カテゴリ
【熱い季節】ドラゴンボート・ペーロン 連載中:【空想中古店・沼カメラ】 連載中:カメラマニアックスEX第二部 連載中:レンズマニアックスEX第三部 連載中:レンズグルメ入門編第二部 完了:フィルムカメラで撮る 完了:カメラマニアックスEX第一部 完了:歴代カメラ選手権 完了:カメラの変遷・総集編 完了:デジタル名機対決 完了:お気に入りカメラ選手権 完了:レンズグルメ入門編第一部 完了:レンズマニアックスEX第一部 完了:レンズマニアックスEX第二部 完了:年代別レンズ選手権 完了:年代別マクロ選手権 完了:続・特殊レンズマニアックス 完了:続・レンズマニアックス・プラス 完了:続・匠の写真用語辞典 旧ブログへのリンク
最新の記事
ブログジャンル
以前の記事
2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 2024年 09月 2024年 08月 2024年 07月 2024年 06月 2024年 05月 2024年 04月 2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 検索
|
今回の記事は補足としての「高評価レンズ」 (前編)とする。 これは読んで字のごとく「高い個人評価点が 得られているレンズ(群)」を指すのだが・・ 私が所有しているレンズ群の全てに付けている 個人評価点データベース(5つの評価項目から なる。→【描写表現力】【マニアック度】 【コスパ】【エンジョイ度】【必要度】で 各5点満点)において、評価平均点が4点を 超えたものを「名玉」と称している。 現状、それらは約30本ほど存在している。 (注:全体所有数からは、約7%程度の比率) なお、世間一般的視点で「名玉」等と呼ばれる、 高価なレンズとか、有名(すぎる)なレンズや 生産本数が少なくて希少なレンズ等では、私の 評価基準では、コスパやマニアック度の評価が 低くなってしまうので、それらが高評価を得て 「名玉扱い」となる事は、まず有り得ない。 あくまで個人的な評価基準に基づく訳なので コスパが良く、個性的なレンズが選出され易い。 今回の前後編では、それら「名玉」群の中から、 さらに厳選して14本を選び、それらを各記事で 7本づつ紹介する。 又、惜しくも名玉の評価点には到達していないが 個性的な特徴を持つ「準名玉」を、合わせて2本 選出し、前後編で、それぞれ8本づつのレンズを 紹介していこう。 それと、レンズを装着する母艦(カメラ)は、 そのレンズの特徴が最も活用できる機体を選ぶ。 (=弱点相殺型システムとする) では始めよう、まず最初の「名玉」 レンズは、Voigtlander APO-LANTHAR 90mm/F3.5 SL Close Focus (注:変母音省略) (新品購入価格 47,000円)(以下、APO90/3.5) カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機) 2002年に発売のフルサイズ対応MF中望遠(近接可) レンズである。コシナ社での「SL」レンズとは 「一眼レフ用」を示し、時代によって異なるが、 現代ではNIKON Fマウント(Ai~S、電子接点対応) のMFレンズしか販売されていない。勿論銀塩機の 他にも、NIKONデジタル一眼レフで使用できるし、 (注:基本的にはSL2型以降に限る。他、複雑な 利用条件があるが割愛する)マウントアダプター を介せば、Fマウント版は、殆どのミラーレス機や 一部のデジタル一眼レフに装着する事も出来る。 (ただし、本レンズ自体はCANON FDマウント版 なので、利用に工夫は必要だ) 本APO90/3.5は、2010年頃に後継型(SL2型) が発売され、そちらは少し小型軽量化されては いたが、光学系が同一な為、未所有だ。 SL2型の生産終了(2012年頃)をもって、 本レンズの系譜は途絶えてしまい、同じ焦点距離 では、APO-SCOPAR 90mm/F2.8 SL(2021年)が 現行品となっているが、近接撮影能力が失われて しまった為、そちらは購入していない。 