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旧ブログの「特殊レンズ・スーパーマニアックス」 シリーズの続編の記事群である。 今回の記事は「超マクロレンズ」編とする。 本ブログにおける「超マクロ」レンズの定義とは 「フルサイズ換算時の最大撮影倍率が1倍(等倍) を超えるマクロレンズの事」としているが、 今回の記事では、それに当てはまるレンズを4本と、 および、別の条件として、 「最大撮影倍率の条件は満たさない、非マクロレンズ ながら、焦点距離等のスペックにおいて、他の同等 仕様のレンズを圧倒する近接性能を備えたレンズ」 を6本、計10本を紹介する。 なお、撮影倍率を高める措置を行う為、本記事では フルサイズ機を母艦とはせず、必ずAPS-C機または μ4/3機に、これらのレンズを装着して用いる。 では始めよう、最初の「超マクロ」レンズ。 レンズは、LAOWA 100mm/F2.8 CA-Dreamer (Ultra) Macro 2X (APO) (LAO0042) (新品購入価格 58,000円) カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機) 2019年に発売されたMF中望遠2倍マクロレンズ。 同社の、いわゆる「ウルトラマクロ」シリーズ であり、LAOWA社では本レンズの他にも・・ 24mm/F14 2倍(プローブ型特殊マクロ) 25mm/F2.8 2.5~5倍 50mm/F2.8 2倍 65mm/F2.8 2倍 ・・等の、「超マクロ」レンズ群を発売している。 なお、このデータは本記事執筆時点であるので 今後、ますますこの「Ultra Macro」シリーズは 増えて行くであろう。 本レンズにおいては、近接撮影時は、さておき、 中遠距離撮影時の描写力は、可も無く不可も無し、 という感じだ。 一応「APO」銘が入っていて、異常低分散ガラス等を 使用した色収差補正に配慮した設計だとは思われるが、 生憎、この100mm(前後)という焦点距離には、 近代(1980年代頃)から、現代に至るまで、非常に 高い描写力を持つレンズが、他にも、いくらでも存在 するので、それらに比べてしまうと、本レンズだけに 特別な描写性能上での優位点は感じられない。 この点の何が問題なのか?と言えば、本レンズの 2倍マクロの性能は、趣味的分野において実用的に 用いるのは、やや性能過剰であり、高い撮影倍率 での撮影は、その高い難易度と、成功率の低さから ストレスになりやすい。 その際、「もうマクロ撮影はいいよ」となって、 一般的な中望遠レンズとして、中遠距離撮影の比率 を高めようとすると、ちょっとその際の描写力は、 「普通」であるから、「これだったら高描写力の 非マクロタイプの100mmレンズを持ってくるべきで あったか?」と、少々後悔してしまう訳だ。 まあでも、撮影倍率をあまり欲張らずに、近接撮影を 主体として使うならば、なかなか良いレンズであろう。 基本的に「2倍」マクロを付加価値として、高価格化 しているレンズなので、コスパが悪く感じる為に、 買うのであれば、中古品を気長に待つのが賢明だ。 参考関連記事:(旧ブログ) ・海外レンズマニアックス第10回「LAOWA」編 --- では、2本目の「超マクロ」レンズ。 レンズは、中一光学 FREEWALKER 20mm/F2 SUPER MACRO (新品購入価格 23,000円)(以下、FW20/2) カメラは、SONY NEX-7(APS-C機) 2017年に発売されたMF超マクロレンズ。 元となったレンズは、1970年代頃のOLYMPUS製 医療用特殊マクロ「OM-SYSTEM ZUIKO 20mm/F2」 であり、本レンズは、その設計を踏襲(コピー)し、 現代での各種マウント版で販売されている。 中一光学は、中国の老舗光学機器メーカーであり 「独自性の高い製品企画や光学設計を行う」事が 常であるが、本レンズのみ、なぜか日本製の オールドレンズのコピー設計である。 銀塩時代の設計のレンズである。スペックは 撮影倍率4~4.5倍、ヘリコイドを搭載しているが 撮影倍率・撮影距離の微調整の目的であり、 近接撮影専用で、無限遠撮影は出来ない。 オリンパス時代には、専用のベローズ(延長鏡筒) が存在してた模様で、それを使うと、約13倍の 撮影倍率となり、医療用途における顕微鏡的な 写真撮影を可能としたのであろう。 