミラーレス機 では、個別のユーザー層が求める「機能」で機種間 の差別化を行った訳だ。 こうしておけば、どんな類の機種がユーザーから 「ウケ」が良いかを探る事も出来るし、あるいは それらの基本部品(撮像センサー等)は共通で 良い訳だから、製品開発の効率化も図れる。 ただ、こうした「テストマーケティング」は、 当然、「ウケ無い」シリーズも出てきてしまうし、 いつまでも、テスト(≒市場調査)をしていても 意味が無い。 SONYは2010~2012年の短期間でNEXシリーズ を廃し、後に「α」にブランドを統合、つまり、 「進む道が決まった」訳である。 他社でも、OLYMPUS PENやPEN miniシリーズ、 PANASONIC GMシリーズ(後にGX/GFシリーズも) 等は廃止され、それぞれターゲット層が具体化 してきた。 また、これらの、ユーザー(消費者)ニーズは 時代とともに変化していく為、シリーズの復活や 廃止、戦略転換等も、色々と行われている。 *2011年、PENTAX、NIKONがミラーレスに参入 同年3月、未曾有の大災害である「東日本大震災」 が発生したため、自粛ムード等で、この年での カメラ新発売を控えたケースも多々ある中、 同年の後半からPENTAX Q、および NIKON 1シリーズ (未所有)が新規にミラーレス機市場に参入している。 両シリーズは、かなりの小型機であり、 新たな消費者ニーズを喚起する為の商品群で あったと思うが、1/2.3型や1型の小型センサーは、 前述の、この時代での「大型センサー化」の時流 や世情とは全く合致しない為、あまり注目されず いずれも短期間で、シリーズの展開は凍結(終了) されてしまっている。 *2012年、FUJIFILM、CANONがミラーレスに参入 この時期まで、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長 していたミラーレス機であり、各カメラメーカー も、高付加価値型の一眼レフばかりを販売して いる訳にも行かない。 そして、2012年には、FUJIFILMとCANONも ミラーレス機市場に参入、これで国内の 主要カメラメーカーの全てがミラーレス機を 販売する事となった。 内、FUJIFILMは「レンズ交換式カメラ」としては、 銀塩中判機、銀塩特殊機(TX系)、銀塩一眼レフ (AX系、1980年頃)以来の、実に久しぶりの 市場参入(復帰)である。 ・・だが、カメラ市場全体の縮退も、同時にこの 時代から始まっていて、年々、カメラが売れなく なってきている。 勿論、カメラメーカーとしては、高価な 高級一眼レフを売っていた方が儲かるだろうが 市場の状況はそうでもない。一眼レフとミラーレス および交換レンズ群を含め、どのような市場戦略が 有効か?それを、この時代から各社とも模索する ようになっていく。 *2010年代前半、一眼レフ陣営の市場戦略 これについては、前記事(第7回)で詳しく 述べている。 「エントリーレンズ戦略」、「フルサイズ化戦略」 「段階的ラインナップ戦略」等が行われたが どれも、一眼レフの販売数減少の歯止めには ならず、厳しい市場状況が続き、続く2010年代 後半頃からは、各社は一眼レフの新規開発と 販売を、大幅に控えるようになってしまう。 *2013年、ミラーレス機、戦略転換の年 この年、ミラーレス機では、エポックメイキング な2つの機種(シリーズ)が発売されている。 2013年10月、OLYMPUS OM-D E-M1 (参考:ミラーレス・クラッシック第14回記事) 2013年11月、SONY α7/α7R (参考:ミラーレス・クラッシック第13回記事) ここで両機について語りだすと冗長となるので 割愛する、詳細は各旧ブログ記事を参照されたし。 簡単に言えば、OM-D E-M1はμ4/3を業務撮影機 として普及させる事を狙った超高性能機であり、 α7(系)は、史上初のフルサイズミラーレス機だ。 いずれも価格は15万円程と、低廉に抑えられて いて、これらの新機種と、それにともなう新規の 用法・用途を、市場/ユーザー層に普及させる為の 戦略的価格(=つまり安価)であったと思う。 なお「この2013年、SONY社はOLYMPUS社の筆頭 株主になった」という話を聞くが、企業同士の全体 における関係性が、ごく一部である「カメラ事業」 に、どれだけの影響を与えていたか?までは不明だ。 (例:E-M1とα7を、意図的に同時に展開した、等) *2014年~、段階的ロードマップ戦略 上記2013年の2機種(2シリーズ)は、今後の ミラーレス機の展開を左右させるであろう、非常に 重要なポジションのカメラであったのだが、その後 の市場戦略において、両シリーズ機(両メーカー) には、若干の差がついてしまった。 