「APO」とは、「Apochromat」(アポクロマート) の略である。この光学用語の定義は少々曖昧で あるのだが、一般的には「3つの波長において、 (軸上)色収差を補正したレンズ」となる。 どうやって補正するか?は各社各々の設計手法が あるだろうが、この当時(2000年代)のコシナ社 の場合では、「異常低分散ガラス」を用いた レンズを、1枚ないし2枚採用し、それが入って いて色収差の補正に留意したレンズを「APO」と 称していた。 2000年代のコシナ製SL(一眼レフ用)レンズ で「APO」銘があるものは、「APO-LANTHAR」 (アポランター)の3機種しかなく、これらが 当時としては、そこそこ高い描写力を持っていた ので、マニア層等に評判が良かった。 ただし、MFレンズであるし、単焦点でもあり、 開放F値も暗いものが多い(注:描写力向上の 為であろう)ので、マニア層の範疇を超えて、 一般層にまで普及したレンズ(群)では無い。 2010年代後半、コシナ社は「APO-LANTHAR」銘 のレンズを「高描写力の証」のように、高性能 レンズの称号として使い始めた。その系列には (SONY Eマウント版においては) MACRO APO-LANTHAR 65mm/F2 (2017年) MACRO APO-LANTHAR 110mm/F2.5 (2018年) APO-LANTHAR 50mm/F2 (2019年) APO-LANTHAR 35mm/F2 (2021年) が現状ある。(以降、順次発売されるであろう。 又、異マウント版への展開も進んでいる) これら4本中、3本を所有しているが、いずれも コンピューター光学設計で、異常部分分散ガラス や非球面レンズをふんだんに用い、極めて高い 描写力を持つ事が特徴だ。 (ただし、いずれも価格が高価な為に、コスパ 評価が減点され、本記事「高評価レンズ編」には 残念ながらノミネートされていないものが多い) それと、コシナが「APO-LANTHAR」銘を付加価値 (=ブランド化、高描写力の証としての名前)と してしまった為、2000年代の同名シリーズの レンズ3本は、希少な上に、2010年代後半より 「アポランターと言うならば高描写力に違いない」 という、市場での「思い込み評価」により、極めて 残念ながら、「投機対象」となってしまっている。 (=希少なものを転売し、利益を稼ぐ措置等) しかし、ぶっちゃけ言えば、本レンズを含む 2000年代APO-LANTHARは、一応3本とも所有して はいるが、どれも「当時であれば性能優位性が あったと思うが、2010年代APO-LANTHARとは 全くの別物」(→2010年代の方が、遥かに 優れた描写力を持つ)という状態であろう。 古い機種に、新型APO-LANTHARの定価を上回る プレミアム(=不条理なまでに高額な)相場 が付く事は、どうにも不自然で納得が行かない。 で、本APO90/3.5の高評価得点も、もともと 個人評価データベースへの採点は2000年代 から始めたものであったので、当時としては 高い評価点となったに過ぎない。 本来ならば、評価点は、時代に応じて見直す べきなのかも知れないが、オールドレンズ等も 含めると、その措置(例:発売当時での他社 レンズと常に比較する)は極めて困難な状況だ。 本APO90/3.5の総括だが、特殊低分散ガラス の採用と、口径比を欲張らない事で、諸収差を 良く低減した、高画質を目標とした設計思想 であり、高画質の副産物として高い近接性能を 得る事ができた(注:通常の設計のレンズでは、 近接撮影になると画質が低下していく為) で、近接撮影を可能とした事で、開放F3.5では 物足りないと思われる被写界深度の浅い撮影にも 対応可能である。 全体的に、設計思想が練れていて、無理や矛盾が 無く、結果も高描写力であり、好ましいレンズだ。 2000年代当時での、トップクラスの名玉と言って 過言では無いであろう。 なお、「高評価レンズ編」と称しながらも、今回 の前後編では、各レンズの個人評価点を記載 していない。