ただ、その付属部品(ベローズ)は、現代では入手 困難であり、仮に入手できたとしても、中一光学の FW20/2は、マウントが異なり、OMマウント版は 存在していないので使用不能だ。 例えば(NIKON)Fマウント版で、本FW20/2を購入し、 Fマウント用の各種接写アクセサリーを用いれば 本レンズの撮影倍率は、さらに高める事が出来る。 しかしながら、本レンズの素のまま、あるいは さらに撮影倍率を高めた状態においては、これの 本来の用途は、室内で台座あるいは三脚にレンズを 固定し、近接(平面的)被写体(資料等)を撮る、 という学術的又は実務的な用途に限定される。 本ブログでは三脚非推奨の方針だし、学術的用途で 本レンズを購入している訳でも無いので、本レンズ を使う際でも、屋外での趣味的な手持ち撮影になる のだが、その際、撮影を極めて困難とする、多くの 要素が存在する。 1)被写界深度が極めて浅く、ピントが合い難い事 のみならず、そもそも被写体のごく一部の距離に しかピントが合わないので作画が困難である。 2)紙のように薄い被写界深度において、撮影者又は 被写体のいずれも完全に静止している事は無く、 ピントが合うとしたら偶然、または奇跡的だ。 3)「露光倍数」(≒近接撮影において、見かけ上の F値が暗くなる)が数十倍という値で発生し、 日中屋外撮影でもISO感度を数千~1万数千に 設定しないと、ブレブレとなって撮影できない。 [公式:露光倍数=(1+撮影倍率)x(1+撮影倍率)] これらの複合要素から、本レンズを用いたシステム での、屋外趣味撮影での成功確率(歩留まり)は、 私の経験上においては、およそ0.数%程度である。 つまり、千枚撮って数枚、1万枚撮って(実際にも 1日で、そこまで撮った事がある)数十枚程度しか、 意図通りの写真は撮れない。 なお、上記はμ4/3機で最大撮影倍率9倍時の結果 である。→APS-C機→フルサイズ機と倍率を下げると 歩留まりは向上するが、とは言え、1ケタも成功率が 上がる訳ではなく、依然、最難関のレンズである。 まあ、屋外一般撮影では、偶然でしか撮れない訳だ。 あくまで特殊な用途における「実務用」「研究用」の レンズであり、趣味撮影に応用できるレンズでは無い。 参考関連記事:(旧ブログ) *海外レンズマニアックス第7回「中一光学」編 --- さて、3本目は、史上初(?)の近接広角レンズだ。 レンズは、SIGMA 24mm/F1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO (新品購入価格 38,000円)(以下、EX24/1.8) カメラは、CANON EOS 7D MarkⅡ (APS-C機) 2001年に発売された、銀塩フルサイズ&デジタル兼用 のAF大口径広角単焦点、準マクロレンズ。 MACROと名がつくが、最短18cmで最大撮影倍率は 1/2.7倍に留まる。 銀塩時代では、MACROの定義は曖昧で、専門のマクロ レンズでも1/2倍程度のものも多く、その為か、 1/3倍~1/4倍程度の最大撮影倍率でも、MACROと 称するレンズも多々あった。 しかし、デジタル時代に入ろうとする頃からは、 業界内での暗黙の取り決めがあったのか?だいたい 1/2倍以上のもので無いと、MACROとは言わない ケースも一般的になり、本レンズはMACROの定義が 曖昧だった時代の、ほぼ最終の製品であろう。 MACROの定義や実際のスペックはさておき、本レンズ の最大の歴史的価値については・・ 「実焦点距離が24mm以下の、いわゆる”超広角”に おいて、焦点距離の10倍則を下回る最短撮影距離と 大口径化(開放F1.8)を、初めて実現し、これまで 見た事も無かった”背景をボカす超広角マクロ” 技法が可能となった事」である。 ここで「焦点距離10倍則」とは、写真界の一般用語 であり、「レンズの焦点距離のmmをcmに替えた値 よりも寄れるレンズは、実用上で使い易い」という 法則、あるいは概念である。 本レンズは、24mmで最短18cmであるから、この 「焦点距離10倍則」を軽く満たしている訳だ。 ちなみに、銀塩時代の24mmレンズにおいては、 まず、ズームは最短撮影距離が長くて論外であり、 単焦点MF/AFの24mmレンズは、通常は最短撮影距離が 30cmであり、稀に最短25cmのレンズがあった程度だ。 