OLYMPUS OM-D E-M1系は、E-M1Ⅱ(2016)、 E-M1X(2019)、E-M1Ⅲ(2020)と、 旧来のカメラ開発のセオリー通りに、数年毎に 後継機を出して、順調に技術(というかスペック) の進化を目指したのだが・・ SONY α7系は、派生シリーズ(高解像力R系、 高感度S系)と、それぞれの後継機(Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ) および、上位シリーズ(α9系、α1)を ここから数年間で、2次元的に多数、並行展開 を始める。Ⅱ型機で手ブレ補正機能を内蔵、 Ⅲ型機で高速連写機能を内蔵、等の、段階的 (しかし、確信犯的な)ロードマップ戦略を行い、 カタログスペックの向上をユーザー層に謳い、 買い替え需要や、買い増し需要を増やしていく。 同時に、「フルサイズ機は良い」という、従来 からの市場への啓蒙活動(≒そう信じ込ませる) も進み、かつ、2013年~2018年の期間において フルサイズ・ミラーレス機は、SONY α7/9系 が唯一であったので、この時代には「SONY αの 一人勝ち」という市場の様相を見せる。 結果、OLYMPUSは力尽き(?)、2020年には、 カメラ事業からの撤退(分社化)を表明するが、 幸いな事に「OMデジタルソリューションズ」が 投資事業としてカメラ製造販売を引き継ぎ、 「OLYMPUS」銘から「OM SYSTEM」銘へと変わり、 カメラ事業は継続されている。 (例:2022年にOM-1/OM-5等が発売) *2015年~、高付加価値化の時代 前述のように、ミラーレスのカメラの販売数も 減っているのだから、何か凄い機能を搭載し カタログスペックを魅力的として、高価に売る 算段をつけないとならない(つまり、高付加価値化) まあ、一眼レフで行ったような「超絶性能化」が、 基本的な戦略である。(前回記事参照) *2016年頃~、ミラーレス機市場の低迷 ただ、いくら前述のような「超絶性能化」を 行って「カタログスペック」を高めたとしても、 それらが実用的では無いと感じる消費者層も多い。 例えば、超高感度性能は日中撮影では無意味だし、 超高速連写も、それが本当に必要なケースは 限られるし、多くの場合には「ムダ撃ち」となる。 まあなので、単純に「カタログスペック」に 惹かれて新鋭機を買うのは、この時代から ビギナー層ばかりになってしまい、上級層等が 「新製品のカメラ離れ」を起こした為、ますます カメラ市場縮退に拍車が掛かる事となってしまう。 NIKON 1、PENTAX Qシリーズ、PENTAX K-01は 既に生産を辞め、CANON EOS Mは、もうこの時代 からは入門層向けのKiss Mシリーズが主力と なっている。また、各社の低価格帯ミラーレス機 ラインナップの一部も、縮小、または廃止である。 *2017年頃 ジェネリックレンズの登場 カメラや交換レンズが売れないから、メーカーや 流通(新品、中古)市場においては、それらの 価格を上げざるを得ない、さもないとビジネスが 成り立たない訳だ。 2010年代には、カメラと並行して、交換レンズも 値上げされている。 まあ、一部「2016年断層」と、個人的には呼んで いるように、超高描写力化された高性能レンズも 少なくはない。しかし、高価すぎるのだ(汗) また、2010年前後に行われた、エントリーレンズ」 による、「お試し版戦略」も、もうこの時代では 影を潜めている。「まず安価なレンズを売って、 それから・・」といった悠長な市場戦略を実施 できる程では無い、切羽詰った状況なのだ。 こうして、この時代には安価な交換レンズが、市場 には皆無となってしまった。これは恐らく日本国内 のみならず、日本製製品を主力とする海外のレンズ 市場でも同様の状況であっただろう。 なので、この時代から、中国製等で、安価な製造 コスト、あるいは旧来の名レンズの設計を踏襲して 設計コストを下げた(ジェネリック)レンズ等が 非常に多数、このレンズ市場に参入を開始した。 安価な(日本製)レンズが何も無くなってしまえば この低価格帯市場を、中国製等の海外製レンズが 席捲するのは難しくない、という市場判断であろう。 ただし、少なくとも国内では、これらの新鋭海外製 レンズの評判は、あまりよろしく無い。 まあ、その理由は推察できる。ローコスト化設計や 過去の名レンズのコピー版設計、そしてMFであり 手ブレ補正も内蔵されていないレンズでは、現代で ビギナー層が主力となってしまったカメラ市場では それらを正しく使う/評価するスキルが足りない 訳である。