理由は、近年の「2016年断層」以降の レンズ群が、超高描写力化した事により、従前の 時代のレンズの描写表現力評価点の見直しを進めて いるからだ。まあ、いくつかを修正したとしても 各レンズの総合評価点への影響は、コンマ数点 程度であるので、総合的に名玉レベルにある、 今回紹介レンズ群への評価の差異には繋がらない。 ---- さて、次の名玉。 レンズは、NIKON AiAF DC-NIKKOR 105mm/F2D (中古購入価格 70,000円)(以下、DC105/2) カメラは、NIKON D500(APS-C機) 1993年発売のDC機構搭載型AF大口径中望遠レンズ。 DC機構(De-Focus Control)という特異な構造 により、前ボケまたは後ろボケの、いずれかの ボケ質を良好にするという、他に無い唯一無二 のコンセプトのレンズだった(注:姉妹レンズ としてDC135/2、未所有、は存在している) ただ、DC機構は原理がわかりにくく、効能も わかりにくい(注:少なくとも光学ファインダー で見ている状態では、ボケ質の改善はわからない) 加えて、操作性が悪い(→絞り値を設定した後、 前(F)か、後ろ(R)のいずれかへ、DC環を絞り値 と同じ値まで手動設定する必要がある)なので 人気があった(売れた)レンズではなかった。 非常に長期(約27年間)の超ロングセラーの レンズでもあったが、近年に生産完了となった。 現在、中古は殆ど見ず、入手性が悪いと同時に 投機対象(=希少なレンズを高価に転売する) になってしまっているかも知れない。 何故、欲しいならば、長期に渡って販売している 間に買わないのか? そこが大きな疑問ではあるが まあ、希少なレンズは、それが手に入らなくなった 頃に「これは名玉だ」とかいう評価(流言)が流れる 事が常なので、要は、消費者は、必ず自身の価値観 で、モノ(レンズ)を買うか否かを判断する必要が あると思う。 「商売の為の情報」に惑わされる必要性は無い。 私も、”中古相場吊り上げの片棒を担いでいる” とは思われたく無いので、本レンズの詳細評価は ばっさりと割愛する。 旧ブログでは10数年も前の開設時から「DC105/2 は優れたレンズだ」という評価を繰り返して来た 次第なので、欲しいならば、その段階でアクション を起こさなけば、もはや手遅れであろう。 なお、近年2021年に、CANON RF 100mm/F2.8 L MACROというレンズが発売されている(未所有) そのレンズには「SA環(SAコントロールリング)」 という機構が搭載されていて、これはNIKONのDC環 と全く同じ効能と操作性だ。 (まさか、2020年にDC-NIKKORが生産終了と なるまで、CANONではこの機構の搭載を遠慮して いたとか、逆にDC-NIKKORが無くなったから、SA環 を搭載したとか、そんな事情では無いと思うが・・) そして、やはりこのSA環も、効能が良く伝わらない 機構と思われ、流通レビューやユーザーレビューが 難儀している様相が見受けられる。(→つまり、 ちゃんと使いこなせていない。DC環の時と全く同じだ) --- では、次の名玉。 レンズは、TAMRON SP AF 180mm/F3.5 Di LD [IF] MACRO 1:1 (Model B01) (中古購入価格 30,000円)(以下、SP180/3.5) カメラは、SONY α99(フルサイズ機) 2003年に発売された単焦点AF望遠等倍マクロレンズ。 超音波モーター(USD等)や、手ブレ補正(VC)も 持たない、準オールドレンズであり、しかも、 あまりユーザーが多く無い「望遠マクロ」なので、 仮に本レンズの中古を見かけていたとしても、まあ 欲しがる人は多く無い類のレンズかも知れない。 しかし描写表現力は大変高く、中古相場も、そう 高価では無いため、個人評価点は高く、加えて 過去の「最強レンズ」のランキングシリーズ記事、 「最強マクロレンズ選手権」および「最強200mm 級レンズ選手権」の両者で優勝、2冠となっている 名玉である。 