ただし、1990年代製品での、SIGMA AF24mm/F2.8 Super Wide(Ⅱ)(ミラーレス・マニアックス第26回) や、超マイナーなSICOR 24mm/F3.5(特殊レンズ 第71回)については、最短18~16cmと、本レンズ と同等か、もう少しだけ寄れる。 しかし、いずれも大口径の要件を満たしていないし かなりのマイナーな製品でもある(→現在入手困難) 超広角レンズは被写界深度が深く、銀塩時代に おいては、やや絞って風景等をパンフォーカスで 撮影するケース(用法)が、ほぼ全てであった。 しかし、本レンズEX24/1.8は、非常に寄れて、 かつ大口径F1.8であるから、「背景をボカす広角 マクロ技法」が、(ほぼ初めて)使えた訳だ。 本レンズの企画コンセプトは、2000年代初頭において 銀塩(35mm判フルサイズ)から、デジタル(APS-C 型機が、当初大半であった)への転換機であるから 「銀塩機では超広角、デジタル(APS-C)機では 準広角として兼用できる」という目的であった。 そして、デジタル時代に入ると、センサーサイズが まちまちとなる。後年にはミラーレス機も加わった。 画角の件はさておき、撮影倍率については、APS-C機 や4/3(μ4/3)機等で本レンズを使い、加えて デジタル拡大機能等を併用すれば、等倍以上の最大 撮影倍率を得る事は可能だ。 しかし、(超)広角マクロ撮影においての、 「被写体に近接して大きく写しながら、周囲の背景を 広く取り込む事が可能となる」という用法については センサーサイズを小さくしたり、デジタル拡大を行うと その特徴(表現)は、どんどんと薄れてしまう。 総括だが、本EX24/1.8は、やや古い(20年以上前に 発売)準オールドレンズながら、現役でも使用可能な 基本性能、および仕様的な特徴を持つ。 ちなみに、本レンズ以降でも、「超広角+近接+ 大口径」という特徴を持つレンズは、ほぼ存在しない。 また、本レンズには姉妹(兄弟)レンズとして、 EX20mm/F1.8と、EX28mm/F1.8が存在する。 いずれも似たようなスペックだが、個々に使いこなし のクセがあるので、購入時は機種選択に注意されたし。 参考関連記事:(旧ブログ) *特殊レンズ第52回「SIGMA広角3兄弟」編 --- さて、4本目の超マクロレンズ。 レンズは、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm/F3.5 Macro (中古購入価格 22,000円)(以下、MZ30/3.5) カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited(μ4/3機) 2016年発売のμ4/3機専用のAF1.25倍マクロ。 最短撮影距離9.5cmで、等倍を超える最大1.25倍の 撮影倍率が得られ、フルサイズ換算では最大2.5倍。 また、殆どのμ4/3機に備わるデジタル拡大機能を 併用すれば、換算5倍以上の超マクロ撮影も可能だ。 ただ、そういうのは単なる「数字の遊び」であり、 実用的には、超近接撮影では、AFのピント精度が 出ないし、MFに切り替えて使おうにも、例によって 無限回転式ピントリングでは、操作性は最悪である。 つまり、「極端な近接撮影は厳しい」という事だ。 しかしながら本MZ30/3.5は、M.ZUIKOレンズの 中では、さほど多くは無い「フォーカスブラケット」 および「(被写界)深度合成」に対応している レンズである。カメラ側での、その機能を用いれば、 AFでピント距離を連続的に変えての撮影は可能だ。 まあでも、連写機能が無効になるとか、設定が 面倒(操作系が悪い)とか、他のブラケット機能と 併用できないとか、細かい課題は色々とある。 まあ幸いにして、描写力には優れるレンズだ。 新鋭レンズだけあって、光学系の設計も先進的で 凝っている(両面非球面や低分散非球面を採用) 近接域で急激に悪化するピント歩留まりがストレス となるならば、μ4/3機で60mm換算の標準画角と なる事から、常用の中遠距離撮影用レンズとして 使い、「いざとなれば、いくらでも近接撮影を可能 とする」という程度の認識が無難であろう。 なお、価格もあまり高価では無い所も利点である。 