だから、上手く使いこなす事が出来ず、 「しょせん中華レンズだ、安かろう、悪かろう・・」 というビギナー的評価が蔓延してしまう訳だ。 たとえ、そのレンズのコピー元が、誰もが知り、 神格化され憧れた「プラナー系85mm/F1.4」で あってもだ・・ (参考:海外レンズ・マニアックス、シリーズ記事) *2018年、各社のフルサイズ化戦略 いよいよカメラ市場の縮退が(ミラーレス機を 含め)深刻化してきた2010年代後半、各社は 高付加価値化の切り札としての「フルサイズ化」 を実施する。 具体的にはNIKON ZシリーズとCANON Rシリーズ が2018年。SIGMA fp(ライカL)、PANASONIC S シリーズ(ライカL)が2019年からである。 SONY α7/Rから5年も遅れたのは、業界内での 裏事情もあるかも知れないが、まあ表向きの 理由として「ミラーレス機をフルサイズ化したら もう事実上、一眼レフは終焉を意味するからだ」 を挙げておこう。 ただまあ・・ ミラーレス機が完全に一眼レフ を代替できる訳でも無いし、一眼レフ用のレンズ 資産は、市場にも個人でも、いくらでも存在する 訳だから、そう、ホイホイと新たなミラーレス機 に転換し、さらに、その新マウントでの高価な (高価すぎる)レンズを、ポンポンと買ってしまう ユーザーも、そうは居ない。 カメラマニアの私ですら、そう簡単に食指が動く ような機体は見当たらないし、他のマニア層等も 概ね同様であろう。保留、値下がり待ち、見送り のいずれかだと思われる。 新鋭フルサイズミラーレス機が、バンバンと売れて いるという話も聞かないし、屋外でカメラを持って いる人を見ても、新鋭機を使っている人の比率は 極めて少ない。(注:コロナ禍以降に新規にカメラ を始めた入門層では、それらの新鋭機しか知らない為 高価ではあるが、それらを買って使う比率が増えた) 又、ネット上での新鋭機等のユーザーレビューも 殆ど見かけず、見るのは高価な新鋭機を売りたいが 為の、流通(販売)側での、宣伝記事ばかりだ。 本当にカメラ(界)にとっては、厳しい逆風の 状態となってしまった・・・ *2010年代末、ミラーレス機の超絶性能化 この時代、フルサイズ化していないミラーレス機 (PANASONIC/OLYMPUS μ4/3、FUJIFILM Xシリーズ) 陣営においては、「超絶性能化」つまり、消費者 の目を引くカタログスペックで、購買動機を喚起 しないとならない。 ・・・しかし、もう目新しい超絶性能が存在 しないのだ、多くの超絶性能は既に一眼レフに 搭載されていたりして驚くようなものでは無いし、 それら超絶性能が、本当に利用者に役に立つか どうか?の疑問点も、既にユーザー層には広まって いる。 まあ、残る超絶性能は「電子(撮像素子)シャッター による超高速連写」機能位のものであろう。 例えば、μ4/3機のOLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ (2016年、ミラーレス第23回記事参照)や、 同μ4/3機の、PANASONIC (LUMIX) DC-G9 (2018年、ミラーレス第24回記事参照)では、 毎秒60コマの超高速連写機能が搭載されている。 これらが発売された際には、特にビギナー層等 の間で「スゲー連写性能!」といった声も あがったのだが、まあ、これは電子(撮像素子) シャッターを用いて、4K動画エンジン(秒60コマ) を、この機能に転用しているだけであるし、 果たして、そこまでの超高速連写性能が必要か? という素朴な疑問もあるし、また、実用的な課題 としては・・ ・電子シャッター故に、動体被写体や自身が動いて しまうと、ローリングシャッター歪みが出る。 ・ディスプレイ、モニター、プロジェクター等を 撮影すると、走査線の縞模様が写ってしまう。 ・バースト枚数が少なく、1秒程度で停止してしまう。 ・AFが固定等、いくつかの制限事項がある。 等の、結構重大な課題により、超高速連写機能は 個人的には必要な機能とは、みなしてはいない。 (注:これらの「誰が見てもわかる課題」については 後年の新鋭機では少しづつ改良されていくであろう。 しかし、なんで実用的には不要と思われる性能を、 そこまで手をかけて改善しようとするのだろうか? 他に、改善するべき事柄は、いくらでもあるのでは? だが、地味な弱点を改善したからといって、主力の 購買層であるビギナー層には理解不能であろう・・) まあ、超高速連写に限らず、万事がその調子であり 「超絶性能」が、本当に必要か?あるいは、それらは 本当に実用的なのか?については、大いに疑問を 持たざるを得ない。 まあ、なんだかメーカー側や市場側の思惑と、 消費者/ユーザーの求める方向性が一致しておらず チグハグな様子を感じる。