ただし、課題もある。 それは、「恐ろしく使いこなしが困難なレンズ」 である事だ。 以前の記事でも記載したが、ここで再掲しておく。 1)近接撮影時に被写界深度が極めて浅く、ピント 合焦前の時点では、被写体を全く視認できない。 2)上記に関連し、望遠画角およびAPS-C機等で画角が さらに狭くなると、近接撮影では被写体の位置に 正確にレンズを向けることが大変困難となる。 3)本レンズのAFは、超音波モーター等を搭載して おらず、AFの駆動距離(最短から無限まで)も 極めて長い為、AF動作が待っていられない程に遅い。 4)MFに切り替えて使おうにも、上記1)2)の原因で 被写体が視認できず、見えない被写体を、どちらの 方向にピントを合わせて撮るか?が、わからない。 ・・これらの問題点から、使いこなし(撮影技能)的 には、(超)高難易度のレンズとなり、上級層以上の 撮影スキルが要求されてしまうであろう。 まあでも、複数のランキング記事で優勝しているだけ あり、高難易度の他は何も問題が無いレンズである。 そして、難易度というものは、ユーザーのスキルに 応じて解決または改善できる課題であるから、要は このレンズを使いたければ、精進してスキルアップ すれば良い、という事にもなる。 本レンズは長期間(13年間位)販売されていたが、 あまり売れていなかったと思われ、これの生産終了 時点(2016年頃)では、新品・新古在庫品が、多数 中古市場に流通したのだが、それも特定の数量のみで 終わってしまった模様で、以降の時代では、めっきり 中古品も見なくなってしまった。 だが、幸いにして投機対象にはなっていない模様で 中古相場は、あまり高額では無いとも思われる。 なので、欲しければ、気長に中古の出物を待つしか 無い状態であろう。 ---- では、次は「名玉」の評価点には達していないが、 ここで紹介しておきたい補足レンズである。 レンズは、日本光学 NIKKOR-P 10.5cm/F2.5 (中古購入価格 15,000円)(以下、S105/2.5) カメラは、SONY α7S(フルサイズ機) 1953年発売と、70年も前の古いレンズだ。 ニコンSシリーズ(レンジファインダー機)用の MF単焦点中望遠レンズである。 これは、第二次世界大戦前の、独CONTAXの Sonnar 85mm/F2、あるいは、それと同等の 日本光学製NIKKOR-P 8.5cm/F2の光学系を、 25%程度スケールアップ(拡大)して設計された レンズである。 すなわち、基本的には、戦前の名玉「Sonnar」 (ゾナー)の描写力を正統に引き継ぐ形となって いる3群5枚構成レンズである。 ただし、「(有名な)Sonnarだから写りが良い」 といった、単純すぎる思い込み評価は成り立たない。 戦前(1929年頃)、ツァイス(イコン)社により Sonnarが発明(開発)された背景には、当時では コーティング技術が未発達(登場前)であったので 「レンズの貼り合せ面を増やして、総合光線透過率 を向上させる」という大きな目的があった次第だ。 (参考:未コーティングのレンズでは、表面反射で 数%の光が失われる。レンズは何群何枚という構成 なので、その反射損失は”レンズ空気面数の累乗” の計算となり、無視できない光線損失率となる) 戦後、ツァイスでは、T*(スター)コーティング や、他社でも同様の多層コーティング技術が発達 した為、Sonnar型の利点は失われてしまった。 また、Sonnar構成は、バックフォーカスの制限から 一眼レフ用に転用する事が難しく、私が知る限り 一眼レフ用レンズで、純粋なオリジナルのゾナー 構成(3群5枚)を採用しているレンズは、極めて 少ない(3機種程度。他はSonnar改(変形)である) そういう状況だからこそ、「オリジナルの、昔の ゾナーの写りを知りたい」と思うのは、まあ マニア層であれば当然の知的好奇心であろう。 本S105/2.5は、現代において比較的容易に、又は 安価に入手する事ができる、純粋なゾナー構成の レンズの1つとして存在している。 