参考関連記事:(旧ブログ) *特殊レンズ第2回「OLYMPUS新旧マクロ」編 --- では、5本目は超広角シフト・マクロだ。 レンズは、LAOWA 15mm/F4 (LAO006) (新品購入価格75,000円) カメラは、CANON EOS M5 (APS-C機) 2016年に発売されたフルサイズ対応特殊MFレンズ。 シフト機能に加え、超広角ながら、等倍マクロ仕様 となっている。 このような特徴を併せ持つレンズは唯一無二であり、 2021年発売の後継型(未所有)では、高描写力化 されているとは思われるが、近接性能が失われて しまっている。 ただし、15mmという超広角で、等倍マクロを 得る為には、WD(ワーキング・ディスタンス= レンズ前から被写体までの距離の事)が、僅か 数mmという「難しい撮影」を強いられる。 経験上では、WDが数cm以下の近接レンズにおいては、 1)被写体に対してレンズの影が掛かる。 2)昆虫や小動物等では、そこまで近づくと逃げる。 3)樹木等が密集した場所ではカメラを近づけれない。 等の課題がある。 本来、WDについては短い事が利点となるケースと、 そうで無い(弱点となる)ケースが両者存在する。 WDが短い事の利点としては、その筆頭は、 「撮影アングル(角度)が自由に選べる」があり、 つまり被写体に近づいて、3次元的に、どのような 角度からでも自由に撮影が出来るので背景(構図) の選択肢(自由度)が増える。 逆に「望遠マクロ」等の機材であれば、同じ等倍 撮影の場合でも、最短撮影距離(又はWD)が、 約40cm~約80cmとなり、小センサー機(APS-C機 やμ4/3機)を母艦とすれば、等倍撮影で1m以上 のWDを稼ぐ事も可能だ。(注:デジタル拡大 機能を併用すれば、さらに遠距離から等倍撮影が 可能である) こうした機材環境では、上記のWDが短い場合での 欠点が無くなり、離れた場所からでも被写体を 大きく写す事が出来る。これは近づけない被写体、 例えば、物理的に障害物があって近寄れない場合や 接近すると逃げてしまう(あるいは危険な)昆虫や 小動物等の撮影の際に有利であろう。 ただし、WDの長いレンズは、遠くから水平位置 (アイレベル、またはウエストレベル等)でしか 撮れないから、撮影アングル(=角度)やレベル (=高さ/水準)の自由度は大きく減少する。 (例:真上から、真下から等は撮れない) まあ、こういう状況であるから、「マクロは 1本持っておけば済む」という訳にも行かず、 超広角、広角、標準、中望遠、望遠、超望遠 の各焦点距離を持つマクロレンズが各々必要に なる訳である。皆、同じ撮影倍率(例:等倍) であっても、各々の焦点距離のマクロの使い方は 全くの別物である。 しかしながら、一般的に普及している中望遠マクロ や標準マクロと比較して、(超)広角マクロや (超)望遠マクロ等の、極端な焦点距離のマクロ レンズの使いこなしは、恐ろしく高難易度となる。 本レンズも、希少な超広角マクロではあるが、 その使いこなしは、とても難しいので、購入を 検討する際は、その点、要注意である。 参考関連記事:(旧ブログ) *特殊レンズ第26回「ティルト&シフトレンズ」編 --- さて、次は近接可能な超大口径レンズ。 レンズは、Voigtlander NOKTON 60mm/F0.95 (注:独語綴りの変母音表記は省略している) (新品購入価格 113,000円) カメラは、PANASONIC DC-G9 (μ4/3機) 2020年に発売されたμ4/3機専用の超大口径MF 中望遠(望遠画角)レンズである。 本レンズは、マクロレンズでは無いが、最短 撮影距離は34cmと「(実)焦点距離の10倍則」 を遥かに超えて寄れ、最大撮影倍率1/4倍、 (フルサイズ換算1/2倍。DC-G9に備わる最大 8倍のデジタル拡大機能を併用すると、最大4倍) となる高い近接性能を誇る。 ただ、コシナ・フォクトレンダーのμ4/3機用の NOKTON F0.95シリーズにおいては、 17.5mm/F0.95(未所有)、25mm/F0.95、 42.5mm/F0.95の姉妹レンズ3本も、同様に およそ1/4倍の最大撮影倍率を持つ、寄れるレンズ であり、いずれも超大口径F0.95とあいまって、 極めて多大な背景ボケ量(=浅い被写界深度)を 得られる。 