これではミラーレス機 の市場縮退を止める事は難しかったであろう・・ *2020年~、コロナ禍 カメラ市場の縮退は止まらず、2010年代の 10年間で、カメラの販売台数は、およそ1/10 にまで低下してしまった。(注:売り上げ金額 ベースでは、およそ1/4以下に低下) そこへ今度は、世界的なコロナ禍の発生だ。 ステイホームで、写真を撮りに行く事すら 出来ない状態では、ますますカメラの売り上げ は低下してしまう。 前記事でも書いたが、カメラ誌の廃刊や、 カメラショーの廃止の報が色々と届き、 メーカー側の販売戦略も自粛または萎縮して しまい、目につく新製品の発売も殆ど無い。 そしてOLYMPUSのカメラ事業撤退(分社化)や NIKONの一眼レフの国内生産の終了等の 暗いニュースしか聞こえて来ない。 まあ、2020年代コロナ禍では、一眼レフの国内 販売台数など、月に僅かに4000~5000台だ。 これは大手量販店での販売数では無い、日本全国での 全部のカメラ店を合わせて、たったそれだけの数しか 一眼レフが売れていない訳だ・・ (追記:2023年初頭では、一眼レフ国内販売数は 月に2000台程度と、さらに目を覆う状況だ) カメラファンとしては寂しい話ではあるが・・ これらの原因は、ただ単に「スマホの台頭」や 「コロナ禍のせい」では無いと思う。 その事は、本シリーズ記事で、ここまで詳しく 述べて来たように、なんだか、カメラの市場が 縮退していくに連動し、どんどんとカメラ側の 企画(性能、仕様、価格を含む)が、消費者又は ユーザーの方を見ていなくなった事が、市場縮退 を加速させた最大の理由(原因)では無かろうか? すなわち、メーカーや市場側での都合ばかりで、 そういった企画内容の新製品が出て来る状態が、 2010年代中頃以降、ずっと続いてしまっている。 まあだから、カメラファン層やマニア層ですらも、 下手をすれば職業写真家層(プロ)においても 新製品のカメラに全く魅力を感じず、「買わない」 という選択肢を選んでしまっている訳だ。 「マニア層とかの数など、たかが知れている」とは 思う無かれ、今時の消費者層は「周囲に居る人達 が、良いと言ったから」「あの人も買ったから」 等の「受動的な理由」でしか購買行動を起こさない。 周囲でカメラの話を誰もせず、知人友人と写真を 撮りに出かけたりする事もなければ、カメラ等は そう欲しいと思うものでは無いであろう。 また、ネット上では、マニア層等からの精緻な ユーザーレビューも皆無となってしまった状態 (マニア層が新製品を買わない、あるいは、もう マニア層自体が激減してしまっている)では、 一般消費者層は、いったい何を拠り所として、 カメラやレンズを買えば良いのだろうか・・? 流通側からの「宣伝記事」やビギナー層発信の 「思い込み記事」が、もうアテにならない事は それこそスマホの普及に合わせて、ネットの実態も 多くの人達が理解しているから、そう簡単には話に 乗る事は無い。まあ、ほんの少し前の時代迄は、 「ネットにはいくらでも(正しい)情報が載って いる。便利な時代になったものだ!」と、皆が 思い込んでいたが、ネットの普及で、それが誤り である事も、誰もが良くわかっている時代となった 訳である。今や「ネット上の広告宣伝や情報操作」 等に乗ってしまうのは、本当に何もわかっていない 超ビギナー消費者だけであろう。 それと、2022年頃から急速に注目されている「生成AI」 についても、その元ネタは、ネット上に既にある情報で しか無い事を忘れてはならない。つまり、元ネタ自体が 真に有益な情報で無い場合には、それを集めて来た情報も さして価値がある訳では無いのだ。生成AIに意味があるのは 検索をして、ムダなサイトを読みに行く時間を節約できる くらいであろうが、そうだとしても、それが有益なのは 「単なる情報受信者」(→「その他、大勢」)であろうから、 一部の、クリエティブな一次情報提供者としては、あまり 面白い話では無いであろう。 まあ、つくづく、あれもこれもが残念な時代だ。 ---- さて、本シリーズは、これにて終了。 残念ながら、この時代以降は魅力的なカメラが1つも 無くなってしまった、という酷い市場状況なので、 恐らくは補足編等の記事は執筆しないであろう。 ただ、なんらかの「光明」が、カメラ界において 現れてくれる事を強く期待し、そうして時代や世情が 変われば、また、そういう種の新規シリーズ記事を 書く事もあると思われる。
by pchansblog2
| 2023-09-21 21:14
| 完了:カメラの変遷・総集編
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