なお、描写力だが、70年も前のオールドレンズ として考えれば、驚く程優秀である。 オールドレンズと言うと、ボケボケの写りや フレアやゴーストのオンパレードを想像するかとは 思うが、本S105/2.5は、極めて正統派の写りであり 近代レンズと比べても大きな遜色は無い。 ただまあ、Sonnarと名前がつけば全てが良いもの でも無い事は、繰り返し述べておく。あくまで 個々のレンズ設計や、その使い方次第であろう。 他のSonnar型(銘)レンズにも興味があるならば、 以下を参照されたし。 関連記事:(旧ブログ) *レンズ・マニアックス第89回「Sonnar編」 ---- さて、次は今回5本目の(超)名玉。 レンズは、smc PENTAX-FA 77mm/F1.8 Limited (新品購入価格 74,000円)(以下、FA77/1.8) カメラは、PENTAX KP (APS-C機) 2000年発売の、変則焦点距離AF中望遠レンズ。 本/旧ブログでの通称は「ナナナナ」である。 これぞ「名玉」と呼べるレンズであろう。 旧ブログのランキング系記事でも、ミラーレス・ マニアックス名玉編での優勝を始め、他の各種 ランキング系記事においても高順位を獲得、 もう近年のランキング系記事では、本FA77/1.8 は「殿堂入り」として、参戦させないようにも している位だ。 長年(約20年)に渡り販売が継続された ロングセラーレンズであるが、近年、やっと 後継機種のHD PENTAX-FA 77/1.8 Limitedが 新発売されている。ただ、コーティングや 絞り形状が改善されてはいるが、光学系に変更 は無い模様だし、価格も相応に値上げされている ので、現状、2021年の後継型は未購入だ。 が、後継型が出る直前においては、個人的にも 「ナナナナは、発売当時であれば超名玉だが、 2016年断層(→これ以降の時代でのレンズの 設計技術の進歩で、描写力が大きく改善した) 以降の各社レンズと比べると描写力が古臭い」 という不満を持つようにはなってきていて、 その為に「ナナナナ代替レンズ」を色々と探し、 TAMRON SP85mm/F1.8(次記事で紹介予定) を、その目的に購入した次第であった。 でも、SP85/1.8購入後も「だからと言って ナナナナは、使えない程に色褪せてはいない」 という感じで評価しなおし、引き続き併用して 使って行く事にした。 まあ、新旧型どちらでも良いが、PENTAX党、 あるいはレンズマニアであれば、ナナナナは 避けては通れない。というか、本シリーズの 前後編で紹介している「高評価レンズ」の 殆ど全ては、マニア層であれば避けては通れず、 必ず押さえておく(購入するか、または、どれ くらいの描写表現力があるか、は知っておく) 必要があるだろう。 ---- さて、次は6本目の名玉。 レンズは、SONY FE 100mm/F2.8 STF GM OSS (SEL100F28GM) (中古購入価格 129,000円)(以下、FE100/2.8STF) カメラは、SONY α6000(APS-C機) 2017年発売のAF搭載STF(アポダイゼーション 光学エレメント内蔵型)中望遠レンズ。 高描写表現力、良好なボケ質という長所に加え 近接撮影モードを備え、手動切り替えで1/4倍 までの撮影倍率を得られる。APS-C型機利用や デジタル拡大機能の併用で、準マクロレンズ としても使える汎用性の高さも特徴だ。 近年の、旧ブログのランキング系記事で、 *最強100mmレンズ選手権→優勝 *最強・最強レンズ選手権→優勝 の2冠に輝いた名玉である。 特に「最強・最強選手権」での優勝は、すなわち 本レンズが最も優れたレンズである、という話と なるが・・ 実は、その「最強・最強選手権」では 「レジェンド名玉」という、「殿堂入り」が確定 しているレンズ14本を除いた状態での選手権だ。 まあつまり、最強というより「新人王」のような 形での順位(優勝)であったので、その点は 注意である。