しかし、私が他に所有している25mm/F0.95と 42.5mm/F0.95は、特殊ガラスや非球面レンズを 不採用の、コンベンショナル(≒古い)な設計で あり、絞り開放近くでは多大な諸収差が発生し、 かなり甘々な描写傾向となってしまう弱点がある。 (例:球面収差は口径比の3乗に比例して増大する) 本NOKTON 60mm/F0.95は、それらよりも10年近く も後に設計された最新光学設計であり、異常低分散 ガラスレンズを用いた為か、 F0.95の超大口径 レンズらしからぬ(?)高描写力を発揮する。 高い近接撮影能力に加え、長い焦点距離(市販F0.95 超大口径レンズ中では最長)とあいまって、極めて 浅い被写界深度の、特異な描写傾向が得られる。 また、DC-G9(や、他のPANASONIC μ4/3機)の 前述の最大8倍のデジタル拡大機能と組み合わせ、 フルサイズ換算の仮想的な焦点距離(画角)は、 何と120~960mm/F0.95というスペックとなる。 まあ、これも「数字の遊び」とは言えるのだが、 こちらはまだ実用的であり、すなわち目の前の 34cmに存在する近接被写体から、百mも先の 遠距離被写体まで、およそ、どんな距離範囲に ある物も、被写体として捉える事が可能となる。 個人的に思う「被写体(選び)の汎用性」という のは、例えば高倍率(高ズーム比)のレンズよりも、 望遠気味のマクロレンズの方が汎用的で使い易い。 つまり、被写体を画角(撮影範囲、焦点距離) で選ぶのではなく、「撮影距離」で選ぶ訳だ。 なので、本レンズ(換算120mm/F0.95)や、 望遠マクロ(例:180mm/F3.5)を、その1本 だけ持って行くとした場合、初級中級層では 「そんな望遠だけで、いったい何を撮るのだ?」 という先入観となると思うが、実際にはさにあらず 「目の前から遠距離の被写体まで、何でも撮れる」 という抜群の被写体汎用性が得られる訳だ。 まあ、一度、「望遠系マクロ」を試してみる事は 悪く無いと思う。 参考関連記事: *特殊レンズ第80回「望遠系マクロ」編(旧ブログ) *レンズマニアックス・プラス第34回(予定) 「NOKTON 60mm/F0.95」編 --- では、7本目は近接可能なアポダイゼーションレンズ。 レンズは、MINOLTA STF 135mm/F2.8[T4.5] (新品購入価格 118,000円) カメラは、SONY α77Ⅱ(APS-C機) 1998年発売の、史上初のアポダイゼーション光学 エレメント内蔵レンズである。 本記事執筆時点では、アポダイゼーション搭載 レンズは計4本(機種)発売されていて、それらは 全て所有している。又、他にCANONのDSレンズが1本、 アポダイゼーションと同等の原理(ただし別製法) で存在している。(→非常に高価な為、未所有) アポダイゼーション光学エレメントについての 詳しい説明は省略する。簡単に言えば、ボケ質が 大変綺麗になる光学的構造だ。 具体的な光学原理は難解であり、世の中にも、これを 簡単に説明した資料は皆無(全く存在しない)である。 なので「アポダイゼーション」と言っても、昔も今も 消費者層では「チンプンカンプン」だろうから、 MINOLTAでは、本レンズの発売時点で、これに 「Smooth Trans Focus」(STF:「なだらかなピント のボケ遷移」のような意味)と独自の命名を行った。 以降、この手のレンズの俗称は、「STF」または 「APD」(Apodizationの略)と呼ばれる事となる。 又、ボケ質とは何か?というのは難しい質問であり、 ちゃんと説明しようとすれば、記事が10本程度、 恐らくは10万文字以上を必要とするであろう。 これについては、世間一般では「ボケ味」という 曖昧な用語を用いている場合が多い。その「味」で あれば、食品と同様、それは利用者各人の好みにも 依存するから、良し悪しを曖昧にする表現となりえる。 ただ、アポダイゼーションの「ボケ質」は、「好み」 という範疇ではなく、明らかに「良好」である。 STF/APDレンズの所有者が少なく、その事を体感 出来ない事も課題だが、一度所有して撮影してみれば 一瞬で、ボケ質の良否に対する理解は進むであろう。 さて、そうした高描写表現力レンズがSTFなのだが 本レンズに関しては、近接撮影性能にも配慮している。 最短撮影距離は87cm、最大撮影倍率は1/4倍である。 古今東西、135mmという実焦点距離(35mm判)を 持つマクロレンズは、恐らくだが存在していない。 