本前後編では「レジェンド名玉」も 多数登場しているし、仮に、この中で最強を決める としても本FE100/2.8STFが優勝できる保証は無い。 (多分、無理だろう・・) さて、アポダイゼーション(光学エレメント)とは、 レンズの中央部が明るく、レンズ周囲に行くに従い グラデーション状に暗くなっていく特殊なレンズ である。これの効能を簡単に言えば、この機構を 組み込む事で、ボケ質を改善する事が出来る。 「アポダイゼーション」では言い難い為、これは STF(MINOLTA又はSONYのみ)、APD(FUJIFILM等) DS(CANON、注:これはアポダイゼーション類似 のコーティング技術である)と呼ばれている。 参考関連記事:(旧ブログ) *特殊レンズ第0回「アポダイゼーション編」 *特殊レンズ第82回「アポダイゼーション対決編」 MINOLTA/SONY系列では、この機構を持つレンズは 本FE100/2.8STFと、他には1998年に発売された 世界初のアポダイゼーションSTF135/2.8[T4.5] の2機種(2系統)が存在する(した)。 両者の得失については以下記事を参照の事。 参考関連記事:(旧ブログ) *レンズマニアックス第31回「新旧STF対決」編 非常に高い描写表現力を持つレンズではあるが、 初級中級層においては、STFの効能がわかり難く、 価格が高価であり、STF/APDの中にはMFレンズも 含まれている為、あまり販売数は多くは無い。 ただ、中古品は皆無という訳ではないし、現行 レンズでもあるから投機的相場にもなっていない。 「ボケ質の改善」に、少しでも興味があるならば、 現行商品として、様々な(全5機種)STF/APDが 全て入手可能な現代こそ、購入のチャンスだ。 入手不能になってから知って、慌てて探すようだと 「投機層」(近年では「転売ヤー」とも呼ばれる) の餌食となってしまう。 (注:(SONY)STF135/2.8は、Aマウント版につき、 近年、Aマウント製品は全て生産完了となって しまっている) ---- さて、次のレンズ。 レンズは、CONTAX N Planar T* 85mm/F1.4 (新品購入価格 115,000円)(以下、NP85/1.4) カメラは、PANASONIC DMC-G6(μ4/3機) 2002年発売の、CONTAX Nシステム専用大口径 AF中望遠レンズ。 本レンズはレア品(レア物、希少品)である。 何故ならば、この時代(2000年代初頭)に 京セラCONTAXが社運を賭けて挑んだ「Nシステム」 が商業的に不振に終わり、そうこうしている うちに、京セラは2005年にカメラ事業から撤退 してしまったので、販売数がとても少ないからだ。 何故、京セラが「社運を賭けた」のかは、それ 以前、1980年代~1990年代において、CONTAX のシステム(RTS系)は、AF化に出遅れていた からである。 AF化が出来なかったのは、京セラの技術力が 不足していたからではなく、例えば京セラでは、 1996年、AFよりも、もっと複雑な擬似AF機構 「ABF」を搭載したCONTAX AXを発売している 事でも、高い技術力を持っていた事がわかる。 参考関連記事:(旧ブログ) *銀塩一眼レフ第20回「CONTAX AX」編 RTS系システムでAF化が出来なかったのは 京セラ側の技術的な問題ではなく、多分に 市場的・政治的な要素もあった事だろう。 つまり、売る側のみならず買う側(消費者)の 「CONTAX党」もAF化を望まなかった節がある。 ただ、いつまでもMFのままのシステムを継続する 訳にも行かない。古いし、値上げは出来ないし、 近い将来のデジタル化にも対応できない。 擬似AF機のCONTAX AXの販売不振(話題になった 程には売れていない)を見た京セラは、ここで 大英断を行い、「35mm判のAF機」「中判AF機」 「デジタルのフルサイズ機」を同時に見据えた 「Nシステム」の開発をスタート。 数年後に、それは実現し、まず2000年に発売 されたのが、35mm判AF機「CONTAX N1」である。 (注:中判機「CONTAX 645」(未所有)が 1999年に発売されているが、これを「Nシステム」 に含めるか否か?は、極めて微妙な判断だ) 参考関連記事:(旧ブログ) *銀塩一眼レフ第24回「CONTAX N1」編 ただ、35mm判AF機、35mm判交換レンズ、 中判AF機、中判交換レンズ、デジタル一眼レフ、 と、この時期に非常に多数の開発要素が、 京セラ内に集中してしまった。恐らくは技術者 達は、寝る間もないほどに働いたに違いない。 そして「突貫工事」の結果として発売された Nシステム商品群は、以下の市場からの悪評判 を持たれてしまった。 1)交換レンズがとても少なく、実用的でない。 2)カメラもレンズも、大きく重く高価だ。 3)デジタル一眼(N DIGITAL)は、非常に 高価(約80万円)な上、発色が悪い。 もう少し研究開発に時間を掛けれれば、これらの 課題は容易に解決できただろうが、残念ながら 市場は待ってくれない、もう一眼レフのデジタル 化が、各社では既に始まっている時期だ。 「Nシステム」は、悪評価と、その口コミ拡散で マニア層や旧来のCONTAX党の富裕層でも敬遠する 状態となってしまい、販売は完全に停滞した。 1975年に、西独ツァイスの「CONTAX」が国産化 (注:ツァイスはこの時点でカメラ事業から撤退) された時には、鳴り物入りで、全世界が注目した のだが、良くも悪くもビッグブランドの「CONTAX」 のネームバリューに、メーカーも市場も消費者も 翻弄されてしまった様相があった。 30年間続いた「国産CONTAX」の歴史は2005年に 幕を閉じ、以降「CONTAX」の名前は、どこにも 使われていない。 近年では、この重要なCONTAXの歴史を知らない 初級マニア層が増えており、その名前を聞いて 「CONTAXって、凄いのだろう?」と、十把一絡げ 的に思い込み、それらの新規層に、高価に売れる 為、流通においては「CONTAX」というブランド銘 が付いたカメラやレンズは、非常に高額な 「投機的相場」となってしまって販売されている。 個人的には、実用品であるカメラやレンズの世界 で投機措置が起こる事には全く賛同しておらず、 むしろ、CONTAX製品を研究目的や故障代替により 買いたい際に、高額になりすぎていて困っている。 さて、本レンズは1975年に、国産CONTAXが ”新規の市場参入を磐石にする為”に投入された 最強兵器である「CONTAX Planar T* 85mm/F1.4」 の「27年ぶりの後継型レンズ」である。 初代(RTS)Planar 85/1.4は、高い描写力で 「さすがCONTAX、さすがにカールツァイス」と 絶賛され「神格化」される程になったのだが・・ 実は、その高描写力は、各種の撮影条件が整った 時でないと発揮できず、個人的な経験値では、 36枚撮りフィルム1本中、1枚程度(つまり、 3%以下程度)しか、気にいった写真を撮る事が 出来ないという歩留まりの悪さ(成功率の低さ) が大きな課題であった。(注:原因は、様々な 過去記事で何度も説明しているので割愛する) 27年ぶりの本NP85/1.4では、成功率の低さを 良く改善している。 ただし、大きな課題が2つある。 1)非常にレアであり、入手不能、もしくは あったとしても非常に高額な投機的相場だ。 2)現代のデジタルカメラには装着困難。 比較的入手がしやすい「機械式絞り内蔵 マウントアダプター」を用いたとしても、 その機構では、絞りの効能が本来のものとは 異なるので、露出調整以外(例:被写界深度の 調整や、ボケ質破綻の回避、収差特性の改善等) の絞りの効能は、殆ど得られない。 (注:銀塩機、CONTAX N1/NXでの使用は可能だが これらも、もう入手困難なほどに希少だ) つまり、実用的には使えない、という事と等価 であり、せっかくの高描写力も活かせない。 なお、描写力だけをニーズとするならば、近年、 (2010年代後半以降)に各社から発売されて いるコンピューター光学設計の超高描写力の 85mm/F1.4級(又は85mm/F1.8級)レンズの 方が、本NP85/1.4の描写力を上回るので、 わざわざ古い時代の希少なレンズを、近代高性能 レンズよりも高価に入手するという選択肢はない。 