近い焦点距離では、105mm、110mm、125mm、 150mmならば、マクロレンズが存在している。 で、通常レンズしか無い135mm単焦点レンズでは その最も短い最短撮影距離のものは72cmであり、 本STF135/2.8の87cmは、歴代BEST5に入るのだが 最大撮影倍率に関しては、最も高い135mmレンズ でも、1/4倍(本レンズを含む)である。 すなわち、本STF135/2.8は、135mmレンズ中では 最も被写体を大きく写せるレンズである。 なお、本STF135/2.8の19年ぶりの後継レンズ である、SONY FE 100mm/F2.8 STF GM OSS (SEL100F28GM) も、同様に1/4倍の最大撮影倍率 であるが、そちらはAFレンズで、近接撮影時では、 マクロリングを手動で近接域に切り替える必要がある。 (注:その状態では遠距離撮影は出来ない) また、近接域ではAF精度も大幅に減退してしまうので 旧型の本レンズの方が、MFではあるが、最短撮影距離 から無限遠距離まで連続してMFで合焦が可能なので、 近接撮影時等の操作性・汎用性・速写性といった面で AF後継版FE100/2.8STFよりも優れている。 近接撮影時でのアポダイゼーション光学エレメント による、史上最強のボケ質については、マクロレンズ には無い高い描写表現力を持つ為に、(中)望遠マクロ を使わず、あえて本STF135/2.8を、デジタル拡大機能 を併用する前提において、(中)望遠マクロの代用と して使う事も良くある。 (中)望遠マクロに対しての、STF135/2.8による 同等撮影倍率(デジタル拡大による仮想の倍率)を 得る事のメリットとしては、撮影距離(又はWD)を 長く取る事が出来ること、そして「露光倍数」の 掛かり方(減光度)が弱い事、口径食が最少で ある事、逆光耐性が極めて高い事、さらには「ボケ質 の破綻」を、ほぼ絶対に起こさない事、等である。 参考関連記事:(旧ブログ) *特殊レンズ第 0回「アポダイゼーション」編 *特殊レンズ第82回「アポダイゼーションⅡ」編 *レンズマニアックス第31回「新旧STF対決」編、等 --- さて、8本目は近接可能なAF準広角レンズ。 レンズは、TAMRON SP 35mm/F1.8 Di VC USD(Model F012) (中古購入価格 41,000円)(以下、SP35/1.8) カメラは、NIKON D500 (APS-C機) 2015年に発売された高描写力単焦点準広角レンズ。 最短撮影距離が20cmと異常な迄に短い。これは 近代の35mmレンズの中でマクロを除いて第1位の性能 である(注:第1位については、フルサイズ対応で、 一眼レフ用の条件。ただし海外製の希少なオールド レンズ等を除く、等の、いくつかの条件がある) まあ、順位とかはさておき、本レンズSP35/1.8は 基本的な描写力が極めて高く、その高描写力を維持 したままで、トップクラスの近接撮影能力を持つ事が 最大のポイントである。 開放F1.4級の35mmレンズは、同社TAMRONにも 他社にも色々と存在するが、開放F値を明るくする事と 画質が高い事が決してイコールでは無い事は、中級層 以上であれば、誰でもが知っている事であろう。 本レンズは開放F1.8に留めた事(かつ、フィルター径 がφ67mmと、このスペックにおいては非常に大柄な レンズである事)により、十分な高画質が確保できて いる。(→まあ、だから、通常は近接撮影をすると 描写力が低下して性能要件(設計基準)を満たさなく なり、製品化が出来なくなる事が大半だが、本レンズは 近接撮影をしても、必要十分な描写性能が得られた為、 最短撮影距離を短くする事ができた、と思われる) レンズ構成は9群10枚と複雑であり、異常低分散系の XLD/LDレンズを2枚と非球面レンズを2枚採用した 現代的コンピューター光学設計であり、これは 本ブログで定義する「2016年断層」(注:この年 から各社のレンズの描写性能が大きく向上した仮説) 説を、1年だけ先行してクリアしている。 超音波モーター(USD)や内蔵手ブレ補正(VC)で フル武装しているが、そのあたりは「高付加価値戦略」 の一環であろうから、あまり意味が無いスペックだ。 実用上では、近接撮影時でのUSDやVCの効能は低く、 かつ、大口径レンズでもあるから、VC等の付加機能の 必要性は、あまり無い。 