本NP85/1.4を私が所有しつづけている理由は、 「国産CONTAXの歴史の証人」である次第であり これはCONTAXにささげるレイクエム(鎮魂歌) であるからだ、これの歴史的な意味合いが理解 できない場合には本レンズを入手する必要は無い。 (注:近年、本レンズで銀塩撮影を行っている。 いずれ他記事で紹介予定だ) ---- さて、今回ラストの名玉。 レンズは、Voigtlander APO-LANTHAR 50mm/F2 Aspherical (注:変母音省略) (新古品購入価格 104,000円)(以下、APO50/2) カメラは、SONY α7 (フルサイズ機) 2019年発売のフルサイズ対応MF小口径標準レンズ。 現状、SONY Eマウント版と、ライカMマウント対応 (VM)版が存在する。又、NIKON Z版も新たに 発売予定(追記:発売済み)であり、COSINAを 代表する高性能レンズとして、市場に知らしめる 戦略であろう。なお、本レンズはEマウント版だ。 特徴は、極めて高い描写力を持つ現代的設計で ある事だ。勿論、その背景には、コンピューター 光学設計、および、新硝材としての、異常低分散 ガラスレンズと非球面レンズの多用(全構成の 7割が特殊レンズ)がある。 ただし、非常に地味なスペック(仕様)である。 一般的な50mm標準レンズで、小口径の開放F2、 最短撮影距離45cmと普通、しかもMFレンズ。 これで定価が12万円(+税)と高価であるので、 いくらマニア層であっても、そう簡単に食指が 動くレンズでは無い。 そう、このレンズを所有する意義としては 「現代で、最も良く写るレンズとは、いったい どの程度の実力値があるのか?」それを理解し、 自身の価値感覚の目盛り(物差し、スケール)に おいて、最上級の5点(または、10点、Aランク等 なんでも良い)の場所に、本APO50/2を記して、 他のレンズの評価点の為の参考にする事が1つある。 評価のリファレンス(参照)とする事のみならず 「一番写りが良いレンズとは、どんなものか?」 という知的好奇心から、あるいは実用的価値から、 (超)高描写力レンズを入手しても悪くはない。 そういう目的に対して、この高額投資(とは言え、 2020年代からは、若干、中古相場も下がっている) を容認できるか否か?という判断となるだろう。 ただし、いつまでも本レンズが「最高の描写力」 という訳でもないだろう。レンズ設計・製造技術は 日進月歩であるし、そもそも本レンズの設計でも、 2年前の2017年に発売された、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm/F2の光学系での 前群5枚を、そっくり縮小コピーして本レンズに移植 した経緯がある。これは「優秀な設計を引き継いだ」 とも言えるし、「コピーしただけなので、実際には 改善の余地が残っているだろう?」とも考えられる。 まあ、そういう位置づけのレンズだ。 本レンズにも微細な弱点が数点あるが、もうクドく なるので割愛する。いずれも重欠点とは呼べない 程度である。 基本的には(超)高描写力というものを体感して みたいマニア層に対しては、かなり推奨できる レンズである。 なお、コスパ点の大きな減点により、本レンズは 実は、名玉の条件としての「平均評価4点以上」 には、ギリギリで到達しているに過ぎない。 コスパという点を重視するユーザー層に対しては、 「いくら、写りが良いからと言っても、平凡な スペックのレンズに、ここまでの値段は出せない」 という価値観となってしまう可能性がある事は、 注意点として述べておく。 --- では、今回の記事はこのあたりまでで、 次回記事は「高評価レンズ」(後編)を予定して いるが、基本的に、このシリーズについては不定期 掲載(連載)としておく。
by pchansblog2
| 2023-03-21 20:29
| 完了:続・特殊レンズマニアックス
|
ファン申請 |
||