ただ、いつもこのSP~F1.8シリーズの記事で述べて いるように、こうした「通好み」のコンセプトは、 レンズ市場が縮退し、マニア層が激減して、ビギナー層 ばかりになってしまった近代の消費者層においては 理解が難しい。だから本レンズ(や、他のSP~F1.8 レンズ)は、不人気となり、数年後に大量の在庫処分品 が新品市場および、中古市場に新古品として流通した。 個人的には、超高性能レンズを低廉な価格で買えたので、 良かったのであるが、TAMRONとしては、せっかく 素性の良いレンズを開発したのに、あまり売れなかった 事は大誤算であっただろう。 繰り返すが、マニア層やハイアマチュア層が減って しまった為に、こうした設計コンセプトを理解できる ユーザー層も減り、結果的に「好(高)評価」が 広がらなかった事が最大の課題であったのだろう。 (注:2020年頃に生産中止となってしまっている) 総括だが、性能的には文句が無い優秀なレンズだ。 不人気なのは、もうやむを得ない。わかっている人だけ が買えば良いレンズであり「F1.4でなくちゃ嫌だ!」 等と言うビギナー層にまで無理に薦めるものでも無い。 参考関連記事:(旧ブログ) *特殊レンズ第8回「TAMRON SP LENS」編 *最強35mmレンズ選手権「決勝戦」、等 --- さて、次は特殊なベローズマクロレンズ。 レンズは、KONICA MACRO HEXANON AR 105mm/F4 (中古購入価格 9,000円)(以下、AR105/4) カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機) 1970年台後半の発売と思われるMF小口径中望遠マクロ。 レンズ単体では使用できず、ベローズ(蛇腹状の延長鏡筒) または専用ヘリコイドを使用する必要がある。 最大撮影倍率は非公開であるが、実測では3倍強だ。 しかし、近接専用では無く、無限遠距離まで連続撮影 が可能であるから、私の場合では、これのベローズ系の 部品を最小限まで分解取り外し、手持ち用レンズとして 利用するケースがほぼ全てである(三脚は使用しない) ただし、高難易度となるので中上級層向けだ。 というか、本レンズ自体、現代ではまず入手不能な 超レアレンズなので、操作性や実用性は、まあどうでも 良い話であろう。 レンズ構成は特徴的だ。基本的には、1900年、と ライト兄弟が空を飛ぶよりも早い時代において、 旧フォクトレンダー社で開発された3群5枚ヘリアー 型である。 もっとも、元祖ヘリアー型は対称構成に近い為に 後焦点が短く、中大判カメラやレンジ機用に使う しかなく、一眼レフ用はバックフォーカスを稼がない とならないので、(転用)設計が難しい。 恐らくだが、本AR105/4、および、本レンズと同等の 光学設計であるNIKON Ai Micro-NIKKOR 105mm/F4 のみが、3群5枚ヘリアー型を採用した一眼レフ用の レンズである。想像だが、後群の貼り合せの2枚は 曲率の小さい厚手のガラスを用い、バックフォーカス を、かなり伸ばした構造だと思われる。 NIKONのAi105/4は、ハーフマクロであり、小口径 でもあるから、被写体深度が中途半端になり易く ヘリアー型では完璧に抑える事が難しい諸収差や 周辺収差を起因とした「ボケ質破綻」が防ぎ難い。 そして、本AR105/4においては、その対策として まず、母艦は常にμ4/3機を用い、ヘリアー型で 発生しやすい像面湾曲や非点収差をカットする、 同時に換算画角も狭くなる為、同様の撮影倍率 においても、撮影距離(WD)を長くする事が出来る。 それは、こうした、とうてい手持ち撮影が不可能と 思えるレンズにおいて、かろうじて、その用法を 可能とする為の重要な対応策である。 要は、システム(カメラ+レンズ)というものは、 ある種の長所(利点)を得たり、あるいは短所・弱点 を相殺して使う為のものだ。 だから、本ブログにおいては、母艦となるカメラは レンズの特性に合わせて、様々なものを選択している 次第である。 「一番高いカメラを1台持っていれば、それで全て 済む」という訳では決して無い。それでは初級 マニア等の考えとなってしまう。システムを組む上での 「合理性」を強く意識しないと、何も進歩が無いので、 その点は、くれぐれも注意しないとならない。 参考関連記事:(旧ブログ) *特殊レンズ第21回「変則レンズ」編、等 --- さて、今回のラストは1/2倍超広角マクロレンズ。 レンズは、TAMRON 20mm/F2.8 Di Ⅲ OSD M1:2 (Model F050)(新古購入価格 30,000円) カメラは、SONY α6000(APS-C機) 2020年に発売された、ミラーレス機用、フルサイズ 対応AF超広角ハーフ(1/2倍)マクロレンズ。 レンズ型番の、M1:2は、1/2倍のマクロレンズで ある事を示す。 最短撮影距離は11cmであり、実焦点距離が20mm のレンズ群においては、過去からの最高スペック であろう。(注:SIGMA EX20mm/F1.8、2001年 で、ようやく最短20cmだ) ただし、今回はAPS-C機で使用している為、 最大0.75倍、さらにはSONY機での(プレシジョン) デジタルズーム機能の併用で、簡単に等倍以上の 撮影倍率を得る事が可能である。 大きな課題としては、近接撮影域では、AFでの ピント精度が、あまりよろしく無い点だ。 本レンズは現状、SONY α E(FE)マウントのみの 発売だ。数台のSONY製ミラーレス機で試しているが、 像面位相差搭載型のカメラを用いた場合でも、あまり 改善されない。(注:ファームウェアは勿論、最新の ものを用いている) 本機α6000との組み合わせにおいては、AFの速度 は十分だが、合焦しているようでも、よくピントを 外してしまっている。 ちなみに、TAMRONにおける「OSD」とは、 「Optimized Silent Drive」の略であり、これに ついては、あまり詳しい情報が無い。 まあ、超音波モーターでは無い事は確かであり、 一般的なDC(直流)モーターの機構部を改善して 静音化(Silent)を目指したものだと思われる。 (例:動画撮影時には有益であろう) また、DC系のモーターであるから、コストダウン 要素もあろうからか、本レンズの定価は、税抜き 46,000円と、さほど高額では無い。 ・・というか、レンズ市場の縮退を受けて、 各社の新製品の交換レンズは、いずれも高額に 成りすぎてしまった事で、さらなる市場縮退を 招いてしまった状況において、各社とも2020年 あるいは2021年頃から、比較的安価な新型レンズ を次々とリリースし、低価格化によるレンズ市場 の再興(活性化)を目指している状態だ。 そうした活性化戦略の一環として、本レンズや 姉妹レンズ(24mm/F2.8 Model F051、および 35mm/F2.8 Model F053)の価格を低廉に設定 (つまり、コストダウン化)したのであろう。 AF精度については、このモーターが原因なのか? あるいは別の原因が存在するのか? 例えば 本レンズの最短撮影距離は11cmだが、それを僅かに 下回って撮影すると、普通ならば合焦には至らない のだが、そんな場合でも、カメラはピントが合って いると思って、AFが止まってしまうのだろうか・・ ともかく本Model F050の近接時のAF精度は出ておらず、 なかなかピントが合わない、というストレスが強い。 あまりの合わなさに、本レンズを購入後は、 姉妹レンズの購入を控えている状態である。 ちなみに、MFで回避しようにも、無限回転式の ピントリングでは、最短撮影距離での停止感触が無く 近接MF撮影技法が有効に働かない。 まあ、極めて使い難いレンズである事は確かだが、 超広角マクロ撮影が可能なレンズは、世の中に 非常に限られた数しか存在しない。 そして、一旦購入した機材を、使いこなすのも そう出来ないのも、あくまでユーザー側での責務だ。 「レンズの性能が悪いから、使わない」では、 あまりにビギナー的な発想となってしまうし、 課題を見抜けずに購入したのも自己責任であろう。 もう少し使い込んで、なんとかこのレンズに有益 な撮影技法や撮影分野を「用途開発」していく 必要性を感じる。 参考関連記事:(旧ブログ) *レンズマニアックス第86回記事、等 --- では、今回の記事はこのあたりまでで、 このシリーズについては不定期掲載としておく。
by pchansblog2
| 2022-09-14 07:55
| 完了:続・特殊レンズマニアックス
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